確定申告は通常所得税の確定申告を指し、1年間の所得とそれに対する税額を国に申告して納税する手続きです。毎年この時期になると「できれば避けたい」と感じる事業者の方も少なくないでしょう。
しかし、実際には確定申告にも多くのメリットがあります。「所得が48万円以下なら確定申告は不要」といった話を聞くこともありますが実は、そのメリットを享受するためにはたとえ赤字であっても確定申告をしておくべきといえるでしょう。
そこでこの記事では赤字の場合でも確定申告をするメリットなどについて解説します。
目次
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1.赤字でも確定申告を行うメリットがある
確定申告は、1年間の所得にかかる所得税を国に申告する制度です。通常所得が48万円以下の人や会社員で副業などの所得が20万円以下の場合は、確定申告の義務はありません。
つまり、「個人事業主でも、赤字なら申告しなくてもよい」ということになります。しかしこれはあくまで「義務がない」だけで、申告自体はできます。
確定申告には手間がかかりますが特に個人事業主にとってはメリットが大きいため、たとえ赤字であっても申告しておくことをおすすめします。
青色申告と白色申告の主な違いとは
確定申告には青色申告と白色申告の二種類がありますが、特に赤字の場合に大きなメリットがあるのは青色申告の事業者です。
青色申告を選んでいる個人事業主の場合
個人事業主の場合、青色申告事業者とは事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出済みの事業者を指します。
青色申告では日々の取引を定められたルールに従って記帳し、申告する必要があります。白色申告に比べて記帳や申告にやや手間はかかりますが、青色申告特別控除など多くのメリットを享受できます。また青色申告で確定申告をする際には、「青色申告決算書」の添付が求められます。
白色申告をしている個人事業主の場合
白色申告事業者とは、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出していない全ての事業者を指します。個人事業主または一定の要件を満たす業務による副業収入がある場合は、確定申告時に「収支内訳書」を添付します。
白色申告事業者も青色申告事業者と同様に、赤字であっても確定申告をすることをおすすめします。個人事業主として事業を営んでいる方は、利益の有無にかかわらず毎年確定申告を行いましょう。
2.赤字の場合、個人事業主は確定申告が不要なのか?
個人事業が赤字になった場合、確定申告の義務はありません。ここでいう「赤字」とは、所得の計算結果が「ゼロ未満」になることを指します。
個人事業で赤字になる典型的なのは、「売上高-必要経費」がマイナスになるケースです。赤字の原因はさまざまですが、売上が少なかったり必要経費が大きかったりすることで「売上高<必要経費」となり赤字になるケースです。
この典型的なケース以外にも、次のように「赤字」を認識する場合があります。
損益通算によって赤字になる場合
所得税の確定申告では複数の所得がある場合、それらを合計して申告します。
例えば事業所得と不動産所得がある個人事業主で事業所得が50万円の赤字(△50万円)、不動産所得が40万円の黒字だとします。損益通算により事業所得のマイナスと不動産所得のプラスを相殺すると、損益通算後の所得は10万円の赤字(△50万円+40万円=△10万円)となります。
損益通算については後ほど詳しく解説します。
青色申告特別控除で赤字になるケース
青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除が適用可能です。例えば控除前の所得が65万円だった場合、上限額の65万円を適用することで所得はゼロになります。この状態は事業上の赤字ではありませんが、申告書上では赤字として扱われます。
所得控除が総所得額を上回るケース
事業所得を計算する際は、まず「売上高から必要経費を引いて」総所得金額を出します。そこからさらに所得控除を差し引いて、課税総所得金額を算出します。もし所得控除額が総所得金額を上回る場合、税額の基準となる「課税総所得金額」がマイナスになるため申告書上は赤字として扱われます。
たとえば事業所得が100万円あったとしても、青色申告特別控除65万円を適用しさらに基礎控除48万円も適用すると3万円の赤字(100万円−65万円−48万円=−3万円)になります。
この他にも純損失や雑損失の繰越控除を利用して、過去の赤字を繰り越すことで申告書上で赤字となるケースなどもあります。
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3.個人事業主が赤字でも確定申告を行うメリット
