IT人材が慢性的に不足している日本国内では、エンジニアに高いニーズがあります。しかし「エンジニアになれば仕事が多数」と安易に考えるのではなく、自分の市場価値を高めるように意識することが大切です。そこで本記事では、エンジニアの市場価値についてさまざまな観点から解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読していただきたいです。
最新技術や実務経験を武器に、自身の市場価値向上を狙うフリーランスエンジニア
業界トレンドを常にキャッチアップし、スキル差別化に努める個人事業主
高収入案件獲得を目指し、専門分野の知識深化を図るITプロフェッショナル
目次
1.市場価値の高いエンジニアとは
市場価値の高いエンジニアとは、端的に言うと社会から求められるエンジニアのことです。
最新技術や需要の高いスキルを持ち「他の人材では代替できない」と企業から判断されるエンジニアは、市場価値が高いと言えます。特にエンジニアの仕事では業務遂行能力が求められ、努力次第で自分の市場価値を高めていくことは十分に可能です。
エンジニアに求められる要素や企業のニーズなどを把握し自己研鑽に励むことで、エンジニアとしての市場価値を高めていきましょう。
2.エンジニアの市場価値が決まる要素
この章では、エンジニアの市場価値が決まる要素として以下の2点について解説します。
スキルと経験
時代の変化
スキルと経験
エンジニアの市場価値が決まる要素としてまず考えられるのが、スキルと経験です。
企業が求めるスキルをどのレベルで持っているのか、さまざまな状況に対してどれだけ柔軟に対応できる経験値があるかによって、企業からのニーズは変化します。扱えるプログラミング言語の種類やプロジェクトを成功に導いた経験など、案件獲得時にはポイントを整理してアピールすることが大切です。
時代の変化
エンジニアの市場価値を決める要素としては、時代の変化も挙げられます。
時代が変化すれば、企業のニーズも変化します。どれだけ専門的なスキルや経験を持っていても、多くの企業が求めない者であれば市場価値は高まりません。現代の開発現場で求められる人物像を把握し、自分のスキルや経験がどう活かせるのかを整理することが大切です。
新たなスキルの習得を目指すにあたっても、どのようなスキルにニーズがあるのか考えることが重要でしょう。
3.エンジニアの市場価値の推移
この章では、エンジニアの市場価値が近年どのようになっているのか、以下の2つの観点から解説します。
エンジニアに対する需要
エンジニアの年収
エンジニアに対する需要
エンジニアに対する需要は現時点で高く、今後も高まっていくと考えられます。
上記は、経済産業省が2019年に行った調査です。上記によると、2018年時点で既に22万人のIT人材が不足しており、2030年には最大で約79万人もの人材が不足すると考えられています。
2019年の調査ではありますが、企業のIT活用が急速に進んでいる現状も踏まえるとエンジニアに対するニーズは年々高まっていっていると考えられるでしょう。また同調査では少なく見積もっても2030年で約16万人のIT人材が不足するとしている点からも、エンジニアのニーズは今後高まっていくと予想されます。
エンジニアの年収
dodaが公開しているデータによると、近年のエンジニアの平均年収は以下のように推移しています。
引用元:https://doda.jp/engineer/guide/it/003.html
上記を見ると、全職種合計の平均と同様にエンジニアの年収も近年増加し続けています。2020年から2021年にかけて一時的に平均年収が下がったのは、新型コロナウイルスの影響による全体的な雇用の縮小だと考えられます。
全職種合計よりもエンジニアの平均収入の方が40万円程度高く推移していることからも、エンジニアのニーズは高いまま推移していると考えられるでしょう。
4.市場価値が高まりやすいエンジニアの特徴
この章では、市場価値が高まりやすいエンジニアの特徴として以下の4点を紹介します。
学習意欲が高い
ユーザー目線を常に意識している
コミュニケーション能力が高い
柔軟な対応ができる
学習意欲が高い
市場価値が高まりやすいエンジニアの特徴としてはまず、学習意欲が高いことが挙げられます。
エンジニアの業界では、新たな技術や情報が常に出て来るためです。今学習した最新情報やスキルも、数年後には過去のものになってしまう可能性があります。業界の情報に対して常に敏感になり、最新情報にキャッチアップしていかなくてはいけません。
新たな知識やスキルを積極的に身に付けようとする学習意欲の高さがないと、エンジニアとしてキャリアアップしていくのは難しいでしょう。
ユーザー目線を常に意識している
ユーザー目線を常に意識していることも、市場価値が高いエンジニアに共通する特徴の1つです。
