VRをビジネスに活かすことはできるのか、もしくはVRで利益を上げることはできないかとお考えではありませんか。
VRの技術進歩は目覚ましく、すでに市場規模も拡大していることから、VRについての理解を深めておくことで、ビジネスチャンスを逃さずに済むようになるでしょう。
今回はVRに関する基礎知識、VRの最新情報や現状、VRの今後の展望や将来性、VRの問題点や普及しない理由についてお話しします。
目次
1.VRに関する基礎知識
はじめにVRに関する基礎知識について解説します。
VRとは
VRとは、Virtual Reality:仮想現実の略称であり、プログラムによって生成された仮想世界や仮想空間の中を、現実世界と同じような形で体験できる技術を指します。VRはゲームやエンターテイメント、もしくは現実世界の遠く離れた場所の空間を普段の視野に写し出してくれるため、平面のディスプレイよりも没入感に優れた体験をすることが大きな利点です。
VR・AR・MRの総称として、XR(Extended Reality)という言葉があり、XRは業界や業種問わず、様々な分野で成長が期待されています。またVRの発展系として、フルダイブ、完全没入型VRについても現実味を帯びてきました。
それぞれVR空間内でさらに高い没入感を得られるようになるため、現時点では想像できないようなゲーム及びコンテンツ、新しいエンターテイメントの生まれる可能性が増えていくでしょう。
ちなみにフルダイブ技術とは、仮想空間と五感を接続し、意識そのものを仮想空間内に入り込ませる技術を指します。現在のVR技術は視覚と聴覚のみですが、フルダイブ技術は触覚、味覚、嗅覚の五感を全て接続することで、より深い没入感が得られる特徴があります。
フルダイブ技術は現段階でまだ研究段階ではあるものの、触覚のフィードバック、電気的に味覚を再現する仕組みなども研究開発されていることから、近い未来に実現する技術と言えるでしょう。
ARとは
ARとは、Augmented Reality:拡張現実の略称であり、プログラムによって生成された映像や音楽を、現実世界に重ね合わせて表現できる技術を指します。ARはすでにスマートフォンなどでも利用されており、カメラで撮影するだけで現実世界に様々な情報を映し出すことが可能です。
例えば、スマートフォンアプリではポケモンGO、Ingressなど位置情報をもとにスマートフォンのディスプレイに様々な情報を表示し、ゲームとして楽しめるものが人気を集めています。その他にもスマホで利用できるGoogle Maps ARナビなど、スマートフォンに表示される現実世界に、道順などを示すオーバーレイ型ARなどもAR技術の便利な活用方法と言えるでしょう。
MRとは
MRとは、Mixed Reality:複合現実の略称であり、VRとARの両方を兼ね備えた技術を指します。ARに似ている部分もありますが、大きな違いはディスプレイ上に表示される現実世界の中に、仮想で作られた現実世界の物体を配置できること、そして複数人でも同じ物体を違う角度から共有できることと言えるでしょう。
参考:キヤノンMRシステム「MREAL」のご紹介【キヤノン公式】
例えば、上記の動画では、現実世界にあたかも本物の車が存在するかのような技術が紹介されています。ディスプレイを装着したそれぞれの方の位置情報や距離をシステム的に把握し、現実的には何もない箇所に車を存在させることができるということです。
MRの技術は後述する教育や研修の分野でも活用が進んでおり、普段なかなか体験できないような作業や業務、特殊な状況を作り出すことで実務経験に近い体験ができるようになります。
メタバースとは
メタバースとは、オンライン上にプログラムで構築された仮想空間を指します。メタバースの空間の中ではアバターという自分自身の分身を用いて、空間の中を自由に動き回ることが可能です。
日本においてもcluster(クラスター)というサービスが生まれており、個人だけでなく法人も仮想空間の中で様々なイベントを行ったり、遠く離れた人とコミュニケーションを取ったりしています。
また、オンライン交流型のゲームもメタバースと言えます。同じ時間に違う場所から集まったユーザー同士が一緒にゲームを楽しむことができるため、家にいながら世界中のユーザーと遊ぶことができるのです。
VR技術の進化によってさらに臨場感のある仕組みが生まれることで、まるで現実世界にいるかのような体験もできるようになっていくでしょう。
VRを利用するために何が必要なのか
VRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)
