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転職・退職時の健康保険の切り替え|状況別の手続き方法、よくある質問など解説

公開日:2024/10/18最終更新日:2024/10/22

健康保険に加入していることを示す保険証は転職時に新しく発行されるため、転職する多くの方がその手続きや流れについて気になることでしょう。


一般的には退職日をもって現在の健康保険は無効となり、その保険証は使用できなくなります。そのため退職後は新しい保険証を発行するまでの間、一時的に保険証が手元にない状態が発生します。どのように対応すべきでしょうか。また転職先での手続きや新しい保険証の受け取り時期はどのようになっているのでしょうか。


この記事では転職に伴う保険証の切り替えについて、退職後の保険証の取り扱い・転職先での手続きなども詳しく解説します。


転職時にはこれらの点をしっかりと把握し、スムーズに保険証の切り替えを行うことが大切です。


目次

1.健康保険とは?

健康保険とは、病気・ケガ・出産・死亡などの予期せぬ事態に備えるための公的な医療保険制度です。特に、通院時の医療費負担が3割(年齢や収入によっては2割の場合もあります)で済む制度は多く利用されています。


さらに、療養費・傷病手当金・出産時の出産手当金や出産育児一時金・亡くなった際の埋葬料なども受け取れる場合があります。


企業に勤務している場合、通常はその企業が加入している健康保険に自動的に加入することになります。企業が従業員の健康保険の手続きを一括して行うためです。


従業員は特別な手続きを行う必要がなく、非常に便利です。

しかし転職・退職すると状況が変わります。勤務先で加入していた健康保険の被保険者資格がなくなるため、自分自身で新しい健康保険の手続きを行う必要が生じます。


転職の場合、新しい勤務先での健康保険に加入する手続きが必要です。通常入社後に企業の人事部門が新しい健康保険の手続きをサポートしてくれますが、手続きが完了するまでに一定の期間がかかることがあります。


その間に病気や事故が発生すると健康保険の適用を受けることができず、高額な医療費を自己負担するリスクがあります。


このようなリスクを避けるためにも、転職や退職の際には健康保険の切り替え手続きを忘れずに行うことが大切です。新しい勤務先での手続きや退職後の保険の選択については事前にしっかりと確認し必要な書類や情報を揃えておくことで、スムーズに対応することができます。


万が一の際にも安心して医療を受けられるよう準備を整えておくことが求められます。

2.転職時には健康保険証(被保険者証)の返却が必要?

転職などで退職するとこれまで加入していた勤務先の健康保険の被保険者資格がなくなり、退職日の翌日から健康保険証が使えなくなります。


資格を喪失した健康保険証は、速やかに企業に返却しなければなりません。被扶養者の分もすべて返却することに注意が必要です。


退職日当日に病院に行くなど使用期限ぎりぎりまで利用する予定がある場合は、事前に会社に相談しておきましょう。


もし返却すべき健康保険証を紛失した場合は「健康保険被保険者証回収不能届」を資格喪失届と一緒に提出する必要がありますので、注意しましょう。

3.転職の際に空白期間がない場合の健康保険手続き方法

退職後すぐに次の会社に転職する場合と退職後に離職期間が発生して被保険者ではない期間ができる場合では手続きの方法が異なります。この章では転職の際に空白期間がない場合の健康保険手続き方法について解説します。

健康保険証の返却について

退職後は健康保険証を会社に返却する必要があります。被扶養者の分も含めて全て返却しましょう。もし返却を忘れたり、退職日当日に病院に行くために使用する場合は事前に会社に相談しておくと安心です。


一般的には、後日郵送での返却も受け付けてくれます。

なお後日返却する場合でも、失効した健康保険証を使うことは避けましょう。

健康保険資格喪失証明書の取得

退職時には会社から「健康保険資格喪失証明書」をもらっておくと良いでしょう。国民健康保険に加入する際に必要になる場合があります。


また、まれに再就職先が加入している保険者でも必要となることがあります。この書類は退職時に会社から渡されることが多いです。

健康保険の再加入について

転職後の健康保険の再加入手続きは、基本的に新しい勤務先の担当者が行います。手続きが完了すると、健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)から新しい健康保険証が発行されます。


