QAエンジニア(Quality Assurance Engineer)とは開発されたソフトウェアの品質管理を主に担うエンジニアです。納品直前のフェーズでのテストに関わる機会が多いため、エンジニアとしての知識のみならず、ユーザーの立場でものを見る力も求められます。
近年、QAエンジニアのニーズは高まっています。また、将来性もあり、キャリアパスもいくつかあるため、転職を希望している人の中にはこの職業に着目している人もいます。
本記事では、QAエンジニアの概要を押さえた上で、QAエンジニアの仕事内容、この職業に向いている人の特徴、将来性などを確認していきましょう。
目次
1.QAエンジニアとは
QAエンジニアとはシステムやソフトウェアの開発時に品質保証(Quality Assurance)を担当するエンジニアです。開発した製品の仕様、不具合の有無、使いやすさなど品質全体の管理業務に携わります。確認を行う項目の洗い出し、テスト結果の分析、開発者へのフィードバックなどを行います。
QAエンジニアはISO9001などの品質管理に関する規格の知識も求められ、プロダクト開発において高い品質を保証する重要な役割です。
QAエンジニアとテストエンジニアの違い
QAエンジニアとテストエンジニアは同じものとしてみなされることもありますが、異なる役割を担っています。それぞれの大きな違いは以下になります。
テストエンジニア | ・開発中のサービスや製品が正常に動作するか確認する ・ソフトウェアが仕様どおりに動作すか、性能面で問題がないかなどを確認する |
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QAエンジニア | ・完成したサービスや製品に対して、動作テストや耐久テストを行う ・ユーザーが使用しても問題ないか確認する |
QAエンジニアは開発した製品の使用感や不具合の有無を確認します。動作テストは単体のプログラムで行うのではなく、完成したソフトウェア全体で行います。
つまり、完成品のテストになるので、ユーザー目線でのテストが求められます。QAエンジニアの行う主なテストとしては環境を構築して行う動作テストや耐久テスト、動作仕様テストが挙げられます。
さらに、テスト後は結果を分析してまとめ、対応が必要な問題の抽出も行います。
一方、テストエンジニアは関数同士の連携や動作を確認する結合テスト、変数の戻り値やクラスの動作を確認する単体テストが主になります。プログラムの動作、不具合の有無などのテストを実施します。
QAエンジニアの重要性
QAエンジニアはソフトウェア開発において欠かせない存在です。ソフトウェア開発では小さな欠陥を見逃したばかりに大きなトラブルに発展することもあります。製品に問題があった場合、取引先や顧客に迷惑がかかるだけでなく、企業の信用が低下するほか、返金、トラブル対応などの事態も生じます。
品質保証のプロであるQAエンジニアが品質の確認を行うことで、製品の欠陥によるトラブルを回避できます。
2.QAエンジニアの仕事内容
QAエンジニアは製品の品質を維持し、納品後のトラブルを回避するためにも重要な立場にありますが、どのような仕事内容なのでしょうか。
QAエンジニアの仕事内容は主に3つに分類できます。
品質保証テストの設計・計画
テストの実行・検証
テスト結果の分析・フィードバック
それぞれ確認していきましょう。
品質保証テストの設計と計画
QAエンジニアは製品やサービスの品質を保証する上で必要なテストの方式、内容を検討し、実施計画を立てます。
QAエンジニアが携わるテストはリリースを目前に控えた製品やサービスが多い傾向にあります。テストを滞りなく進めるためにもスケジュール管理能力も問われます。テストの計画が完成したら関係者に相談し、調整も行います。
テストの設計・計画に問題があると、正確なデータを収集できなかったり、再テストが必要になったりします。納期の遅れにもつながるので注意が必要です。
テストの実行と検証
システムの完成後、動作や品質のチェックを行います。ただし、企業によってはQAエンジニアはマネジメント的な立場にあり、実際のチェックは別の人が行います。こうした企業であっても責任者であることには変わりないため、確認の内容や仕様書に従っているかなど把握しておく必要があります。
テストの実行後、結果を参照してシステムの品質の検証を行います。修正が必要な部分があった場合、QAエンジニアが一般的に対応します。
テスト結果の分析とフィードバック
QAエンジニアはテストで発見した不具合の数や内容を開発担当者に伝えます。開発担当者の中にはQAエンジニアによる改善策の提案を求める人もいますので、知識や提案力も必要です。
3.QAエンジニアがきついと言われる理由
QAエンジニアは業務がきついと言われることもあります。このように言われる理由として、以下の4つの要因が主に考えられます。
単純作業に飽きやすい
スケジュールがタイト
業務幅が広い(作業量が多い)
自己裁量権があまりない
それぞれ確認していきましょう。
単純作業に飽きやすい
QAエンジニアの主な役割は品質管理です。品質管理に関する業務は単純作業になりがちで、ルーチンワークにとらえられることもあります。
テスト計画の作成、テストスクリプトの確認、エビデンスの強化はどの案件でも同じようなものになりがちで、毎回同じような作業ばかりしていると思う人もいるでしょう。
しかし実際のところ、どの案件も異なりますし、それぞれのシステムに合った対応力が求められます。また、開発において不可欠なフェーズに携わりますので、やりがいを感じることもできます。
ただし、仕事に刺激を求める方や主体的に動きたい方は、物足りなさを少々感じることもあるかもしれません。
業務幅が広い(作業量が多い)
QAエンジニアはさまざまなテストに関わるため作業量が多く、覚えなければならないことも多いです。特に、大規模なシステム開発ではドキュメントの数が膨大になりがちですので負担を感じることもあるでしょう。
しかし、いずれの職業においてもさまざまな業務に携わりますし、作業量の多いプロジェクトに参加することもあります。
