Fintech(フィンテック)はという言葉は、金融をはじめとしたさまざまな業界で広まっています。Fintechは今後も広く普及していくサービス・技術になると予想されるため、特徴やメリット・デメリットなどを把握しておくのがおすすめです。
本記事ではFintechの基本情報とメリット・デメリット、将来性や具体例などを紹介します。Fintechに興味がある方は、ぜひ詳細をご確認ください。
目次
1.Fintechとは
Fintechについて知るには、まず基本を押さえるのがコツです。以下では、Fintechの基本や市場規模、関連企業について解説します。
金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語
Fintechとは、「金融(Finance)」と「技術(Technology)」の2つの言葉を組み合わせた造語です。金融サービスとテクノロジーを結びつけて、革新的な取り組みを行うことを指します。例えば顧客体験の価値向上や、関連業務の効率化などがFintechに含まれます。
Fintechという言葉は、2000年代前半からアメリカで使用されていました。そのためFintechはアメリカにとっては、新しい言葉ではないことがわかります。しかし、Fintechの意味は変容していて、過去には金融機関に技術を提供するITベンダーのことを、Fintechと呼んでいたこともありました。
Fintechの市場規模
Fintechの市場規模は拡大傾向にあり、BCGとQEDインベスターズ共同調査によると、関連市場規模は2030年までに1兆5,000億ドルに成長すると予測されています。2021年時点で2,450億ドルもの市場規模がありますが、そこからさらに6倍もの成長を見せる可能性があると考えられています。
また、金融サービス産業の収益規模におけるフィンテック関連の割合は、2030年までに最大7%まで成長すると予測が立てられています。さらにアジア太平洋地域におけるフィンテック市場に注目すると、2030年までに年平均成長率(CAGR)は27%で成長し、将来的にはアメリカを超える世界最大の市場になると予測されています。中国、インド、インドネシアなどが成長を促すと考えられているため、これらの国でFintech関連の技術・サービスがどのような動きを見せるか注視されるでしょう。
大手Fintech企業
Fintechに関連する事業を展開している企業は多く、さまざまなテクノロジーを活用して存在感を高めています。大手企業も積極的にFintech市場に参加しているため、今後は競争によってテクノロジーの進化が加速していくことにも期待できるでしょう。
例えばFintechの大手企業には、以下のものが挙げられます。
PayPay株式会社
LINE Pay株式会社
楽天ペイメント株式会社
株式会社メルペイ
auペイメント株式会社
GMOペイメントゲートウェイ株式会社
freee株式会社
株式会社Custodiem
テックビューロ株式会社
ウェルスナビ株式会社 など
その他にも世界規模でみると、以下の企業もFintechの大手だと言えるでしょう。
FIS
Tata Consultancy Services Limited
NTTデータ
Fiserv
Cognizant Technology Solutions など
Fintechの最新動向を知りたいときなどには、大手企業の情報をチェックし、トレンドを把握するのが1つの方法となります。上記で紹介した企業以外にも、ベンチャーで注目を集めている会社もあります。
Fintechの将来性・課題
Fintechに関連するサービスやテクノロジーは、発展を続けています。
モバイル決済、オンライン融資、投資プラットフォームなどこれから新しい技術や最新のサービスが展開されることも予測できるため、将来性のある分野だと言えるでしょう。例えばAIやビッグデータなどのITテクノロジーと組み合わせて、新しい仕組みが構築される可能性があります。
AIを活用した不正検知システムや、ビッグデータ分析に基づくパーソナライズされた金融サービスなど、Fintechはより高度化・効率化していくと考えられます。
同じようにIT分野で新しい技術が生まれれば、それを利用したFintechが新たに浸透すると考えられます。例えば、ブロックチェーン技術の進化は、暗号資産や分散型金融(DeFi)の発展を促し、金融業界に新たなイノベーションをもたらす可能性があります。
高い将来性に期待できる一方で、Fintechには課題となる部分もあります。例えばFintechの技術発展に対して、法整備が追いついていない点が課題として挙げられます。具体的には、暗号資産の規制や、オンライン融資における貸金業法の適用など、法的な枠組みが未整備な部分が存在します。
