Pythonは1991年にグイド・ヴァン・ロッサムにより開発され、オープンソースで運営されているプログラミング言語です。
Pythonは機械学習や深層学習(ディープラーニング)を含むAI(人工知能)をはじめとし、様々な中〜大規模開発に活用されています。
そんなPython開発においてPythonフレームワークの種類が多く、どの開発にどのフレームワークを活用するのが良いのか、どのフレームワークを習得すべきなのか、フリーランスエンジニアでも迷っている方は多いかと思います。
特定のフレームワークを募集条件にしている開発案件も多くあり、Python開発においてフレームワークの習得は必須と言えるでしょう。
また、IT業界はトレンドが早く仮にトレンドではないPythonフレームワークを習得した場合、それに費やした労力が無駄になってしまうことも。
今回はPythonのフレームワークについてわかりやすく解説していきます。
具体的にはフレームワークの説明やライブラリとの違い、Pythonフレームワークのメリットやデメリット、Pythonフレームワークの市場動向、おすすめのPythonフレームワークについて見ていきましょう。
しっかりと開発に適したPythonフレームワークを把握し、フリーランスエンジニアとして第一線で活躍しましょう。
特にPythonフレームワークの記事をご一読していただきたい方
Pythonエンジニアとして活躍をしている方
Pythonエンジニアを今後検討している方
Pythonやエンジニア自体に興味/関心がある方
Pythonフレームワークの知識/理解を学習したい方
Pythonフレームワークの市場動向を把握したい方
どのPythonフレームワークを習得するか迷っている方
目次
1.フレームワークとは?
まず、Pythonフレームワークを解説する前にフレームワークについて解説していきます。
フレームワークとは、全体処理の流れがある程度決められているソフトウェアです。
もともと、フレームワークは枠組みや骨組みといった意味がありますが、エンジニアが使用するフレームワークの意味はソフトウェア開発の土台となるプログラム部品を指します。つまりプログラムのひな形です。
フレームワークには複数の種類があり、Webアプリケーション開発で活用する「Webアプリケーションフレームワーク」やデータのソートや文字列操作、テスト、数学関数などアプリケーション機能や性能、操作性向上のための「ユーティリティ系フレームワーク」などがあります。
フレームワークを活用することにより、システムやアプリケーション開発の工程を向上させることができます。
しかし、フレームワーク特有のコードがありプログラミング言語の習得に加え、一定のコードを習得する必要があります。
2.フレームワークとライブラリの違い
フレームワークについて理解できたところで、フレームワークと混同しやすいのがライブラリです。
この章ではフレームワークとライブラリの違いについて解説します。
フレームワーク:全体処理の流れがある程度決められているソフトウェア、つまりプログラムのひな形のことです。
ライブラリ:関数やクラスという再利用できる部品をまとめたコードの集まり。特にクラスを集めたものをクラスライブラリと呼びます。
フレームワークとライブラリの違いとは、フレームワークはアプリケーションの設計レベルの再利用を目的としていることに対して、ライブラリは単にコードの再利用を目的としていることです。
3.Pythonフレームワーク活用のメリット
この章ではPythonフレームワーク活用のメリットを解説していきます。
Pythonフレームワークのメリットをしっかり理解し習得するかどうかの判断材料にしましょう。
開発効率の向上
Pythonフレームワーク活用のメリットは開発効率の向上が挙げられます。
フレームワークは、原形で利用できるテンプレート、再利用可能なクラス、ライブラリ、API等で構成されています。
例えば多くのシステムやアプリケーション開発に利用されており、つまり信頼できるPythonフレームワークを導入することで、コーディングの大部分の用意が不必要になり、開発効率の向上に繋がります。
機能やデザインのカスタマイズも簡単に出来るため、短期間で質の高いシステムやアプリケーションを開発することが可能です。
近年MVP開発やリーンスタートアップという言葉が出てきているように、IT/Web業界ではシステムやアプリなどのサービスを最小工数で開発し、短期間でリリースすることが大切です。
バグの減少
Pythonフレームワーク活用のメリットはバグの減少が挙げられます。
Python開発において、フレームワークを使わず開発を行うと、多くの箇所でバグが発生する可能性が高くなります。
これは単純に開発の力量が足りなかったこともあり得ますが、フレークワークを使用することで自力で書く際よりもバグが出にくくなる傾向にあります。
また、Pythonフレームワークは世界中多くのエンジニアに活用されており、ある程度のバグは解決されているということもPythonフレームワークを活用するメリットです。
コードの統一性を保持
Pythonフレームワーク活用のメリットはコードの統一性を保持が挙げられます。
