「プロジェクトマネージャーを目指したい」「プロジェクトマネジメントのスキルを身につけたい」とお考えであれば、PMP試験の合格に向けて勉強するのが非常におすすめです。
PMP試験の合格によってどのような利点があるかを理解し、積極的かつ計画的に勉強を進めていきましょう。
今回はPMP試験に関する基礎知識や詳細情報、PMP試験の資格取得のメリット・デメリット、PMP試験合格のためのおすすめの参考書や対策法についてお話します。
目次
1.PMP試験に関する基礎知識
はじめにPMP試験に関する基礎知識について解説します。
PMP試験とは
PMP試験とは、プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル:Project Management Professionalの略称であり、プロジェクトマネジメントに関する認定を行う国際的な組織であるアメリカの「PMI:Project Management Institute」が資格認定を行う試験です。
PMP試験に挑戦する受験者のプロジェクトマネジメントに関する知識やスキルを評価する試験であり、これからプロジェクトマネジメントについて学びたい、プロジェクトマネージャーとしての知識やスキルを客観的に評価されたい方におすすめの試験と言えます。
PMIとは
PMIとは、プロジェクトマネジメントに関する国際標準(デファクトスタンダード)を策定している国際的な専門家団体です。PMP試験の実施や認定の他、プロジェクトマネジメントに関するセミナーや研修、研究支援の実施、書籍や参考書の出版、PMBOKガイドの策定を行っています。
PMIには会員制度があり、加入することでPMP試験に関する優遇措置を受けることができます。試験が割引になるだけでなく、PMI日本支部の発行する参考書や書籍を割引で購入することも可能、各種セミナーやフォーラムの受講料も割引優待されるため、プロジェクトマネジメント領域でキャリアを形成したい方であれば加入をおすすめします。
PMP試験には実務経験が必要か
PMP試験には学歴に応じた実務経験:職歴を満たす必要があります。
学歴 | 中等教育卒業 | 4年制大学卒業 | 大学院卒業 |
---|---|---|---|
プロジェクトマネジメントの経験 | 5年/60か月以上 | 3年/36か月以上 | 2年/24か月以上 |
参考元:プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)®試験内容の概要
上記が学歴に応じて必要なプロジェクトマネジメントの経験及び職歴です。PMP試験申し込む前の8年間連続して蓄積されていること、一意かつ重複しないプロジェクトマネジメントの実務経験を証明する必要があります。
その他、プロジェクトマネジメント学位プログラムであるGACコースを受講することで、コンタクト・アワー35時間の受講要件を満たすことが可能であり、プロジェクトマネジメントの経験の12ヶ月分としてカウントしてもらうことも可能です。
2.PMP試験の詳細情報
次にPMP試験の詳細情報について解説します。
PMP試験の詳細
試験名 | PMP試験 |
---|---|
試験会場 | ピアソンVUEテストセンターまたはオンライン監督付き試験 |
試験日時 | ピアソンVUEテストセンター ・試験会場ごとに確認する必要あり ATA社_PMPのオンライン試験 ・日本受験者の試験カレンダーで確認 |
試験時間 | 230分 |
出題形式 | CBT(Computer_Based_Testing)方式の4択問題 |
出題数 | 180問 |
合格基準 | 記載なし |
受検料 | PMI会員価格:405ドル 一般価格:575ドル |
試験結果 | 試験終了後にディスプレイ上に表示 |
参考元:プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)®試験内容の概要
上記がPMP試験の詳細です。PMI会員については、会費が正会員で50ドル、学生会員で10ドルとのことなので、将来的にプロジェクトマネジメント領域で活躍したいと考えであれば、受験のタイミングで加入しておくことで、受験料や書籍の購入は割引になるので大変お得になります。
PMP試験の出題範囲
PMP試験は主に3つの領域について出題されます。人:42%、プロセス:50%、ビジネス環境:8%の領域で合計100%が出題範囲です。
領域 | タスク |
---|---|