法整備が停滞していると、新しいサービスの実現が遅れるなどのデメリットにつながるケースが懸念されます。
また、Fintech関係のサービスはサイバー攻撃の対象になり得るため、リスクに対する課題も考える必要があります。サイバー攻撃によって情報が漏洩したり、サービスがストップしたりすると、Fintechの信用に関わる可能性もあるでしょう。
そのため、Fintech企業はセキュリティ対策の強化や顧客情報の保護をする必要があります。
Fintechは金融サービスの利便性向上、コスト削減、金融包摂の促進など、社会に大きく貢献すると期待されています。Fintechの進化は、人々の生活をより豊かにし、社会の発展をより加速させるでしょう。
2.Fintechが広まった背景
Fintechがここまで広がった背景には、さまざまな要因があります。以下では、Fintechが広まった背景について解説します。
インターネットやスマートフォンなどの技術革新が進んだ
インターネットやスマートフォンなどの技術革新が急速に進んだことが、Fintechの普及につながっています。インターネットやスマートフォンが一般家庭に広まったことで、誰でも簡単に金融サービスを利用できるようになりました。結果的にFintechが身近なものになり、多くのユーザーを取り込む結果になっています。
中央集権型の仕組みが疑問視されている
2008年のリーマン・ショックによって、金融サービスを一部の投資銀行や証券会社に集中させる中央集権型の仕組みが疑問視されたことも、Fintechの普及に影響していると考えられます。
結果的にインターネットバンキングなどのオンライン金融サービスが普及し、そういった環境に慣れ親しんだ世代が、住宅ローンや資産運用などを行う年齢になっています。顧客ニーズとFintechの金融サービスがマッチすることが増えている点も、普及の背景にあると考えられます。
コロナ禍による非接触システムの需要拡大
コロナ禍によって世界では、非接触によるサービスの需要が一時的に高まりました。直接会って現金でのやりとりをするのではなく、オンライン決済やキャッシュレス決済による支払いが一般化し、Fintechの価値が向上した背景も関係していると言えるでしょう。
コロナ禍が収束したあとも、Fintechの利便性は変わらないため、システムを利用したサービスは普及を続けています。今後もFintech技術は発展し、より便利なシステムの構築を実現する可能性にも期待できるでしょう。
3.Fintechのメリット
Fintechを活用した仕組みには、さまざまなメリットがあります。以下では、Fintechの主なメリットについて解説します。
金融サービスにかかるコスト削減
Fintechを活用した技術は、金融サービスを動かすのに必要なコストを削減することにつながります。スマートフォンの普及によって、Eコマースを活用した決済サービスが簡単に利用できるため、運用におけるコスト削減を実現しています。また、Fintechを使った電子マネーによって送金にかかる手数料が無料になっている点も、コスト削減の一環だと言えるでしょう。
現金の取扱減少による安全面の向上
Fintechによって現金の取り扱い機会が減少することで、安全面が向上するメリットもあります。現金は盗難や紛失などによって失われるリスクがありますが、Fintechによる金融サービスで保存されたデータであれば、安全な状態で取引が可能です。
新興国や途上国でのサービスの普及
Fintechのサービスは、新興国や途上国でも普及しやすいというメリットがあります。インターネットとスマートフォンなどのデバイスがあれば、Fintechの金融サービスは簡単に利用できます。そのためインフラが整えやすく、新興国や途上国にも導入しやすい点が評価されています。
4.Fintechのデメリット
Fintechには多くのメリットがある一方で、デメリットになる部分もあります。以下では、Fintechのデメリットについて解説します。
インターネット環境などのインフラが必須
Fintechの各種サービスを活用するには、インターネット環境が必須です。インフラを最低限は整える必要があるため、環境次第ではすぐにサービスを導入できないケースも考えられます。日本国内ではインターネットを使うことが当たり前ですが、国によってはそれ自体が難しいこともあり得ます。
個人情報の漏洩などリスクがある
Fintechはデジタルのサービスであるため、個人情報の漏洩などのリスクに常に晒されています。サイバー攻撃などに対するリスクヘッジが求められる点は、Fintechの弱みであると言えます。
