フリーランスやSESでエンジニアとして働いている方、もしくはこれから目指している方であれば、業務委託契約についてしっかりと把握する必要があります。
特に自由な働き方をしたいと考えている方の場合、契約内容によっては思った通りにならず困ってしまうことがあるのが理由です。
今回は請負契約、委任/準委任契約の違いなどを含む業務委託契約に関する基礎知識、業務委託契約を締結する際に注意すべきポイント、フリーランスやSESで業務委託契約するメリット・デメリット、フリーランスやSESで業務委託契約に向いている人についてお話しします。
目次
1.業務委託契約に関する基礎知識
はじめに業務委託契約に関する基礎知識について解説します。
業務委託契約とは
業務委託契約とは、発注者が受託者に業務を委託し、受託者が契約内容に応じて仕事をすることで報酬を得られる契約です。直接的な雇用関係でないため、発注者は受託者に対して雇用に関するコストやリスクを負わずに仕事を任せることができます。
受託者は直接的な雇用関係で生じる利点は得にくいものの、自分自身で仕事を選べること、一定の期間やスケジュールを定めながら雇用に縛られず報酬を得られるのが利点です。いわゆるフリーランスや個人事業主としての働き方でもあり、雇用関係では一定の決まった報酬しか得られませんが、実力次第でしっかりと報酬が得られるようになるのも魅力と言えます。
業務委託契約は納期や成果物の完成が基本
業務委託契約は納期や成果物の完成が契約に盛り込まれており、契約どおりに遂行することが基本になります。ただし必ずしも形あるものだけが成果物というわけではなく、特定の業務の特定の範囲を遂行すること、特定の作業を完了させることなども契約次第で設定することが可能です。
フリーランスにしてもSESで雇われて働くとしても、基本的には技術力を提供し、事業活動の特定の範囲内の業務に対応することで報酬を得られる仕組みでもあります。言い換えれば企業として足りない部分の手助けをしてもらうため、手助けをしてもらうことでプロジェクトの最終的な成果物や目標を達成するために業務委託契約を利用していると覚えておくと良いでしょう。
業務委託契約で報酬が得られるタイミング
業務委託契約で報酬が得られるタイミングは、納品が完了し成果物のチェックが終わった後、もしくは一定の期間ごと、または請求書の提出後になります。
フリーランスの場合は事務処理をしっかりと行う必要があるため、法的な部分も含めて理解を深めておくと良いでしょう。SES企業を通じて働く場合は、契約内容に応じて一定の事務処理をしてもらえるので安心な部分があります。
またフリーランスの場合は、報酬が得られるタイミングを十分に把握しておかないと資金繰りに困ってしまう可能性も否めません。基本的にエンジニアは身一つで働ける仕事ではありますが、自分自身が働くために生活をするための資金は必要ですし、様々な経費も必要となるため金銭的な部分の調整は早い段階で身につけておくことをおすすめします。
業務委託契約と請負契約、委任/準委任契約の違い
業務委託契約と請負契約の違いは、契約内容にはよるものの基本的には指揮命令形があるかどうかです。例えば業務委託契約の場合は、業務や作業における細かな指示を行うことができます。請負契約の場合は結果的に同じ成果物や納期を守るとしても、どのような形で業務を進めるかは受託者に委ねられる形です。
委任/準委任契約の違いとして、委任契約の場合は税理士に確定申告を依頼する行為、もしくは弁護士や法的な専門家が法律行為を行う場合の契約です。そのため一般的にはエンジニアとして委任契約になることはありません。
そして準委任契約の場合は法律行為以外の事務や業務を行う契約であり、エンジニアとしてはこちらが基本的に該当します。エンジニア領域ではSES契約とも呼ばれるものであり、実際に働く出向先や現場で業務を行う場合は委任契約ではなく、準委任契約だと覚えておきましょう。
2.業務委託契約を締結する際に注意すべきポイント
次に業務委託契約を締結する際に注意すべきポイントについて解説します。
契約書の内容が話し合ったものと相違ないか
業務委託契約を締結する際に注意すべきポイントの一つに、契約書の内容が話し合ったものと相違ないかチェックすることがあげられます。単純にブラックな環境云々という話ではなく、自分自身の勘違いや思い違いがないかどうかも含めてしっかりと精査することが大切です。
特に納期や成果物の設定、もしくは具体的な業務内容、実際働く期間などはチェックするだけでなくスケジュールなどに盛り込んでおくこと、フリーランスの場合は他の仕事と重複しないかなども十分に見ておくと良いでしょう。