人:42% | ・コンフリクトを管理する ・チームをリードする ・チームのパフォーマンスをサポートする ・チーム・メンバーとステークホルダーに権限を与える ・チーム・メンバー/ステークホルダーを適切にトレーニングする ・チームを形成する ・チームにとっての障害や障壁、阻害要因に対処して、除去する ・プロジェクトの合意に向けて交渉する ・ステークホルダーと協力する ・共通理解を構築する ・バーチャル・チームを関与させてサポートする ・チームの行動規範を定義する ・関係するステークホルダーにメンタリングを行う ・感情的知性の適用を通してチームのパフォーマンスを向上させる |
プロセス:50% | ・事業価値の提供に必要な緊急度でプロジェクトを実行する ・コミュニケーションを管理する ・リスクを評価して管理する ・ステークホルダーを関与させる ・予算と資源を計画し、管理する ・スケジュールを計画し、管理する ・プロダクト/成果物の品質について計画し、管理する ・スコープを計画し、管理する ・プロジェクト計画アクティビティを統合する ・プロジェクトの変更を管理する ・調達を計画し、管理する ・プロジェクト文書類を管理する ・適切なプロジェクト方法論/手法と実務慣行を決定する ・プロジェクト・ガバナンス構造を確立する ・プロジェクトの課題を管理する ・知識を伝達してプロジェクトの継続性を確保する ・プロジェクト/フェーズの終結または移管を計画し、管理する |
ビジネス環境:8% | ・プロジェクトのコンプライアンスを計画し、管理する ・プロジェクトのベネフィットと価値を評価し、実現する ・外部ビジネス環境の変化によるスコープへの影響を評価し、対処する ・組織の変更をサポートする |
参考元:プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)®試験内容の概要
主に人とプロセスの部分の出題範囲が広く、プロジェクトにおける人間関係及びコミュニケーションの重要性、そして時間や予算などに合わせた管理をしていくことなどの知識やスキルが求められる形です。そのため、受験の要件である実務経験が満たしていないような場合においても、受験に向けた勉強をしていくことで実務経験を積んでいく上でのノウハウが活用できるようになります。
PMP試験の受験者数・合格率・難易度
PMP試験の受験者数・合格率は公式には発表されておりません。ただし、PMP資格保有者数の推移については以下のように発表されています。
年度 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|
PMP資格保有者 | 39,850 | 40,191 | 42,463 | 45,058 |
前年比 | +341 | +2,272 | +2,595 |
日本国内におけるPMP資格保有者の総数であり、近年では2000人から2500人前後が合格して資格を保有している形です。
難易度については、受験の要件である実務経験をクリアしている方が合格、もしくは資格更新をしていることを考えると、実務によって知識を持っている人であれば難易度は下がり、実務経験はあるものの知識が備わっていない場合は難易度は上がっていくことが推測されます。
また、出題範囲が広いことを考えると、実務経験があったとしても携わったことのない領域がある場合は難易度はさらに高くなる可能性があるでしょう。
PMP試験の申し込み手順
PMP®監督付きオンライン試験かピアソンVUE_PMI試験・資格のどちらで受験するか選択
選択した受験方法のサイトに登録して受験日や条件を確認
オンライン受験の受験方法をチェックして環境を整える
指定した日時で受験する
試験後にディスプレイ上に結果が表示
上記がPMP試験の申し込み手順と受験の大まかな流れです。どちらの場合もオンラインでの受験となるため、自宅で環境を整えるか、職場や学校などで環境を整えてもらうかなど事前に調整しておきましょう。
PMP試験の有効期限
PMP試験の有効期限は3年となっています。資格更新のためには資格取得後の3年間の間に60PDU(Professional_Development_Units)を取得して報告する必要があります。PDUは特定のカリキュラムやアクティビティを実行して申請することで得られるようになっており、1PDUあたり約1時間、もしくはアクティビティごとに設定されたPDUを蓄積することで更新の資格が得られるということです。
60を超えるPDUについては3年目に取得した20PDUまでを次期のCCRサイクルにもち越すことができます。