システム開発を行う際に手元の作業をどうこなすかだけでなく、ユーザー目線になって必要な機能や不要な機能を常に考えることができます。ユーザー目線に立って開発を進めることで、本当に必要な作業と省略すべき作業の判断も可能です。
開発の目的はあくまでもユーザーニーズを満たすことであり、ニーズを満たせるエンジニアであれば市場価値も高まっていくでしょう。
コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力の高さも、エンジニアとしての市場価値を上げるには重要な要素です。
エンジニアと言われると、自分の作業を一人で黙々と行うイメージを持つ方もいるかもしれません。しかしエンジニアの業務を進める中では、チームメンバーやクライアント、その他の関係者とやり取りをすることが日常的にあります。
自分の考えを簡潔に分かりやすく伝えて相手の考えを素早く理解する能力があれば、プロジェクトを円滑に進められるでしょう。
柔軟な対応ができる
エンジニアの市場価値は、柔軟な対応力によっても高まります。
プロジェクトを進める中では、想定外のできごとも起きるものです。予期しない事態に陥った際に円滑に対応できるエンジニアは、クライアントから重宝されます。IT業界は変化が大きく、新たな技術を積極的に取り入れる柔軟さも必要です。
またさまざまなクライアントの担当者とスムーズにコミュニケーションをとっていくためにも、柔軟さは重要な要素でしょう。
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5.市場価値が高いエンジニアの職種
この章では、市場価値が高いエンジニアの職種として以下の11職種を紹介します。
IoTエンジニア
VR・ARエンジニア
テックリード
AIエンジニア
AIエンジニアは、AIを用いた開発や研究、データによる学習などを行うエンジニアです。
AIテクノロジーは私たちの日常生活のいたるところに浸透し始めており、今後も医療やその他の産業で利用が拡大していくと思われます。従来はAIの思考をプログラミングによってくみ上げる業務が中心でしたが、現在ではシステムへの組み込みや深層学習などのスキルも必要です。
フリーランスボードの案件・求人データによると、AIエンジニアの平均月収は80.3万円、年収の目安は964万円となっています。
IoTエンジニア
IoTエンジニアとは、IoT技術を活用した開発を行うエンジニアです。
IoTとは、さまざまなものをインターネットに接続する技術です。センサーによって動きや音、熱などを感知してデータ化し、インターネットを通じて蓄積します。近年は自動運転者や家電製品などさまざまな製品にIoT技術が取り入れられるようになっています。
工場をはじめとした産業分野でもIoTの活用は進んでおり、IoTエンジニアの市場価値は高まっていると考えられるでしょう。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」のデータによると、IoTエンジニアの平均年収は557.6万円です。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、情報資産の保護を主な業務目的としているエンジニアです。
現代ではほとんどの企業がIT化を進めており、情報資産保護の重要性は普遍的なものになってきているとも考えられます。具体的には、システム上のセキュリティ性の確保やセキュリティ対応への体制づくりなどが主な役割です。
フリーランスボードの案件・求人データによると、セキュリティエンジニアの平均月収は78.5万円、年収の目安は942万円となっています。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、ITインフラ環境の構築や保守運用を主な役割とするエンジニアです。
ビジネスやシステム開発において使用するサーバーや各種デバイス、ネットワークなどがインフラに該当します。企業のIT活用が活発になっている現代においては、基本であるインフラ技術に対するニーズも高まっていると考えられるでしょう。
フリーランスボードの案件・求人データによると、インフラエンジニアの平均月収は74.9万円、年収の目安は899万円となっています。
クラウドエンジニア
クラウドエンジニアは、システムの設計や構築をクラウドサービス上で行うエンジニアです。
近年では、AWSやGCP、Azureといったパブリッククラウドを利用する企業が増えています。企業のクラウドサービス活用が活発になっている現状では、クラウドエンジニアの需要も高まっていると考えられるでしょう。
フリーランスボードのデータによると、クラウドエンジニアの平均月収は77.0万円、年収の目安は924万円となっています。
フルスタックエンジニア
フルスタックエンジニアは、システム開発に関連する全工程を1人で進められる幅広いスキルを持ったエンジニアのことです。
