CentOSは、安定性と信頼性が高いため、多くの企業や自治体で利用されているOSです。
しかし、CentOS Linux(CentOS 7)は2024年6月30日にセキュリティサポートが終了してしまいました。サポートがない状態では情報漏えいなどのセキュリティリスクが高まってしまうため、早急に対応する必要があります。
この記事では、CentOSの特徴やサポート切れとなった背景、おすすめの移行先OSを詳しく解説していきます。CentOSを利用する方にとって、有益な情報をわかりやすくまとめました。
ぜひ最後までお読みいただき、CentOSの理解を深めてください。
目次
1.CentOSとは?
CentOSとは、オープンソースのLinux系OSの1つで、Ubuntuと並んで人気があります。安定性と信頼性が高いためサーバーOSとして適しています。さらには、無償で利用できるため、Webサーバーやデータベースサーバーなど企業で構築する際に使われることが多いOSです。
2.CentOSの特徴5つ
CentOSを理解するためには、以下5つの特徴を把握するのが重要です。それぞれを解説していきます。
OSが2種類存在する
RHELと高い互換性がある
業界標準となっている
無償で有償レベルの機能を使える
CentOS Linuxはサポート終了している
OSが2種類存在する
CentOSには、以下の2種類が存在しています。
CentOS Linux
CentOS Stream
CentOS Linux(CentOS 8)は、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の安定版クローンとして長年利用されてきましたが、2021年12月31日でサポートが終了しています。一方、CentOS Streamは、RHELの開発版として提供されており、最新の機能やアップデートをいち早く試せる環境が整っています。しかし、安定性を求める用途には不向きとされているのがデメリットです。
RHELと高い互換性がある
CentOSは、RHELのソースコードを基に構築されているため、ほぼ同一の環境を無償で利用できます。
RHEL向けに開発されたアプリケーションやパッケージも、CentOS上で問題なく動作することが多いため、商用環境でも広く活用されてきました。また、RHELの公式ドキュメントを参考にできる点も、Linuxの知識を効率よく学べるのもメリットです。
業界標準となっている
CentOSは、安定性と互換性の高さから、サーバー用途で業界標準として広く普及しました。
特にWebサーバーやデータベースサーバーの分野では、長年にわたる導入実績があり、多くのエンジニアに支持されています。導入事例が豊富なため、技術的な問題に直面しても、オンラインフォーラムや技術ブログなどで解決策を見つけやすい点も大きなメリットです。
また、教育機関や非営利団体でも採用されることが多く、初心者がLinuxを学ぶ環境としても適しています。実務での使用を想定した学習を進めるのにも役立つでしょう。
無償で有償レベルの機能を使える
RHELと同等の機能を無償で利用できることは、CentOSの大きな魅力です。
高性能なセキュリティ機能やシステム管理ツールが標準搭載されており、コストをかけずに堅牢な環境を構築できます。特に、ファイアウォール管理やアクセス制御、リソースの最適化など、企業レベルのシステム運用に必要な機能がそろっています。
そのため、中小企業やスタートアップがコストを抑えながら信頼性の高いサーバー環境を整える際にも適しています。また、クラウドサービスとの相性も良く、AWSやGCPなどの環境での運用もスムーズに行えるのも特徴の1つです。
CentOS Linuxはサポート終了している
CentOS Linux(CentOS 8)は、2021年12月31日をもって公式サポートが終了しました。このため、今後はセキュリティパッチやバグ修正の提供がないため、継続して利用するとシステムの脆弱性などのセキュリティリスクが増します。
現在CentOS Linuxを運用している場合は、代替OSへの移行を検討する必要があります。RHELの無料版「RHEL for Open Source Infrastructure」や「Rocky Linux」「AlmaLinux」などの選択肢があり、それぞれの特性を理解した上で移行を進めることが重要です。
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3.CentOS Linuxのサポートが終了するのはなぜか?