チームを含む1人以上でPython開発を行う際、フレームワークを活用することでコードの統一性を保てます。
コーディングなどのスキルはフリーランスエンジニアごとで異なり、その人の個性やクセが出ます。
そのため開発効率が落ちたり、バグが多くなったり、エラー時の対応やコードを引き継ぐ際に時間がかかったりなどコードに統一性が無いことのデメリットは多いです。
Pythonフレームワークという共通ルールを使うことにより、フリーランスエンジニア毎のコーディングの違いを減らし、多人数開発にも対応しやすくなります。
4.Pythonフレームワーク活用のデメリット
この章ではPythonフレームワーク活用のデメリットを解説していきます。
Pythonフレームワークのデメリットをしっかり理解し習得するかどうかの判断材料にしましょう。
フレームワーク習得時間が必要
Pythonフレームワーク活用のデメリットはPythonフレームワーク習得に時間が必要ということです。
特に経験が浅い方や今後Pythonエンジニアを目指している方はPython自体のプログラミング言語習得以外にPythonフレームワークの習得にも時間を使う必要があります。
そのため、Pythonスキルのために素早いキャッチアップが必要です。
ドキュメントは英語で作成されていることも多く、かつマイナーなPythonフレームワークの場合、情報があまりないことなども有り得ます。
フレームワーク活用で処理が重くなる
Pythonフレームワーク活用のデメリットは、フレームワーク活用で処理が重くなることが挙げられます。
Pythonフレームワークは汎用化されており、処理が重かったりさらにファイルサイズも大きいこともあります。
つまり、フレームワークの機能の一部しか使用しなくても同じ仕組みを利用するため、その分負荷がかかります。
Pythonフレームワークを活用する際は、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
Pythonフレームワークの脆弱性
Pythonフレームワーク活用のデメリットはPythonフレームワークの脆弱性が挙げられます。
Pythonフレームワークの中には脆弱性が報告されるものもあります。
フレームワークに脆弱性が発見されると、開発したシステムやアプリケーションなどサービスのセキュリティにも脆弱性があるということに繋がるので、最悪の場合信頼性が失われる恐れがあります。
主流Pythonフレームワークになるにつれて多くエンジニアやサービスに活用されているため、脆弱性が発見されることは稀ですが、事前に精査した上でPythonフレームワークを活用しましょう。
5.Pythonフレームワークの選び方
この章ではPythonフレームワークの選び方を解説していきます。
どのPythonフレームワークを習得するか迷っているフリーランスエンジニアの方はどの選び方が最適なのかしっかり考えましょう。
目的別で選択
Pythonフレームワークの選び方として、目的別で選ぶ方法があります。
Pythonフレームワークは開発規模の大きさやどのようなものを開発するかなど、得意な部分がそれぞれ異なります。
一定数の学習時間がかかる多機能なフレームワークや最低限の知識があれば活用できる軽量なフレームワークなど様々です。
また、開発者の知識や開発を担当する機能に応じて、考えると良い場合もあります。
自分の環境で選択
Pythonフレームワークの選び方として、自分の環境で選ぶ方法があります。
Pythonフレームワークには様々なものがありますが、「いざとなったら質問や相談を周りにできるエンジニアはいるのか?」や「プログラミングスクールや社内研修で取り扱っているのか?」などフレームワークの習得に対して、自分の周りの環境に目を向けてみましょう。
もし詳しい人や学習環境が整っているPythonフレームワークが身近にある場合は、そのPythonフレームワークから始めるのも良いでしょう。
トレンドや将来性で選択
Pythonフレームワークの選び方として、トレンドや将来性で選ぶ方法があります。
上記解説した2点以外に特別な要件がなければ主流のPythonフレームワークや世界中で注目されているPythonフレームワークを選びましょう。
トレンドや将来性もあるフレームワークは、コード記述やテストが簡単であるなど、何かしら注目されている理由が存在します。
また、トレンドや将来性のあるPythonフレームワークはドキュメントや参考になる記事などの情報も豊富に公開されているので習得しやすいでしょう。
6.Pythonフレームワークのトレンド
この章ではPythonフレームワークのトレンドについてやトレンドから見えてくる市場動向を解説していきます。
どのPythonフレームワークが頻繁に検索されているのかGoogleトレンドで見ていきましょう。
Pythonフレームワークのトレンドの結果はDjango、Bottle、Flask、Tornado、Pyramidの順となりました。
Pythonフレームワークでは、Djangoが一番のトレンドとなります。
