DartはGoogle社が開発したプログラミング言語です。リリース直後は人気があまりありませんでしたが、Flutterの登場により世界中で注目されている言語となっています。
しかし、日本ではまだ情報が多く出回っていないため、開発に苦労する恐れがあります。
この記事では、Dartの特徴から利用するメリット、デメリット、できることを詳しく解説します。これからDartを使おうか悩んでいる方は必見です。
ぜひ最後までお読みいただき、Dartの理解を深めてください。
目次
1.Dartとは
Dartとは、Google社によって開発されたプログラミング言語です。2011年にJavaScriptの代替言語としてリリースされ、Webアプリケーション開発を主な目的として設計されました。当初はGoogle社内チームでの利用がほとんどだったため、Dartの認知度は低い状態でした。
しかし、2018年にGoogle社がリリースしたモバイルアプリ用のフレームワークとしてFlutterがリリースされたことで、Dartにも注目が集まるようになりました。Flutterは、異なるOS用のスマートフォンアプリをまとめて開発できるフレームワークのため、すぐに世界中に広まり、利用されるプログラミング言語として、Dartも広く認知されるようになったのです。
日本ではまだメジャーのプログラミング言語とは言えないですが、Flutterの人気が世界的に拡大していることから、Dartの注目度も徐々に高まっています。
2.Dart言語の特徴5選
Dart言語の特徴は主に以下の5つです。理解を深めるためにも最後までお読みください。
オブジェクト指向型のプログラミング言語
セキュリティ性能が高い
JavaScriptとの親和性が高い
静的・動的型付けの切替がしやすい
開発を効率よく進められる
オブジェクト指向型のプログラミング言語
Dartはオブジェクト指向型のプログラミング言語であり、クラスやオブジェクトを使用してプログラムを構築します。コードの再利用や拡張が容易で、一からコードを書く必要があまりないため、大規模なアプリケーション開発にも適しているのが特徴です。
さらに、Dart自体のパフォーマンス性も高いため、大きな規模の開発に向いています。
セキュリティ性能が高い
Dartは、リリース時にAOTコンパイルを選択することで、ネイティブコードに直接変換することができ、セキュリティ性能向上に寄与します。
中間コードとは、ソースコードから機械語に変換される途中で一時的に生成されるコードをさします。Dartでは、開発時にJITコンパイルによって生成される中間コードが、仮想マシン上で実行されます。
AOTコンパイルされたDartコードは、リバースエンジニアリングが難しくなるため、機密性の高いデータを扱うアプリ開発で選択肢の一つとなり得ます。さらに、Dart言語の持つ型安全性やNull Safetyなどの特徴も、セキュリティ性能を高めています。
JavaScriptとの親和性が高い
Dartは、トランスパイラと呼ばれるコンパイラを利用して、JavaScriptに容易に変換できる特徴を持っています。Dart自体がJavaScriptの後継言語として開発されたため、そもそもの親和性は高いです。
また、JavaScriptで書かれたアプリケーションをDartに変更する際も容易に移行できるため、既存資産を活用しながらDartを導入できるメリットも持っています。
静的・動的型付けの切替がしやすい
Dartは、静的型付けと動的型付けのどちらもサポートしており、柔軟に切り替えられる特徴があります。型の指定に悩まずにコードを書くことができるため、初心者でもプログラミングしやすい言語です。
変数宣言する際に、変数の前にdynamicを記述するだけで動的型付けになるため、型変換が容易に行えます。
開発を効率よく進められる
Dartは、フロントエンドとサーバサイドの両方を同じ言語で記述できるため、効率的に開発できるのが特徴です。
一般的には、フロントエンドとサーバサイドで扱うプログラミング言語は異なるため、別々のプログラマーを採用する必要があります。しかし、Dart一つで両方のコーディングができるため、工数を減らせたり、そもそもの開発費用を抑えられたりします。
3.Dart言語のメリット4選
Dart言語の主なメリットは以下の4つです。それぞれ解説していきます。
JavaScript経験があれば習得しやすい
中～大規模システムやサービス開発に適している
Flutterによるクロスプラットフォーム開発ができる
Googleによるサポートがある
JavaScript経験があれば習得しやすい
Dartは、もともとJavaScriptの後継言語としてGoogleによって開発されたプログラミング言語です。そのため、構文や概念がJavaScriptに似ており、JavaScript経験者にとって非常に習得しやすいのがDart言語のメリットです。
たとえば、条件分岐やループ構造などの基本的な書き方は、JavaScriptとほぼ共通しています。また、Dartではトランスパイラを使ってJavaScriptに変換できるため、既存のWebプロジェクトへの適応もスムーズです。
逆にJavaScriptで作成したアプリケーションをDartに移行できるため、既存の知識を活用して効率的に新しい技術を習得できるといえます。