多くの場面で使われてきたCentOS Linuxのサポートが終了する理由は、CentOS Streamという新しいディストリビューションにあります。
2020年にThe CentOS Projectは、CentOS Stream開発に全投資を移行するため、CentOS Linux製品の開発やアップデートなどのサービスを順次打ち切ることを発表しました。そのため、2019年にリリースされたCentOS 8のサポートは、当初予定していた2029年から大幅に前倒しされ、2021年12月31日に終了してしまいました。
しかし、CentOS Streamは安定性よりも開発向けの環境としての役割が大きいため、CentOS Linuxからスムーズに移行しづらいというデメリットがあります。
4.サポート切れのCentOSを使うリスク
CentOS Linuxは現時点でサポートが切れていますが、使えないわけではありません。しかし、サポートが切れているOSを使うリスクは存在します。
継続して利用する場合は、以下2つの内容を理解するようにしてください。
セキュリティリスクが高くなる
自社内での保守運用の負荷が高くなる
セキュリティリスクが高くなる
サポート終了後のCentOS Linuxでは、新たな脆弱性が発見されても公式のセキュリティパッチが提供されないため、システムがハッキングやマルウェア感染の標的となりやすくなります。特に、インターネットに公開されているサーバーでは、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが大幅に増加します。
また、ゼロデイ攻撃への対策が困難になり、企業の機密情報や顧客データが危険にさらされる可能性が高まります。加えて、他のソフトウェアやライブラリもサポート対象外になると、システム全体の安全性が低下しやすくなる点も懸念されます。
自社内での保守運用の負荷が高くなる
公式サポートが終了すると、バグ修正やパフォーマンスの最適化を自社で対応しなければなりません。
従来はRed Hatが提供するアップデートによって、OSの安定性が維持されていました。しかし、サポート終了後は脆弱性の修正や互換性の確保を社内のエンジニアが手動で行わなければなりません。
また、最新のソフトウェアやセキュリティパッチが適用できなくなることで、アプリケーションの動作保証が難しくなります。その結果、新しいソフトウェアを導入する際に互換性の問題が発生しやすくなり、運用コストの増加につながる可能性が高くなってしまいます。
さらに、外部のセキュリティサービスを利用する場合も、サポート切れのOSでは対応してもらえないケースがあり、長期的な視点で見ても安定運用が困難になるでしょう。
5.CentOS Linuxの移行先を選ぶ5つのポイント
CentOS Linuxのサポート終了に伴い、安定して利用するためには、移行先を選ばなければなりません。この章では、移行先を選ぶポイントを5つに絞って解説していきます。
移行がしやすいか
ランニング費用が発生するか
安定性があるか
RHELの互換性があるか
技術サポートが受けられるか
移行がしやすいか
CentOS Linuxの後継OSとして、スムーズに移行できるかどうかを確認することが重要です。
たとえば、「Rocky Linux」や「AlmaLinux」はCentOSと同じくRHELのクローンOSであり、パッケージ管理や設定方法がほぼ同じため、移行作業の負担が少なくなります。
しかし、UbuntuやDebianのような異なる系統のOSに移行する場合、運用環境の再構築が必要になることがあるため、移行計画を慎重に立てなければなりません。
既存のシステム構成やアプリケーションの互換性を保ちつつ移行できるかを事前に検証することが不可欠です。移行ツールの有無や、公式のマイグレーションガイドが提供されているかもチェックしましょう。
ランニング費用が発生するか
移行先として有償OSを選択する場合、運用コストが増加する可能性があります。
RHELの商用ライセンスを利用すると、セキュリティパッチや公式サポートを受けられるメリットがありますが、費用が発生します。一方で、Rocky LinuxやAlmaLinuxのようなオープンソースOSは無償で利用できるため、ランニングコストを抑えたい場合に適しています。
ただし、無償OSでも運用管理やトラブル対応にかかる人的コストを考慮する必要があるため、コストとサポートのバランスを検討することが大切です。安定した運用を求めるなら、有償サポートを提供するLinuxディストリビューションを選択するのも一つの方法です。
安定性があるか
サーバー運用において、OSの安定性は非常に重要な要素です。
特に、長期運用を前提としたシステムでは、安定したパッケージ提供や長期サポートの有無を確認することが必要です。RHELは商用OSとして高い安定性を誇りますが、Rocky LinuxやAlmaLinuxもRHELのソースコードを基にしており、同等の安定性を期待できます。
また、DebianやUbuntu LTSのような長期サポート版のOSも、長期間の運用を考えた際の選択肢として有力です。
RHELの互換性があるか
CentOS LinuxはRHELのクローンとして開発されているため、移行先のOSもRHELと互換性があるものを選ぶことで、既存システムをスムーズに運用できます。
Rocky LinuxやAlmaLinuxは、RHELとバイナリ互換性を持っており、CentOSからの移行が容易です。特に、既存のパッケージやアプリケーションをそのまま使用できる点は大きなメリットです。
一方、Debian系OS(Ubuntuなど)に移行する場合は、パッケージ管理の違いや設定ファイルの変更点を把握し、慎重に移行作業を進める必要があります。
技術サポートが受けられるか
OSの運用では、トラブル発生時に適切なサポートを受けられるかどうかが重要になります。
企業のシステム運用では、技術的なトラブルが発生した際に迅速な対応が求められるため、RHELの有償サポートを利用することで、公式の技術支援を受けることができます。一方、Rocky LinuxやAlmaLinuxは無償のOSですが、コミュニティによるサポートが活発であり、フォーラムやドキュメントを活用することで問題解決を図れます。
また、商用サポートを提供するベンダーがあるかどうかも重要な判断基準となります。特に、長期的な運用を考える場合は、安定したサポート体制が整っているかを事前に確認しておくとよいでしょう。
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6.CentOS Linuxの後継OS4選
CentOS Linuxの後継OSは以下の4つです。それぞれの特徴を解説していきますので、自社のCentOS Linuxの後継OS探しの参考にしてください。
