売上が一定額を超えると、消費税の納付義務が発生します。この納付義務の発生を判断するための重要な基準が「課税売上高」です。課税売上高は消費税の納税義務を判定する際の基準となる売上高であり、消費税に関するさまざまな計算や判断において重要な役割を果たします。
具体的には課税売上高は消費税の納税義務を判断するだけでなく、仕入税額控除の計算や簡易課税制度の適用判定にも用いられます。仕入税額控除とは課税売上高に関連する仕入れや経費にかかる消費税を控除するための制度で、課税売上高がこの控除の計算に影響を与えます。また簡易課税制度は一定の条件を満たす事業者が簡便な方法で消費税の計算を行うための制度で、課税売上高がその適用の可否を判断する際に重要です。
課税売上高が消費税にどのように関連するかについては、具体的に理解していない方も多いかもしれません。課税売上高にはどの取引が課税売上高としてカウントされるかやその算出方法や目的についての詳細な理解が求められます。
そこでこの記事では課税売上高の基本的な概念について詳しく説明し、課税売上高に含まれる取引の種類やその算出や目的そしてどのように消費税の納付義務や控除計算に影響を与えるのかについても解説します。ぜひこの記事を参考に課税売上高に関する理解を深めてください。
目次
1.課税売上高とは
課税売上高とは消費税が適用される取引の売上金額と輸出取引などの免税売上金額の合計からその取引に関連する売上返品・値引き・割戻しの金額を差し引いた額です。計算式で表すと以下のようになります。
課税売上高 = 消費税課税対象取引の売上高 + 輸出取引などの免税売上金額 - 売上返品、値引き、割戻しの合計金額
免税売上は課税売上高に含む
課税売上とは次の4つの条件を全て満たす売上のことを指します。
国内で行われる取引(国内取引)であること。
事業として行う取引であること。
対価を受け取って行う取引であること。
資産の譲渡、資産の貸付け、または役務の提供であること。
なお非課税取引は課税売上には含まれませんが、免税取引は課税売上高の計算に含まれることになります。
それぞれの性質については、後ほど詳しく説明します。
課税売上高は経費を差し引かない額
課税売上高を計算する際には、基準となる売上から売上戻し・売上値引・売上割戻を控除する必要があります。ただし課税売上高と収入(利益)は別の概念であることを理解しておくことが重要です。
経費を課税売上高から差し引くことはできないため、これらを混同しないように注意しましょう。
2.課税売上高が判定に関わる主要な3つのケース
課税売上高について算出する目的をしっかりと理解することが重要です。課税売上高による判定が納税に直結するため、事業を行う方は課税売上高を正確に把握しておく必要があります。
消費税納税義務の判断基準
消費税は「間接税」の一種で、負担者と納税者が異なります。事業者は商品やサービスを販売する際に購入者から消費税を預かり、同時に商品を仕入れたり設備を導入したりする際には自ら消費税を支払います。
つまり、課税対象商品には生産から流通までの各段階で消費税がかかっています。
そのため事業者が消費税を納める際には、預かった消費税額から支払った消費税額を差し引いた額を納税することになります。またすべての事業者が消費税を納める義務があるわけではありません。
実務負担を考慮して、納税義務の有無は基本的に2年前の課税売上高で判定されます。
具体的には「基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうか」で判断されます。
仕入税額控除の算出方法
消費税は生産から販売までの各段階で課税されるため、一つの課税対象に対して二重または三重に課税されてしまう可能性もあります。これを防いで適切に消費税を納めるための仕組みが「仕入税額控除」です。
例えば卸売業者は商品を仕入れる際に取引先に消費税を支払い、商品を販売するときには消費者から消費税を預かります。
消費税の負担者は消費者であるため預かった消費税を全額納税すると、対象取引において過剰な納税が発生します。そこで売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて納税する「仕入税額控除」が適用され、二重課税が防止されています。
仕入税額控除の原則的な計算方法には次の3つがあります。
全額控除
個別対応方式
一括比例配分方式
どの方法を選ぶかは、課税売上高と課税売上割合によって決まります。課税売上割合は、以下の計算式で求められます。
課税売上割合=(課税売上高+免税売上高)/(課税売上高+免税売上高+非課税売上高)
