Pythonの開発環境となるテキストエディタやIDEの選択は、開発効率や学習の進行に影響を与える要素です。ほとんどのテキストエディタは基本的な編集機能が備わっていますが、日本語に対応しているのか、料金はかかるのかなど、選び方のポイントがいくつかあります。本記事では、Python開発におけるテキストエディタとIDEの使い分けや選び方のポイント、現役エンジニアから初心者におすすめのテキストエディタを紹介します。本記事を最後まで読むことで、自分にあった最適なPython開発環境を構築できるでしょう。
目次
1.Pythonの開発でのテキストエディタとIDEの使い分け
Pythonの開発に使用できるソフトウェアは軽量なテキストエディタと多機能なIDEがあります。それぞれ特徴が異なるため、目的に応じて使い分ける必要があります。ここではそれぞれの使い分け方について解説します。
普段のコーディングはテキストエディタ
テキストエディタとは、プログラミングのコード記述や執筆に使用されるソフトウェアのことです。文字の編集に特化しており、.txtの拡張子ファイルをはじめ、プログラミング言語のソースコードや設定ファイルを保存できます。
テキストファイルを編集するためのさまざまな機能を備えており、ファイルの新規作成や保存、編集、検索、置換が可能です。
テキストエディタによっては、文字列の自動補完やシンタックスハイライトなどの便利な機能が搭載されています。また、プラグインで機能を追加できるエディタも存在します。
Pythonの開発におけるテキストエディタは、普段のコーディング作業を中心に使用するケースが多いでしょう。テキストエディタは機能がシンプルな分、容量が少なく、コーディングに適しているのが特徴であるためです。
ファイル管理やプログラム実行はIDE
IDE(統合開発環境)とは、アプリケーション構築に必要な複数の開発者用ツールを1つのGUIで使用できるようにまとめたソフトウェアのことです。コーディングをはじめ、デバッグ、コンパイル、テスト、バージョン管理などの開発作業をIDE1つで完結できます。
複数のツールに切り替える必要がないため、効率的に作業ができますが、容量が大きいためパソコンのメモリやCPUの負担は多いです。
テキストエディタにもある機能に加えて、自動コード生成機能や文法エラーの検出、リファクタリングなどPythonの開発に役立つ機能を搭載しています。
これらの機能を搭載しているIDEは、プログラムファイルの管理やプログラムの実行が効率的に行えます。エディタを含めPythonの開発に必要な機能を統合したソフトウェアであるため、複雑な操作を求める場合に適しています。
2.PythonのエディタやIDEを選ぶポイント
開発効率を上げるためや、プログラミング初心者の学習進行をスムーズにするために、テキストエディタとIDEを選ぶのは大切です。ここでは、テキストエディタやIDEを選ぶポイントについて解説します。
日本語対応している
ソフトウェアによっては、英語圏で開発されたことが理由で、日本語に対応していない場合もあります。そのため、日本語に対応しているかどうか確認しておきましょう。
英語でも使用しやすいものもありますが、チームで開発を進める上で、日本語を使用できるかどうかは効率を上げるために大きなポイントです。
コード内でのコメントやドキュメントを日本語で書くことができるため、理解がしやすくなるなどのメリットがあります。もし、日本語に対応していない場合はファイル名が制限されるケースもあるため注意が必要です。
標準では対応していなくても、拡張機能やプラグインで追加すれば使用できるものもあるため、事前に確認しておきましょう。
利用者数が多い
Pythonの開発で使用するソフトウェアを選ぶときに、利用者の多さを確認しておくのは大切です。利用者が多ければ多いほど、そのソフトウェアの情報量は多いためです。
利用者が多いソフトウェアは、それだけ多くの人に受け入れられており、操作性や機能性、安定性が高いことが考えられます。また、利用者が多いソフトウェアでは、拡張機能をはじめとした開発者にとって便利な機能が追加されることが増える傾向にあります。
不具合の修正やアップデートも活発に行われるため、利用者数の多さもPythonの開発環境を選ぶ上で重要です。
価格が適正
Pythonの開発で使用するテキストエディタやIDEは、無料と有料のものがあります。価格が適正であるかどうかは、他のソフトウェアの機能や価格を比較して確認しましょう。