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)
MIRACLE LINUX
AlmaLinux
Rocky Linux
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)はCentOS Linuxの後継OSの1つです。
RHELは、CentOSのもととなったエンタープライズ向けのLinuxディストリビューションです。Red Hatが開発・提供するOSであり、企業向けの環境に適した高度なセキュリティ対策や長期サポートを備えています。特に、商用サポートを利用することで、障害時の迅速な対応が可能になり、安定したシステム運用を実現しやすいのが特徴です。
ただし、有償ライセンスが必要な場合が多く、運用コストが発生する点は注意しなければなりません。特に、ビジネス用途で長期的に安定したサポートを求める場合には、有力な選択肢となるでしょう。
MIRACLE LINUX
MIRACLE LINUXも移行先OSの1つです。
MIRACLE LINUXは、サイバートラスト社が提供する国産のRHELクローンOSです。もともと、企業向けのLinuxディストリビューションとして開発されており、国内企業や官公庁での導入実績があります。
CentOSのサポート終了を受け、MIRACLE LINUX 8.4以降は無償提供されており、CentOSの後継として移行しやすい環境が整っています。RHELと同じソースコードを基にしているため、高い互換性を維持しつつ、国内サポートを受けられる点が特徴です。
また、日本語のドキュメントや技術支援が充実しており、国内企業や個人事業主にとっても扱いやすい点が魅力です。
AlmaLinux
AlmaLinuxは、CentOS Linuxの後継OSの1つです。
AlmaLinuxは、CentOS Linuxの後継として開発されたRHELクローンの無償OSです。CentOS Linuxの終了を受け、CloudLinux社が主導して開発を進めており、RHELとの完全なバイナリ互換性を持っています。そのため、CentOSからの移行がスムーズであり、パッケージ管理や設定ファイルを変更することなく運用を継続できます。
さらに、オープンソースコミュニティによって開発・運営されているため、商用企業の影響を受けにくく、長期的な安定運用が期待できます。企業だけでなく、個人事業主やフリーランスエンジニアにとっても、コストを抑えながら信頼性の高い環境を構築できる点が魅力です。
Rocky Linux
CentOS Linuxの後継OSとしてRocky Linuxもあります。
Rocky Linuxは、CentOSの共同創設者であるGregory Kurtzer氏が主導して開発したRHELクローンOSです。AlmaLinux同様に、CentOS Linuxの終了を受け、RHELの完全互換OSとして設計されており、多くのCentOSユーザーが移行しています。特に、CentOSと同じ使い勝手を維持しつつ、継続的なサポートを受けられる点が大きな特徴です。
さらに、Rocky Linuxは企業やクラウドプロバイダーとも連携を進めており、公式のマイグレーションツールを提供するなど、移行のしやすさにも配慮されています。無料で利用できる上、オープンソースコミュニティによる活発なサポートが受けられるため、長期的な運用にも適しています。
7.CentOSのよくある質問3選
CentOSを扱う上でよくある質問を以下3つに絞って解説していきます。
最新バージョンは?
バージョン一覧を知りたい
Linuxサーバーの管理方法は?
最新バージョンは?
CentOSの最新バージョンはCentOS Stream 9です。
CentOSは従来、「CentOS Linux」としてRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローンOSを提供していましたが、CentOS Linuxのサポート終了に伴い、新たなモデル「CentOS Stream」が登場しました。
バージョン一覧を知りたい
2025年3月12日現在のCentOSバージョン一覧は以下のとおりです。
バージョン名称 | リリース時期 | セキュリティサポート終了日 |
---|---|---|
CentOS7 | 2014年7月7日 | 2024年6月30日 |
CentOS8 | 2019年9月24日 | 2021年12月31日 |
CentOS Stream8 | 2019年9月24日 | 2024年5月31日 |
CentOS Stream9 | 2021年12月3日 | 2027年5月31日 |
CentOS7,8ともにセキュリティサポートが終了しているため、現在も使い続けることはセキュリティリスクを高めてしまいます。CentOS Stream9かそれ以外のOSに移行するのがおすすめです。
Linuxサーバーの管理方法は?
Linuxサーバーの管理には、基本的なコマンド操作やセキュリティ対策が必要になります。特に、CentOSを使用している場合、以下のポイントを押さえておくとスムーズな運用が可能です。
基本的な管理コマンドは以下のとおりです。
用途 | コマンド |
---|---|
システム情報の確認 | uname -a cat /etc/redhat-release |
パッケージ管理(CentOS 7以前) | yum update yum install [パッケージ名] |
パッケージ管理(CentOS 8以降) | dnf update dnf install [パッケージ名] |
サービス管理 | systemctl status [サービス名] systemctl restart [サービス名] |
また、セキュリティ対策としてのコマンドは以下のとおりです。
用途 | コマンド |
---|---|
ファイアウォール設定 | firewall-cmd --add-service=http --permanent && firewall-cmd --reload |
ユーザー管理 | useradd [ユーザー名] passwd [ユーザー名] |
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8.まとめ
今回は、CentOSの特徴やサポート切れの理由、おすすめの移行先OSについてお話ししました。
CentOS Linuxは多くの企業や自治体で利用されていましたが、現在はセキュリティサポート期間外となっているため、早めに移行しなければ、セキュリティリスクが高まってしまいます。
移行先OSが自社の環境に合っているか十分に検討して、移行するようにしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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