VR専用ハンドコントローラー
VR向けに作られたソフトウェア及びコンテンツ
VRのソフトウェアやコンテンツを実行できるパソコン
オンライン接続が必要な場合はインターネット回線
上記がVRを活用するために必要なものの一例です。簡易的なものであれば、スマートフォンをヘッドマウントディスプレイにできるゴーグルを購入することで、VRを体験することもできます。その他にもプレイステーションなどにおいて、専用のVRゴーグルとハンドコントローラーを購入することで、VRのゲームやコンテンツを楽しむことも可能です。
Meta Quest 3の場合はセットアップにスマートフォンが必要なものの、Wi-fiで接続すれば団体でもゲームやコンテンツを楽しめるため、デバイスを購入する場合は何が必要かを必ずチェックしましょう。
2.VRの最新情報や現状
次にVRの最新情報や現状について解説します。
Appleから「Vision Pro」が発表
Appleから「Vision Pro」の発売が発表されました。発売日は2024年以降とはなるものの、MetaやMicrosoftも含め、大手ベンダーのほとんどが参画していることからも、VR技術に注目や期待が集まっているのは間違いありません。
Googleに関してはGoogle EarthのVR版や世界中の美術館及び博物館の展示物を見れるコンテンツなどの提供が進んでいます。Appleも本格的に参入するとなれば、VR市場の成長やデバイスの普及も進むことが考えられるため、VRに関するビジネスチャンスが増えていく可能性が高まっていくでしょう。
MRに対応した「Meta Quest 3」が発売
Meta(旧Facebook)からはMRに対応した最新モデルとなるMeta Quest 3が2023年10月10日に発売されました。Meta Quest 3はゴーグル内のディスプレイに、ゴーグルの外側にある現実の風景が表示されるようになっており、周囲の状況を確認しながらコンテンツを楽しめるようになっています。
MR、すなわち拡張現実として、現実世界の空間に重ね合わせるように、いくつものブラウザを開いたり、動画を再生したりすることができるようになるため、既存のディスプレイのように場所を固定されることがないのが利点です。
今後はMRを利用したソフトウェアやサービスの開発が進むことも考えられ、さらなる新しい体験が生まれることが期待できるでしょう。
高速遠隔通信「5G」を活用した遠隔操作システム
建設業界においては、建築機械を遠隔で操作できるシステムの開発が進んでいます。コマツ、キャタピラー、日立建機などの主要ベンダーが注力しており、建設業界における人手不足の解消の一助として期待されている技術です。
高速遠隔通信「5G」を活用することで、遠く離れた場所にある遠隔操作用のコクピットから、現地の映像を映し、リアルタイムで建築機械を操作できるため、現場に移動する時間を削減しながら、作業の効率化ができるのが大きな利点と言えるでしょう。
参考:コマツ、建機を5G経由で遠隔操作するシステム量産化-日本経済新聞
ビジネス分野でのVR技術の発展と活用
Metaの提供する共同編集ツールであるWorkplaceにおいて、Microsoft 365やTeamsが利用できるようになりました。MicrosoftではTeamsをメタバースに拡張できるMeshも提供されており、メタバース空間内でアバターを利用して会議や他の人とのコミュニケーションができる機能も備えています。
メタバース空間においては時間や距離の制約を受けることなくコミュニケーションができるのも魅力であり、新しいコミュニケーションの形として定着する可能性もあるでしょう。後述する教育や研修に関するプログラム及びソフトウェアと組み合わせることで、共同作業や技術の継承なども実現し、属人化の解消や業務標準化・業務平準化の効果も期待できます。
医療分野や教育分野に関するVR技術も進化している
医療分野においては、リハビリテーションにVRを利用する技術が進化しています。VRの強みであるその場で仮想空間を体験できることが、あまり体を動かすことができない人にとって有利に働いているということです。その他にもARによって遠隔で手術を共同する技術、手術そのものをVRで訓練する技術なども海外ではすでに普及しています。
同様に教育分野、もしくは企業の研修などにおいても、VRを利用することで一般的な学習では得ることができない体験をできるようになるため活用され始めました。例えばケンタッキーではVRによって実際に調理をする手順を学ぶプログラムを作成し、VRによる研修を実施しています。