無料のテキストエディタでは、Visual Studio Code(VS Code)やAtomなどが高い人気を誇っています。これらは無料でありながら軽量で拡張性が高く、Gitとの統合やデバッグ機能などを備えています。
有料のテキストエディタやIDEでは、Sublime TextやPyCharmなどが人気です。複数ウィンドウ編集や、正規表現による検索と置換、プラグイン開発用のPythonAPIなど無料のソフトウェアよりも高度な機能が搭載されています。しかし、個人ライセンスやチームライセンスに応じた費用が発生します。
選ぶ際には、自分のプロジェクトに必要な機能を網羅するソフトウェアの相場を調べることや、有料ソフトでも機能と価格が釣り合っているものを選ぶのが大切です。
ドキュメントやサポートが充実している
使用するソフトウェアのドキュメントやサポートが充実していることは、開発の問題解決に役立つでしょう。ソフトウェアによっては、解説を始めとしたドキュメントが豊富なものがあります。
無料のテキストエディタにはサポートがついていないことがほとんどですが、オンラインマニュアルがあったり、ユーザー同士のコミュニティがあったりします。疑問点があったときに調べやすかったり、誰かに相談できたりするのがメリットです。
有料の場合は、サポートを受けられるケースが多いため安心です。費用だけで選ばずに、サポート体制まで確認しておくことが重要です。
必要な機能がある
テキストエディタは、基本的なテキスト編集機能やプログラミングを支援するための機能があります。例えば、下記のような機能です。
機能 | 内容 |
---|---|
コード補完 | 変数名や関数名を自動で補完する |
シンタックスハイライト | コードの可読性を向上させ、エラーの発見を容易にする |
バージョン管理システムの統合 | Gitなどのバージョン管理システムとの統合ができる。チーム開発のバックアップとして役立つ |
ファイル管理やプロジェクト管理 | ファイル間の素早い切り替えや検索ができる。複数のプロジェクトを同時に扱う際に有用的 |
デバッグ機能 | コードのバグを特定し、修正する過程をサポートする |
これらの機能は、プログラミングをする上で開発者の作業効率や品質向上のサポートをします。ソフトウェアによってはこれらの必要な機能が搭載されていない可能性もあるため、事前に確認が必要です。
また、編集機能が十分なのか、開発に必要な機能があるかも確認しましょう。標準で対応していなくても、ライブラリや拡張機能で機能を追加できることもあります。
使いやすさ
開発の効率を上げるために、使いやすさは重要です。使いやすさとは、直感的なUI、シンプルで理解しやすいメニュー構成など、開発中にストレスなく作業できる環境を指します。
特にプログラミング初心者や、効率的な開発を求めるエンジニアにとって、複雑な設定や操作に時間を費やすことなく作業に集中できる環境が理想的です。
また、既に使っている他のツールと操作性が似ているものを選ぶのもいいでしょう。
3.Pythonでおすすめのテキストエディタ8選
Pythonでの開発を始めるために、環境構築を始めるならまずはテキストエディタやIDEを選びましょう。ここでは、Pythonを扱うエンジニアや初心者におすすめのテキストエディタとIDEを紹介します。
Visual Studio Code|シェア率トップ
Visual Studio Codeは、マイクロソフト社が2015年にリリースしたオープンソースソフトウェアです。VSCodeという略称でも呼ばれています。
世界中で非常に人気のソフトウェアで、軽量設計と高度な機能性で開発者をサポートします。
コードの編集からデバッグ、バージョン管理まで開発のあらゆる工程をサポートするための機能を搭載しているのが魅力的です。豊富な拡張機能から、ほぼ全てのプログラミング言語での開発が可能です。
インテリセンスによるスマートなコード補完や、組み込みのGitサポート、強力なデバッグツールによってコーディングの効率を大幅に向上させます。Visual Studio Live Share機能を使えば、リアルタイムでのコード共有やプログラミングが可能です。
名称 | Visual Studio Code(ビジュアルスタジオコード) |
開発者 | マイクロソフト社 |
開発年/Python開発者内シェア | 2015年/73.6%(1位) |