フルスタックエンジニアに幅広い業務を担ってもらうことでメンバー同士が連携するコストが減り、プロジェクトをスムーズに進めることも期待できるでしょう。エンジニア人材が慢性的に不足している現状では、さまざまな業務を任せられるフルスタックエンジニアのニーズは高いと考えられます。
フリーランスボードの案件・求人データによると、フルスタックエンジニアの平均月収は81.7万円、年収の目安は980万円となっています。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、ビジネスで使用するネットワークの構築や保守運用を担うエンジニアです。
ITネットワークの整備は大半の企業にとって重要な要素であり、ネットワークエンジニアのニーズは今後も高いまま残り続けると考えられます。特にクラウドに関する技術や仮想化に詳しいネットワークエンジニアであれば、市場価値はより高いでしょう。
フリーランスボードの案件・求人データによると、ネットワークエンジニアの平均月収は70.7万円、年収の目安は849万円となっています。
VR・ARエンジニア
VR・ARエンジニアは、AR・VR技術を活用した開発を行うエンジニアです。
AR・VRシステム自体の技術開発だけでなく、AR・VRを活用した新規サービスを開発するエンジニアもVR・ARエンジニアに含まれるケースが多いと言えます。AR・VRは私たちの日常生活や産業分野など幅広いシーンで活用されており、今後も市場価値が高いエンジニアの1つだと言えるでしょう。
VR・ARエンジニアの年収に関する公的なデータはありませんが、平均年収は500万円程度だと言われています。まだ若いエンジニアが多いと思われる分野であり、今後平均年収が高まっていくことも十分に予想できるでしょう。
ブロックチェーンエンジニア
ブロックチェーンエンジニアは、ブロックチェーン技術を活用した開発を行うエンジニアです。
ブロックチェーン技術は、ネットワーク上に接続されているデバイスにデータを分けて格納し、分散的に連続性を保つ技術です。改ざんに強い特性を持つことから、暗号資産やメタバースなど近年注目度の高い分野で利用されています。ブロックチェーンエンジニアの市場価値も、今後高まっていくことが予想できるでしょう。
フリーランスボードの案件・求人データによると、ブロックチェーンエンジニアの平均月収は80.5万円、年収の目安は966万円となっています。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、データ分析やデータを基にした提案を行うエンジニアです。
近年では多くの企業で、ビッグデータの活用が進められています。データ自体は多くの企業が大量に持っていますが、有効活用は容易ではありません。そこで、データ活用の専門家であるデータサイエンティストのニーズが高まっていると言えるでしょう。
フリーランスボードの案件・求人データによると、データサイエンティストの平均月収は82.8万円、年収の目安は993万円となっています。
テックリード
テックリードは、開発のプロジェクトチームを技術面からリード、サポートするリーダー職です。
成果物の品質担保だけでなく、チーム全体の生産性向上やその他のプロジェクト進行に必要なマネジメント業務を行います。開発現場における上位者をテックリードと呼び、IT開発の現場の数だけテックリードの需要があると考えられるでしょう。
開発チームのリーダーであることから、一般的なエンジニアよりも年収が高いことが期待できます。企業やプロジェクトによって年収は異なりますが、年収1,000万円以上も十分に狙える職種でしょう。
6.エンジニアが市場価値を高めるためのポイント
この章では、エンジニアが市場価値を高めるためのポイントを以下の6点に整理して解説します。
複数の技術や強みを持つ
ポータブルスキルを身につける
マネジメントスキルを磨く
先端技術や需要の高い言語を学ぶ
資格を取得する
キャリアの方向性を考える
複数の技術や強みを持つ
エンジニアが市場価値を高めるためには、複数の技術や強みを持つことが大切です。
現代のエンジニアには、システム開発において幅広いスキルが求められる傾向があるためです。1つの分野だけでなく複数の分野において技術を持つことで、エンジニアとして求められるシーンが増えると期待できます。
たとえばプログラミング言語に関しても1つの言語だけでなく数個程度の言語は扱えた方が市場価値が高まります。例えばJavaを扱えるなら、PHPやPythonなども併せて覚えた方が携われる開発現場の数が増えるでしょう。
ポータブルスキルを身につける
エンジニアとしての市場価値を高めるためには、「ポータブルスキル」を身に付けることもおすすめです。
ポータブルスキルとは、職種や業種に限らずさまざまな局面で役立つスキルのことを指します。たとえば論理的思考能力や交渉力、プレゼンテーションスキルなどは、職種や業種に限らず役立つポータブルスキルだと言えるでしょう。
