WEB開発をメインでするエンジニアの方にとって、便利な機能を搭載しているのがデベロッパーツールです。しかし、使い方や活用方法を知らないというエンジニアの方も中にはいます。
デベロッパーツールは誰でも使えますが、知識がないと使いこなすことはできないツールです。
そこで本記事は、デベロッパーツールにできること、機能やその使い方、注意点などを解説します。
目次
1.Google Chromeのデベロッパーツールとは
デベロッパーツール(Chrome DevTools)とは、WEBブラウザのGoogle Chromeに搭載されたツールセットのことです。主に、WEB開発者向けの機能を搭載しています。例えば、WEB制作でHTML・CSSの編集や確認はよく使う機能の1つです。
通常、デベロッパーツールはFirefoxやSafariなどを含む一般的な概念として開発ツール全体を指します。しかし、今回取り上げる個別の「デベロッパーツール」で、Google Chromeのツールを説明するものです。別のブラウザツールと混同しないように気をつけましょう。
2.デベロッパーツールにできること
デベロッパーツールには、搭載された機能や仕様があり、できることが決まっています。以下にデベロッパーツールにできることを大まかに3つ紹介します。詳しい機能については後述します。
HTMLやCSSのコード書き換え
1つ目は、デベロッパーツールで画面表示やWEBデザインを変更できるHTML・CSSの変更が可能なことです。
HTML・CSSは、サイト構築に特化した言語です。HTMLは文字や見出し、CSSではデザインに関わる色や画像配置など、レイアウトを構築・変更できます。そのため、HTML・CSSは文章やビジュアル表現を記述できることから、一般的には「マークアップ言語」とも呼ばれます。
WEB開発に必要な上記のコードを書いたり、それを書き換えたりできるのが、このデベロッパーツールです。デベロッパーツールの機能を使って、WEB制作のサイト構築やそのデバッグができます。
スマホや複数のデバイス表示のシミュレーション
2つ目は、デバイスの種類やサイズを変えて表示し、それを確認できることです。WEBサイトやコンテンツを作成する場合、デバイスによって表示が変わることがあります。
その際に、画面全体や一部の表示が崩れていないか、ページの見た目が想定通りになっているか、などを確認できるのです。崩れている箇所があれば、ツール内に表示されるコードやエラー表示を参考に、原因を探って解決する手助けとなります。
バグやエラーのチェック
3つ目は、デベロッパーツールが手動・自動でバグやエラーを検知できることです。デバイス環境に依存する一部のエラーは検知できませんが、それ以外のエラーはまとめてデベロッパーツールで表示を切り替えながら自分の目で確認できます。
また、検知機能で問題のあった箇所は、事前に「警告」が出るなどして、最優先で確認することも可能です。デベロッパーツールなら、その際にコードを編集して修正することも容易です。問題が解決したかも含めて、デベロッパーツールでデバッグを進められるのです。
3.デベロッパーツールの出し方は?起動する手順や方法
ここでは、デベロッパーツールを起動して操作するまでの手順を解説します。
Google Chromeの立ち上げ
まず、Google Chromeのブラウザには標準で開発者用のツールが組み込まれています。そこで、すでにChromeを使用している方はブラウザを立ち上げるのが最初の手順です。
ただし、Chromeを未インストールで利用していない方は、Google Chromeのインストールが先に必要となります。
使用ページを開く
Chromeを立ち上げたら、検証したいWEBページを開きます。
デベロッパーツールの起動
次に、デベロッパーツールを起動します。デベロッパーツールは、複雑な手順を必要とせず、右上の「⋮」のアイコンから「デベロッパーツール」を探してクリックするだけです。
また、右クリックから「検証」の項目をクリックすることでも、同じようにデベロッパーツールのパネルを開くことができます。
WindowsとMacのショートカット
デベロッパーツールは、マウス操作に限らず、ショートカットキーで手順を省略して立ち上げることができます。
Windowsの場合は、ショートカットの「Ctrl+Shift+I」か「F12」で起動します。Macの場合は、ショートカットの「Command+Option+I」で起動が可能です。
慣れてくればショートカットキーで素早く立ち上げて、デバッグを開始できるようになります。
4.デベロッパーツールの基本的な機能や使い方
デベロッパーツールには、基本的な機能が数多く搭載されています。そこで、機能の概要や使い方について以下に説明します。
要素(Elements)
まずは、デベロッパーツールの基本となる「要素(Elements)」機能です。要素は、HTMLやCSSの確認・編集を行う機能です。
デベロッパーツールで操作するときは、画面上のパネルを使用します。起動した直後のデフォルト画面は、この「要素」が表示されるのです。
