RPAエンジニアとはエンジニアの中でも比較的新しい職業です。そもそも、RPAとは定型的な事務作業を自動化する技術やシステムのことで、業務の効率化に役立ちます。RPAエンジニアはこのRPAシステムの設計、開発、実装、保守を主に担当します。
エンジニアとして現在働いている方の中には近年耳にする機会が増えたRPAエンジニアに関心をもつ人や、これからエンジニアになりたい人の中には比較的新しいこのジャンルに参入したいと考える人もいるのではないでしょうか。
本記事では、RPAエンジニアの概要を確認した上で、RPAエンジニアについて仕事内容やスキル、さらにはRPAエンジニアはやめとけといわれる理由などを見ていきましょう。
目次
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1.RPAエンジニアとは
RPAエンジニアとは、RPAロボットの構築・運用・保守を担当するエンジニアです。
この職業はRPA(Robotic Process Automation)を使い業務プロセス自動化のシステムを開発・導入します。業務に従事するにはプログラミングスキルと業務プロセスの理解が必要で、RPAツールを活用して自動化のためのワークフローの作成を行います。
2.RPAエンジニアの仕事内容
RPAエンジニアの仕事内容は以下の3つに分類できます。
導入・検討
開発
運用・保守
導入・検討
クライアント企業で行われている業務や、クライアントの要望を参考にしてRPAで自動化する業務を検討します。主に定型業務がRPAに代替できないか検討されます。
業務内容の分析後、RPAを提供する業務の範囲を決定します。要件定義を行ったら、クライアントに自動化による効果の予想を説明します。この段階で、クライアントに同意を得る必要があります。
開発
開発では要件定義に従い、RPAツールを使った自動化の仕組みを構築します。
人間が従来行ってきた業務を分析し、シナリオ化します。
条件による分岐なども考慮しつつフローを作成します。
運用・保守
運用段階では設計したロボットが動作するかや、クライアントが期待している成果を出せるかをチェックします。検証の結果、不十分だと判断された場合、修正や調整を行った上で、クライアントに納品します。
また、RPAエンジニアは開発するだけでなく、クライアントがスムーズに使いこなせるようサポートを行うことも役割です。RPAツールの操作マニュアルを作成したり、担当者を対象にした導入研修を実施したりすることがあります。
また、問い合わせがあった場合は、RPAエンジニアが担当することもあります。
3.RPAエンジニアに求められるスキル
RPAエンジニアとして業務に従事するには、以下の4つのスキルが主に求められます。
RPAツールに関する知識・経験
Access、Excel VBAなどの知識
システム開発の実績
HTMLの知識
RPAツールに関する知識・経験
RPAエンジニアとして働く上でRPAツールに関する知識が不可欠です。
UiPathやBlue Prism、Automation Anywhere、WinActorなど国内製品、海外製品を問わず世で知られているRPAツールに関して精通していることが求められます。
さらに、運用経験があれば、相手に安心感を与えられます。
Access、Excel VBAなどの知識
RPAエンジニアが担う業務の中にはAccess、Excel VBAなどの知識が求められるものもあります。これらの知識があれば携われる業務の範囲が広がります。
Accessとはリレーショナルデータベース方式のデータベース管理ソフトです。自社のデータを蓄積、保存、活用などする際にAccessを使っている企業は多いです。
そのデータを扱う業務をRPAで自動化したいという要望は近年増えています。
また、Excel VBAとはExcelの機能を拡張するプログラミング言語です。RPAを活用し、Excelへのデータの記入や抽出、転記などを行いたい場合はExcel VBAの検討が必要になることもあります。
システム開発の実績
RPAエンジニアとして働く上で、システム開発の経験があると有利です。
RPAエンジニアの業務におけるRPAの導入検討や開発のフェーズで求められる役割は、SEの仕事内容と通じるものもあります。
RPAの開発経験がなくても一般的なシステム開発の経験がある人は歓迎されることもあります。
HTMLの知識
Webサイトから特定の情報を探し、自動的に抽出する技術をWebスクレイピングといいます。RPAを用いてスクレイピングを実現することも可能です。
RPAを活用する際、ページのHTML構造を解析し、情報を抽出するのでHTMLに関する知識が必要です。
4.RPAエンジニアはやめとけといわれる理由
RPAエンジニアには仕事がきついイメージを抱いている人もいるのではないでしょうか。
RPAエンジニアはやめとけといわれる理由として、以下の2つが挙げられます。
常に勉強し続けなければならない環境に置かれる
競争が将来的に激しくなる可能性がある
常に勉強し続けなければならない環境に置かれる
RPA技術は急速に進化しています。実務に必要な知識やスキルを取得したら学習の必要がなくなるというわけではなく、知識やスキルをアップデートしていかなければなりません。
業務に携わるには常に学び続けることが不可欠です。
エンジニアにはRPAツールや技術が新しく登場したら学習し、それを適用することが求められています。人によっては日々の自主学習を負担に感じることもあります。
競争が将来的に激しくなる可能性がある
近年、RPA技術の人気は高まっており、RPAエンジニアの需要も増えています。
