近年、IT業界は深刻な人手不足といわれており、ITスキルのある人材を求めている企業が多くあります。そうした中で、プロジェクトマネージャーの需要は高く、多くの企業が求人を出しています。
プロジェクトマネージャーとはプロジェクトにおける大きな権限や職責をもち、プロジェクトが円滑に進むようにまとめる立場にある人のことです。開発やテストなどの開発に実際に携わる機会は少なく、スケジュール管理や会議の進行、利害関係にある人たちの間に入り仲介などを行います。また、困っているメンバーがいれば相談にのることもあります。
プロジェクトマネージャーは管理職のような立場にあるため、新卒や未経験からなるケースはほとんどなく、現場で豊富な経験を積んだ人がステップアップとして転身するのが一般的です。このため、プロジェクトのキーパーソンとして重要な役割を担えるだけでなく、IT業界の中でも高い年収を期待できます。
本記事では、プロジェクトマネージャーの概要を押さえた上で、プロジェクトマネージャーについて求められるスキル、向いている人・向いていない人の特徴、年収事情などを解説します。
目次
1.プロジェクトマネージャー(PM)とは
プロジェクトマネージャー(PM)とはプロジェクトの上流工程から完成までの責任を負う立場にある人です。
プロジェクトマネージャーを英語で表記すると「Project Manager」となることから、「PM」と略して呼ばれることも多くあります。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトにおいてマネジメント的な立場にあるため、責任が重く、プロジェクトの成功を左右する重要なポジションです。
主な業務として、プロジェクトの目標達成に向けてスケジュールや人材、予算などのリソースを効率的に配分したり、管理を行ったりすることが挙げられます。
2.プロジェクトマネージャーに求められるスキル
プロジェクトマネージャーは管理職的な立場にあるため、求められるスキルは多岐にわたります。
プロジェクトマネージャーに求められるスキルとして、以下の5つが挙げられます。
専門知識
豊富なプロジェクト経験
マネジメント力
問題解決スキル
交渉力
それぞれ確認していきましょう。
専門知識
プロジェクトマネージャーは所属メンバーを率いる立場にあり、プロジェクトの責任者といえます。業務をこなすには技術的なスキルや深い知識が不可欠です。
プロジェクトのメンバーが対応できない問題に対応したり、メンバーから相談を受けたりすることもあります。また、クライアントからプロジェクトの内容について丁寧な説明を求められることもあります。これらは業務に関する深い知識がなければできないものばかりです。
豊富なプロジェクト経験
プロジェクトマネージャーの業務はテキストやマニュアルを読んでいるだけでは身に付きません。数々のプロジェクトに携わってこそ、分かることや気付きもあります。
プロジェクトでは想定外のトラブルが発生することもあるので、これらに対応していくことで不足の事態にも対応できるようになります。
マネジメント力
プロジェクトマネージャーにはチームの進捗管理、リソースの配分、品質管理などプロジェクトの全体像を把握し、コントロールする能力が必要です。
例えば、スケジュール管理ではプロジェクトのスケジュールを設定し、進捗を日々確認し、約束した期日までに仕上げられるようにしなければなりません。想定外のトラブルが生じた場合は迅速に対応し、納期の調整が再度必要になることもあります。
また、リスク管理では起こりうるリスクを想定し、その影響を最小限に抑えるための方法を事前に考えておきます。
問題解決スキル
プロジェクトを進めていると、想定外の課題に衝突したり、トラブルが発生したりすることもあります。これまでの経験や保有スキルを活かし、課題の解決を行うことが求められます。
また、メンバーが力を最大限に発揮できるように納期の調整を行ったり、それぞれの能力や適正に合った業務を割り当てたりします。
交渉力
プロジェクトマネージャ―はプロジェクト関係者の間に入り、利害が衝突した際に取り持ちを行ったり、メンバーが気持ちよく業務に従事できるように立ちまわったりすることが求められます。
例えば、利害が対立する立場にある者同士が衝突した場合、お互いが納得できる妥協案を提案します。また、想定外のトラブルなどにより納期が遅れる場合は、クライアントに納期の調整を交渉しなければなりません。
3.プロジェクトマネージャーに向いている人・向いていない人の特徴