対応言語 | C++/C#/Java/JavaScript/Perl/PHP/Python/Rubyなど |
日本語対応 | 拡張機能より日本語化が可能 |
価格 | 無料 |
対応OS | Windows/macOS/Linux |
公式サイト |
Notepad++|シンプルで使いやすい
Notepad++は、操作性がとてもメモ帳ににているのが特徴のWindows専用テキストエディタです。シンプルな作りであるため非常に軽量ですが、プログラミング言語のシンタックスハイライトやコード折りたたみ、正規表現を使った検索や置換など開発者が必要とする機能を備えています。
また、複数のドキュメントをタブで開くことができるため、プロジェクト内のファイル間の作業がスムーズです。プラグインを導入することで、Gitとの統合やFTPクライアントなど追加機能を簡単に導入できます。
軽量で使いやすいテキストエディタを求めている人におすすめです。
名称 | Notepad++(ノートパッドプラスプラス) |
開発者 | 侯今吾 氏 |
開発年/シェア | 2003年/23.9%(4位) |
対応言語 | C++/C#/Java/JavaScript/Perl/PHP/Python/Rubyなど |
日本語対応 | ◎ |
価格 | 無料 |
対応OS | Windows |
公式サイト |
PyCharm|Python特化のIDE
PyCharmは、Pythonに特化したIDEで無料版と有料版が用意されています。無料版でも、デバッグやリファクタリング、コードインスペクションなど簡単な開発であれば十分な機能が備わっています。
Python特化型のPyCharmはPythonのWeb開発フレームワークのサポートが充実しています。具体的にはDjangoやFlask、Pyramidなどです。
Gitにも対応しており、GUI上から簡単にバージョン管理が行えるのも魅力的です。
名称 | PyCharm(パイチャーム) |
開発者 | JetBrains社 |
開発年/シェア | 2010年/15.1%(7位) |
対応言語 | Python/JavaScript/HTML/XHTML/CSS |
日本語対応 | 日本語化プラグインをインストールで可能 |
価格 | Community版:無料 Professional版:個人1年目 14,157円(税抜)ほか |
対応OS | Windows/macOS/Linux |
公式サイト |
Jupyter Lab|ブラウザで使用できる
Jupyter Labは、ブラウザで使用できるテキストエディタです。プログラムの対話型実行環境として利用されており、データ分析や機械学習におすすめです。
対話型実行環境では、コードを1行ずつ書いてその度実行し、その結果をすぐに確認できるのが特徴で、初心者でもすぐにはじめられるというメリットがあります。
ディープラーニング用のライブラリなどさまざまなライブラリを動作させることができ、複雑なデータ分析の結果を3Dグラフなど視覚的にわかりやすく表現できます。
名称 | Jupyter Lab(ジュピターラボ) |
開発者 | Project Jupyter |
開発年/シェア | 2018年/12.8%(8位) |
対応言語 | Python/R言語/Julia/Scalaをはじめ、40以上 |
日本語対応 | 日本語パッケージをインストールで可能 |
価格 | 無料 |
対応OS | Windows/macOS/Linux |
公式サイト |
Sublime Text|洗練されたUI
Sublime Textは、 複数行編集や正規表現による検索や置換、プラグイン開発用のPython APIなどの優れた機能をもつテキストエディタです。
多様な追加機能があり、IDEにも変換できる軽量のエディタとして注目を浴びています。UIが洗練されており、1クリックで新規ファイルを作成できたり、指定の行に素早くジャンプできたりと、開発作業をサポートするための機能が充実しています。
高度なカスタマイズ性と拡張性を求める経験豊富な開発者や、直感的な操作性を重視するプログラミング初心者まで幅広い人におすすめです。
名称 | Sublime Text(サブライムテキスト) |
開発者 | Jon Skinner氏 |
開発年/シェア | 2008年/10.9%(10位) |
対応言語 | C++/C#/Java/JavaScript/Perl/PHP/Python/Rubyなど |
日本語対応 | 日本語化パッケージをインストールで可能 |