3.VR/ARの今後の展望や将来性
次にVRの今後の展望や将来性について解説します。
経産省の試算では2023年が3,255億円、2026年には1兆円規模を予測
経産省の試算では、メタバース領域において2026年には約3倍程度の規模になるということが予測されています。データ的にはVR・AR・MRの全てを含めた形の資産ではあるものの、減少傾向にはないというのが公的機関の示す予測ということです。
コロナの影響によってオフラインのイベントの開催が難しくなったり、実店舗への来店が少なくなったりしたことも強い影響を与えています。法人向けのバーチャル展示会やオンラインイベント、インターネット通販や接客などにも活用されていることもあり、仮想空間によるビジネス展開はすでに現実的なものになっており、事業活動やマーケティング活動の一部として本格的に成長している市場であると見て間違いないでしょう。
世界的には2023年第2四半期は約4割減、2024年には上向きになると予測
世界的には一時的に4割減となったものの、2024年には4割強プラスになるという予測がされています。減少した要因としては、既存のVRデバイスの新型モデルが各ベンダーから発売されなかったことがあげられており、新型モデルを期待しているユーザーが購入を控えてしまったことも影響していると言えるでしょう。
ただし、前日したように2023年、2024年と新しいデバイスの発表や販売も重なっていることがポジティブな影響となり、来年には巻き返すといった判断材料になったのも事実です。現在においてはMetaのシェアが50.2%、ソニーのシェアが27.1%となっており、来年度にはAppleからも販売されることを考えると、シェアの拡大とともに非常にさらにポジティブな影響を与えることが期待できます。
参考:世界AR/VRヘッドセット市場、2023年第2四半期は44.6%減--2024年に上向き46.8%増へ-CNETJapan
メタバースの認知拡大及び興味関心の育成が鍵
VRの将来性については、メタバースの認知拡大及び興味関心の育成が鍵と言えます。現時点においては一部のゲームやチャットによってメタバースおよび仮想空間でのコミュニケーションは支給しているもののまだまだ当たり前に利用されているとは言えません。
スマートフォンやタブレット、パソコンでもカメラやマイクなどを利用すれば直接的なコミュニケーションはできますし、文字チャットによるコミュニケーションもまだまだ健在です。そのため、既存のコミュニケーションよりもメタバースの方が優れていると認知してもらうこと、興味を持ってもらうことができれば、必然的に利用するユーザーも増え、安定的な市場が形成されていくことが期待できるでしょう。
AI分野の市場や技術の急速な成長と普及もポジティブな要素に
2023年はAI分野の市場や技術も急速に成長した年でもあります。OpenAIのChatGPT、Googleの
Bard、MicrosoftのBing AIなどの文字チャットによる文章やコードの生成、Midjourney、StableDiffusion、DALL·E 2などの画像生成AIの他にも、文章から音楽を作成できるSuno AIのような技術も生まれており、まさに爆発的に普及しました。
AIを利用するユーザーが増えたことで、AI分野がさらに技術的にも成長すれば、VRにとってもポジティブな要素になります。仮想空間を生成する場合においても、AIが自動的にパーソナライズされた空間を作れるようになれば、ユーザーの好みに合わせたゲームや映像コンテンツが楽しめるようになるということです。
その他にもARやMrにもAIが用いられることで、新しい技術やサービスの創出によってさらなる普及につながっていくでしょう。
VR技術の活用次第でビジネスチャンスが生まれる
VR技術は業界や業種、特定の分野でしか活用できない技術ではありません。そのため工夫や活動次第でビジネスチャンスが生まれる可能性があるのです。同様にVR技術によって既存の事業活動やマーケティングなどを拡充したり、自動化や最適化によってコストの削減につなげたりすることができれば、企業としての成長も期待できるようになります。
前述したAIの技術などと同じように、流行の兆しが見えた段階からどのような技術か把握しておくことで、同業他社やライバル企業との技術的な格差を生じさせないことも重要と言えます。VR技術と企業や組織として今まで積み上げてきた知識や経験、ノウハウやナレッジと組み合わせることで新しい商品やサービスを開発することなどを意識しておくと良いでしょう。