この章では個人事業主が赤字だとしても確定申告を行うメリットについて解説します。
翌年以降に損失の繰越控除が可能
赤字で確定申告をする最大の利点は、純損失の繰越控除を利用できることです。
純損失の繰越控除とは、赤字分を最長3年間繰り越せる制度です。例えば2024年に赤字が出た場合にはその赤字を税務上のマイナスとして3年間持ち越すことができ、将来黒字になった際にその課税所得から差し引くことが可能になります。
ただしこの繰越控除は3年が上限と定められているため、2024年の赤字を課税所得から差し引けるのは2025年から2026年までの黒字分までです。
この制度は、申告年度に青色申告をしている個人事業主のみが対象となる点に留意しましょう。
前年度の黒字と赤字を相殺できる(繰戻し還付)
今年の赤字を前年以前の黒字と相殺する制度に「繰戻し」があります。これは「繰越」と考え方自体は似ています。前年の黒字に対する税金は既に支払われているため、繰戻しの場合は支払った税金を「還付金」として返してもらう形になります。
例えば【2024年が150万円の黒字、2025年が100万円の赤字】の場合、還付金は次の計算式で求められます。
前年支払った税金 - (前年の黒字 - 今年の赤字) × 前年の税率 |
税率を5%として上記の例に当てはめると、戻ってくる還付金は5万円になります。
150万円×5%−(150万円−100万円)×5%=5万円 |
注意すべきは、繰越と繰戻しはどちらか一方しか選べない点です。上記の例では2025年の赤字100万円は既に繰戻しで使われているため、翌年以降に繰り越すことはできません。
赤字が出た際はその赤字を繰り越すべきか、それとも繰り戻すべきかその都度判断が必要です。
給与など他の所得と合算して税負担を軽減できる
先述した通り損益通算を行うことで課税所得額を抑え、結果的に支払う税金の額を少なくできる場合があります。
源泉徴収された税金が戻ってくる可能性がある
個人事業主でも特定の報酬を受け取ると、あらかじめ所得税が源泉徴収されます。源泉徴収の対象となる報酬には、例えば以下のようなものがあります。
原稿料や講演料
弁護士や税理士など、特定の資格を持つ人への報酬
従業員への給与
これらの報酬を受け取った場合には取引先は報酬から源泉徴収分を差し引き、納税者であるあなたに代わって所得税を納めます。しかしもし事業が赤字であれば所得税は発生しないため、確定申告をすることですでに納めた所得税が還付されます。
ただし源泉徴収であっても、預金の利子など源泉分離課税の対象となるものは還付の対象外ですので注意しましょう。
非課税証明書を取得できる
個人事業主が赤字でも確定申告を行うと、非課税証明書を発行してもらえます。この証明書は確定申告書の控えと同様に収入を証明する書類で、主に以下のような場面で役立ちます。
児童手当の申請
保育園・学童への申し込み
奨学金の申請
公的年金の受給手続き
公営住宅の入居申し込み
確定申告書の控えは提出後に修正申告が可能であるため、所得証明としては不適切と判断されるケースがあります。
非課税証明書を発行してもらうことで、多様な場面で所得を証明できるのが大きなメリットです。取得するには、以下の持ち物を用意して自治体で手続きをしてください。
身分証明書: マイナンバーカードや運転免許証など
申請書: 窓口または郵送で入手可能
自治体によってはオンライン申請に対応している場合もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
確定申告をすることで税務調査の対象になりにくくなる
個人事業主が赤字であっても確定申告をすれば、税務調査のリスクを減らせます。税務調査は納税が正確に行われているかを確認するためのもので、個人事業主も対象となります。
税務調査を受けることになると、日程調整・必要書類の準備・対応などに追われることになります。税務調査の結果申告内容に不備があると判断された場合は、追徴課税などのペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。
収支に関わらず毎年正確に確定申告を行うことが、税務調査対策の重要なポイントであるといえます。
国民健康保険料などが安くなる場合がある
個人事業主やフリーランスで国民健康保険に加入している方は、もし事業が赤字であれば国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性があります。
国民健康保険料は加入者全員が負担する「均等割」と、所得に応じて計算される「所得割」で構成されています。所得金額が一定の基準以下であれば、均等割が減額されるため支払う保険料を少なくできます。
ただし、この減免を受けるには所得証明が必要です。所得が少ないことや赤字であることを証明するためにも、忘れずに確定申告をしておきましょう。