まずは、Elementsパネルを使用して、ページ内のコンテンツを記述しているHTML・CSSを要素ごとにチェックします。その後、パネル内を操作してHTML・CSSの変更や要素の追加・削除、属性の追加などが可能です。
編集時は、リアルタイムで変更が反映されるため、視覚的に編集内容を確認することができます。また、編集した内容は、リロードすることで画面と一緒にリセットされる仕様です。
コンソール(Console)
2つ目は、デベロッパーツールに欠かせない「コンソール(Console)」の機能です。ログを記録して確認するための機能や入出力の操作で、JavaScriptを実行できる機能が備わっています。
まず、ログの記録は「ロギング(logging)」と呼ばれ、メッセージの表示を通じてJavaScriptが期待通りに実行できることを確認するものです。動作に異常や違和感がある場合は、エラーを確認し、パネルと表示画面を突き合わせて原因の特定をします。
また、チェックや修正の役割だけでなく、実際にJavaScriptのごく簡単なコードを入力して、試験的に実行し、正常に動くか調べることもできます。
ネットワーク(Network)
3つ目は、WEB環境では特に重要となる「ネットワーク(Network)」の機能です。その名の通りブラウザのネットワーク上のやり取りを確認するもので、通信のログを知ることができます。
開発者にとっては、ファイルアップロードやAPI、コンテンツリソース、リクエスト、通信の時間・サイズの確認など、特に知りたい情報が閲覧できるのです。
ソース(Sources)
4つ目は、「ソース(Sources)」の機能です。ソースでは、ファイルを表示してCSSを編集したり、JavaScriptのスニペットを作成したりできます。
スニペットとは、日本語で「断片」を意味し、テキストスクリプトをすぐに呼び出して実行するコードのことです。実際にデベロッパーツールで開いたパネル上の操作では、「ページ」から「スニペット」に切り替えて、スニペットのコードを作成・保存することができます。
アプリケーション(Application)
5つ目は、「アプリケーション(Application)」の機能です。アプリケーションでは、読み込み時のリソースを決める画像やローカルストレージ、cache(キャッシュ)、Cookie(クッキー)などを確認できます。
その際に、「Service Workers」のデバッグが可能です。この「Service Workers」とは、プロキシサーバーのように動作する「通知」や「同期」といったバックグラウンドを実行する仕組みのことです。この機能を活用することで、オフラインアクセスが可能になり、ページのパフォーマンスが向上します。
パフォーマンス(Performance)
6つ目は、「パフォーマンス(Performance)」の機能です。パフォーマンスでは、WEBページを開くときの読み込みと実行中のパフォーマンスを計測して実際の数値を知ることができます。
遅い原因を探る際に、さまざまな指標の数値を調べられるのが魅力です。ただし、数値を計測するのに時間がかかるため、時間に余裕のあるタイミングで使用する必要があります。
メモリ(Memory)
7つ目は、「メモリ(Memory)」の機能です。メモリでは、「メモリリーク」の原因を探るための具体的な方法を、次の3つの中から実行できます。
ヒープスナップショット
タイムライン記録手法割り当て
割り当てサンプリング
メモリリークとは、メモリの解放がされずに容量を圧迫する現象です。それを上記の方法を使ったプロファイリングによって、メモリの分布、割当の内訳や数値を確認し、状況を知ることができます。上手くすればメモリ圧迫の原因もわかります。
セキュリティ(Security)
8つ目は、サイトの安全性に大きく関わる「セキュリティ(Security)」の機能です。セキュリティでは、以下の証明書などを簡易にチェックできます。
HTTPSの接続や有効なサーバーの証明書
安全な接続設定の使用(暗号化など)
保護領域に接続して全リソースの配信証明書
また、セキュリティのビューア機能では、「発行先」や「発行元」、「有効期限」、「指紋」の4項目を確認することが可能です。
ライトハウス(最新バージョン:Lighthouse 12.3.0)
9つ目は、「ライトハウス(Lighthouse 12.3.0)」の機能です。主にページを読み込んで分析するためのパネル操作で実行するものとなります。
その際に、以下の5つのカテゴリにチェックを付け外しすることで、検証が必要なサイト情報を調査することが可能です。
パフォーマンス
ユーザー補助
おすすめの方法
SEO
プログレッシブ ウェブアプリ
項目の中に「SEO」があることから、開発者だけでなくSEOマーケティングを必要とするビジネス関係者や企業にも利用されます。
また、調査の際は時間を変えて計測することで、数値の変化を知ることも可能です。時系列の違いを比較して結果を分析し、開発に役立てましょう。
レコーダー(Recorder)