また、Pythonフレームワーク案件数とPythonフレームワークのトレンドでは相関関係があまりないこともわかりました。
Python開発に関わっている方はPythonフレームワークのトレンドを抑えておきましょう。
Pythonの市場動向を少し見ていきましょう。
Pythonは数多くのサービスで使われており、例としてGoogle、Instagram、PayPal、NASA、YouTube、Evernote、Dropboxなどが挙げられます。Pythonは常にIT市場を牽引してきた開発技術の1つとして高い安定性があり、さらにPythonフレームワークの数や習得希望順位からも、そのニーズが高いことがわかります。
最近の調査によれば、PythonはデータサイエンスやAI開発で特に人気があり、その需要は今後も増加する見込みです。また、Pythonのシンプルで読みやすいコードは、初心者から経験豊富な開発者まで幅広い層に支持されています。企業が求めるスキルとしても、Pythonのランキングは常に上位に位置しています。
7.おすすめのPythonフレームワーク10選
この章では、Python開発の際に活用されるPythonフレームワーク10選を紹介します。
Python開発に携わるフリーランスエンジニアの方は、ぜひ興味/関心のあるPythonフレームワークを探してみましょう。
Django
DjangoはPythonで実装されたWebアプリケーションフレームワークです。
Djangoは代表的なPythonフレームワークです。
Djangoは2005年にリリースされ、2024年8月時点では4.2が最新バージョンとなっています。
Djangoを活用したWebサイトはPBS、Instagram、 Mozilla、The Washington Times、Disqus、Nextdoorがあります。
Djangoの特徴としてフルスタックなフレームワークであることや実用性が高いことをはじめとし、高速な動作すること、セキュリティ性が高いこと、メンテナンスが簡単であること、Linux、Windows、macOS Xなどメジャーなプラットフォームで活用できること、ドキュメントが豊富で学習コストが低いことなどが挙げられます。
Djangoは小規模〜大規模のWebシステム開発やWebアプリケーション開発、業務系システム開発などに適したPythonフレームワークです。
Flask
FlaskはPythonの軽量なWebアプリケーションフレームワークです。
Flaskは最小限の機能だけ搭載されているためマイクロフレームワークと呼ばれることもあります。
Flaskは2010年にリリースされ、2024年8月時点では2.1.3が最新バージョンとなっています。
Flaskの特徴として軽量かつシンプルな設計であることやカスタマイズ性が高いことをはじめとし、シンプル故に学習コストは低いことなどが挙げられます。
また、PythonのサーバとWebアプリケーションをつなぐWSGI(Web Server Gateway Interface)でWebアプリケーションを開発するフレームワークのため、Flaskで実装したアプリケーションはWSGI対応のHTTPサーバーで容易に動作可能です。
その他、FlaskはJavaフレームワークであるSpringの実装に似ていると言われることもあります。
Flaskは小規模〜中規模のWebシステム開発やWebアプリケーション開発に適したPythonフレームワークです。
bottle
bottleはWSGIWebアプリを作るための仕組みを提供するPythonのマイクロWebフレームワークです。
Pythonの主流フレームワークの1つであり、2009年にリリースされ2024年8月時点では0.12.23が最新バージョンとなっています。
bottleの特徴として、最小限の機能しか搭載していないため軽量かつシンプルであること、WSGI環境であること、高速で動作することなどが挙げられます。
bottleは小〜中規模Webシステム開発やWebアプリケーション開発に適したPythonフレームワークです。
Tornado
TornadoはPythonで記述されたスケーラブルでノンブロッキングなWebサーバ、Webフレームワークです。
Tornadoは2009年にリリースされ、2024年8月時点では6.3.2が最新バージョンとなっています。
Tornadoの特徴としてシンプルであるかつ高速で動作することや非同期処理や同時接続処理を得意としていることなどが挙げられます。
また、ドキュメントはDjangoやFlaskに比べて少ないため学習コストはやや高いです。
Tornadoは小〜大規模のWebシステム開発やWebアプリケーション開発に適したPythonフレームワークです。
Plone
PloneはオープンソースのWebアプリケーション用Pythonフレームワークです。
またPloneはオープンソースのCMSとしても有名なので、CMSを指してPloneと呼ぶ場合もあります。
Ploneは2001年にリリースされ、2024年8月時点では6.0が最新バージョンとなっています。
Ploneの特徴としてCMS以上に導入/運用が容易などが挙げられます。