ポータブルスキルはどの開発現場でも役立つため、求められるケースが増える、つまり必然的にエンジニアとしての市場価値が高まると考えられます。変化の激しいIT業界においても、ポータブルスキルは効果的なスキルです。
マネジメントスキルを磨く
マネジメントスキルを磨くことも、エンジニアとしての市場価値を高めるには効果的です。
開発の現場は、原則としてチームで協力しやって推進していくためです。チーム全体の生産性を高めるためには、マネジメントスキルが役立ちます。
また、エンジニアがマネジメントスキルを身に付けることでプロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャー、テックリードなどの役割を担うことが可能になります。
マネジメント系の職種は総じて収入が高い傾向にあり、市場価値を高めるのにマネジメントスキルは適していると言えるでしょう。
先端技術や需要の高い言語を学ぶ
先端技術や需要の高い言語を学ぶことで、より多くのクライアントから求められるエンジニアになれます。
ニーズの高いスキルが身について入れば、それだけ活躍できる現場が増えるためです。たとえば近年では、AIやIoT、ブロックチェーンなどの活用に注目が高まっていると言えるでしょう。
ただしニーズは時代と共に変化するため、最新情報に対して常にアンテナを高くしておく必要があります。先ほど紹介したAIやIoTなどの技術も、今後ニーズがどう変化していくのかは随時確認していくことが大切です。
資格を取得する
エンジニアとしての市場価値を高めるためには、資格の取得もおすすめします。
資格取得に向けた学習を通じて、スキルや知識を体系的に身に付けられるためです。業務に合わせてスキルや知識を吸収していけば実践力は身につきますが、体系的に学ぶ機会は現場ではなかなか得られません。
知識が体系的に身についているエンジニアであれば、クライアントから信頼を得やすいでしょう。
また、資格取得によって自分の実力を客観的に示せる点も重要です。エンジニアのスキルや知識を書類や面接などですぐに示すことは簡単ではありませんが、資格を取得した旨を伝えるだけで一定以上の実力が示せます。
キャリアの方向性を考える
エンジニアとしての市場価値を高めようと考えるうえでは、今後のキャリアの方向性を考えることも大切です。
エンジニアのキャリアの方向性は、おおむね以下の3つに分けられます。
スペシャリスト
企画職
マネジメント職
現在業務で使用しているスキルを磨いたり幅広いスキルを身に付けて行ったりすることで、エンジニアとしての専門性を高めていくことももちろんキャリアパスの1つです。ただしその他にも提案力やヒアリング能力を伸ばして企画系の職種を目指したり、管理能力を伸ばしてマネジメント職を目指したりするキャリアパスも考えられます。
「〇〇のキャリアパスが優れている・正しい」といったものではありません。志向や適性などを整理しつつ、自分が最も輝けるキャリアがどういったものなのかを考えてみましょう。
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さまざまなサイトやサービスが、エンジニアの年収診断や市場価値診断を行えるツールを用意しています。
身に付けているスキルやこれまでの経験についての質問に答えていくことで、自分の市場価値を簡単に確認できます。現在の市場価値を手軽にチェックする機会として、こうしたツールは大変優れていると言えるでしょう。
また、自分にはどのような案件がマッチするのか確認することも、今後のキャリアパスを考える場合には大切です。
たとえば「フリーランスボード」では、数多くのフリーランスエージェントが掲載するITフリーランスエンジニア・ITフリーランス向けの案件・求人を一括検索できます。自分の得意なスキルを活かせる案件がどんなものか知りたい方は、ぜひお気軽にご利用ください。
また、スカウト機能が搭載されているので、エンジニアとしての現時点での市場価値が把握できます。
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8.まとめ
エンジニアの市場価値は、スキル・知識や時代ごとのニーズによって変化します。エンジニア全体の市場価値は現状でも高く、今後もしばらくは高まり続けると考えられるでしょう。特にAIエンジニアやIoTエンジニアなど近年ニーズが高いスキルを持ったエンジニアであれば、市場価値は高いと言えます。
市場価値を高めるには高い学習意欲を持ち、ポータブルスキルやマネジメントスキルなどを身に付ける意識が重要です。自分のキャリアの方向性をよく考え、エンジニアとしてイキイキと働けるように自分らしく成長していくことが重要でしょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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