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4.損益通算とは?副業の所得の種類によっては利用できないことも
この章では改めて損益通算の制度について説明します。適用できれば節税になりますが、適用には条件があることを覚えておきましょう。
副業の赤字は損益通算で本業の利益と相殺できる
損益通算は、異なる種類の所得間で発生した赤字と利益を相殺できる制度です。もし副業で赤字が出た場合その赤字を他の所得(会社員の場合は給与所得など)と相殺することで、総所得を減らして結果的に税金を安くできます。
具体例を見てみましょう。
給与所得:500万円
副業の所得:-100万円(赤字)
この場合、総所得は 500万円+(−100万円)=400万円 となります。
損益通算を適用しないと、給与所得の500万円を元に所得税や住民税が計算されます。しかし損益通算を適用すれば、総所得の400万円を基準に税金が計算されるため、税負担が軽減されるのです。
ただし他の所得と損益通算できる所得の種類は、以下の4つに限られていますので注意が必要です。
事業所得
不動産所得
山林所得
総合課税の譲渡所得
これら以外の所得は、他の所得と損益通算できません。つまり損益通算を行う上で、副業の所得区分が非常に重要になります。
損益通算を使うには、副業が対象となる所得区分であることが前提
一般的な副業の所得は、その内容によって区分されます。この所得区分によって損益通算や青色申告ができるかどうかが決まるので、しっかり理解しておきましょう。
なお事業所得と雑所得の線引きは曖昧です。しかし損益通算や青色申告の可否によって税負担が大きく変わるため、この両者の所得区分についてはトラブルが起こりやすいので注意が必要です。
国税庁は事業所得と雑所得の区別について、「帳簿を付けて保存しているか否か」が重要だと通達しています。以下の「事業所得の条件」に当てはまれば、事業所得だと主張できる可能性があります。
社会通念上「事業」と言える程度で行い、取引を帳簿に記録・保存している
副業の収入が300万円超
なお「社会通念上の事業」とは、過去の判例によると「営利目的で対価を得ているか」「反復・継続しているか」などで判断されます。
ただし記帳や帳簿保存をしていても、以下のケースでは税務署が個別に判断する場合があり雑所得と認定される可能性が高くなります。
副業の収入がごく僅か:一定期間の周期で収入300万円以下
営利性が認められない:副業が毎年赤字で、赤字を解消する取り組みをしていない
副業の所得が雑所得か事業所得か迷う場合は事業所得として確定申告する前に、税務署や税理士に相談することをおすすめします。税務署は、事業の赤字を利用した脱税行為を警戒しているためです。
もし事業所得として確定申告した後に税務署から否認されてしまった場合、追徴課税を求められるケースもあります。余計な支出を避けるためにも注意しましょう。
また事業所得に該当するにもかかわらず、まだ開業届を出していない方はすぐに提出しましょう。「事業を始めた場合は税務署に開業届を提出する」というルールがあります。
同一の所得区分なら損益通算が可能になる
雑所得や譲渡所得(分離課税)のように通常は他の所得と損益通算できない所得でも、同じ所得の範囲内であれば赤字と黒字を相殺できます。例えばせどりの雑所得が赤字でも原稿料の雑所得で利益が出ていれば、その所得同士を相殺することが可能です。
これは「所得内通算」や「内部通算」と呼ばれます。
ただし例外はあります。雑所得の「先物取引に係る雑所得」については同じ先物取引に係る雑所得の範囲内でしか通算できず、せどりや原稿料といった他の雑所得とは相殺できません。
投資における赤字の申告
事業ではなく投資で赤字が出た場合、事業所得と損益通算することはできません。
しかし上場株式等の譲渡損失と上場株式等の譲渡益あるいはFXの為替差益とスワップポイントと先物取引の差金等決済に係る損失など、投資同士で通算したり損失を繰り越したりできるケースはあります。
たとえばある年に証券会社A口座の株取引で10万円の損失が出て、証券会社B口座の株取引で100万円の利益が出た場合を考えましょう。
このケースでは損益通算を行うと「100万円−10万円=90万円」となり、90万円の利益があったことになります。この90万円に対して課税されます。
通常証券会社A口座もB口座も特定口座(源泉徴収あり)で取引していれば、確定申告は不要です。しかし証券会社Aの口座で損失が出ている場合、確定申告をすることで証券会社B口座の利益と損益通算が可能になりその分の還付を受けられます。
なお、投資の赤字についても3年間の繰り越しが可能です。これは青色申告事業者だけでなく、すべての人が利用できる制度です。
投資の赤字を確定申告する際に必要な書類は以下の通りです。
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
