CTOとは、IT業界などで技術面の仕事に携わる役職です。技術開発のプロジェクトにおける進行・管理のほか、エンジニアの採用や教育など、さまざまな業務で欠かせない存在となっています。CTOとして働けるIT人材は今後も重要視される可能性があるため、興味があるのなら必要なスキルやキャリアパスについて把握しておくのがおすすめです。
本記事では、「CTOとはどんな仕事・役職なのか?」という基本から、具体的な役割や仕事に必要なスキル、キャリアパスについて解説します。
目次
1.CTOとは?
CTOを目指すのなら、まず「CTOとは何か」という点から確認しておきましょう。以下では、CTOの基本情報について紹介します。
CTOとは「最高技術責任者」のこと
CTOとは、「Chief Technology(Technica) Officer」の略称で、日本語で「最高技術責任者」の意味があります。日本語の名称通り、企業の技術面における最高責任者として仕事をし、研究開発の監督やプロジェクトの運営など、成果に大きく関わる業務を担当します。
経営戦略における意思決定や選定も行うことがある役職なので、CTOは企業にとって重要な役割を担うでしょう。
一方で、CTOは日本の会社法などによって、設置が定められている役職ではありません。そのため、CTOのポジションがない企業も存在します。もとはアメリカで誕生した役職であるため、外資系企業で必要とされるケースが増えると考えられるでしょう。
CTOの年収相場
CTOの年収相場は、「indeedのデータ」によると、約940万円です。地域や保有しているスキル・経験などによって年収は変わるため、1,000万円を超えるケースもあります。
「令和5年賃金構造基本統計調査」では、ソフトウェアエンジニアの平均年収は557万円と算出されています。
働き方にもよりますが、CTOはIT業界のなかでも年収相場が高いと言えるでしょう。
CTOは役員ではない?
企業の技術部門の最高責任者であるCTOは、経営に関わる業務も担うことから、役員のポジションで働くことがあります。アメリカでも、CTOは執行役員の一種として扱われているため、日本国内でも重要なポジションを担う人材として期待されるでしょう。
一方で、企業によってはCTOが、役員ではないことも考えられます。責任の領域は企業ごとに変わり、執行役員には該当しない形で雇用される可能性もあります。会社法では「取締役は1人」のみで問題なく、さらに「CTOが取締役(役員)に就任しなければならない」といった定めもないため、必ずしも「CTO=役員」とはないのが日本国内の現状です。
しかし、役員ではない場合でも、経営に携わる業務を担うことから、実質には役員として働いているCTOもいるようです。
2.CTOと各役職の違いとは?
CTOと似た名前の役職は多数あるため、それぞれの違いを把握しておくことも重要です。以下では、CTOと比較して、CEO、COO、CIOがそれぞれどのように違うのか解説します。
CTOとCEOの違い
CEOとは「Chief Exective Officer」を略した言葉で、日本語になると「最高経営責任者」と呼ばれます。事業計画や経営方針など、企業の将来を左右する事柄で責任を担う役職です。企業内におけるトップの存在となり、国内では会長や社長が、CEOのポジションを兼任することがあります。
CTOが技術部門における最高責任者であるのなら、CEOはCTOの領域も含めた企業全体の最高責任者になります。
CTOとCOOの違い
COOとは「Chief Operating Officer」を略した言葉で、日本語にすると「最高執行責任者」になります。
戦略実行や業務執行の責任を担う役職であり、CEO(最高経営責任者)が決定した経営方針に基づいて事業を推進します。CEOに次ぐポジションであり、副社長などの立場が高い人がCTOを兼任するケースがあります。
CTOとCIOの違い
CIOとは「Chief Information Officer」を略した言葉で、日本語では「最高情報責任者」と呼びます。企業の情報戦略における全責任を担い、情報管理やマネジメントを行うのが特徴です。例えば情報システムの構築や戦略の見直しなどが、CIOの仕事に含まれます。
IT企業の場合、CTOとCIOを1人で兼任することもあります。そのためCTOを目指すのなら、将来を考えてCIOの業務への理解を深めておくのもポイントです。
3.CTOの役割とは?