4.VRの問題点や普及しない理由
次にVRの問題点や普及しない理由について解説します。
技術や市場が成長段階であるため
VR技術はすでに実用段階に入っています。前述したように市場もすでに拡大しつつあり、大手ベンダーも参入していることから普及していくこと自体は間違いないでしょう。しかし、まだまだ成長段階であるのも事実です。同時に一般的なユーザーが興味はあっても利用に至っていなかったり、スマートフォンやパソコンよりも利便性を感じていなかったりすることで普及が進まない理由と言えるでしょう。
ただし、過去にパソコンやスマートフォンが徐々に普及し、当たり前のデバイスとなったように、VRのデバイスが普及していくことで、必然的に本体の価格が安価になっていく可能性があること、コンテンツやサービスを製作する人が増えていくことも考えられることから、何かのきっかけで爆発的なニーズが生まれる可能性もあるでしょう。
デバイスが気軽に購入できる金額ではない
VRデバイスは必要性から考えて、気軽に購入できる金額ではないのも問題点や普及しない理由と言えます。もちろん、価格帯的には任天堂のスイッチやソニーのプレイステーション5と同等程度、Appleの最新版iPhoneからすれば安価ではありますが、購入に至るほど興味関心が育成できてはいないのも事実と言えるでしょう。
VRのデバイスを誰もが持っていることが当たり前な時代が訪れることで解決できる問題でもあり、どのタイミングでそのような時代になるかは明確には予測は難しいです。ただし、B2Cなどの個人ユーザーだけでなく、B2Bによる企業や公的機関及び組織などを対象にした技術やサービスの拡充が進んでいることから、ビジネス向けのVR技術の開発などでチャンスがあることも忘れないようにしましょう。
コンテンツやサービスが充実していない
VRが普及しない要素の一つに、コンテンツやサービスが充実していないこともあげられます。具体的には爆発的なヒットにつながるようなコンテンツやサービス、ゲームやエンターテイメントが存在しないため、デバイスを購入してでも楽しみたいという風には考えてもらえないのです。
ただし、あくまでも爆発的なヒットにつながるコンテンツやタイトルが目立たないということでもあり、実際にはコンテンツやサービスはどんどん充実しています。新しいコンテンツが増えていたとしても認知してもらうことができないため、充実していないから必要のないと言った考えを持つ人も存在してしまうということです。
人によってはVR酔いという症状が現れる
VR技術の課題や問題の一つに、人によってはVR酔いという症状が現れることもあげられます。高山病や船酔いと言ったような形で個人差が生じることもあり、完全に解決には至っていないのが現状と言えるでしょう。
実際にデバイスを購入したのに、VR酔いによってコンテンツやゲームを楽しめない可能性があるとすれば非常にがっかりしますし、何よりも直接的に健康被害を受けてしまう可能性があるということでもあるため、何らかの形で早急に解決すべき問題と言えるでしょう。
デバイスの重さや充電時間も含めて長時間の利用に向かない
現在のVRデバイスは主にヘッドマウントディスプレイであり、おおよその重さは500g前後、バッテリーは平均で2時間前後のものが一般的です。
人によっては500gとはいえ500mlのペットボトルと同等の重さですので、十分重く感じる可能性があること、VRの画像を見るということに負担がかかる可能性があることもあげられます。
また、スマートフォンと比べても好きな時に好きなだけ見ていられるといったようなデバイスではなく、その都度装着しなければならないといったようなことも課題や問題です。ただし、これらの課題や問題はVR技術のさらなる進化で解決できる事柄でもあるため、需要や市場の成長とともにユーザーが利用しやすいデバイスも開発されていくことは十分に期待できるでしょう。
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5.まとめ
今回はVRに関する基礎知識、VRの最新情報や現状、VRの今後の展望や将来性、VRの問題点や普及しない理由についてお話ししました。
VR技術は市場がすでに形成されている状態であり、様々な課題や問題の解決も進んでいます。VRを事業活動やビジネスに生かしたい、VRそのもので利益や収益を得られるようにしたいとお考えであれば、AIのように急激に発展する前に、技術を活用できるように情報収集をしておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。