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SESとSIerの違いとは?業務内容や向いている人の特徴解説、企業一覧リストも紹介

公開日:2024/11/15最終更新日:2024/11/21

SIerとSESは異なるものですが、それぞれの定義は曖昧であり混同している人は多いと思います。いずれもIT業界での仕事となりますが、業務内容や働き方、給与などには大きな違いがあるため、仕事に適する人材の特徴も変わってきます。


本記事ではSESとSIerの違いを押さえた上で、それぞれの職業について向く人の特徴、将来性、メリット、SESやSIerの代表的な企業などを解説します。


1.SESとSIerの概要を確認

SESとSlerは名前が似ていることやいずれもIT業界に属していることから、役割が混同されることは少なくないと見られます。しかし、それぞれ業務内容や働き方などが大きく異なるので、これらの仕事を検討している人はその違いを理解しておくことが大切です。

SESの業務内容

SES(エスイーエス)とはSystem Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)の略語です。クライアントとなる企業にエンジニアの技術力や労働力をサービスとして提供します。

 

SESエンジニアの多くは客先常駐となり、自社ではなく、クライアント企業で働きます。ただし、SESエンジニアの指揮権は自社で行う他、労務や給与などの管理も自社で行います。

SIerの業務内容

SIer(エスアイアー)とはSystem Integrator(システムインテグレーター)の略語です。システムの設計、開発、運用、保守を請け負います。


Slerは顧客の要望に従いシステムを企画・提案し、設計から運用・保守まで一連の行程を担当します。また、顧客から希望があればコンサルティングを行うこともあります。つまり、Slerはシステム開発におけるほぼ全業務を請け負います。


Slerで働く従業員は自社内で業務に従事することがほとんどですが、クライアント先に必要があれば訪問することもあります。また、1社で全工程を担いきれない場合は2次請けSIer、3次請けSIerへと仕事を振り分けることもあります。


SIerは業務内容や企業の成り立ちなどによってユーザー系Sler、独立系Sler、メーカー系SIer、コンサル系SIer、外資系SIerなどに分けられます。

2.SESとSIerの違い

前に説明したように、SESとSlerは大きく異なります。


ここでその違いを簡潔に言うと、SESがクライアントに労働力を提供し、主に開発作業やシステム運用などの一部業務を支援する形をとります。一方、Slerはクライアントの要件に基づいて、システムの設計から運用・保守までを一括して担う責任を持ち、必要に応じてITコンサルティングも行います。


また働き方にも違いがあり、SESエンジニアがクライアント先に常駐して働くことが多く、プロジェクトに応じて柔軟に配置されるのが一般的です。一方、Slerエンジニアは自社での勤務が主になり、必要に応じてクライアント先を訪問することもあります。

3.SESとSIerではどちらがおすすめ?

IT業界で働くことを検討している人の中にはSESとSlerで迷っている人も少なくないと思います。ここでは、SESが向く人の特徴とSlerが向く人の特徴を解説します。

SESが向く人の特徴

SESはIT業界未経験者にとっても比較的挑戦しやすく、IT人材としてのキャリアスタートにもおすすめできます。


SESは客先常駐が多いため1社にのみ通勤し、同じ人たちと何年間にもわたり毎日顔を合わせることはほとんどありません。プロジェクトごとに勤務する企業が変わることが多いので、人間関係に悩んだとしてもプロジェクトが終われば悩みから解放されます。


また、SESは残業時間が短い傾向にあるため、仕事とプライベートを両立したい人におすすめです。契約時に定めた労働時間内にとどめて働くことが求められるので、残業が発生しにくい傾向にあります。


ただし、携わる業務はプロジェクトにおける下流であることがほとんどです。

SIerが向く人の特徴

Slerは業務の難易度が全体的に高いため、IT業界未経験者には難しいといえます。未経験から転職を希望する場合はプログラミングなどのITスキルを事前に高めておくことをおすすめします。


SIerは自社勤務の場合と客先常駐の場合があります。ただし、客先常駐であっても週に数回のみクライアント企業に行くことがほとんどです。


自社への帰属意識を感じやすく、自社の従業員と深い関係性を築きやすい傾向にあります。また、通勤先がほぼ決まっているため、マイホームを購入しやすく、生活を安定させやすいのが特徴です。


SIerは仕事に全力投入したい人に向いています。クライアントに成果物を期日までに納品しなければならないため、場合によっては残業が発生します。また、仕様変更の依頼が入れば長時間の残業が発生することもあります。


