ここ最近、フィンテック(FinTech)という言葉を耳にする機会が増えたと思います。とはいえ、フィンテック(FinTech)についてきちんと理解できている人はそう多くはないのではないでしょうか。
フィンテックは私たちの多くにとって身近なものといえます。普段利用しているサービスの中にもフィンテックなしには機能しないものが多くあります。
例えば、クラウドファンディングやモバイルペイメントにもフィンテックが関係しています。さらに、誰もが知っているような有名企業の中にもフィンテックにまつわる事業を展開している企業が多くあります。
本記事では、フィンテックの概要を押さえた上で、フィンテックについて使われているテクノロジー、主なサービス、注目されている理由などを解説します。
本記事の最後には、フィンテックの有名企業を紹介します。
目次
1.フィンテック(FinTech)とは
フィンテック(FinTech)とは金融を意味する「Finance」と、技術を意味する「Technology」を組み合わせた造語です。
簡単に説明すると、フィンテックとはITを活用した金融サービス全般です。近年におけるフィンテックの代表的なサービスとしてモバイルペイメントや暗号資産、クラウドファンディングなどが挙げられます。
フィンテックは銀行や金融機関だけでなく、スタートアップやテクノロジー企業の参入によって、金融業界全体のイノベーションを加速させています。
後述いたしますが、特にAIを用いた信用リスクの評価やブロックチェーンを使った安全な送金システムなど、新しい技術を取り入れることで、従来の金融サービスに比べてコスト削減や迅速な取引が可能になっています。
現在、フィンテックはITを活用した最先端の金融サービスを指す言葉として一般的に使われています。1950年代に誕生したクレジットカード、1960年代に普及したATMなどもフィンテックに含まれます。
フィンテックの進化によって生活における利便性が高まっているだけでなく、金融サービスの透明性、さらには競争力が向上しています。
2.フィンテック(FinTech)に使われているテクノロジー
フィンテック(FinTech)にはこの言葉が意味するとおり、さまざまなITが使われています。
フィンテック(FinTech)に使われているテクノロジーとして、主に以下の5つが挙げられます。
ブロックチェーン
IoT
生体認証
AI(人工知能)
API
それぞれ確認していきましょう。
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは暗号資産の基盤となるデータベース技術のことです。
ブロックという単位をチェーン(鎖)のようにつなげていき、データを暗号化し、保管します。それぞれのブロックは直前のブロックの内容をハッシュ化したものとして保持しています。
このため、特定のブロックのデータを変えると、その後のブロックを全部書き換えなければなりません。
暗号化によって私たちは大切な情報を守れます。近年、データの改ざんなどの不正行為が蔓延しているため、ブロックチェーンを活用する企業は増えています。
IoT
IoT(Internet of Things)とはインターネットとモノを相互接続する技術です。モノにインターネットを接続させることで、私たちの利便性はさらに高まります。
例えば、介護施設での見守りシステムやリアルタイムでの交通量の制御などにもIoTが導入されています。
フィンテックの分野では、ドライバーの運転状況を車両に搭載したIoTセンサーが特によく知られています。自動車保険の保険料率を動的に算定する保険商品に関係するサービスにも結び付くものです。
生体認証
生体認証とは人間の身体的特徴による認証システムです。例えば、声紋、指紋、眼球の虹彩の生体情報に基づき個人を認証します。
生体認証で使用するデータは個人情報となるため、高度なセキュリティが不可欠です。
生体認証は金融サービスへのログインや口座情報の照会、スマートフォンのアクセス権の取得などで用いられています。
パスワードのように情報の漏えいリスクがありません。
AI(人工知能)
AI(Artificial Intelligence)とは日本語で人工知能といわれる技術です。
人間のように言語の理解や物事の判断を行える他、データに基づいた予測も可能です。近年では、事務作業や製造工程における業務の負担がAIによって大きく軽減されています。
さらに、AIはフィンテックの領域でも利用されています。例えば、AIチャットボットによる問い合わせにもフィンテックが使われています。
API