同時に、関連する業務が誤って盛り込まれていないかどうかを見ておくことで、現場で働くタイミングでいきなり仕事を割り振られたりしないので安心です。
明らかに不利になるような内容が盛り込まれていないか
業務委託契約を締結する際に注意すべきポイントの一つに、明らかに不利になるような内容が盛り込まれていないかチェックすることがあげられます。フリーランスやSES経由で働きたい場合において、最初の段階では受注元や発注元の見極めが難しいことが理由です。
単純に無理な期日や成果物の完成を求められると言ったようなものだけでなく、金銭的な部分で相場よりも安く設定されていないかどうか、業務内容に応じた報酬が設定されているかどうかなどをチェックすると良いでしょう。
同様に何らかの原因が理由で賠償問題になるような項目においても、一方的に発注元が有利になるような冷気がないかも置いておくことが大切です。
エンジニアとしてのスキルセットが見合っているかどうか
業務委託契約を締結する際に注意すべきポイントの一つに、エンジニアとしてのスキルセットが見合っているかどうかチェックすることがあげられます。
エンジニアとしてスキルの習得や学習が前提である方であればあまり問題ではないものの、明らかにスキルや技術力が足りないのに契約をしてしまうのは非常に危険です。
契約を遂行できないことでリスクやトラブルに発展する可能性も高くなりますし、時間的に働いた感覚になっただけでは報酬を得ることはできないため、働き損になってしまいます。あくまでも業務委託契約の場合は受託者側から求められた業務や成果物の完成が必要であるということを忘れないようにしましょう。
3.フリーランスやSESで業務委託契約するメリット
次にフリーランスやSESで業務委託契約するメリットについて解説します。
自分のスキルセットに合わせて自由な働き方ができる
フリーランスやSESで業務委託契約するメリットとして、自分のスキルセットに合わせて自由な働き方ができることが挙げられます。企業勤めでは必要なスキルの習得を求められたり、必ずしも自分の好きな技術を利用できなかったりすることも否めません。
フリーランスやSESで業務委託契約する場合は自分自身で案件を選べるようになり、好きな場所で働いたり、自分の好みのプロジェクトに参画したりするなど、自分の好みに合わせて自由に働けるようになります。
新しい技術の習得や学習した時間が報酬アップに繋がる
フリーランスやSESで業務委託契約するメリットとして、新しい技術の習得や学習した時間が報酬アップに繋がることが挙げられます。直接的に報酬アップに繋がることで、さらに学習意欲の向上やスキル習得の意欲が湧いてくるということです。
現実問題として既存のシステムの保守運用や、オンラインサービスの維持運営などに携わっている場合ですと、必ずしも新しい技術とマッチやフィットしないため、仕事とは別で学んだ技術が役立たないことがあります。業務委託契約の場合は新しい技術の知識やスキルを持つ人こそ求められるケースもあるため、期待した以上の報酬が得られるかとも考えられるでしょう。
生産性の高い働き方が得られるようになる
フリーランスやSESで業務委託契約するメリットとして、生産性の高い働き方が得られるようになることが挙げられます。実際に特定の成果物を納品したり、特定の業務範囲の作業量をこなしたりするタイプであれば、短時間でこなす実力があれば報酬を得るまでの時間も短縮できるのが理由です。
同様に自分自身で案件を受注する数を調整したり、スケジュール調整をしたりすることで、集中して働く期間や時間を設定し、オフの時間を増やすこともできます。逆に思う存分仕事をしたいと考えれば、働いた時間に応じて得られる報酬もアップするため、実務経験を増やしながら生活を潤わせることも可能となるでしょう。
4.フリーランスやSESで業務委託契約するデメリット
次にフリーランスやSESで業務委託契約するデメリットについて解説します。
個人で国民健康保険や納税などの手続き及び支払いをする必要がある
フリーランスやSESで業務委託契約するデメリットとして、個人で国民健康保険や納税などの手続き及び支払いをする必要があることが挙げられます。企業勤めの場合は会社側が対応してくれる部分が多いため、知らないことばかりで困る可能性が高いのが理由です。
ただし、官公庁や役所にしっかりと分からないことを聞いたり、直接相談に行ったりすることで解決できる問題ですのであまり悩む必要はありません。注意したいのはわからないまま放置してしまい、後々に不要な延滞金などが発生してしまうことだということは覚えておいてください。