CTOとして仕事をするのなら、基本的な役割を把握し、どのような人材が必要になるのか確認しておくのもポイントです。以下では、CTOが担う役割について解説します。
技術戦略や開発方針などの決定
技術戦略や開発方針に関わる事柄の選定や最終的な意思決定は、CTOの役割になります。
企業の技術力や課題を正確に把握し、現状における最良の決定を行うことが、CTOの仕事だと言えるでしょう。決定までのプロセスにおいても、CTOが重要な役割を担当します。新規事業の立ち上げや既存環境の改善など、技術にまつわる領域のあらゆる部分にCTOの決定権が影響することになります。
CTOが結果を出すためには、日常的に技術に関する情報を収集し、企業全体の目標達成につなげる方法を考えることが重要です。実現できない絵空事を描くのではなく、きちんと予算や予想利益を想定し、企業にとってのメリットを現実的かつ大きくすることがCTOとして働く際のポイントになるでしょう。
また、技術と事業を結びつけて価値を創造する「技術経営(Management of Technology=MOT)」も、CTOが担当する仕事の1つです。企業戦略を成功させるために、技術を直接的に売り出す利益や、製品開発などを通して間接的に得る利益を確保します。
技術チームの構築・採用・運営
技術チームの構築やITエンジニアの採用業務、プロジェクト始動後の運営などもCTOの役割です。プロジェクトを立ち上げる際に、社内のIT人材だけでは戦力が足りないとCTOが判断した場合、新卒・既卒採用や外部への業務委託などを決定します。また、採用後の人材育成の責任も、CTOが担います。
CTOが採用面接や教育の現場に、直接出向かないこともあります。企業の規模によっては各業務の担当者に方針を伝えて、現場の判断に任せるケースも考えられるでしょう。
エンジニア採用・教育を任せる場合、意思疎通や情報共有を徹底する必要があります。CTOの求める人物像や教育方針が正確に伝わっていないと、技術戦略の実現に支障が出る可能性も懸念されます。
各領域の責任者とは綿密に連絡を取り合い、CTOの意図が正確に伝わっていることを随時確認することも仕事の一環です。
プロジェクトのマネジメント
技術での利益を得るためのプロジェクトマネジメントも、CTOの役割になります。目標達成に必要なテクノロジーの選定や予算管理、リスクへの対処などさまざまな業務がCTOの意思によって決定します。例えば社内で使用する開発環境、プログラミング言語、インフラなどはCTOの判断のもとで実践投入されます。
ただ利用するテクノロジーや予算を決めるだけでなく、実際に業務を行う人材を管理・コントロールするのもCTOの仕事です。「なぜ導入にいたったのか」を伝えて各従業員に納得してもらい、そのうえで効率的な使用方法を共有することが重要です。
マネジメントの際には、周囲を引っ張っていくための意思のほか、専門的な知識も必要になります。技術面における課題解決や情報共有をスムーズに行うためにも、関連するあらゆる知識・技術を保有している人材が求められるでしょう。
4.CTOに必要なスキルとは?
CTOの役割をまっとうするには、必要なスキルを確保したうえで業務に臨むことが重要です。以下では、CTOを目指す際に身につけておきたいスキルについて解説します。
柔軟な対応力・思考力
CTOとして現場をリードする人材には、柔軟な対応力と思考力が求められます。事前に入念な計画を立てていても、事業はあらゆるきっかけで停滞してしまいます。
固定概念から抜け出せなかったり、臨機応変な対応ができなかったりすると、事業計画を立て直すのが難しくなる可能性もあるでしょう。
そのためチーム全体を管理するCTOには、柔軟性を意識した行動・思考が重要になります。問題にぶつかっても素早く対処法を導き出し、具体的な施策に移す柔軟性を身につけることが、CTOとして活躍するためのポイントです。
IT技術は日々進化を続けているため、より自社への貢献度が高い技術が見つかることもあります。そんなときにも速やかに導入を検討したり、新技術を活用した自社独自のアイデアを創造したりといった対応が、CTOには求められるでしょう。
事業と経営におけるマクロな視点
CTOには、事業と経営の両方で活かせるマクロな視点も必要なスキルになります。自社の状況やIT業界の動向などを大局的な視点から観察し、全体として捉える能力がCTOの業務には欠かせません。技術がどのような流れで利益につながるのか、どれくらいの利益として期待できるのかを測るには、マクロな視点を意識した分析が必要です。
マクロな視点で物事を把握できると、技術の使い道を適切に見極められたり、ニーズに合わせた新規事業の提案ができるようになったりします。CEOなどの役員に対して、技術面でより有益な情報提供ができるようにもなるため、企業全体の利益増大にもつなげられるでしょう。
チーム運用を効率化するマネジメント力