中～大規模システムやサービス開発に適している
Dartはオブジェクト指向型のプログラミング言語のため、中～大規模システムの開発に適しています。
オブジェクト指向の最大のメリットはプログラムを再利用できることです。一からコードを作り上げる必要がないため、効率よくシステム開発できるのがメリットです。
たとえば、同じ機能を持つ複数の画面を持つアプリケーションを開発する場合、共通のロジックをクラスとして定義して使い回すことで、コードの量を大幅に削減できます。
プロジェクトの規模が大きくなるほどオブジェクト指向の効果は発揮しやすくなるため、中～大規模のシステム開発に向いているといえます。
Flutterによるクロスプラットフォーム開発ができる
クロスプラットフォームとは、AndroidやiOS、WindowsやMacOSなどの異なる OSでも1つのプログラミング言語で開発したコードを用いて、同じ仕様のアプリケーションを動作させられるフレームワークです。Flutterは、このクロスプラットフォームができる特徴をもっています。
従来は、AndroidやiOSのアプリケーション開発をする際は、それぞれに適したプログラミング言語を用いる必要があるため、それぞれの専門家に依頼する必要がありました。そのため、費用や時間もかかりやすい傾向がありました。
しかし、クロスプラットフォーム開発に適した共通のプログラミング言語で開発することで、異なるOSでも動作するアプリケーションが完成します。開発工数や時間も従来に比べて短縮しやすいのがクロスプラットフォーム開発ができるメリットです。
Googleによるサポートがある
DartはGoogle社によって開発され、サポートされているプログラミング言語です。IT業界最大手であるGoogle社のサポートがあることは心強いと感じる人も少なくないでしょう。
また、DartはGoogle社内でも使われているため、継続的なアップデートや改善が期待できるのもメリットの1つです。DartをGoogle社がサポートしてくれることはFlutterを活用する開発者にとっても大きなメリットがあるといえるでしょう。
関連記事
JavaScript初心者向け【サンプルコード付】基礎から学習するための方法を解説
JavaScriptライブラリとは？おすすめの使い方や導入方法などわかりやすく解説
4.Dart言語のデメリット4選
Dart言語のデメリットも知ることで、Dartをよく理解できるようになります。主なデメリットを4つ解説します。
日本語の情報が少ない
ライブラリ数が少ない
フレームワーク数が少ない
他の言語に比べてコミュニティが小さい
日本語の情報が少ない
Dartは、世界的にGoogleのFlutterフレームワークの人気に伴って利用が広がっていますが、日本国内での普及度はまだ低く、日本語での学習資料や情報が限られているのがデメリットです。
Dartの公式ドキュメントやコミュニティフォーラムはありますが、英語が主体となっているため、プログラミング初心者や英語に不慣れな方にとっては学習のハードルが高くなりやすいでしょう。
特に、エラーの解決方法や実装のコツを探す際、日本語での具体例が見つかりにくいため、解決に時間かかりやすくなってしまいます。
ライブラリ数が少ない
Dartは、PythonやJavaScriptなどの主要なプログラミング言語と比較すると、利用できるライブラリの数が少ないのがデメリットです。
たとえば、Pythonには豊富なデータ分析ライブラリや機械学習ライブラリが存在しますが、Dartでは専門的なライブラリの選択肢はあまりありません。Dart専用のライブラリが少ない場合、外部APIやカスタムコードで機能を補う必要があり、開発環境を整えるのに手間がかかってしまいます。
ただし、DartはGoogle社が開発したプログラミング言語なため、今後より使いやすくなる可能性はあります。
フレームワーク数が少ない
Dartに対応するフレームワークが少ないのがデメリットです。
現在最も注目されているDartのフレームワークはFlutterですが、他の分野で利用できるフレームワークの選択肢が限られています。たとえば、バックエンド開発に特化したフレームワークはNode.jsやSpring Bootなどが広く使われていますが、Dartには同等のサポートを持つフレームワークがまだ少ない状況です。
Dartを使用してサーバサイド開発や特定分野のプロジェクトに取り組む場合、十分なサポートを得るのが難しい場合があるため、使いづらさを感じる可能性があります。
他の言語に比べてコミュニティが小さい
Dartは他のプログラミング言語に比べるとコミュニティが小さいことがデメリットです。
コミュニティが小さいと、学習リソースや技術的な情報が限られてしまうため、トラブル対応が難しくなる場合があります。
一方でFlutterの普及に伴いDartのコミュニティは徐々に拡大しています。今後はより情報が集まりやすくなることで、便利に利用できる可能性が高まります。
5.Dart言語を活用した開発とは？
Dart言語での開発がおすすめなケースを解説します。4つ紹介しますので、ぜひとも参考にしてください。
Flutterアプリケーション開発
Webアプリケーション開発
ゲーム開発