いずれの仕事においても向き不向きがあるように、プロジェクトマネージャーにも向き不向きがあります。仕事を始めた後、「やっぱり自分には不向きだった」となっては周囲に迷惑がかかるだけでなく、自分の心身にも好ましくありません。
そこで以下では、プロジェクトマネージャーに向いている人と向いていない人の特徴を解説します。
プロジェクトマネージャーに向いている人
現場で好成績を残した人、高度な開発スキルをもつプログラマーがプロジェクトマネージャーになるケースも多々あります。しかしコア業務に強く、業務に関する高いスキルがあるからといって、プロジェクトマネージャーに適しているとは限りません。
プロジェクトマネージャーの業務において重要なのは関係者と調整などを行い、プロジェクトを円滑に進めることです。例えば、メンバーに納期を理由にハードなスケジュールをお願いすることもあります。
また、利害が対立する者同士の仲介に入り、それぞれの立場にある人が納得できる終着点を提案することもあります。こうしたことからも、交渉力がある人やどのような立場にある人とも臆せずにコミュニケーションをとれる人が向いています。
また、論理的に物事を考える力がある人もプロジェクトマネージャーとしての適性が高いといえます。論理的に計画を立てることでプロジェクトがスムーズに進み、クライアントとのトラブルが起きにくくなります。
プロジェクトマネージャーはさまざまな立場にある人の間で板挟みになる機会やメンバーのミスの責任を負う機会もあるため、ストレスに耐性が高い人に向いています。
プロジェクトマネージャーに向いていない人
プロジェクトマネージャーは自身の専門分野に関する知識や技術を活かして働きたい人には向いていないことが多いです。
プロジェクトマネージャーの主な業務は各担当者に作業を割り振り、進捗状況の確認を行ったり、クライアントとメンバーの間を取り持ったりすることです。このため、スキルを活かして案件に直接携わりたい人や、案件をこなしてスキルアップを目指したい人には業務内容と自身との希望にミスマッチを感じるかもしれません。
また、人前で話すことが苦手な人や他者の揉め事を仲介するのが不得意な人、周囲をまとめるのが苦手な人にとって、プロジェクトマネージャーの仕事はストレスが大きいかもしれません。
4.プロジェクトマネージャーがしんどいって本当?
ラクな仕事はほとんどなく、どの仕事に従事したとしてもしんどいと感じることはあると思います。プロジェクトマネージャーも例外ではなく、仕事をしている中で「しんどい」「辞めたい」と思うシーンはあるかもしれません。
プロジェクトマネージャーとして働く人の中には責任の重さにしんどさを感じる人が多いといわれています。プロジェクトを進めていると想定外のトラブルの発生も珍しくないので、無事に完遂できるかという不安を抱えながらの業務になることもあります。
また、プロジェクトマネージャーは各方面と交渉することが求められるため、交渉がうまくいかない場合や提案を納得してもらえない場合にはしんどさを感じることもあるかもしれません。
5.プロジェクトマネージャーの求人
プロジェクトマネージャーの求人は正社員やフリーランスの求人があります。
エンジニア・技術職の求人を扱う求人サイトにおいてもプロジェクトマネージャーの求人を見つけられます。
プロジェクトマネージャーの求人の多くがリーダー候補での募集となっており、高いスキルやマネジメント経験を条件とするような求人も多いです。
また、プロジェクトマネージャーの求人の中には、フルリモート可の求人も少なくありません。
プロジェクトマネージャー(PM)の求人はこちらから見れます。
6.プロジェクトマネージャーの年収事情
プロジェクトマネージャーに転身を検討している人の中には、年収アップを主な動機とする人も多いと思います。
プロジェクトマネージャーは高度なスキルや豊富な経験が求められるだけでなく、管理職的な立場であることから年収は高い傾向にあります。
プロジェクトマネージャーの年収事情について、以下5つの観点から解説します。
プロジェクトマネージャーの平均年収
外資系プロジェクトマネージャーの年収
フリーランスのプロジェクトマネージャーの年収
プロジェクトマネージャーの手当
プロジェクトマネージャーは年収1000万円を超えられるのか
それぞれ確認していきましょう。
プロジェクトマネージャーの平均年収
経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、プロジェクトマネージャーの平均年収は891.5万円です。