課税売上高が5億円以下でかつ課税売上割合が95%以上の場合は「全額控除」を、そうでない場合は「個別対応方式」または「一括比例配分方式」で計算します。
簡易課税制度の適用基準
簡易課税制度とは中小企業の消費税納税負担を軽減するために設けられた制度です。消費税を納める際は通常「一般課税」という方法で計算され、以下のように算出されます。
税額=売上にかかる消費税額-仕入れ時に支払った消費税額
ただし一般課税では取引を以下の4つに分類する必要があり、その手続きは煩雑です。
課税取引
免税取引
非課税取引
不課税取引
この手間を軽減するために設けられたのが「簡易課税制度」です。簡易課税制度は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限り選択可能です。
なお基準期間とは個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度を指します。
3.年間の課税売上高を確定申告で確認する方法
課税売上高は消費税および地方消費税の確定申告書の「⑮課税資産の譲渡等の対価の額」に記載されています。会計ソフトを利用している場合、ガイドに従って帳簿を仕上げることで動的に反映されます。
なお、下画像の赤枠内が「⑮課税資産の譲渡等の対価の額」となります。
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4.消費税に関連する取引の種類
取引には「国内取引」と「輸入取引」があり、国内取引はさらに3つの区分に分かれています。各区分の概要をしっかりと理解しておくことが重要です。
国内取引
国内取引とは日本国内で行われる取引や経済活動を指します。具体的には、商品の販売・サービスの提供・譲渡・貸付などあらゆる取引を含みます。
課税取引
「課税取引」とは消費税が適用される取引のことを指します。消費者が日常的に行う経済活動の多くが課税取引に該当します。
課税取引の条件として「国内で行われる取引であること」が求められます。
資産の譲渡や貸付についてはその資産が国内に存在している場合に課税取引となります。役務の提供の場合は、実際に役務が提供された場所が国内であることが条件です。
これらの条件を満たさない取引は、消費税の課税対象外となります。
非課税取引
国内で行われる取引でも消費税が課されない取引があり、これらを非課税取引と呼びます。非課税取引とは消費税の課税対象とならないものや社会的な配慮から消費税が免除されている取引です。
例えば主に以下のような取引が非課税となります。
土地の譲渡や貸付
有価証券(国債、社債、株式、小切手、約束手形など)の譲渡貸付金や資産に対する利子、保険料に基づくサービス
郵便切手、印紙、証紙、商品券などの取引
国や地方公共団体、またはこれらから委託された事業者によるサービスや手数料、外国為替に関する手数料
健康保険適用の療養費、医療費、入院費、高齢者や障害者のための費用
介護保険法で規定される介護サービス費や障害者の生活支援費
医師や助産師による助産サービスおよび関連費用
墓地や埋葬に関する法律で規定される埋葬費用や火葬費用
身体障害者用の車椅子や義足などの費用
学校用教科書の譲渡や取引
住宅の貸付
免税取引
国内取引の中で消費税が適用されない取引の一つに「免税取引」があります。
主には例えば以下のような取引が免税対象となります。
国内で製造された商品を国外に譲渡または貸付する場合
非居住者に対して鉱業権・工業所有権・著作権・営業権などの権利を譲渡または貸付する場合
非居住者に対してサービスを提供する場合
輸入取引
国外から保税地域に到着した品物(輸入品)は、消費税の課税対象となります。これらを受け取るためには、消費税を支払う必要があります。
この場合消費税を納めるのは、輸入品を受け取る人です。免税事業者であっても商売を行っていない個人であっても、受け取る人が納税義務を負うことを理解しておく必要があります。
5.消費税を納める条件
課税事業者として扱われるかどうかは、基準期間の課税売上高などによって決まります。それでは具体的に課税売上高がどの程度になると消費税を支払う必要があるのでしょうか。
以下では、課税売上高による課税事業者の要件とその他の条件による消費税の支払いについて説明します。
課税売上高が1,000万円を超えた場合
課税事業者として消費税を支払う条件は、基準期間または特定期間における課税売上高が1,000万円を超えていることです。特定期間の給与支払い額でも判断できますが、ここではその詳細は省略します。
基準期間と特定期間については以下の通りです。