コマンドラインツール開発
Flutterアプリケーション開発
Dartは、Googleが開発したUIフレームワークFlutterの公式言語なため、Flutterのアプリケーション開発に適しています。Flutterを利用すると、iOSとAndroid向けのアプリケーションを1つのコードベースで開発できるため、開発コストや時間を大幅に削減できます。
たとえば、モバイルアプリの画面設計やアニメーションの実装を、Dartの非同期処理機能を活用してスムーズに行えます。さらに、Flutterの「ホットリロード」機能を活用することで、コードを修正した瞬間に変更内容を画面で確認できるため、開発効率が向上しやすいのが特徴です。
Webアプリケーション開発
DartはWebアプリケーション開発にも適しています。
Dart言語は、JavaScriptの後継言語として開発されたため、Webアプリケーションとの親和性が高いです。特にトランスパイラを使用してDartのコードをJavaScriptに変換することで、Dartで開発したWebアプリケーションをブラウザ上で動かせます。
また、通常は複数のプログラミング言語を使用するフロントエンドとバックエンドですが、Dart言語は両方を開発できます。一つの言語で開発を進められるため、システム連携がスムーズになり、開発の生産性向上が期待できる点もDartがWebアプリケーションに向いている言語と言える理由です。
ゲーム開発
Dartは、軽量で効率的なゲーム開発におすすめです。
特に、2DゲームエンジンであるFlameと組み合わせることで、モバイルやブラウザ向けのシンプルなゲームを開発できます。Dartのシンプルな構文と高速な処理能力は、リソースの限られたゲーム開発において非常に有効です。
コマンドラインツール開発
Dartは、効率的なコマンドラインツールの開発にもおすすめです。
Dartには標準ライブラリとして、コマンドライン引数処理やファイル入出力などの機能が備わっているため、コマンドラインツール開発に向いています。たとえば、ファイルのバックアップツールやデータ変換ツールなど、開発者の業務を効率化するツールを短時間で作成可能です。
関連記事
Flutterとは？もう流行らない？開発アプリや特徴、入門向けの学習ステップを解説！
6.Dart言語を使った開発事例3選
実際にDart言語を使った開発事例を3つ紹介します。この章を最後まで読むことで、Dartを使った具体的なイメージを持てます。最後までお読みください。
じゃらんnetアプリ
せいえいNAVI
じゃらんnetアプリ
株式会社リクルートが運営している宿泊施設予約サイトである「じゃらんnetアプリ」にDartが使われています。
アプリ自体はリリースから10年以上も経っているため、改修が求められています。そこでオブジェクト指向の特徴を持つDart言語や美しいUIを簡単に構築できるFlutterへの移行が進められています。
せいえいNAVI
生活衛生関係営業者に有益な情報を提供するアプリケーション「せいえいNAVI」にもDartが使われています。
従来では、Webサイトなどで生産性向上や経営改善などの有益な情報を提供していましたが、生活衛生関係者に情報が届かない課題がありました。解決するために、Android版とiOS版で2種類のアプリでも効率よく開発できるDart(Flutter)が採用されたのです。
結果として、AndroidとiOSの両OSのコードを用意する必要がなくなり、短期間での開発に成功しました。さらには、リリース後のメンテナンスコスト抑制にもつながったため、Dartを利用したメリットは大きいと言えるでしょう。
Stailer（ステイラー）
引用：Stailer
株式会社10Xが開発した小売事業者のデジタル化を支援するシステム「Stailer（ステイラー）」はDartを用いています。
同社ではもともとエンジニア全員がiOS、Android、サーバと一人で3つの言語を書くほどマルチスキルを持っていました。その中で開発箇所ごとにエディターを切り替える負担が大きくなってきたこともあり、「Stailer」の開発にはDartを利用するようになりました。
さらに、一つの言語を社員全員が扱えるようになったことで、スキルアップが早くなったり、一人一人の強みを生かしてチーム全体として補いやすくなったりと、メリットも複数あると言います。
7.Dart言語の学習におすすめの3ステップ
Dart言語を習得するためにおすすめの3ステップを解説します。むやみに学習を進めても挫折してしまう恐れがあります。効率よく進めるためにも、最後までお読みください。
Flutterの公式HPで紹介されている資料を読む
DartPadでコードを実際に入力する
Dart言語でアプリを開発する
Flutterの公式HPで紹介されている資料を読む
Flutter公式サイトやDart公式ドキュメントで提供されている教材を活用するのが、効率よく学習するためのステップです。どちらの資料も、Dart言語の基本的な文法や特徴を初心者向けに丁寧に解説しています。
たとえば、Dartの変数、関数、クラスといった基礎的な概念だけでなく、非同期処理やエラーハンドリングなどの重要なトピックも網羅されているため、幅広く学習できるのが特徴です。
