近年、20代や30代の若い世代からベンチャー企業の人気は高まっています。ベンチャー企業ならではの活気がある雰囲気、若手にも責任ある仕事が割り振られる社風が人気の秘訣です。
こうした風潮の中で、大手企業の社員の中でもベンチャー企業への転職を考える人が近年増加傾向にあります。大手企業に在籍していれば安定した将来を見込めるものの、自社への貢献度に応じた給与を期待できない、重要な役職に就けるのはミドル層以上が一般的といったことに不満を抱く人も少なくないようです。
本記事では大手企業からベンチャー企業への転職の実現性を確認した上で、大手企業からベンチャー企業に転職するメリット、ベンチャー企業の業務内容、大手企業からベンチャー企業に転職する際の注意点などを解説します。
目次
1.ベンチャー企業とは?大手企業からベンチャー企業に転職できる?
結論を先に述べると、大手企業からベンチャー企業への転職は可能です。大手企業で働いている人は難易度の高い筆記試験や複数の面接を乗り越えてきた人たちがほとんどで、社会人としての能力が高く、基礎学力がある人が多くいます。
このため、ベンチャー企業の選考においても高く評価される可能性が十分あります。
そもそも、ベンチャー企業とは新興企業とも呼ばれる創立年数が浅い企業を指します。新しい事業や革新的なビジネスを展開しており、成長過程にあります。ビジネスを育てている状態のため経営が安定していないことが多く、ベンチャーキャピタルなどの投資機関から投資を受けている企業も多くあります。
ベンチャー企業と一口でいっても、メガベンチャー、ミドルベンチャー、アーリーベンチャーといった種類があります。メガベンチャーとは大企業に成長したベンチャー企業のことで、従業員数も資本金も多いです。
例えば、LINEやサイバーエージェントが挙げられます。また、ミドルベンチャーは従業員数が100人から1000人ほどの企業で、すでに倒産の危機を脱し、安定期に入った企業です。
クックパッド、ネオキャリアが挙げられます。アーリーベンチャーについては従業員数が10人以下で、設立して間もない今後の成長が期待される企業です。
2.大手企業からベンチャー企業に転職するメリット
大手企業からベンチャー企業への転職を実現した人は多くいますが、転職することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。
大手企業からベンチャー企業に転職するメリットとして、以下の4つが挙げられます。
スキルを高められる
成長の機会を得やすい
社長の側で働ける
20代や30代で裁量権を得られる
それぞれ確認していきましょう。
スキルを高められる
大手企業で働いている人の中には「在籍して数年経つがスキルが何も身についていない」「自分の意志は通らず、任される仕事は補佐業務ばかり」と感じている人は少なくありません。
大手企業は会社の規模が大きく、従業員が多いため業務は細分化されています。
また、40代や50代の社員で重要なポジションが埋まっていることも多く、20代や30代が大きな仕事を任されることは少ないです。このため、若手社員には資料の作成やスケジュール調整などスキルになりにくい仕事ばかりが割り振られることもあります。
一方、ベンチャー企業の中には社長や役員を含む従業員全員が20代の企業や、社員の平均年齢が30代前半の企業も多いです。また、在籍年数や年齢に関係なく、実力がある人に重要な仕事を割り振る企業が多いでしょう。
大企業では20代や30代の社員には任されないだろうプロジェクトに関われる機会も多く、あらゆるスキルを若いうちから高められます。さらに、ワンストップでプロジェクトに携わるケースも珍しくないため、スキルを幅広く高められます。
成長の機会を得やすい
ベンチャー企業は大手企業と比べて組織体制が整っていない企業が多いです。デメリットのようにも思えますが、見方によってはメリットといえます。組織が整っていないということは枠や慣習にとらわれず働けるということです。
やる気や行動力があればさまざまな業務に携われるチャンスがあります。自ら率先して業務を引き受け、高い成果を出せば、社会人経験が短くても役職を得られる可能性もあります。
大企業のように少しずつではあるが、着実にキャリアアップや昇給をしていくよりも、自分次第で圧倒的なスピードで成長できる環境に身を置きたい人はベンチャー企業で充足感を抱きながら働けるでしょう。
経営層の側で働ける
大企業の社員の中には「入社して何年も経つけど社長と話したことがない」「社長や重役と会ったのは最終面接のときだけ」という人も少なくありません。
大企業の場合、一般社員が社長や重役と同じ空間で仕事をしたり、意見交換を直接行ったりする機会はほとんどないためです。
一方、ベンチャー企業では社長を含む経営層との距離が非常に近いことが多いです。一般社員が社長と同じ空間で仕事をしている企業や、従業員が社長に直接相談する企業もあります。
また、飲み会や社内イベントでは社長も参加し、社長と従業員が親睦を深められる企業もあります。
社長の近くで仕事をすることでビジネスに必要な力を学んだり、経営者としての振る舞いを学び取ったりすることができます。将来、起業を検討している人にとっては特に勉強になります。
20代や30代で裁量権を得られる
ベンチャー企業は年齢や入社年数を問わず、各社員に大きな裁量が与えられます。業務において自分の考えを取り入れたり、何かを決める際に社長から直接助言をもらったりすることも可能です。