価格 | 99ドル |
対応OS | Windows/macOS/Linux |
公式サイト |
Emacs|開発者好みに育てるテキストエディタ
Emacsは、高度にカスタマイズが可能で拡張性に富んだテキストエディタです。Emacs Lispという独自のプログラミング言語を使用し、ほぼ無限に近い方法でテキストエディタを拡張できる点が特徴です。
そのため、単なるテキストエディタを超えて、ユーザーニーズに応じるさまざまなアプリケーションを統合できるプラットフォームともいえるでしょう。
他のテキストエディタやIDEでは実現できないような、個人の必要な機能を追加することや改善が可能です。
複雑な設定やLisp言語の学習が必要になるため、初心者にはハードルが高いかもしれませんが、中級から上級の開発者はEmacsの柔軟性とパワフルな機能を魅力的に感じることでしょう。
名称 | Emacs(イーマックス) |
開発者 | リチャード・ストールマン氏 |
開発年/シェア | 1976年/4.2%(20位) |
対応言語 | プログラミング言語全般 |
日本語対応 | 日本語化パッチファイルをインストールで可能 |
価格 | 無料 |
対応OS | GNU/Linux/Windows/macOS/BSD |
公式サイト |
PyScripter|Python特化のWindows用IDE
PyScripterは、Pythonに特化した軽量で高速なWindows用のIDEです。デバッグ機能やToDo管理が行え、ファイルブラウザ機能も使用可能です。
インタラクティブなPythonのインタープリタを通じてリアルタイムでのコードテストが可能で、デバッグ機能がとても豊富です。この機能によって、コードの問題点を迅速に特定し、修正が可能になります。
また、カスタマイズ性の高いUIや外部ツールの統合機能によって、開発環境を個人のニーズに合わせて最適化ができます。価格も無料であるため、Python初心者におすすめのIDEです。
名称 | PyScripter(パイスクリプター) |
開発者 | Kiriakos Vlahos氏 |
開発年/シェア | 2005年 |
対応言語 | Python |
日本語対応 | ◎ |
価格 | 無料 |
対応OS | Windows |
公式サイト |
Anaconda|機械学習に特化した統合パッケージ
Anacondaは、Python開発の統合パッケージで、データサイエンスと機械学習に特化しているのが特徴です。テキストエディタやIDEという位置付けよりかは、データ分析や科学計算に必要なライブラリやツールを一元的に提供するプラットフォームです。
Jupyter Labなどの人気のIDEが含まれており、これらを使用してコードの記述やデータ分析を行います。
複雑なライブラリの依存関係の管理をAnacondaが自動で行い、さまざまなパッケージを個別にインストールする手間を省けます。Anacondaが1つあれば、Python開発に必要な開発環境が全て整うのが魅力的です。
名称 | Anaconda(アナコンダ) |
開発者 | Anaconda, Inc. |
開発年/シェア | 2012年/1,800万以上ユーザー |
対応言語 | Python |
日本語対応 | 不可 |
価格 | FREE:無料 STARTER:15ドル PRO:50ドル ENTERPRISE:Custom |
対応OS | Windows/macOS/Linux |
公式サイト |
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4.まとめ
今回は、Pythonの学習をはじめたばかりの初心者や効率的なコーディング環境を求めている現役エンジニアに向けて、Pythonの開発でおすすめのテキストエディタとIDEを紹介しました。
開発工程や学習において、いかに効率的でスムーズに進められる環境を整えるかは重要なポイントです。Python初心者には、ドキュメントやサポートが充実している利用者数が多いVisual Studio Codeや、直感的な操作ができるSublime Textがおすすめです。現役エンジニアで高いカスタマイズ性や拡張性を求めるなら、Emacsがおすすめです。
ぜひ、本記事を参考に最適なPythonのエディタを選んでみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。