また、Flutterのチュートリアルも同時に学ぶことで、Dartがどのようにアプリ開発で活用されるのかを理解しやすくなります。これらのリソースは無料で提供されており、信頼性が高い点も魅力です。
DartPadでコードを実際に入力する
次に、DartPadを使って実際にコードを書きながら学びましょう。
DartPadは、ブラウザ上でDartコードを実行できる公式のオンラインツールで、インストール不要で簡単に始められます。基本的な「Hello, World!」プログラムから、リストやマップを操作するサンプルコードまで幅広く試せるため、利用するのがおすすめです。
さらに、コードを書いたその場で実行結果を確認できるため、学習スピードが向上します。DartPadを使うことで、Dartの文法に慣れるだけでなく、エラーの原因を迅速に把握するスキルも身につくため、効率よく学習を進められるのが、DartPadを使うメリットです。
Dart言語でアプリを開発する
基本的な知識と操作に慣れたら、実際にDartを使ってアプリを開発してみましょう。おすすめは、Flutterを活用したモバイルアプリの作成です。
たとえば、簡単な「タスク管理アプリ」や「ToDoリストアプリ」を作ることで、Dartの実践的な使い方を学べます。この段階では、APIを利用して外部データと連携する機能や、非同期処理を取り入れることで、さらに理解を深められるようになります。
また、アプリ開発にある程度慣れてきたら、オープンソースプロジェクトに参加するのもおすすめです。実際の開発現場で使われるDartの活用法を学べるため、実践力が鍛えられます。
8.Dartの将来性は高い？
Dartの将来性は高いといえます。その理由は、主に以下の2つです。
Googleが開発とサポートを行っている点
Flutterの人気が年々高まっていること
DartはGoogle社内で使うために開発された側面を持つプログラミング言語です。Google社自体の将来性は高いため、その会社で利用されているDartも今後はより活用される可能性を秘めています。
また、Flutterを使えば、iOSやAndroid向けのアプリを1つのコードベースでの開発が可能です。クロスプラットフォームアプリ開発フレームワークの世界市場は、2024年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR)16.4%での拡大が予測されている、とPersistence Market Researchの市場調査が示しています。
今後のモバイルアプリ市場の成長に伴い、DartとFlutterの需要は伸びる可能性は高いため、将来性も高いと言えるでしょう。
9.Dart言語でよくある質問3選
Dart言語を使う上でよくある質問は主に以下の3つです。一つずつ解説していきます。
DartとJavaは似ている言語と言われるけど本当？
Dart言語入門におすすめの勉強方法は何？
Flutterとは？
DartとJavaは似ていると言われるけど本当？
DartはもともとJavaScriptの後継言語として設計されていますが、JavaやC#にも似た文法を使っています。たとえば、クラスやメソッド、インターフェースといったオブジェクト指向の要素が共通しているため、JavaやC#を学んだ経験がある人にとってDartは比較的習得しやすい言語です。
Dart言語入門におすすめの勉強方法は何？
Dartを初めて学ぶ場合、最もおすすめなのは公式サイトのドキュメントを参考にしながら実際にコードを書くことです。特に、DartPadを使えば、ブラウザ上でインストール不要で簡単にコードを実行できます。
具体例として、基本的な「Hello, World!」の出力から始め、変数の宣言や関数の作成、リスト操作などを試してみるのがおすすめです。
また、Flutterのチュートリアルを並行して学ぶことで、Dartを活用した実践的なアプリ開発のイメージがつかみやすくなります。
Flutterとは？
Flutterは、Googleが提供するUIフレームワークで、Dartを使用してアプリを開発します。最大の特徴は、iOSやAndroid、Web、デスクトップといった複数のプラットフォームに対応したアプリケーションを1つのコードベースで作れる点です。
さらに、Flutterにはコードを修正した瞬間に画面上の変更を確認できる「ホットリロード」という機能を持っているため、開発効率の向上を期待できます。Flutterには他にも美しいUIを作れる機能があります。やれることが非常に多いため、世界中で注目されているフレームワークの1つです。
関連記事
Javaとは？Web開発で利用されるJavaの特徴や実行方法、おすすめ資格を解説
10.まとめ
今回はDart言語について、特徴や利用するメリット、デメリットを詳しくお話ししました。他にもできることや導入事例、おすすめの学習方法を紹介しました。
Webアプリケーション開発やモバイルアプリ開発の需要が増えているため、Dartは注目されています。この記事で紹介した学習方法を参考にしてDartの知識を身につけることで、今後の需要拡大に備えられ、エンジニアとしての価値を高めやすくなります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。