この健康保険証は会社経由で受け取るか、もしくは直接本人に送られます。

1〜2週間程度経っても新しい健康保険証が届かない場合は、転職先の担当者に確認しましょう。

4.転職の際に空白期間ができる場合の健康保険手続き方法

この章では離職期間がある場合の健康保険切り替え手続きの方法について説明します。

任意継続被保険者制度を利用する

任意継続被保険者制度は退職後も在職中と同じ健康保険の資格を維持できる制度で、退職前に2カ月以上被保険者であった場合には最長で2年間の利用が可能です。制度の利用には退職日の翌日から20日以内に手続きを行う必要があります(20日目が営業日でない場合は、翌営業日まで延長されます)。


期間を過ぎると正当な理由がない限り受け付けてもらえなくなるため、手続きの期限には十分に注意が必要です。


手続き場所は加入していた健康保険によって異なります。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していた場合は居住地を管轄する協会けんぽ、その他の健康保険組合に加入していた場合はその健康保険組合で手続きを行います。


郵送による申請も可能ですので、保険証で保険者の名称を確認しておきましょう。

任意継続被保険者制度の概要

  • 手続きの期間: 退職の翌日から20日以内(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)

  • 手続きの場所: 加入していた健康保険組合または居住地域の社会保険事務所

  • 必要なもの: 健康保険任意継続被保険者資格取得申請書、1カ月分または2カ月分の保険料(口座振替も可能)、保険料はそれまでの負担額の2倍程度(ただし上限あり)

  • 備考: 被扶養者がいる場合は、住民票や収入証明書が必要になる場合があります。

任意継続被保険者制度のメリット

  • 在職中と同様の給付を受けられる(傷病手当金は受け取れない場合もあり)

  • 保険料の上限が設定されており、在職中の収入が多かった場合は保険料が安くなることがある

  • 健康保険未加入の状態を回避できる

  • 自己都合で中途脱退可能(他の保険への変更も可)

  • 条件を満たせば家族を扶養に入れることができ、家族全員に保険が適用される

任意継続被保険者制度のデメリット

  • 保険料は全額自己負担となって会社との折半がなくなるため、退職時の保険料の2倍支払いが必要

  • 利用期間が2年間に限られる

  • 2年間は保険料が原則変わらず、収入が減少しても同額の支払いが続く

  • 手続きの窓口が自宅から遠い可能性がある

国民健康保険に加入する

国民健康保険は、都道府県や市区町村(特別区も含む)が運営する保険制度です。業種ごとに組織された国民健康保険組合もありますが、再就職後の適用を想定してここでは除外します。


この保険の保険料は「前年の収入」「世帯の資産」「家族の人数」などを基に算出されます。計算方法は自治体によって異なり、同じ収入でも住んでいる地域によって保険料が変わる場合があります。


保険料の支払い方法も自治体によって異なるため、詳細はお住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口で確認してください。


手続きは退職日の翌日から原則として14日以内に行う必要がありますが、期限を過ぎても手続き自体は可能です。ただし、この場合も退職日の翌日までさかのぼって保険料を支払わなければなりません。

国民健康保険の概要

  • 手続きの期間: 退職日の翌日から14日以内

  • 手続きの場所: 住所地の市区町村役所の国民健康保険担当窓口

  • 必要なもの:健康保険の資格喪失証明書(健康保険被保険者喪失証明書・退職証明書・職票のいずれか1通)・各市町村が指定する届出書・印鑑

  • 保険料: 市区町村によって異なる

健康保険の「被扶養者」として加入していた家族がいる場合は、住民票や被扶養者の収入を証明する書類などが必要になる場合があります。

国民健康保険のメリット

  • 保険料の軽減・減免申請ができる場合があり、任意継続より保険料が安くなることもある

  • 各市区町村役所に窓口があり、自宅から近くで手続きできる

国民健康保険のデメリット

  • 所得が増えると保険料も高くなる

  • 傷病手当金や出産手当金の支給がない、または少ない

  • 家族を扶養に入れることができず、家族全員分の保険料が必要になる

  • 自家診察が保険の給付対象外になる(医師国保・歯科医師国保の場合)

家族の扶養に入る

あなたの年収が130万円未満で家族が加入している健康保険の被保険者の年収があなたの年収の2倍以上であれば、家族の健康保険の被扶養者として認められる可能性があります。この場合は家族が加入している健康保険の保険者(健康保険組合や全国健康保険協会)に確認してみると良いでしょう。


逆に年収が130万円以上に達した場合やパートタイムでの労働時間が正社員の4分の3以上になった場合などは、被扶養者として認められないことがあります。その場合は勤務先の健康保険に加入するか、自分自身で国民健康保険に加入する必要があります。