スケジュールがタイト
QAエンジニアは完成を目前とした段階でのテスト工程に関わることが多いです。このため、これまでのフェーズに遅れが生じた場合など、テストの段階で取り戻さなければならないこともあります。また、同様の事情により想定していた日数よりも少ない日数でテストを終えなければならないこともあります。
QAエンジニアはテストの実施よりも内容の評価を中心に担当するため、短期間で正確な処理が求められています。
自己裁量権があまりない
QAエンジニアは自己裁量権が少なく、自分の判断ではあまり動けません。QAエンジニアには大きな自己裁量権で動く機会や、プロジェクトにおいて重要な決断を強いられる機会はあまりないです。
このため、飛躍的に出世するケースも少なく、出世を目指す人にとってはものたりなさを感じがちです。
4.QAエンジニアに向いている人の特徴
QAエンジニアに向いている人にはどのような特徴があるのでしょうか。
QAエンジニアに向いている人の特徴は以下の5つです。
調べることが得意
ユーザーの立場から考えられる
人との関わりが苦手ではない
注意深い
複数の業務を並行してこなせる
それぞれ確認していきましょう。
調べることが得意
調べることが得意な方や調べることに苦手意識がない方は、QAエンジニアとして働いていてもストレスを感じにくいでしょう。
例えば、調べることが得意な人はバグを発見したら再現方法をすぐに調べる傾向にあります。再現性はプログラム修正に不可欠な情報ですので、自主的に調べられる人はそれだけで他の人よりも前進しているといえます。
ユーザーの立場から考えられる
QAエンジニアは最終段階でのテストに携わりますので、ユーザーに近い立場にあります。開発チームのメンバーやプロの視点でしかものを見れない方よりも、一般ユーザーの視点をもっている方が向いています。
QAエンジニアには不具合などだけではなく、使用感を判断する役割もあるので、ユーザー目線で考えることが求められます。
人との関わりが苦手ではない
エンジニアは技術職のため、人と関わる機会はあまりないと考える人もいます。しかし、エンジニアは人と関わったり、協力し合ったりするシーンが多いです。
QAエンジニアも同様で、周囲と協力したり、相手に正確に状況を伝えたりすることも求められます。また、スケジュールの調整では相手の意見を聞くだけでなく、交渉力が必要とされる場面もあります。
どのような立場の人とも抵抗なく接することができ、意見を折中できる方がQAエンジニアに向いています。
注意深い
QAエンジニアの業務で重要なのはバグを見逃さないことです。また、細かい部分にも目を向けて、一定のタイミングでのみ発生する不具合も発見しなければなりません。
集中力がある人や些細な変化にも気づく人はQAエンジニアとして活躍できる資質があるといえます。
複数の業務を並行してこなせる
QAエンジニアは複数の業務を並行してこなせる方、マルチタスクが得意な方が向いています。
システムは同時にさまざまなトラブルが発生することもあります。こうした状況では1つ解決してから、別の問題の対応を始めるというわけにはいきません。
迅速な対応が求められる事情や対応が遅れれば問題が深刻化する場合もあり得ます。
また、QAエンジニアの場合、テスト工程は設計から管理にわたります。複数の案件を抱えている場合、「案件Aは設計だ」「案件Bは管理だ」といったように、複数のことを常に把握していなければなりません。
5.QAエンジニアの将来性
QAエンジニアの将来性について結論を先に述べると、将来性がある職業といえます。
人間の営みでは数多くの製品やサービスが生み出されています。いずれの製品やサービスにも品質管理は不可欠ですし、ITが将来的にさらに発達しても品質管理が不要になるとは考えがたいです。むしろ、今後はさらなるIT社会になると見込まれているため、QAエンジニアの業務は増えると思われます。
QAエンジニアの基本業務の中でAIによって自動化される部分も出てくる可能性があるものの、人間が一切かかわらない状態になるとは考えられません。例えば、AIが将来的にさらに普及すれば、QAエンジニアの業務の一部はAIに取って代わるでしょう。しかしユーザー視点での提案や相談対応などはAIには対応がまだまだ難しく、QAエンジニアの役割であることはしばらくは変わらないはずです。
またQAエンジニアが求められる理由として、IT業界における人手不足も挙げられます。経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課の「IT人材育成の状況等について」によると、ITの社会における需要はさらに高まり、市場が拡大する一方、人材供給は2019年以降減少傾向にあり、2030年にかけてもこうした情報は改善されがたいと予想されています。
多くの企業がIT人材を必要としているので、品質管理を得意とするQAエンジニアを歓迎する企業も多いはずです。
QAエンジニアも時代に合わせて新しい技術を取得したり、これまでにない対応が求められたりすることもあるかもしれませんが、QAエンジニアという職業そのものの衰退は考えられません。
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6.まとめ
「QAエンジニアはきつい」「QAエンジニアはいらない」「QAエンジニアはやめとけ」と言われることもありますが、QAエンジニアは開発の品質保証において不可欠な存在であり、将来的にもこのことが大きく変わることはないでしょう。
また、単調な仕事も多いQAエンジニアですが、コツコツとした作業が得意な人や黙々と作業したい人はストレスも少なく、品質保証という重要な業務にやりがいを感じながら働けます。
ITやプログラミングに興味があり、バグの発見や細やかな作業が得意な方はQAエンジニアの仕事に充実感を抱ける可能性もあります。
また、キャリアパスもQAコンサルタントやQAマネージャーなど豊富にあるので、選択肢の1つにしてみることをおすすめします。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。