React.jsはJavaScriptライブラリの1つです。Webサービスにおいて世界的に人気なライブラリで、コンポーネント指向であることから効率的なWebアプリケーション開発が可能です。
今回は、React.jsとは何かや特徴、React.jsでできることや基本的な使い方について紹介します。これからモダンなWebアプリ開発をしてみたいというプログラミング初心者や、JavaScriptのスキルを活かしてフロントエンド開発に挑戦したいエンジニアはぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1.React.jsとは?
React.jsとは、JavaScriptのライブラリの1つです。Reactとも呼ばれています。Meta社(旧Facebook社)が開発したライブラリであり、Webサイト上のUIパーツを構築するために作られました。
Reactはコンポーネント指向を採用しており、一度作成したコンポーネントは再利用可能であるため繰り返し同じコードを書く必要がなくなります。これによって開発が効率的になる効果があります。
2024年度のstack overflow調査によると、Reactは人気のフレームワーク・ライブラリ2位を記録しています。ここでは注目を集めているReactが使用されている理由やどのような企業がReactを使用しているのかを解説します。
React.jsが使用されている理由
多くのエンジニアがReactを使用している理由は以下のような理由が挙げられます。
初心者でも習得しやすい
再利用可能なコンポーネント
パフォーマンス向上
幅広い拡張性
Reactは、2011年に登場してからこれまで多くの開発者や世界中の企業で利用されており、多数の洗練されたコンポーネントが利用できます。そのため、プログラミング初心者でもそのコンポーネントを使用してUI作成が可能です。また、Reactは公式ドキュメントやトレーニングが提供されているため初心者でも学習に取り組みやすいライブラリです。
何よりもReactが利用されている理由で最も有力なのは、コンポーネント指向を採用していることです。コンポーネントを作成すればアプリケーションのどこでも再利用が可能です。同じコードを何度も書く必要がなくなり、開発が効率的に進みます。
また、Reactはパフォーマンス向上にも役立ちます。Reactには仮想DOMが搭載されており、ページのレンダリングが高速です。さらに、React Routerというルーティングライブラリを組み合わせればページの再読み込みなしにページをレンダリングできます。
このような理由で、Reactは人気のライブラリです。
多くの世界的企業がReact.jsを使用している
Reactは下記のような多くの世界的サービスで使用されています。
Facebook
Netflix
Instagram
Yahoo
Uber
上記のサービス全てがReactを使ってサービス全体を構築しているわけではありませんが、技術の一部としてReactが活用されています。オープンソースであるため、常に改良されており、品質も保たれているため最も勢いのあるライブラリといえるでしょう。
React.jsとNext.jsの違い
ReactはUIのレンダリングのみを行うライブラリで、Next.jsはReactをベースとしたアプリケーション全体の開発をサポートするフレームワークです。
Next.jsはReact上に構築されるため、Next.jsを使いこなすためには、Reactの仕組みを理解する必要があります。
2.React.jsの特徴
一般的には、Webアプリケーションのフロントエンドを構築するのに使用されており、高速レンダリングとパフォーマンス向上がReactの特徴です。Reactを使用すれば下記のようなアプリケーションを構築できます。
SNSアプリ
リアルタイムチャットアプリ
天気予報アプリ
音楽プレーヤーアプリ
ECアプリ
ToDo管理アプリ
ここでは、Reactの特徴について解説します。
宣言的なView
Reactは、UIの部品に対して「このような表示にする」というように宣言して設計するという方法をとっています。宣言的とは、部分的な更新のために全体を変更する必要がないということです。
データをどのように配置するかを定義するだけで、データの変更を検知して関連するコンポーネントをを更新するという特徴を持ちます。
このような特徴によって可読性の高いコードとなり、デバッグしやすいという利点も生まれます。
コンポーネントベース
Reactはコンポーネント指向のライブラリです。コンポーネントとは、構成要素や部品という意味を持ちます。コンポーネント指向とは、構成要素や部品を組み合わせて使うという考え方のことです。AngularやjQueryなどのフレームワークでは、プログラムの一部を変更したい場合でも全体を変更する必要があります。
しかしReactでは変更したい部分だけを限定的に変更すれば、コンポーネントごとに自動的に変更が更新されるため、これまでより格段にカスタマイズ性が向上しています。
大規模になってしまったJavaScriptのコードもReactを使用してコンポーネント化することによって、保守性を高め、開発工数を減らせます。
似たような考え方でオブジェクト指向がありますが、これらには違いがあります。
プログラムを部品として考える点に関してはどちらも同じですが、コンポーネントはオブジェクトと比べて焦点を当てている場所がより具体的です。どちらかが優れているということはなく、どちらもソフトウェア開発においては重要であり、プロジェクトの性質に応じて適切なアーキテクチャを選択することが重要です。
一度学習すれば、どこでも使える
Reactは、新しい機能を追加する場合に既存のプログラムを書き換えることなく改修が可能な特徴を持ちます。また、Webアプリケーション開発だけでなくReact Nativeを使用したモバイル向けアプリケーションの開発や、Node.jsを使用したHTMLレンダリングにも活用できます。
このような点から一度学習すれば、どこでも使えるという表現がされています。
3.React.jsを使用するメリット3つ
Reactの特徴を踏まえて、Reactを使用するメリットについて解説します。