IT関係の職業の平均年収は500~600万円前後のものも多いことからも、プロジェクトマネージャーの平均年収は他の職業と比べて高いといえます。
なお、同調査におけるプロジェクトマネージャーの平均年収はコンサルタントの928.5万円に次いで高くなっています。
ただし、平均年収はあくまでも平均であり、在籍している企業や自身の経験、スキルなどによっても変わってきます。
外資系プロジェクトマネージャーの年収
外資系企業の中には日系企業よりも従業員の平均年収が高い企業が多くあります。プロジェクトマネージャーとして高い年収を得たい人は、外資系企業で働くことを検討してみてもよいかもしれません。
外資系企業のプロジェクトマネージャーと一括りにしても年収はさまざまですが、求人の中には2,000万円や3,000万円を大きく超える求人も多々あります。また、最低年収を800万円に設定している企業も多いので、入社当初から高い年収を見込めます。
Glassdoorによると、プロジェクトマネージャーの年収は約1,442万円〜2,562万円とされており、これは日本のプロジェクトマネージャーの年収の約2〜3倍で、非常に幅広い範囲となっています。
なお、プロジェクトマネージャーとして外資系企業で働く場合、語学力が求められるかどうかは企業によって異なります。
フリーランスのプロジェクトマネージャーの年収
プロジェクトマネージャーはフリーランスとの相性がよく、スキルや実績がある人であればフリーランスとして身を立てることも可能です。
フリーランスは仕事量や携わるプロジェクトによって年収が異なるので、年収について一概にはいえません。
参考までに、フリーランスのエンジニアを対象にした求人サイトであるフリーランスボードでのプロジェクトマネージャー(PM)では、平均月額単価が83.9万円であり、年収換算すると約1,007万円です。
プロジェクトマネージャーの手当
プロジェクトマネージャーとして給与をアップしたい人には、IPAのプロジェクトマネージャ試験 (PM)の取得がおすすめです。
この資格を保有していると、企業によっては資格手当として毎月の給与に1〜2万円上乗せしてもらえます。月に1万円の資格手当が支給されれば、年間12万円も給与がアップするので余剰資金を十分に増やせます。
ただし、プロジェクトマネージャ試験 (PM)に合格しているからといって、すべての企業で資格手当の支給が行われるわけではありません。気になる方は入社予定の企業や応募予定の企業に聞いてみてください。
プロジェクトマネージャーは年収1000万円を超えられるのか
前述のように、プロジェクトマネージャーの平均年収は800万円を超えており、他の職業と比べても高いです。平均年収には勤めてまもない人の年収も含まれているため、経験豊富なプロジェクトマネージャーの中にはより多くの年収を得ている人が多いと考えられます。
高度なスキル、豊富な経験、語学力がある人であれば、プロジェクトマネージャーとして1000万円以上の年収を得ることも可能です。
また、プロジェクトマネージャーとして高い年収を得たい人は、従業員の平均年収が高い大手企業やスキル次第では年収が青天井のフリーランスを検討してみてください。
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7.まとめ
IT技術が進化し、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化している昨今、プロジェクトマネージャーは将来性がある職業といえます。プロジェクトマネージャーの需要が数年のうちに大幅に下がるようなことはあまり考えられません。
こうしたことからも、プロジェクトマネージャーに転身すれば、安定的な収入を期待できます。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトにおける責任を負う立場にあり、仕事内容はハードです。その分やりがいを感じやすく、IT業界の中でも高い年収を得られる見込みがあります。
プロジェクトマネージャーには豊富な経験や高度なスキルが求められるため、業界未経験でなれるケースはほとんどないといえるでしょう。プロジェクトマネージャーを目指す人は自身のスキルを高め、マネジメント経験を積み、転身の機会をうかがってみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。