10つ目は、「レコーダー(Recorder)」の機能です。レコーダーはユーザーフロー(入力操作やクリックなど)を記録します。操作をレコーダーで記録し、繰り返しの実行やパフォーマンスの測定ができます。
レコーダーを使用する場合は、名前をつけて登録し、「Replay」を押すだけで実行可能です。動作の検証にブラウザ上で必要となる入力やクリックなどの同じ操作を省略して、デバッグ作業を短縮する際に便利です。
5.デベロッパーツールの最新機能を活用する方法
デベロッパーツールは、Chromeブラウザが更新されるたびに機能や仕様も追加や変更、削除が行われています。以下に最新のデベロッパーツールを活用して、デバッグやパフォーマンス改善を行いたい方向けに、最新の機能を解説します。
AIチャットの履歴機能
最新機能の1つ目は、AIチャットの履歴を残す機能です。デベロッパーツールには、Geminiを使ってデバッグできる新機能が2024年5月(日本は7月から)に搭載され、エラーを解説する役を担うことで問題の解決に役立っています。
まだ開発経験が浅く、エラーや問題の解決に慣れていない方、作業効率を上げたい方におすすめです。
AIが使えるパネルの項目は、下記の3つです。
ネットワーク (ネットワークリクエスト)
ソース(「ページ」のファイルを開く)
パフォーマンス(メインを開く)
そして、AIに質問したチャットの履歴は、最新の機能で永続的に残すことができます。AIを活用し、その履歴を残して再度利用することで、デバッグの効率を高められるのです。
パフォーマンスによる画像ハイライト表示
2つ目は、新機能として配信のインサイトの「分析情報」に画像のハイライト表示が加わったことです。「パフォーマンス」のパネルを改善したことで、新たな機能となっています。
具体的には、この機能でファイルサイズを計測します。その結果、サイズを最適化して、サイト内画像のデバッグに生かせます。また、画像をクリックするだけで「ネットワーク」にハイライトが表示されるため、画像の配信を最適化するのにも有効です。
6.デベロッパーツールを利用する注意点
デベロッパーツールは基本機能や最新機能を使うことで開発作業を効率化することができます。しかし、デベロッパーツールを使用する際には、以下のような注意点もあります。
完了前の読み込み禁止
1つ目の注意点は、デベロッパーツールがリロードボタンの再読み込みで編集や変更した内容が消えてしまうことです。そのため、デベロッパーツールを使ったHTMLの編集など作業工程がすべて完了するまで、再読み込みや画面を閉じるなどの操作は一切禁止となります。
操作や機能を使いこなす必要がある
デベロッパーツールには、多くの機能があり、基本的な機能だけでも使いこなすことが必要です。特にデベロッパーツールを初めて使うウェブデザイン初心者の方や、WEB開発未経験者などは、機能や操作を覚えるのにある程度の慣れと時間がかかります。
基本機能を中心によく使うものから学習するのがおすすめです。
7.デベロッパーツールのよくある質問
デベロッパーツールについて初心者の方や開発ツールとして検討している方向けに、よくある質問とその回答を以下に紹介します。
デベロッパーツールは初心者でも使える?
WEB開発の初心者にデベロッパーツールはハードルが高いツールです。しかし、機能が多いというだけで、1つひとつは基本となるデバッグ機能が揃っており、上手く活用することで初心者でも作業を短縮することができます。
デベロッパーツールは日本語化できる?
デベロッパーツールは、Google Chromeが標準機能として日本語に言語の変更が可能です。デベロッパーツール起動時、画面上の項目に日本語にスイッチする表示が出て、選択・クリックするだけで一斉に言語が切り替わります。
ただし、開発では英語が基本となることが多く、ツールによっては日本語が使えないものもあるため、日本語化に慣れすぎないようにすることが大切です。
フリーランスが効率的に開発できるツール?
デベロッパーツールには、さまざまな問題の検知機能やデバッグに役立つ機能が搭載されています。フリーランスにとっては、個人での開発作業を効率化するツールとなり得るのです。
例えば、WEBページのコンテンツとHTML・CSSのコードや要素を視覚的に対応して編集できるなど、デバッグ業務を短期間で効率的に進められます。
関連記事
GitHub使い方ガイド|何がすごい?危険性は?機能やアカウント作成手順、活用事例を解説
8.まとめ
今回は、Googleが提供するChromeのデベロッパーツールについてその機能や使い方を解説しました。デベロッパーツールは、HTML・CSSの編集やエラーチェックなどのデバッグ作業、それ以外にもデバイスを切り替えるエミュレーター表示などができます。そして、基本となる10以上の機能を使いこなすことで、開発作業を効率的に進められるのです。
デベロッパーツールをこれから使う予定の方は、基本の機能や操作とできることを把握し、注意点を押さえた上で開発に導入しましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。