年間取引報告書
所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)
先物取引・FXの損失の確定申告に必要な書類は以下の通りです
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
年間取引報告書
所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
同じ年に利益が出ている場合はもちろん利益が出ていない場合でも、確定申告をしておくことで翌年以降の利益から赤字を差し引くことができます。ただし申告できるのは該当の年に利益や損失が確定した場合のみで、含み益や含み損は対象外です。
5.会社員が副業の赤字を確定申告で損益通算する手順
損益通算を利用するには、確定申告が必須です。この章では、会社員が副業の赤字を損益通算する際の確定申告の方法を説明します。
損益通算できる赤字か?副業の所得区分を確認する
副業の帳簿をつけ、収入、経費、赤字額を正確に把握する
帳簿と源泉徴収票を揃え、確定申告を行う
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
副業が損益通算の対象か?所得の種類を確認する
先述したように給与所得と損益通算できる赤字は、事業所得や不動産所得など4種類に限られ雑所得は対象外です。確定申告をする前にあなたの副業の赤字が損益通算できるものか、必ず確認してください。もし迷うようでしたら、事前に税務署や税理士に相談することをおすすめします。
ここからは副業の所得が「損益通算できる所得」に該当することを前提に解説を進めます。
副業の収支を帳簿で管理し、赤字の金額を正確に把握する
確定申告では副業の収入や経費、そして赤字額を正確に記載する必要がありますが、これらは帳簿から算出されます。もし帳簿をつけていない場合は、今からでもつけ始めましょう。
事業所得がある方または事業規模の不動産所得があり、青色申告を行う場合は複式簿記による帳簿が必要です。
一方事業規模ではない不動産所得の場合や白色申告を行う場合でも、簡易簿記が必要です。
帳簿には、収入と経費を正確に記録することが求められます。経費にできるものをしっかり把握し、漏れなく計上するようにしましょう。
帳簿と源泉徴収票を準備して確定申告書を提出する
確定申告時には副業の帳簿に加えて、本業の源泉徴収票も準備しましょう。これらは提出しませんが、確定申告書を作成する際に使います。
状況によっては、固定資産台帳や各種控除の証明書類なども必要になる場合があります。必要な書類が揃ったら、e-Taxで確定申告書を作成します。
e-Taxの指示に従い帳簿や必要書類をもとに、収入・経費・給与所得・各種控除などを入力してください。e-Taxは損益通算の計算を自動で行ってくれるので、特別な手続きは不要です。
作成した書類に不備がなければ提出しましょう。これで赤字の損益通算は完了です。
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6.会社勤めをしている人が副業で赤字を出した際の注意点
会社員の方が副業で赤字を出した場合、いくつか注意すべき点があります。詳しく見ていきましょう。
損益通算の影響で会社に副業が知られる可能性がある
会社員の方が副業で赤字を出し損益通算を利用すると、副業が勤務先に知られる可能性があります。これは本来勤務先が算出する住民税額と、実際に納めるべき住民税額に差が生じることで発覚しかねないためです。
ただし勤務先が副業を禁止していない場合は、損益通算を行っても問題ないと言えるでしょう。
近年副業を容認する動きが広がってはいるものの、多くの企業では様々な理由から従業員の副業を禁止していたり始める際に申請を義務付けていたりします。もし禁止されているにも関わらず副業が発覚した場合、懲戒処分の対象となる可能性もあります。
そのため勤務先の就業規則を遵守し、もし副業が禁止されているのであればペナルティのリスクを冒してまで副業を行うべきか慎重に検討しましょう。
禁止されていない場合でも必要に応じて副業に関する届出や申請を行い、本業とのバランスを考慮した上で副業に取り組むことが重要です。
副業が赤字の場合、住民税の申告義務がない場合がある
副業が赤字で確定申告が不要になった場合、住民税の申告も不要になります。これは、副業が赤字であれば追加で住民税を納める必要がないためです。
副業が赤字でもインボイス登録事業者は消費税の申告が必要
副業をしていても、取引先によっては適格請求書(インボイス)の発行を求められることがあります。そのため副業の内容によっては、適格請求書発行事業者への登録(インボイス登録)も検討しておくと良いでしょう。