仕事が途切れたり、報酬が不安定だったりする場合も
フリーランスやSESで業務委託契約するデメリットとして、仕事が途切れたり、報酬が不安定だったりする場合があることが挙げられます。実際に成果物の納品をしたら終わり、もしくは人気が終われば終わりということで、必ずしも継続にならないのが理由です。
必要な時に必要な技術を持つ人材を利用できるという、発注主や受託側のメリットでもあること、そのためにそれなりの報酬が得られるという理由でもあるため、途切れさせないための工夫やスケジュール調整の能力が必要になります。
契約内容次第で思わぬトラブルやリスクに遭遇する可能性も
フリーランスやSESで業務委託契約するデメリットとして、契約内容次第で思わぬトラブルやリスクに遭遇する可能性があることが挙げられます。
案件の受注においては、直接企業から受注した場合であったとしても、その先にクライアントや顧客がいる可能性があるのが理由です。
自分が担当する範囲は小さくても、結果として最終的な納品や期日に間に合わない原因になってしまうことで、想定した以上の損害賠償を被ることも考えられるでしょう。
同時に契約内容に書いてある、もしくは書いていないにかかわらず業務の内容が変化したり、拡大解釈をして思わぬ業務を任されたりしてしまうことで、対応できずに契約違反だということにもなりかねません。
もちろんそのような場合は現場や発注元がブラックである可能性もあるため、早い段階で法律の専門家に相談して解決することをお勧めします。
5.フリーランスやSESで業務委託契約に向いている人
次にフリーランスやSESで業務委託契約に向いている人について解説します。
コミュニケーションスキルや営業力のある人
コミュニケーションスキルや営業力のある人は業務委託契約での働き方に向いています。長く同じ現場で働き続ける能力も重要ですが、様々な現場で様々な人とコミュニケーションできることは非常に大切であり、コミュニケーションが次の仕事に繋がるのが理由です。
営業力については、仕事を途切れさせないこと、必要に応じて断りながらも次につなげられることなど、報酬を安定させるためにも必要な能力と言えます。顧客やクライアントとのつながりを絶やさないようにすることという意味でもあり、自分で仕事を調整しながら自由を手に入れるためにも必須と言えるでしょう
納税や法的な処理や事務手続きがしっかりできる人
納税や法的な処理や事務手続きがしっかりできる人は業務委託契約での働き方に向いています。あまり不適当に処理し続けてしまうと、思わぬペナルティによってモチベーションが下がる可能性もありますし、金銭的なリスクも増大してしまうのが理由です。
実際にはきちんと手続きを一度覚えてしまえば難しいものではありませんし、e-taxなどを適宜導入していくことで想像しているよりも簡単に処理をできるようになります。重ねていうようですがわからない時は役所や公的機関にしっかりと相談すること、必要に応じて法律の専門家や税理士などともつながっておくと良いでしょう。
情報収集や新しい技術の習得が好きな人
情報収集や新しい技術の習得が好きな人は業務委託契約での働き方に向いています。既存の技術においてもアップデートは常にされていきますし、新しい技術に置き換わるタイミングで把握しておけば新しい仕事につながる可能性も高くなるのが理由です。同時にスキルの習得や学習自体が苦にならない人であれば、能力を磨きながら報酬もアップするという好循環になります。
同様に趣味や興味本位で学んでいた技術や情報が、後々に思わぬところで花開くことも考えられます。様々な技術を活用し、駆使しながら新しい技術を受け入れるだけでなく、新しい技術を作れるエンジニアとして成長できれば、幅広い顧客やクライアントから求められる人材として重宝されるようになるでしょう。
6.まとめ
今回は請負契約、委任/準委任契約の違いなどを含む業務委託契約に関する基礎知識、業務委託契約を締結する際に注意すべきポイント、フリーランスやSESで業務委託契約するメリット・デメリット、フリーランスやSESで業務委託契約に向いている人についてお話しました。
フリーランスの場合は自分自身で、SESの場合は登録先の企業との契約を行う必要があります。実際に契約するタイミングにおいて、業務委託契約なのか、その他の契約なのかを把握し、それぞれの特徴を理解した上で見極めて契約することが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。