家族の扶養に入るメリット

  • 保険料の負担が不要になり、被保険者の支払い額も増えない

  • 所得税の負担がなくなり「配偶者控除」や「配偶者特別控除」により、被保険者の所得税や住民税が軽減される

家族の扶養に入るデメリット

  • 給与収入を一定額以下に制限する必要があり、働き方に制約が生じる

  • 将来的に受け取る年金が少なくなる可能性がある

5.転職で空白期間ができる場合の注意事項

この章では転職で空白期間ができる場合の注意事項について解説します。

健康保険未加入の場合、医療費は全額自己負担となる

たとえ短期間の空白期間であっても、健康保険には必ず加入する必要があります。通常は病院で健康保険の保険証を提示することで、受診料は3割負担に軽減されます。


しかし健康保険に加入していない場合で病気やけがで通院や入院が必要になった際には、医療費全額を自己負担しなければなりません。

病気やけがの発生は予測が難しいため転職先が決まるまでの期間が短くても、国民健康保険に加入するなどの対策を講じることが重要です。

保険料が遡って徴収されることがある

転職によって空白期間が生じた場合、健康保険に加入していなかった期間については最長で2年前まで遡って保険料が請求されることがあります。未加入期間中に発生した医療費については、遡って保険料を支払ったとしてもその期間の医療費は保険適用外となります。


自己負担のままであることを理解しておくことが重要です。

6.健康保険料の計算方法

この章では健康保険料の計算方法について解説します。

健康保険の保険料を給与から控除する方法

健康保険の保険料は、被保険者と事業者で折半する形で支払われます。一般的には給与が支給される際に健康保険の保険料が控除されるため、以下の計算式に基づいて毎月の給与から保険料が差し引かれます(または「標準報酬月額表」に従って控除額が算出されます)。

控除額 = 被保険者の標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

折半額に1円未満の端数がある場合、端数処理が行われます。

賞与から健康保険の保険料を控除する方法

賞与からも健康保険の保険料が控除されます。計算方法は給与と基本的に同じです。しかし「給与」が「賞与」となり、「標準報酬月額」が「標準賞与額」に変更される点に注意が必要です。


また給与のように「標準報酬月額表」や「健康保険・厚生年金保険料額表」を使用して控除額が計算されるわけではありません。被保険者ごとの標準賞与額に保険料率を掛けた額の1/2が賞与から控除されます。

標準賞与額:賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額

控除額 = 被保険者の標準賞与額 × 保険料率 ÷ 2

折半額に1円未満の端数がある場合は、端数処理(0.5円未満の場合は切り捨て、0.5円以上の場合は切り上げ)が行われます。

計算例

次の条件に基づいて健康保険の保険料を計算してみましょう。

  • 標準報酬月額(または標準賞与額)が44万円

  • 東京都内の会社

  • 年齢:40歳未満(40歳以上65歳未満は介護保険料も発生します)

  • 保険料率が9.81%の場合

控除額 = 440,000円(標準報酬月額) × 9.81%(保険料率) ÷ 2

= 43,164円 ÷ 2= 21,582円

7.1カ月以上健康保険証が届かない場合に考えられること

保険証の発行に際して日本年金機構事務センターでは、事業所から送付された資格取得届や被扶養者異動届などを確認します。ただし新しい入社者や退社者が多い時期には、審査に1カ月以上かかることもあります。


もし1カ月経っても保険証が届かない場合はお住まいの都道府県にある健康保険取扱窓口に電話して、進捗を確認することをお勧めします。

8.最終出社日から退職日の間に病院に行きたい場合

保険証は理想的には最終出社日に会社に返却するべきです。しかし例えば有休消化などで最終出社日と実際の退職日が異なりその期間中に病院に行く必要がある場合、保険証が手元にないと被保険者であることを証明できません。


このような状況に対処するためには以下の3つの方法がありますので、自分の状況に合った方法を選んで対応しましょう。

人事担当に保険証の返却方法を相談する

保険証の返却を郵送などで受け付けている企業もあります。最終出社日以降に保険証を使う可能性がある場合は人事担当者に相談して、返却方法について確認しておくと良いでしょう。

保険証の代わりになる書類を発行してもらう

退職日までに通院が必要な場合は健康保険被保険者資格証明書を発行してもらうと良いでしょう。この証明書は健康保険に加入していることを証明するもので、病院の窓口で提示すれば保険診療を受けることができます。