基準期間
個人事業主の場合、前々年(1月1日~12月31日)が基準期間となります。法人の場合は前々事業年度が該当します。
例えば2023年の課税売上高が1,000万円を超えた個人事業主は、2025年から課税事業者となります。
特定期間
個人事業主では前年の1月1日から6月30日まで、法人では前事業年度の開始日から6か月間が特定期間です。この期間中に課税売上高が1,000万円を超えた場合も課税事業者となります。
消費税課税事業者選択届出書を提出した場合
基準期間における課税売上高が1,000万円未満であっても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば自主的に課税事業者として登録することができます。
この手続きをすることでケースによっては消費税の還付を受けられるため、大規模な設備投資を計画している場合などに利用されることがあります。
届出書の提出はどの事業者でも可能であり、特定の理由がなくても課税事業者としての扱いを受けることができます。
適格請求書発行事業者として登録した場合
インボイス制度の導入に伴って適格請求書(インボイス)を発行するために適格請求書発行事業者として登録した場合、課税売上高に関係なく消費税の納税義務が発生します。
免税事業者であっても適格請求書発行事業者として登録することで課税事業者となるため、登録したすべての事業者には消費税を納める義務が課せられます。
6.消費税の仕組み
ここまで課税売上高や課税事業者について説明してきましたが、消費税の仕組みについて簡単に復習しておきましょう。
消費税の計算方法
消費税の納税額を算出する際には、税が二重に課されないようにすることが重要です。
たとえば、品物が販売される過程では、事業者が製造から消費者に渡るまでに複数の取引を行います。各事業者は「取引時に受け取った消費税」から「自分が支払った消費税」を差し引いた額を納税します。
これにより、最終的に消費者が支払った消費税の総額と一致します。一つの事業者が全ての消費税を納付するわけではなく、各取引段階で必要な税額のみを計算して納税します。
消費税は間接税
消費税は間接税の一形態です。最終的な負担者は消費者ですが、実際に納税するのは商品やサービスを提供する事業者です。事業者は通常課税売上から預かった消費税額から、仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた額を納めることになります。
消費税が課税されるのは、一般的に商品が引き渡される時や役務が提供される時点です。
7.課税事業者になる際の留意点
免税事業者から課税事業者に変更した際に留意すべき点をお伝えします。
消費税の納付が必要
課税事業者になると、消費税の納税義務が発生します。毎年消費税を支払う必要があるため、事業資金を分けて管理することが重要です。
売上に含まれる消費税は後で納付するため、資金繰りの際に他の用途に使ってしまう恐れがあります。納税のタイミングを把握し、期限内に確実に納税できるように準備しておきましょう。
経費処理が複雑になる
課税事業者になると消費税の申告書を作成する必要があり、事務作業が増加します。
また経理処理では税率を標準税率の10%と軽減税率の8%に分ける必要があり、複雑さが増します。
ただし「簡易課税制度」を利用すれば、消費税の納税額を比較的簡単に計算できるようになります。
課税事業者として登録する際には一般課税か簡易課税制度のどちらを選ぶかも検討する必要があります。
8.一般課税方式と簡易課税制度の違い
課税事業者が支払う消費税の額は、原則として「受け取った消費税額から仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた金額」となります。これを「一般課税方式」と呼びます。
消費税の計算において支払った消費税額を正確に把握することは、事業者にとって大きな負担となる場合があります。そのため中小企業は要件に合致する場合、より簡便な方法で消費税を計算できる「簡易課税制度」を選択することができます。
簡易課税制度では仕入先に支払った消費税額を売上にかかる消費税額に事業区分ごとに設定された「みなし仕入率」を掛けることで算出します。
この制度を選ぶ場合は「消費税簡易課税制度選択届出書」を、原則として課税期間の開始日の前日までに提出する必要があります。
さらに一度簡易課税制度を選択すると、課税期間が2年経過するまで変更できないことに注意が必要です。
またインボイス制度の導入に伴い、「2割特例」が設けられています。これは免税事業者から課税事業者に変わった事業者に適用されるもので、納税額の軽減を目的とした制度です。