もし、資格取得から3年を経過してしまった場合においても、その後1年間は猶予期間がありますが、余裕を持ってPDUを蓄積しておき、ギリギリになって資格を執行することのないように注意する必要があります。
ただし、猶予期間中(停止中)は、PMP®を名乗ることや名刺に記載することはできません。
猶予期間中(停止中)に60PDUを満たせない場合は、PMP®資格を喪失します。
PMP®と名乗るためには、再度申し込みし試験に合格する必要があります。
PMP試験の勉強時間
PMP試験の勉強時間については、個人差があるため明確にはできないものの、試験内容的には300時間から500時間必要であることが推測されます。同時に、学歴ごとに必要な実務経験の時間も必要であることから、受験の資格を満たすための時間として、全体で数年程度と考えた方が良いでしょう。
ただし、すでに実務経験をある程度は満たしている方、もしくはプロジェクトマネジメントに関する知識やスキルを有している方であれば、勉強時間はもう少し少なく見積もってみても良いかもしれません。また、資格更新のための勉強時間が必要であるということも覚えておきましょう。
3.PMP試験の資格取得のメリット
次にPMP試験の資格取得のメリットについて解説します。
プロジェクトマネジメントの知識やスキルが体系的に学べる
PMP試験の資格取得のメリットとして、プロジェクトマネジメントの知識やスキルが体系的に学べることが挙げられます。プロジェクトを成功させるために必要な知識やスキルとは、単に管理をするということだけでなく、コミュニケーション力やリスクの回避、進捗状況や状況の改善など様々な分野に渡りますが、PMP試験の勉強を通じてしっかりと学べるということです。
同時に受験の要件でもある実務経験を蓄積する上で、例えばアシスタントプロジェクトマネージャーとして現場での経験を積み重ねる場合においても、どんなことが必要なのか、何が足りないかを理解できるようになり、前向きに成長することにもつながります。実務経験を積み重ねる中で信頼を得ることについても理解が深まれば、新しいプロジェクトの責任者としてのキャリアも期待できるようになっていくでしょう。
プロジェクトマネジメントの知識やスキルを国内外でアピールできる
PMP試験の資格取得のメリットとして、プロジェクトマネジメントの知識やスキルを国内外でアピールできることが挙げられます。ご自身の英語力に自信があったり、エンジニアとしての知識やスキルも備えていたりする場合は海外でも活躍できるのもメリットと言えるでしょう。
国内においても外資企業などでアピールもしやすくなりますし、国内の大手企業におけるプロジェクトに参加することも視野に入ってきます。実績を着実に積み上げていくことができれば、プロジェクトマネジメント領域で長く活躍できるようになるでしょう。
資格更新プログラムによって知識やスキルをアップデートできる
PMP試験の資格取得のメリットとして、資格更新プログラムによって知識やスキルをアップデートできることが挙げられます。資格更新プログラムをしっかりと理解し、必要に応じた学習をしていくことで、プロジェクトマネジメントの知識やスキルを最新の状態にできますし、古い考え方から新しい考え方に移行することも可能です。
国際的な機関による知識やスキルのアップデートができることを考えると、多少の労力や金銭的なコストはあったとしてもリターンにつながりやすい可能性も高く、セミナーやフォーラムで人脈が作れるようになれば、様々な領域でのプロジェクトに参加できる可能性も増えていくでしょう。
4.PMP試験の資格取得のデメリット
次にPMP試験の資格取得のデメリットについて解説します。
学習時間及び金銭的なコストが必要
PMP試験の資格取得のデメリットとして、学習時間及び金銭的なコストが必要なことが挙げられます。PMP試験の試験範囲は広く、かつ深い知識が求められることから、学習時間に多くの時間が必要になりますし、受験料や会員資格の費用、その他の参考書や書籍、eラーニングなども含めるとそれなりの金額になってしまうのです。
もちろん、将来的にプロジェクトマネジメント領域における責任者としての立ち位置が手に入れば金銭的なリターンは大きく見込めますが、リターンに繋がるまでにどれぐらいの労力やお金が必要なのか、着実に活躍できるのかどうかといった部分でデメリットに感じてしまうこともあるでしょう。
3年ごとに資格更新に60単位のPDUの取得が必要