可読性の高いコーディングが可能になる
Reactの「宣言的なView」や「コンポーネントベース」という特徴から、可読性の高いコーディングが可能です。
宣言的とは前章で解説した通り、部分的な更新のために全体を変更する必要がないということです。処理を順番に記述していく手続き型UIプログラミングに比べると、簡素な作りが可能で可読性の高いコーディングができます。
また、コンポーネントベースという特徴によってUI構築に必要な構成要素や部品をコンポーネント化し、これらをツリー上に組み合わせることで高機能なUIを構築可能です。
コンポーネントは自作できますが、サードベンダーが提供しているコンポーネントのパッケージを利用可能です。Google社やMeta社などが提供するパッケージを活用すれば、よりきれいなデザインのUIが簡単に構築できます。
Webアプリケーションの遅延を発生させにくい
Reactは高速DOM操作が可能なライブラリです。DOMをうまく操作することによって、下記のような処理が簡単に設定できます。
動的なWebサイトのスタイル変更
イベント設定
HTML要素の取得
振る舞いの変更
ユーザー操作時の処理
Reactは、DOMを仮想化した仮想DOMを使用することによって高速化が実現できており、大規模なWebアプリケーションでも遅延が発生しにくい点がメリットです。
リアクティブなUI構築ができる
リアクティブプログラミングとは、プログラミング手法の1つです。時間の経過とともに変化するデータの流れに変化があった場合に、その変化を検知して処理を行うのがリアクティブプログラミングです。
Reactではこの手法を応用しています。そのため、ユーザーの入力に対しリアルタイムで処理が行われ、常に最新の状態を保つUIが構築できます。
4.React.jsのデメリット2つ
Reactは、メリットだけではなくデメリットもあります。Reactを採用するためにはデメリットも踏まえておくべきです。ここではReactのデメリットについて解説します。
環境構築に時間を要する
Reactのプロジェクトを始めるためには、Node.jsやエディタの用意、Reactのセットアップが必要であるため環境構築に時間を要します。これらの環境構築は、React初心者にとってはハードルが高いように感じられるでしょう。
しかし、Create React AppのようなReactアプリケーションの開発環境を簡単にセットアップするためのコマンドを利用すれば、Reactの開発環境構築の手間を軽減できます。
一度環境構築すればそれ以降のプロジェクトでいつでも利用可能であるため、長期的に見るとそれほど大きなデメリットではありません。
アプリケーションによっては向き不向きがある
Reactは、高度できれいなデザインのUIを構築する開発に適しているライブラリです。しかし全てのアプリケーションにおいてReactが最適であるわけではありません。
Reactは高速処理を実現させるために仮想DOMでメモリにDOM構造を記憶させておく必要があるため、メモリの消費量が大量になります。これによって読み込みが遅くなることもあるため、Webページによって向き不向きが出てくるでしょう。
ユーザーの操作によって頻繁に表示が変更されるようなWebページには向いていますが、ほとんどユーザーが操作しないWebページには読み込み時間がかかってしまうため不向きです。
5.React.jsでできること4つ
ここまで、Reactの特徴やメリット・デメリットについて解説しました。では具体的にReactでは何ができるのでしょうか。ここではReactでできることについて解説します。
Webアプリ開発
Reactでは、仮想DOMを使用して動作します。Webページを更新する際にページ全体を更新するのではなく、変更があった箇所のみを更新する仕組みです。この仕組みによって高速な処理が実現しているため、Webアプリ開発において魅力的なメリットです。
また、サーバーとのやり取りを抑えることでも表示速度を向上させています。このような要素からReactは素早く動作するWebアプリ開発に向いています。
スマホアプリ開発
Reactは、React Nativeと組み合わせることによってスマホアプリ開発が可能です。1つの環境でiOSとAndroidOSの開発が可能になるため、スマホアプリ開発を効率的に行えます。
通常スマホアプリ開発ではiOSではSwift、AndroidOSではJavaやKotlinなどOSごとに別々の言語を使用して開発する必要があります。React Nativeを使用すればどちらのOSにも対応したネイティブアプリ開発が可能です。
また、Reactで開発したWebアプリのコードをiOS・AndroidOS向けに変換できるツールも存在するため、環境を1つに統合できるのも大きなメリットです。
VR開発
ReactではWeb上で構築するVR開発が可能です。VR開発は一般的にUnityなどのゲーム開発エンジンが使用されています。しかし、ReactにはVR開発に特化したReact 360というフレームワークが用意されているため、1から構築する必要がなく、簡単に3Dコンテンツを構築できます。
360°見渡せるショッピングサイトや3Dゲームなど、今までにはない新しいWebサイトも開発可能です。
総務省が発表している令和5年度情報通信白書によると、2022年における世界のメタバース市場は655.1億円で2030年には9365.7億ドルまで拡大すると予測されています。よってVR分野の需要は高く、今後も伸び続けていくことが予想されます。
そのためReactを習得すれば、将来性が高いVR開発ができるエンジニアとして活躍できるでしょう。
SPA開発
Reactは、ページ全体ではなく変更箇所のみ更新する処理を得意とするライブラリです。そのため、SPAの特性ととても相性がいいです。
SPAとは、シングルページアプリケーションの略称で、画面遷移を行わず単一のページを1つのアプリケーションとして動作させるアプリケーションのことです。負荷を低くしながら同一の外観を維持しやすいため、クロスプラットフォームに対応したアプリケーションやサイトで使用されています。
6.React.jsの使い方とは?