2割特例を利用すると、国に支払う消費税額を売上税額の20%に抑えることができます。2割特例の適用期間は、2023年(令和5年)10月1日から2026年(令和8年)9月30日までの課税期間です。
なおこの特例は、一般課税または簡易課税のいずれの方式を選んでいても適用可能です。
9.インボイス制度が課税売上高1,000万円以下の免税事業者に及ぼす影響
課税売上高が1,000万円以下の免税事業者は、インボイス制度の導入によって大きな影響を受ける可能性があります。ここではインボイス制度が免税事業者に与える影響について説明します。
課税事業者への移行を検討する際や今後の対応策を考える際に役立ててください。
仕入税額控除が受けられなくなる
インボイス制度が導入された後、仕入税額控除を受けるためには適格請求書の発行と保存が必須となります。適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
そしてこの登録申請書を管轄の税務署に提出して承認を受ける必要があります。
なおインボイス発行事業者として登録できるのは、消費税の課税事業者に限られています。もし売手が免税事業者で買手が課税事業者の場合には適格請求書が発行されないため、仕入れ側の消費税負担が増加することになります。
消費税負担の増加による交渉や取引終了の可能性
免税事業者は適格請求書を発行できないため、取引先である課税事業者は仕入税額控除を受けることができません。このため取引先は税負担の増加を避けるために、減額交渉を持ちかけてくる可能性があります。
また課税事業者は税負担の増加を避けるために、免税事業者との取引を終了することも考えられます。
消費税の納税義務が生じる
免税事業者から課税事業者に移行して適格請求書発行事業者として登録すると、取引先に消費税の納税負担をかけることはありません。このため仕入税額控除の影響を受けることはありません。
しかし自社の消費税納税義務は増えることになります。
課税事業者になると、免税事業者時代よりも税負担が増えることを理解しておきましょう。
10.インボイス制度導入前に課税売上高1,000万円以下の免税事業者が取り組むべき対策
インボイス制度の導入に伴い、免税事業者には様々な影響が及びます。これらの影響は事業の継続に重要な要素となるため、制度開始までに適切な対策を講じることが重要です。
以下では特に注意すべきポイントについて解説しますので、免税事業者の方はぜひご確認ください。
取引先が課税事業者か免税事業者かを確認する
インボイス制度によって影響を受けるのは、主に取引先が「課税事業者」である場合です。
多くの課税事業者は仕入税額控除を利用して消費税を正しく納付していますが、インボイス制度が始まると仕入税額控除を受けるためには適格請求書の発行と保存が必須になります。
そのためこちらが免税事業者であった場合、税負担が増える可能性があります。税負担の増加を避けるために、免税事業者との取引を見直す企業も増えるかもしれません。
こちらが免税事業者である場合は取引先が課税事業者であるかどうかを確認し、今後の取引について検討しておくことが重要です。
課税事業者への切り替えを検討する
課税事業者に転換して適格請求書発行事業者として登録すれば、取引先に対して適格請求書を発行できるようになります。これにより取引先は仕入税額控除を引き続き受けることができるため、税負担の増加を防ぐことができます。
しかし課税事業者となると自身に消費税納税の義務が生じるため、納税負担が増える点を考慮する必要があります。主な取引先が免税事業者であれば適格請求書を発行する必要はないため、課税事業者への変更は必ずしも必要ではありません。
11.課税事業者にならない場合の対策
適格請求書発行事業者として登録することが納税義務の発生につながると説明しました。もし課税事業者にならない選択をする場合には、どのような対応が考えられるでしょうか。
課税売上高が基準値を超えないようにする
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、必然的に課税事業者になります。したがって免税事業者のままでいたい場合は、事業規模を縮小するなどしてこの売上高を超えないようにするのも一つの対策です。
免税事業者のままでいる
売上が基準額の1,000万円を超えない場合、免税事業者のままでいる選択肢もあります。特に取引先が一般消費者のみであれば、適格請求書の発行の必要性が低いこともあります。
業種や業態によっては、免税事業者で問題ないケースも考えられます。