Pyramid
PyramidはWSGIベースのPythonのWebアプリケーション開発フレームワークです。
PyramidはZope、Pylons、Djangoに影響されており、2024年8月時点では2.0が最新バージョンとなっています。
Pyramidにおいて、Pylonsとのつながりも簡単に説明します。
Pylons 1.0は、WSGIベースのフレームワークでしたが拡張性の改良が困難でした。
そのため2010年Pylonsフレームワークはrepoze.bfgをベースとした開発に移行することを発表し、repoze.bfgプロジェクトがPylonsプロジェクトに合流し、repoze.bfgがPyramidと名称変更を行っています。
つまりPylonsは2012年に開発が完了しており、Pyramidが後継となっています。
Pyramidの特徴として、コンポーネント思想で設計されており様々なモジュールが提供されていること、コミュニティが比較的活発であること、高速で動作することなどが挙げられます。
Pyramidは軽量かつシンプルであるため、小〜大規模のWebサービスやWebアプリケーション開発に適したPythonフレームワークです。
CherryPy
CherryPyは、Pythonを用いたオブジェクト指向のWebアプリケーションフレームワークです。。
CherryPyはレミ・ドロン氏が中心となって2002年にリリースされており、2024年8月時点では18.6.1が最新バージョンとなっています。
CherryPyの特徴として軽量かつ高速で動作すること、オブジェクト指向であること、数行でWebサーバ作成が終了すること、機能が最小限であるため大規模開発には適していないことなどが挙げられます。
なお、Express.jsはPythonの知識を必要とするため、初心者はまずPython習得を目指しましょう。
CherryPyは小〜中規模のWebサービスやWebアプリケーション開発に適したPythonフレームワークです。
web2py
web2pyはWebアプリケーションをアジャイルで開発するためのフルスタックWebフレームワークです。
web2pyは2024年8月時点では2.21.1が最新バージョンとなっています。
web2pyの特徴としてWindowsやMac、Linuxなど異なるプラットフォーム上での実行が可能であること、様々なデータベースとの効率的な連携や悪質なセキュリティ違反を防ぐセキュリティに強い機能が搭載されていること、ドキュメントが少なく学習コストが高いことなどを挙げることができます。
CubicWeb
CubicWebはセマンティックWebアプリケーションフレームワークです。
CubicWebは2001年にリリースし、2024年8月時点では3.32が最新バージョンとなっています。
CubicWebの特徴としてフルスタックであること、比較的大規模開発に適していることなどが挙げられます。
またCubicWebはコンポーネントを再利用し、オブジェクト志向の設計原則に従い、効率的な開発ができることも特徴の1つです。
PyTorch
PyTorchはPythonのオープンソース機械学習ライブラリです。
PyTorchはFacebookの人工知能研究グループにより初期開発され、現在Pythonの機械学習ライブラリとして人気です。
PyTorchは2016年にリリースし、2024年8月時点では2.0が最新バージョンとなっています。
PyTorchの特徴として直感的にコードを記述できること、参照リソースが豊富であること、Numpyと類似した操作方法であること、コミュニティが活発であることなどが挙げられます。
またフリーランスボードでPyTorch案件数では、94件とPyTorchを必要とするフリーランス求人・案件も一定数存在します。
PyTorchは深層学習(ディープラーニング)を含む機械学習開発に携わりたいエンジニアは習得しておくべきPythonライブラリです。
8.まとめ
今回はPythonに焦点を当ててフレームワークの説明やライブラリとの違い、Pythonフレームワークのメリットデメリット、フレームワーク案件数から見たPythonフレームワーク市場動向、おすすめのPythonフレームワークについて解説していきました。
Pythonフレームワークの活用によって、セキュリティ面の確保やバグの減少など開発効率の向上を図ることができます。
また、Pythonフレームワーク/ライブラリはそれぞれ特徴があります。
例えば大規模開発はDjangoや高速開発はbottleやFlaskなど、深層学習(ディープラーニング)を含む機械学習開発はPyTorchなど規模や環境、開発分野によって使用するフレームワーク/ライブラリは異なります。
Pythonフレームワークをはじめとし、開発スキルには流行り廃りがあり、日々新しいものが開発され、消えていっています。
そのため、PythonやPython周辺知識に関する最新情報を常に確認し、アップデートしましょう。
フリーランスエンジニアとして自分の開発スキルや習得環境に適したPythonフレームワークを選択し、IT業界で常に活躍していきましょう。