副業で適格請求書発行事業者となった場合、消費税の確定申告が必要です。副業の所得が赤字でも、課税売上がある場合は消費税を納める必要があることを理解しておきましょう。
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7.赤字申告・所得金額がマイナスの際の申告書の書き方のポイント
赤字で確定申告をする際も、通常の確定申告と同様に「確定申告書 第一表」と「確定申告書 第二表」の提出が必要です。
事業所得者の場合には白色申告者は収支内訳書、青色申告者は青色申告決算書も提出しなければなりません。また、損失の繰越控除を利用するなら「確定申告書 第四表」も必要になります。
ここからは赤字で還付を受ける際の確定申告書の書き方について、ポイントを絞って解説していきます。
事業所得があるときの記載方法
事業所得のある個人事業主が赤字になった場合、確定申告書第一表の「収入金額等」に金額を記入した後、「所得金額等」の「事業」(1番または2番)欄にマイナス記号(△)を付けて金額を記載します。
例えば10万円の赤字であれば、「△100,000」と記入する形です。
源泉徴収がある場合の対応
講演料など事業に関連する源泉徴収額がある場合は、払い過ぎた所得税が戻ってくるため還付される金額を記入します。もちろん事業の他に給与所得がある場合は、給与所得に係る源泉徴収税も加算します。
還付申告をする際の記入方法
税金の計算で還付される税金がある場合は、「還付される税金の受取場所」の欄に還付金の振込先となる金融機関の口座情報を記入します。なお令和6年分の申告書には定額減税の項目が追加されていました。
青色申告者が翌年以降も繰越控除を受けたい場合は、「確定申告書 第四表(損失申告用)」の記入と提出が必要です。
上場株式等の譲渡損失など特別な損失を申告する際は「確定申告書の第一表」や「第二表」とは別に、「確定申告書第三表」をはじめとする定められた書類を作成します。
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8.赤字申告をする際に考えられるデメリット
個人事業主が赤字で確定申告を行うと多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
資金調達が難しくなる可能性がある
時間や労力がかかる
それぞれの詳細を見ていきましょう。
融資審査に不利になる可能性がある
個人事業主が赤字で確定申告を行うと、資金調達が難しくなるというデメリットがあります。
融資を申し込む際金融機関は決算書の提出を求めますが、赤字だと返済能力がないと判断されやすいためです。一度金融機関からの信用を失うと、回復には時間がかかります。
ただし以下のような理由で一時的に赤字になったと判断されれば、資金調達の可能性はあります。
大規模な設備投資を行った
市場が急激に変化した
もし赤字決算になった場合は地域の銀行や信用組合などを頼ると、比較的融資を受けやすいでしょう。地域の事業者への融資に積極的な金融機関に対し、事業が地域活性化に繋がる点をアピールするのがポイントです。
経費や仕入額が多いと税務署から調査対象になりやすい
もし会社が赤字になった場合、所得税はかかりません。だからといって、売上高よりも必要経費や仕入れを意図的に多く計上して赤字申告したとしましょう。
税務署は申告書に記載された取引先に対して、実際に取引があったかを確認できます。そのため提出された申告書の信憑性が問われることになるのです。必要経費や仕入れの水増しは明らかに脱税行為であり、税務調査の対象となりえます。
正しい確定申告を行いましょう。
申告手続きに手間や時間がかかる
個人事業主が赤字で確定申告を行うデメリットとして、手続きに時間と労力がかかる点が挙げられます。特に初めての場合には経費の分類や書類作成などで不明な点が多く、手間取ることも少なくありません。
インターネットや書籍で調べたり実際に作業したりする中で、多くの時間と労力が費やされる可能性があります。もし不注意によるミスがあれば、ペナルティを課されるリスクも生じます。
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までと決まっており、この期限内に終える義務を負担に感じる方もいるでしょう。
確定申告は個人事業主にとって必要不可欠なものですが、直接的に新たな収入を生み出すわけではありません。
9.まとめ
個人事業が赤字の場合、確定申告の義務はありません。
しかし、確定申告を行うことで得られる利点や、申告しない場合の不利益を考慮すると、義務がなくとも確定申告をした方が大きなメリットがあると言えます。事業を営んでいるのであれば、赤字であっても確定申告はすべきと考え、準備を進めておくのが賢明です。
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