上司に言われたことをこなすのではなく、自分で考えて動きたい人や新しいアイディアを提案したい人にとっては満足できる環境といえます。
3.ベンチャー企業の業務内容とは
ベンチャー企業の業務内容として、以下の2つの観点から解説します。
業種・職業
複数の業務の兼務
それぞれ確認していきましょう。
業種・職業
ベンチャー企業と一口でいっても、さまざまな業種・職業があります。近年においてはIT系の企業やWebマーケテイング系の企業が多い傾向にあり、エンジニアやWebマーケターなどの求人が多く見られます。
とはいえ、IT系企業だから全従業員がエンジニアとして働いているというわけではありません。IT系企業にも事務や営業、総務/労務、経理、人事などさまざまなポジションがあるので、自分の特長やスキルに合わせて職を選べます。
複数の業務の兼務
ベンチャー企業は従業員の人数が少なく企業が多いため、一人当たりに割り振られる業務が多くなりがちです。例えば、大企業であればエンジニアが事務処理やクライアントとの細やかな打ち合わせを行うことはあまりありません。
しかし、ベンチャー企業の場合、エンジニアが事務処理やクライアント対応を行うことは多くあります。自分の専門の業務にのみ専念したい人、特定分野のスキルを集中的に伸ばしたい人にとっては、ストレスになることもあるでしょう。
複数の業務の兼務が苦ではなく、さまざまな業務を楽しめる人にベンチャー企業は向いています。
4.大手企業からベンチャー企業に転職する際の注意点
大手企業からベンチャー企業への転職はよいことばかりではありません。実際、ベンチャー企業に転職したことを後悔する声も多く上がっています。転職後に後悔しないためにも、注意点を確認しておきましょう。
大手企業からベンチャー企業に転職する際の注意点として、以下の3つが挙げられます。
大手企業で働いていたときよりも給与が下がる可能性がある
経営が不安定
プライベートの時間を確保するのが難しい
それぞれ確認していきましょう。
大手企業で働いていたときよりも給与が下がる可能性がある
大手企業はベンチャー企業や中小企業と比べて給与が高い傾向にあります。月額の給与は他の企業と大差がなくても、ボーナスが多く支給されるため、年収は平均以上になる企業が多いです。
さらに数百万円から数千万円の退職金も支給されるため、生涯年収は世間一般よりも割高になります。
一方、成長過程にあるアーリーベンチャーやミドルベンチャーといったベンチャー企業の中には月収は大手企業と大差なくても、ボーナスが数万円程度の企業や、そもそも月収が他と比べても低い企業も珍しくありません。
また、退職金の制度が整っていない企業もあります。
ただし、創立年数が浅く、従業員が一致団結して成長を目指しているベンチャー企業の中には推し活休暇や失恋休暇、お菓子食べ放題、おしゃれ手当などのユニークな制度を導入している企業もあります。
また、メガベンチャーに成長すれば創業年数が長い大企業と同等の給与や福利厚生を得られることもあります。
経営が不安定
ベンチャー企業の中には経営が不安定な企業が多く、自社の商品が世の中から認められなければ倒産する恐れがあります。会社の倒産が理由の離職であっても転職先はすぐに決まるわけではありません。
安定志向の人や生活水準を下げたくない人にはベンチャー企業は不向きといえるでしょう。
プライベートの時間を確保するのが難しい
ベンチャー企業で働いている人の多くが「将来は起業したい」「世の中に新しいサービスを生み出したい」「自社を成長させたい」といった思いを持ちながら働いています。こうした思いが強いため、残業を苦としない人や休日出勤をむしろ楽しむ人が多く在籍している企業もあります。
こうした社風であれば、定時に帰りたい人、休日は仕事をしたくない人は、周囲から浮いてしまう可能性があります。また、定時に帰る人が少なければ、自分だけ帰るのは気が引けてしまうかもしれません。
5.ベンチャー企業に転職することで得られるキャリア
ベンチャー企業に転職することで得られるキャリアは人それぞれですので一概に言うことはできません。人によってキャリアは異なりますが、想定されるキャリアとしては以下の4つが挙げられます。
転職したベンチャー企業で役員になる
転職したベンチャー企業でマネジメント職など役職に就く
別の企業に転職する
起業する
大企業の場合、一般の社員が経営層になる道は非常に険しいです。しかし、ベンチャー企業であれば能力次第では経営層になる道も拓けます。また、20代や30代でもマネジメント職などの役職を与えられるケースも多く、リーダーとしての経験も若くしてできます。
また、ベンチャー企業に転職し、さまざまな経験をした後で別の企業に転職するキャリアパスもあります。ベンチャー企業では数々の業務に従事することが多いので、対応可能な業務の幅広さを評価してくれる企業は多いはずです。
大企業からベンチャー企業に転職した人の中には起業し、社長になる人も多いです。ベンチャー企業で経営者としての視点やビジネスを展開する一連の流れ、自分でビジネスをまわしていく感覚を学び、自身も事業を展開する人もいます。
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6.大手企業からベンチャー企業への転職を考えている人が抱きやすい疑問
大手企業からベンチャー企業への転職を考えている人が抱きやすい疑問として、以下の3つが挙げられます。
ベンチャー企業から大企業になった会社はありますか?