また、多くの人がこのジャンルに関心を持つようになれば、競争も激しくなります。競争が激しくなった場合、RPAエンジニアとして生き抜くには時代に適応できていることはもちろん、他のRPAエンジニアと差異化する必要があります。
さらに、コミュニケーション力など社会人としてのポータブルスキルも必要です。
5.RPAエンジニアの年収
求人ボックスによると、正社員のRPAエンジニアの平均年収は558万円です。なお、派遣のRPAエンジニアの時給は2191円になります。
国税庁によると、日本人の令和4年分の正社員の平均年収は523万円のため、RPAエンジニアの平均年収は平均水準より高いといえます。一般的に、500万円前後の年収があれば家族を養えると考えられているため、生活する上で問題ないでしょう。
また、年収を上げたい人はキャリアアップも目指してみてください。自身のスキルを高め、実績を積むことで平均年収以上の年収も見込めます。
6.RPAエンジニアのキャリア
RPAエンジニアとして働いている人の中にはキャリアアップを目指したいと考えている人も多いのではないでしょうか。RPAエンジニアとしての実績があれば、経験を活かしてキャリアを拓くことも可能です。
RPAエンジニアのキャリアとして以下の3つが挙げられます。
フリーランス
RPAコンサルタント
プロジェクトリーダー
フリーランス
RPAエンジニアとしての経験がある人の中にはフリーランスに転身した人も多くいます。
会社員として企業に勤めていると給与がスキルや経験に応じて増えるかというと必ずしもそうではありません。
フリーランスであればクライアントとの関係で給与が決まりますし、複数の業務をかけもちすることもできるので、会社員時代よりも年収を上げることも可能です。
ただし、フリーランスは会社員のように収入が安定しないので注意が必要です。
仕事を受注できなければ収入を得られません。 RPA技術者検定などの資格取得や RPAのソフトをマスターするなど、自身のスキルを高めておくようにしましょう。
RPAコンサルタント
RPAコンサルタントとはRPAシステム開発の工程のうち上流工程を担う立場にある職業です。
クライアントから要望や業務内容などをヒアリングし、分析を行います。その上で、RPA導入のプロジェクトを提案し、管理をします。
RPAコンサルタントには開発現場での作業は基本的になく、クライアントとの打ち合わせやチームのマネジメントなどが主な業務となります。
プロジェクトリーダー
プロジェクトリーダーとはチームやプロジェクトを統括する立場にある人のことです。
RPAエンジニアとして豊富な経験があり、マネジメント力がある人はプロジェクトを率いるPMやPLを目指すのもおすすめです。
PMはプロジェクト全体が計画に従って進むように人選をしたり、納期を調整したりします。また、品質管理も重要な役割です。
PLはPMが立てた計画に従ってプロジェクトを実行できるように、チームのリーダーとしてメンバーの管理を行います。
プロジェクトリーダーになると開発現場で自身が手を動かし開発する機会はほとんどなくなります。
7.RPAエンジニアの将来性
RPAエンジニアをこれから目指そうと考えている人にとって、この職業の将来性は気になるところです。
結論を先に述べると、RPAエンジニアの将来性はあると考えられています。
矢野経済研究所の調査によると、RPAの国内市場規模は調査が開始された2016年から右肩上がりで、2020年度については前年度比37.6%増となりました。
また、この伸び率の大きさにも、今後ますます需要が高まる分野だと考えられます。
現在の日本では働き方改革が推進されている一方、人手不足に多くの企業が悩まされています。
こうした問題を解決するには人間の力だけでなく、ITの力を借りる必要もあります。業務効率化を図れるRPAツールを活用することで、従業員の負担は軽減され、人手不足を補えたり、残業時間を削減したりするのにつながります。
RPAエンジニアの業務内容は難しい部分もありますが、成長が見込まれれば未経験でも採用される可能性は十分あるでしょう。
各企業のRPA導入をサポートするためにも、RPAエンジニアは重要視されているといえます。
8.RPAエンジニアに向いている人の特徴とは?
RPAエンジニアはプログラミングをあくまで手段として捉え、業務効率化の観点で考えられる人が向いています。例えば、日々の業務で無駄を探し、その時間をどのように活用するか考えるのが好きな人はやりがいを感じながら働きやすいでしょう。
プログラミングスキルやRPAを扱う能力に秀ている人であっても、業務改善に興味がないと改善ポイントを導き出せず、業務が滞りがちになります。
また、RPAエンジニアには顧客と話す機会も多くあります。このため、人と話すことが苦ではない人や物事を分かりやすく説明することに長けている人にも向いています。
開発業務を黙々とこなすだけではなく、人との関わりを大切にする人は仕事によりやりがいを見いだせるはずです。
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9.まとめ
RPAエンジニアは企業の業務効率化やコスト削減においても欠かせない存在です。
RPAエンジニアとして働くにはプログラミングスキルと業務プロセスを理解している必要があるため、エンジニアの中でも高度なスキルや能力が求められるといえます。
ITやデジタルの力で業務を効率化し、生産力を上げようと考える企業は今後もますます増えると予想できるため、RPAエンジニアのニーズは今後もあると考えられます。
また、RPAエンジニアとしての経験があれば、この経験を活かしてさらにキャリアアップすることも可能です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。