適格請求書発行事業者としての登録を検討する際は、事業規模・将来の売上予測・納税による負担などを総合的に考慮して判断することが重要です。
12.申告期限を過ぎた場合
消費税の申告期限を過ぎると、以下のようなペナルティが課される可能性があります。消費税の申告期限は個人事業主の場合はその年の3月31日までです。
申告が遅れた場合、次の附帯税が発生する恐れがあります。
延滞税:申告期限から遅れた日数に応じて課せられ、期限翌日から2ヶ月を基準に税率が異なる。
無申告加算税:納税すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分に20%が課せられる。
過少申告加算税:納税額が少なかった場合で、修正申告よりも前に税務署から調査・更正の通知があった場合に課せられる。
重加算税:特に悪質な場合に課せられる。期限内申告であれば納付すべき税額の35%、期限後申告の場合は40%。
これらのペナルティはたとえ納税額が少ない場合でも発生する可能性があるため、申告期限を守るようにしましょう。
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13.個人事業主が消費税を抑えるための節税ポイント
個人事業主が消費税を抑えるためには、以下のポイントに注意することが重要です。税金の負担を軽減し、事業に余裕を持たせるための参考にしてください。
売上を抑え経費を適切に活用する
消費税を納める義務が発生するのは、基準期間や特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合に限られます。したがって売上を1,000万円以下に抑えつつ経費を適切に管理することで、消費税の納税義務を回避できます。
売上調整が可能であれば、これを活用して節税を図りましょう。
事業にあわせて課税方式を選択する
消費税の納税額は原則課税方式と簡易課税方式のどちらかで計算します。原則課税方式では年間の課税売上高から実際に支払った消費税額を差し引いて納付額を計算します。
一方簡易課税方式では、売上にかかる消費税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて経費の税額を算出します。
例えば小売業の場合で売上高にかかる消費税が160万円、経費にかかった消費税が80万円の場合には納税額は次のようになります。
原則課税方式: 売上にかかる消費税額 - 仕入にかかる消費税額 = 1,600,000円 - 800,000円 = 800,000円
簡易課税方式: 売上にかかる消費税額 - (売上にかかる消費税額 × みなし仕入率) = 1,600,000円 - (1,600,000円 × 0.8) = 320,000円
このように、選択する課税方式によって納税額は大きく変わります。どちらの方式が節税に有利かは一概には言えないため、自身の事業状況に応じて最適な方法を選びましょう。
2割特例の活用
2023年10月1日から課税事業者となった個人事業主は、2割特例の適用が可能です。この特例を利用することで消費税額が8割控除されるため、原則課税方式や簡易課税方式よりも低い納税額になる可能性があります。
2割特例も検討し、節税効果を最大化しましょう。
14.まとめ
消費税の計算を行う前に課税売上高が計算基準として用いられることが、税額に大きな影響を与える重要な要素であることが理解できたかと思います。
課税売上高は消費税の納付義務の判定・仕入税額控除の計算・簡易課税制度の適用など、さまざまな税務処理において基準となります。消費税の額が大きく変動する可能性があるため、課税売上高の理解は不可欠です。
税理士に依頼している場合には、詳細な知識を持たなくても税理士が課税売上高の計算や関連業務を担当してくれることが多いでしょう。しかし納税義務の判定や簡易課税制度の利用が資金繰りや事業運営に与える影響を考えると、基本的な知識を持っておくことは非常に重要であるといえます。
税務関連の知識があれば、自身の状況に応じた最適な対応や計画を立てるのに役立ちます。
特に自分で事業を運営している方や税務に関わる方にとって、課税売上高の理解は不可欠です。消費税申告の際には頻繁に課税売上高が関わるため、その基本的な知識をしっかりと把握しておくことが大切です。
課税売上高に関する知識は税額計算や税務処理においてよく使用されるため、忘れてしまった場合はこの記事を参照して税額計算に誤りがないように確認しましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。