通院の必要が事前にわかっている場合は、事前に人事担当者に資格証明書の発行を依頼しておきましょう。

全額立て替えて後で請求する

健康保険を適用するには、通常保険医療機関の窓口で保険証を提示して診察を受けることが基本です。


ただし新しい保険証を受け取る前に病院にかかった場合は、医療費を全額自己負担で支払ってその後新しい保険証を受け取った後に「健康保険療養費支給申請書」(協会けんぽの場合の名称)を提出することで払い戻しが可能です。


払い戻される金額は実際に支払った医療費から、加入者が自己負担すべき部分を引いた額となります。

申請の際には診療明細書と領収書が必要ですので、これらの書類は大切に保管しておきましょう。

9.健康保険に関するよくある質問

この章では健康保険に関するよくある質問にお答えします。

Q1. 転職先の健康保険の給付内容を確認するポイントは?

健康保険の給付内容は、保険の種類によって異なります。特に注目すべきなのは「付加給付」の有無です。


健康保険の給付には法律で定められた「法定給付」と、法定給付に上乗せされる「付加給付」の2種類があります。たとえば70歳未満の人が医療機関を利用した際に3割の医療費負担で済むことはよく知られていますが、これは法定給付によるもので医療費の7割が健康保険から給付される仕組みです。


「付加給付」がある健康保険では法定給付に加えて支給額が増加したり、支給期間が延長されたりすることがあります。


例えば出産時に受け取れる「出産育児一時金」は、法定給付では1児につき40.8万円(産科医療補償制度に加入している医療機関での出産の場合は42万円)が支給されます。付加給付がある場合はさらに10万円が上乗せされることがあります。


また業務外の病気やケガで会社を休んで給与がもらえない場合に支給される「傷病手当金」は、通常1年間の月収平均の約2/3が1年6カ月間支給されますが、付加給付があると最長3年まで支給期間が延長される場合があります。

Q2. 国民健康保険の切り替え手続きに必要なものは?

「健康保険の資格喪失を証明する書類」(健康保険被保険者喪失証明書・退職証明書・離職票のいずれか1通)・「各市区町村で指定された届出書」・さらに「印鑑」が必要です。


また扶養家族がいる場合には、住民票や被扶養者の収入を証明する書類も必要です。詳細については、お住まいの市区町村の役所の国民健康保険担当窓口で事前に確認しておくことをお勧めします。

Q3. 国民健康保険の手続きが退職後14日を過ぎたらどうすればいい?

退職日まで遡って保険料を支払う必要がありますが、手続き自体は遅れても行うことができます。医療給付は手続きが完了した日から受けられるのが原則です。


Q2.で説明した「手続きに必要なもの」を事前に整えておきましょう。また国民健康保険税も加入日までさかのぼって一括で請求されるため、必要な資金も準備しておくことをおすすめします。

Q4. 転職先の保険証はいつもらえる?届く時期は?それまでどうすればいい?

転職先からの保険証は通常1〜2週間程度で受け取ることができますが、時期によっては遅れることがあります。


例えば4月のように新入社員の入社が集中する時期には、保険証の発行が増え手元に届くまでに時間がかかる場合があります。もし新しい保険証が発行される前に病院に行く予定がある場合は、会社に相談して「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらうようにしましょう。


これは保険証の代わりに利用できる書類です。

Q5. 失業中に病気やケガをした場合、保険は適用される?

退職後は国民健康保険や雇用保険の手当を活用することができます。仕事に就けない期間の長さによって受け取れる手当が異なったり、手当の受給期間を延長できることもあります。


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10.まとめ

会社の健康保険証は退職の翌日から無効となります。そのため、健康保険証の切り替え手続きを早めに行うことが非常に重要です。万が一の事態に備えて退職後に保険証が無効になることを理解し、迅速に対応する必要があります。


退職後にすぐ新しい職場に就く場合、新しい会社から保険証を受け取ることができます。新しい職場での保険証発行手続きが完了するまでの期間を考慮し、早めに新しい会社に保険加入手続きを依頼することが大切です。


これらの手続きを速やかに行うことで、退職後の保険証切り替えに関するトラブルを避けることができます。


保険証が届くまでの間に病院を利用する必要がある場合には一時的に自己負担で治療を受け、その後保険証が届いた際に保険適用分の還付を申請することも可能です。このように退職後の健康保険証の切り替えについては、早めに手続きを進めることが非常に重要です。


適切な手続きを行い新しい保険証を確保することで、安心して次のステップに進むことができます。本記事の情報を参考に、退職後の健康保険手続きをスムーズに進めましょう。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

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