CTOには、計画を実行に移すチームを管理・運用するためのマネジメント力も必要です。技術開発に必要なスケジュールを構築したり、それぞれの従業員に仕事を割り当てたりする業務をスムーズに行うためには、マネジメントスキルを磨くことが大切になります。
目標達成まできちんとチームを進めていく管理能力を持つことが、CTOを目指すうえで重要視されるでしょう。
マネジメント力を実践で活かすには、チームと連携するためのコミュニケーションスキルも必要です。エンジニアの業務をサポートしたり、チーム内のトラブル対処の場面では、CTOのコミュニケーションスキルが結果に影響します。マネジメント力を向上させる方法の1つとして、コミュニケーションスキルを高めることも意識しておきましょう。
プロジェクトを牽引するリーダーシップ
CTOとして仕事をしていくには、周囲を引っ張っていくリーダーシップも必要なスキルになります。技術戦略を成功させるには、大勢のIT人材と連携して個々の能力を発揮してもらうことが大切です。社内の従業員の力を引き出すには、CTO自身が積極的に現場に介入し、プロジェクトを牽引していくことも1つの方法になるでしょう。
リーダーシップを身につけるには、実際に現場でリーダーの役割を体験するのが近道です。リーダーとしての苦労や達成感を学ぶことで、「どんな対応がリーダーに必要なのか」「周囲はどのような期待を持っているのか」といったことを、具体的に考えられるようになります。CTOを目指すのなら、なるべく多くのプロジェクトでリーダーの経験ができるようにキャリアプランを構築しましょう。
自身のスキルアップができる学習意欲
CTOになってからも、IT技術の発展に合わせて新しいことを学ぶ機会はあります。日常的に勉強を行い、知識をアップデートしていける学習意欲も、CTOにとっては重要な「スキル」になるでしょう。
CTOのスキルアップは、結果的にチームや企業全体の能力向上につながる可能性があります。CTO自身が学んだことを職場で共有できれば、効率良く複数の従業員の成長に結びつきます。
CTOとして働くのなら、学んだ知識・技術を自分のためだけに使うのではなく、チームや企業に還元する方法を考えるのがポイントです。
5.CTOになるには?キャリアパスを紹介!
CTOになるには、いくつかのキャリアパスが考えられます。以下では、CTOになるための具体的な流れ・方法について解説します。
エンジニアから現場リーダーなどを経験してキャリアアップする
CTOになるには、エンジニアから現場のリーダー職を経験して、キャリアアップしていくのが1つの方法です。リーダーや管理職として成果を出すことで、社内での信頼が高まり、CTOとして抜擢される可能性が向上します。
キャリアアップする方法は、職場の特徴や環境を把握したうえでCTOを目指せるため、就任してからスムーズに仕事に移りやすい点がメリットです。CTOに選ばれるには、他者にはない高度な知識・技術を保有しつつ、マネジメントスキルなど管理・運用面で重要な能力を発揮できるようになる必要があります。
計画的にスキルアップができるように、具体的に「何年後に〇〇ができるようになる」など、スケジュールを構築するのもおすすめです。
フリーランスエンジニアのCTOとしてプロジェクトに参画する
フリーランスエンジニアとして実績を重ねる方法でも、CTOになることが可能です。これまでCTOを設置していなかった企業で、社内に適正のある人物がいない場合、外部から専門の人材を招くケースがあります。そのためCTO向けの求人・案件をチェックし、フリーランスとして応募することも考えられます。
フリーランスエンジニアのCTOになるには、企業ニーズに応えられるだけのスキル・経験・実績はもちろん、素早く職場環境を把握して適切な行動を起こす実行力も求められます。初めての職場でCTOとして活躍するには、短時間で企業の状況を理解し、目標達成に必要な準備を進めなければなりません。
そのためにはCTOや管理職などでIT事業の経験を積み、さまざまな事例を参考にできる「引き出し」を持つことが大切です。
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6.まとめ
最高技術責任者を意味するCTOは、IT業界において重要な役割を担います。国内の企業でもCTOは重要なポジションになっているため、対応できる人材は今後も必要になるでしょう。将来的にCTOのような上層部での活躍を目指すのなら、まずは必要なスキルやキャリアパスを確認し、具体的な行動計画を立ててみましょう。
CTOを目指す際には、フリーランスエンジニアとして実績を重ねていくのも1つの方法になります。フリーランスエンジニアからCTOを目指す場合、企業から信頼されるだけの実績を持つことが大切です。CTOにつながる案件・求人をチェックし、今から積極的に受注していくことも考えられるでしょう。
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