PMP試験の資格取得のデメリットとして、3年ごとに資格更新に60単位のPDUの取得が必要なことが挙げられます。PMIが定めた学習やアクティビティをこなして申請することでPDUが得られるようになっているため、単なる独学や情報収集ではなく承認の必要があることも時間的なコストになってしまうということです。
ただし、プロジェクトマネジメントのプロフェッショナルとしての知識やスキルを常にアップデートしていけるという仕組みでもあるため、将来的にプロジェクトマネジメントの分野でキャリアをアップしていきたいという方であれば、積極的に学んでいくことで自身の成長につながるというメリットにもなっていくでしょう。
実務経験や実績を積み重ねるのが難しい場合も
PMP試験の資格取得のデメリットとして、実務経験や実績を積み重ねるのが難しいことが挙げられます。PMP試験受験資格の要件であるプロジェクトマネジメントの経験には、プロジェクトのリードを任されている必要があるという記載があり、ある程度のポジションを獲得した上で実務経験かつ実績を積み上げるのは難しいという意味です。
すでにプロジェクトマネージャーやチームリーダーなどの経験を経て、かつ社会人としての経験などがある方であれば取得はそう遠くないものの、学生の方や他分野からのキャリアチェンジのために取得するというのは簡単ではありません。ただし、プロジェクトマネジメントの経験が特定の分野や業界に限定されていることはないため、何らかの形で関わった経験があり、マネージャーやリーダーとしての実務経験がある場合は問い合わせて確認してみることをおすすめします。
5.PMP試験合格のためのおすすめの参考書や対策法
次にPMP試験合格のためのおすすめの参考書や対策法について解説します。
公式認定のeラーニングや通学講座を利用する
PMP試験合格のために公式認定されているイープロジェクトや研修企業が提供するeラーニング、通学講座を利用する方法があります。書籍や独学だけでは続かない人であれば積極的に利用を検討しましょう。
また、PMP資格を維持するためのPDUの取得ができるコースなどもあることから、資格取得後のことを見据えて、どのような形で参加できるのかチェックしておくことをおすすめします。資格を取得した3年後が更新期限となることをしっかり覚えておき、継続的に知識とスキルのアップデートを行っていくことが大切です。
公式でご紹介されている参考書を購入する
公式サイトのPMI日本支部オンラインショップで紹介されている参考書を購入するのもおすすめです。PMP試験への対策となる参考書や書籍とともに、プロジェクトマネジメントのプロフェッショナルとしてスキルアップできる書籍が揃っています。
また、前述したようにPMI日本支部会員になると割引価格で購入することができますので、プロジェクトマネジメントのスペシャリストを目指す場合は会員登録しておいた方がコストが安くなるということも覚えておきましょう。
受験資格を得られるタイミングと受験する日程に合わせて勉強する
受験資格を得られるタイミング、すなわち自分自身の学歴に合わせて、プロジェクトマネジメントの実務経験の条件を満たすタイミングと受験する日程に合わせて学習計画を練ることも大切です。必要に応じてプロジェクトマネジメント学位プログラムであるGACコースを受講して実務経験の12ヶ月分を充当できる仕組みの利用も検討しましょう。
実務経験を積み重ねつつ、PMP試験の合格が視野に入れば、その後のキャリアプランも考えやすくなりますし、キャリアチェンジやキャリアアップのための準備もしやすくなります。また、勤務先に実務経験について証明してもらう方法もしっかりと調べておき、必要な書類を揃えられるようにして、受験直前になって慌てないようにしておきましょう。
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6.まとめ
今回はPMP試験に関する基礎知識や詳細情報、PMP試験の資格取得のメリット・デメリット、PMP試験合格のためのおすすめの参考書や対策法についてお話しました。
PMP試験は受験資格や合格、資格の維持のコストが高いものの、国際的な資格であることから、国内外で活躍したい場合に役立つ資格であるのは間違いありません。将来的なキャリアのためにプロジェクトマネジメントの知識とスキルを身につけたい方におすすめですので、キャリアプランを明確にしながらじっくりと勉強をしていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。