5.Fintechが活用されている具体例
Fintechは既に幅広い領域で、さまざまなシステムとして活用されています。以下では、Fintechが活用されている具体例を紹介します。
キャッシュレス決済
現金を使わずに支払いができるキャッシュレス決済は、日常に普及しているFintechサービスの1つです。バーコードやQRコードを使用した決済の他、バーチャルのクレジットカード(バーチャルカード)を使った買い物も普及しています。スーパーやコンビニなど、日用品を購入するシーンでもキャッシュレス決済が導入されているため、Fintechサービスのなかでも特に利用する機会が多いシステムになるでしょう。
オンライン決済
インターネット上で決済を完結させる仕組みも、Fintechが活用されている代表例です。スマートフォンやパソコンから簡単に購入ができるため、顧客側から見れば利便性が高まり、企業側から見ればチャネルの拡大などのメリットにつながっています。
暗号資産(仮想通貨)
今や世界規模で使用されている暗号資産(仮想通貨)にも、Fintechの技術が活用されています。既に暗号資産は一種の通貨として機能し、ビジネスだけでなく個人間の取引にも使用されているため、今後も普及していくと予想できるでしょう。
資産管理・投資・ロボアドバイザー
資産管理・投資・ロボアドバイザーなどの分野でも、Fintechの仕組みが利用されています。これらの分野はいわゆる資産運用や投資における分析ツール・サービスを指し、近年ではAIを導入して自動で資産運用をするパターンもあります。
クラウドファンディング
オンラインを通じて企画を立ち上げて支援金を募るクラウドファンディングも、Fintechサービスとして普及しています。新規事業の立ち上げなどに必要な予算を確保するのに、個人からの融資も利用できる方法として、近年注目を集めています。
セキュリティ関連
Fintechは金融取引におけるセキュリティ面でも、活用されている技術です。例えば不正ログインの防止など、インターネット上のセキュリティを担います。その他、生体認証などにもFintechのセキュリティシステムが活用されています。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、個人投資家と資金調達を行う企業を仲介するサービスです。銀行よりも手数料が安く、審査や返済関係のサポートなどを行ってくれるため、今後もFintechを使ったシステムとして普及する可能性があるでしょう。
保険
保険の領域においても、Fintechの仕組みが活用されています。スマートフォンから保険契約をしたり、AIを使った保険商品の提案をしたりといった形で、業界に貢献しています。保険分野でのFintechは、「Insurance(保険)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた「InsurTech(インシュアテック)」という造語が使われています。
送金
送金の手段としても、Fintechを使ったサービスは広く利用されています。例えば決済アプリを使って個人間で送金を行うことも容易なので、現金を使わない支払いがしやすくなるでしょう。
金融情報の提供
金融情報を提供するサービスも、Fintechの技術が利用されています。金融関係の情報量は多く、為替・株価・物価指数など、すべての情報を把握するのは簡単ではありません。このような金融情報を一括で確認したり、分析した内容を提供したりするサービスも注目されています。
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6.まとめ
Fintechは金融をはじめとしたさまざまな分野で、便利なシステムとして利用されています。キャッシュレス決済やオンライン決済などは既に生活の一部となり、個人にとっても企業にとっても欠かせないものとなっています。今後もFintech関連の技術は発展を続け、より需要の高い存在になると期待できるでしょう。
Fintechに関するシステム・サービスを開発するには、エンジニアの力が欠かせません。フリーランスエンジニア向けの案件・求人のなかにも、Fintechに関する仕事は多いです。例えば「フリーランスボード」を見ると、ウォレットアプリの開発エンジニアや、Fintechサービスの立ち上げにおけるフロントエンジニアなど、さまざまな案件・求人があります。
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本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。