ベンチャーから大手に戻ることはできますか?
第二新卒として大手企業からベンチャー企業に転職できますか?
それぞれ確認していきましょう。
ベンチャー企業から大企業になった会社はありますか?
大企業の法的な定義はなく、中小企業の定義にあてはまらない企業が大企業になります。中小企業として定義される資本金額や従業員数は業界によって異なります。
例えば、製造業、建設業、運輸業、その他の業種は資本金3億円以下、常時使用する従業員数300人以下となっています。製造業に属する企業でこの基準を超える企業は大企業になります。
多くの人がよく知る企業の中にもベンチャー企業から大企業に成長した企業は多くあります。例えば、フリマサービスのメルカリは2013年に創業しました。現在は、資本金が473億4900万円(2024年6月末時点)、従業員数は約1400人の大企業に成長しました。
また、2024年における売上収益は400億円を超えています。創業してから10年ほどしか経っていない若い企業ですが、BtoC向けサービスを運営していることから同社について多くの人たちが身近に感じているでしょう。
また、Amebaやゲーム『グランブルーファンタジー』などを提供しているサイバーエージェントもベンチャー企業でした。1998年に設立した同社は創業から20年ほどで誰もが知る有名企業に成長しました。
現在は、資本金が74億4000万円(2024年9月末現在)、従業員数は7251人(2023年)、2024年度通期決算(23年10月1日~24年9月30日)における純利益は162億4600万円です。優秀な若手社員には裁量権を与える風通しのよい社風も知られています。
ベンチャーから大手に戻ることはできますか?
大手企業からベンチャー企業に転職したものの、大手企業でもう一度働きたいと思う人もいます。
大手企業の中途採用は狭き門であるため、ベンチャー企業に転職したときよりも転職活動が難航する恐れがあります。しかし、ベンチャー企業で培ったスキルやさまざまな経験をPRすることで、大手企業で再び働ける可能性はあります。
将来、大手企業に戻りたい人はベンチャー企業でマネジメント経験を積んだり、スキルを高めたりしておくとよいです。
第二新卒として大手企業からベンチャー企業に転職できますか?
第二新卒が大手企業からベンチャー企業に転職することは可能です。実際、20代前半で大手企業からベンチャー企業に転職した人は多くいます。
ベンチャー企業には社員の平均年齢が20代、もしくは30代前半の企業も多いため、環境に馴染みやすいという観点からも年齢が若い方がよいです。
新卒で大手企業に入社したものの、成長のスピードの遅さに不満を感じている人、新しい何かに挑戦してみたい人はベンチャー企業への転職を検討してみてください。
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7.まとめ
定年まで1つの企業で働き続けるという考え方をする人は現代では少なくなっているものの、大手企業に在籍していれば安定的な生活を長期的に見込めるのも事実といえるでしょう。また、大手企業は給与が高い傾向にある他、福利厚生が整っていたり、働きやすい環境が整備されていたりします。
とはいえ、大手企業は古くからの慣習が根付いていたり、昇給がゆるやかだったりするため、成長意欲が高い人の中にはこうした環境にものたりなさを感じる人もいます。同世代よりもはやく成長したい人、将来起業したい人、リスクに怯えず冒険したい人はベンチャー企業への転職もおすすめです。ベンチャー企業への転職をきっかけに自分自身が大きく成長できるかもしれません。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。