API(Application Programming Interface)とはアプリケーションやソフトウェアなどをつなぐインターフェースです。つまり、2つのアプリケーションやソフトウェアが情報をやり取りするときに使用される窓口といえます。
フィンテック企業と金融機関の各種システムをAPIに接続することで、金融サービスの利用がこれまで以上に便利になります。口座情報の取得、銀行以外からの支払い処理、為替相場情報の照会などが可能です。
3.フィンテック(FinTech)の主なサービス
フィンテック(FinTech)が使われているサービスには、私たちが日常的に利用しているものも多くあります。
フィンテック(FinTech)の主なサービスとして、以下の4つが挙げられます。
暗号資産
クラウドファンディング
ロボアドバイザー
モバイルペイメント
それぞれ確認していきましょう。
暗号資産
暗号資産とはデジタルデータに変換された通貨です。暗号資産には中央銀行がなく、ブロックチェーン技術で分散管理されています。
最近では非代替性トークン(NFT)による唯一性を保証したデジタル資産への投資が注目を集めています。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとはユーザー同士がお金のやり取りを行うプラットフォームです。例えば、新事業を始めたい場合、プラットフォームに事業の目的や出資者へのリワードを記載し、資金援助を募ります。
クラウドファンディングは銀行の融資よりも審査の基準が低く、個人が融資を受けるハードルが低い傾向にあります。
クラウドファンディングで集めたお金で新事業を始めたり、起業したりすることも可能です。
ロボアドバイザー
ロボアドバイザーは証券会社の提供サービスの1つで、人工知能(AI)活用による投資助言サービスです。
フィンテックにより自動で取引が可能になったことで、投資に詳しい人だけでなく、投資の知識があまりない人も投資を始めやすくなりました。
モバイルペイメント
モバイルペイメントとはスマートフォンやタブレットで支払う決済手段です。例えば、Apple PayやGoogle Pay、PayPayなどのアプリがあります。
モバイルペイメントはスマートフォン1つで支払いを完了させることが可能です。その手軽さから若い世代を中心に人気を集めています。
4.フィンテック(FinTech)が現在注目されている理由
ITが社会のあらゆる領域に浸透する中で、フィンテック(FinTech)への各社の注目は年々高まっているといえます。
フィンテックスがこれほどまでに注目されている理由として、金融業界におけるDX化が挙げられます。多くの人が日常生活の中でスマートフォンを利用している昨今、支払いなどのために窓口やATMに行く人が減り、ネット上で行う人が増えました。
こうした中で、金融機関やスタートアップ企業はユーザーの動向を受けて、サービスの開発に注力しています。
特に、2020年初頭の新型コロナウィルスの感染拡大はフィンテックの普及の大きなきっかけとなりました。多くの人が他者との非接触を心掛ける中で、キャッシュレス決済への需要が急増しました。
また、AI技術の急速な発達は、金融業界におけるイノベーションをさらに加速させています。AIは、データ分析やリスク管理、顧客サポートの自動化など、さまざまな分野で活用されており、これによりフィンテック企業はより高度なサービスを提供できるようになっています。
5.フィンテック(FinTech)の将来性
フィンテック(FinTech)は将来性があるといえます。
世界のフィンテック市場は、2023年に2,947億4,000万米ドル(約44兆6363億円*1)に達しています。フィンテック市場は2024年に3,401億米ドル(約50兆8449億円*1)の価値を評価されており、2032年までに1兆1,520億6000万米ドル(約172兆2,330億円*1)に達すると予測されています。
また、2024~2032年中のCAGRは16.5%と推測されています。(*1:1ドルを149.5円換算)
上記を見てもフィンテックの市場規模は年々増えており、スマートフォン決済やキャッシュレスサービスが多くの人に定着している他、資産運用や資金調達といった大規模事業にも最近は波及しています。
また、フィンテックは先進国だけでなく、途上国との相性がよいことも将来性があるといえる理由の1つです。フィンテックは少ないコストで導入できるため、発展途上国においても導入を実現しやすい傾向にあります。
例えばアフリカのケニアではM-PESA(エムペサ)というモバイル送金・融資のサービスが登場しました。
M-PESA(エムペサ)はその後も急速に成長し、ケニア国内のみならず、他のアフリカ諸国やアフリカ、アジア、中東などでも広がりを見せています。