ここでは、Reactのセットアップからコンポーネントを使用するまでの基本的な使い方を紹介します。
Reactの開発環境の準備
Reactを使用するためには、Reactのセットアップが必要です。Create React Appというツールを使用すれば簡単にセットアップが可能になります。
Create React AppはReactの開発環境をセットアップするために公式から提供されているツールで、Webpack・Babel・ESLintなどの設定を自動的に行います。
Create React Appで環境構築するためには、Node.jsとnpmが必要です。またこれらをインストールするためには、Homebrewとnodebrewが必要であるため順にインストールします。
まずはHomebrewをインストールします。公式サイトにあるコマンドをターミナルに貼り付けて実行してください。インストールが完了したら、以下のコマンドを実行してHomebrewのバージョンを確認してみましょう。
brew -v |
Homebrewのバージョンが表示されていれば完了です。
次に、nodebrewをインストールするために以下のコマンドを実行します。
brew install nodebrew |
インストールが完了したらnodebrewのバージョンを確認しましょう。
nodebrew -v |
nodebrewのバージョンが表示されていれば完了です。
次に、Node.jsとnpmをインストールします。Create React Appに必要なNode.jsのバージョンは8.1.0以上であるため、これより新しいバージョンであれば問題ありません。
まず、Node.jsの公式サイトから最新のLTSバージョンをダウンロードします。ダウンロードしたインストーラを実行し、指示に従ってNode.jsとnpmをインストールします。インストールが完了したら、以下のコマンドでバージョンを確認してください。
node -v npm -v |
ここまででCreate React Appを使用する準備が整いました。以下のコマンドを実行してReactのセットアップを始めます。
npx create-react-app my-app cd my-app npm start |
これらのコマンドは、新規のReactアプリケーションをmy-appというディレクトリに作成して開発サーバーを起動します。ブラウザが自動的に開き、ローカルホストでアプリケーションが表示されます。
コンポーネントの作成
コンポーネントはUIの一部分をカプセル化した再利用可能な部品のことで、JavaScriptの関数やクラスとして定義できます。以下は、シンプルな関数コンポーネントの例です。
function Hello(Props){ return <h1>Hello, {Props.name}</h1>; } |
nameというPropを受け取り、Hello, {name}というメッセージを表示するh1要素を返却します。
コンポーネントの使用
コンポーネントが作成できれば、それを使用してUIを構築できます。HTMLタグのようにJSX内で使用可能です。先ほど作成したHelloコンポーネントを以下のように使用しましょう。
function App{ return ( <div> <Hello name=”Cahal”/> <Hello name=”Sara”/> <Hello name=”Edite”/> </div> ); } |
ここで作成したAppコンポーネントは、それぞれ異なるnameを持つ3つのHelloコンポーネントをレンダリングします。このように、コンポーネントの再利用と組み合わせによって複雑なUIを簡単に構築できます。
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7.まとめ
今回は、モダンなWebアプリ開発に興味があるプログラミング初心者や、JavaScriptのスキルを活かしてフロントエンド開発に挑戦したいエンジニアに向けてReactの概要や特徴について解説しました。
ReactはMeta社が開発したJavaScriptのライブラリの1つであり、世界的に注目を集めています。その特徴は宣言的なView・コンポーネントベース・一度学習すれば、どこでも使えるという点にあります。Reactを使用すればWebアプリやスマホアプリ開発だけでなく、VR開発も可能です。
現在の多種多様なWebサービスに最適なライブラリであるため、フロントエンドエンジニアとして市場価値を高めたい人におすすめです。本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。