特に新しいサービスや機能の追加により、モバイル決済だけでなく、保険や融資サービスにも対応するようになり、多くの人々の生活に欠かせない存在となっています。
6.フィンテック(FinTech)企業一覧
フィンテック(FinTech)の事業を提供している企業は国内外に数多く存在します。多くの人が知っている企業の中にもフィンテックを事業の中核とする企業があります。
フィンテック(FinTech)企業について、以下の2つの観点から解説します。
日本の大手フィンテック企業
世界の大手フィンテック企業
それぞれ確認していきましょう。
日本の大手フィンテック(FinTech)企業
ここでは、日本の大手フィンテック(FinTech)企業を紹介します。
・BASE株式会社
BASE株式会社は決済・金融を主軸にさまざまな事業を展開しています。購入者向けショッピングサービス「Pay ID(ペイ アイディー)」、オンライン決済サービス「PAY.JP」、資金調達サービス「YELL BANK」を提供しています。
また、ネットショップ作成サービス「BASE」は広く周知されていると思います。ネットショップを少ない負担で開設できるため、スモールビジネスを始めたい人におすすめです。
・GMOフィナンシャルホールディングス株式会社
GMOフィナンシャルホールディングス株式会社は証券・FX事業、暗号資産事業を展開しています。
株式、投資信託、FXなどをネット上で取引できる「GMOクリック証券」、ビットコインやリップルなどの暗号資産の取引が可能な「GMOコイン」などを提供しています。
自社でサービスの開発から運用までを担うことで、サービスの使いやすさを実現しています。また、独自サービスゆえに低コストでの金融商品の取引を実現しました。
・株式会社ZUU
株式会社ZUUは最新のデジタル技術と専門知識を組み合わせた金融サービスを提供しています。エグゼクティブを対象にしたサービスの提供も行っており、最新のデジタル技術と専門知識を組み合わせた独自の内容となっています。
また、同社は月間400万人が利用している金融メディア「ZUU online」を運営しています。このメディアでは金融経済にまつわる有益な情報を配信しています。
世界の大手フィンテック(FinTech)企業
続いて、世界の大手フィンテック(FinTech)企業を紹介します。
・Stripe(アメリカ)
Stripeは現在最も勢いがあるフィンテック企業といっても過言ではありません。アメリカのサンフランシスコとアイルランドのダブリンに本社が所在し、20カ国で数百万社のユーザーを抱えています。
オンラインショッピング向けに世界規模で決済できるインフラを構築し、AmazonやMicrosoftといった大手企業にも提供しています。
・Robinhood(アメリカ)
Robinhoodはミレニアム世代を対象に金融サービスを提供するスタートアップ企業です。将来のお金について早くから考えている若い世代に投資アプリを提供しています。
このアプリはシンプルで使いやすく、手数料が無料であることからも多くの人たちから注目を集めています。また、プッシュ通知にも対応しているため、投資を始めたはずだがいつの間にか忘れていたという事態を回避できます。
・PayPal(アメリカ)
PayPalは電子メールアカウントとインターネットを使った決済サービスを提供しています。アメリカを中心に世界2400万以上のお店、3億人以上のユーザーが利用しているサービスです。
お金のやり取りをPayPalが仲介するためショップにカード番号や銀行口座番号といった個人情報を知らせずに商品を購入できます。
新規登録・年会費がかからない他、日本で作成されたアカウント同士であれば日本円の手数料は無料のため、お得感があります。また、海外送金は499円のお手頃な手数料で可能です。
さらに、PayPal払い限定のクーポンなどのお得なサービスもあります。
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7.まとめ
フィンテックという言葉に対して難しそうといったイメージを抱く人は多いのではないでしょうか。しかし、本記事で見てきたように、日々の生活でも何気なく利用しているサービスもフィンテックとは切り離せません。
IT化が今後ますます進むと見込まれますが、フィンテックの需要はますます高まるでしょう。
フィンテックの企業には大手企業やスタートアップ企業なども多くありますので、フィンテックに携わりたい人はさまざまな選択肢の中から応募企業を探すことができます。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。