SlerはSESよりも平均年収が高い傾向にあります。高年収を目指す人にもおすすめです。

4.SESとSIerの将来性

SESとSlerで迷っている人の中には将来性を鑑みて決めたい人も多いと思います。ここでは、SESとSlerの将来性について解説します。

SESの将来性

SESには将来性があるといえます。矢野経済研究所の社会インフラIT市場に関する調査によると、社会インフラIT市場規模は2022年は6424億円だったのに対し、2027年には6725億円になると見込まれています。このようにIT市場は拡大しており、今後も継続して拡大するといわれています。


また、SESと関連性があるフリーランスエージェント市場が成長していることも将来性がある理由の1つです。

具体的にはINSTANTROOM株式会社が発表した「フリーランスエージェント及びITフリーランス人材の市場調査(2024年版)」によると、2023年のフリーランスエージェント市場は前年比142.8%の成長を遂げ、2,063億円の規模に達しています。


2027年にはフリーランスエージェント市場が4,000億円するとの予測を行っています。


上記を考慮すると、SESの土台となるIT業界や関連性があるフリーランスエージェント市場のニーズは年々高まっているため、SESの社会的受容は今後も途切れないと見込めます。


ただし、働く企業の選択を間違えると将来的に困ることになるかもしれません。例えば、SES事業のみ運営している企業は派遣会社ではありませんが、事業内容によっては派遣会社に類似する運営をしている場合があります。


そのため、今後ますます複雑化するITに遅れをとることが懸念されます。


また、3次請けや4次請けなどの下請けとなると、利益が少なく、ビジネスを長期的に展開するのは難しくなります。SESで長く働きたい人は入社する企業をきちんと見極めてください。

SIerの将来性

Slerについても将来性があると考えられます。官公庁などの政府系機関や銀行などの金融機関の大型プロジェクトはSIerしか受注できません。政府系機関や金融機関のシステムはセキュリティに気を遣う必要があり、実績があり、長年の信頼を重ねてきたSIerでなければ受注できません。


これらの案件がなくなることは現時点では考えにくく、Slerの存在は社会において今後も不可欠でしょう。


また、Slerは経済産業省が公表した2025年の崖問題を解決する上でも頼りにされています。レガシーシステムの老朽化は経済損失のリスクがあるため、多くの企業が各種システムを新しいシステムに数年以内に移行すると予想されています。Slerがシステムの移行を行うことも多いです。

5.SESで働くメリットとSIerで働くメリット

ここまで見てきたようにSESとSlerは似て非なるものであるため、それぞれに別のメリットがあります。ここでは、SESで働くメリットとSIerで働くメリットを見ていきましょう。

SESで働くメリット

SESで働く大きなメリットとして未経験者の入社のしやすさが挙げられます。IT人材は不足しているものの、多くの企業がある程度のスキルがある人を求めています。このため、IT企業に誰もが意欲さえあれば転身できるわけではないのが現実です。


そうした中で、SESの中には完全未経験者を受け入れている企業も多く、ゼロからスキルを身につけ、エンジニアとしてのキャリアを拓くきっかけを得ることができます。


また、残業時間が短い企業が多いためプライベートの時間を確保しやすい傾向にあります。趣味の時間をとりたい人、ライフワークバランスを重視したい人にもおすすめです。

SIerで働くメリット

SlerはSESと比べて残業時間が長い傾向にあるものの、SESよりも高い年収を目指しやすいです。特に、大手SIerであれば年収も高く、福利厚生も充実しているため、安定した生活を営めると見込めます。


また、プロジェクトにおける上流工程に携わる機会が多いため、エンジニアとして高いスキルが身につく他、マネジメント力なども高められます。ミドル層以上の転職ではマネジメント力が問われることも多いので、マネジメント経験を積みやすいという点でもSlerはおすすめです。

6.SESとSIerについてよくある質問

ここでは、SESとSlerに興味がある人が抱きがちな4つの疑問をまとめました。

  • SESはやめとけと言われるのはなぜですか?

  • 新卒で働く場合、SlerとSESではどっちがいいですか?

  • SESとSIerは自社開発を行いますか?

  • SESとSIerはフリーランスになれますか?

それぞれ確認していきましょう。

SESはやめとけと言われるのはなぜですか?

SESはやめとけと言われる主な理由として、給与の安さが挙げられます。IT業界には2次請け、3次請けといった多重下請け構造がありますが、下にいけばいくほど利益が少なくなるのが一般的です。


SESはかなり下の部分に該当するプロジェクトも多いため利益が少なく、従業員に支払われる給与も少ない傾向にあります。


ただし、SESにはIT業界未経験者に門戸を開く企業も多く、エンジニアとしての経験を積むのにおすすめです。SESからステップアップしていくことで、将来的に高い給与を得られるようになります。

新卒で働く場合、SlerとSESではどっちがいいですか?

Slerの方がSESよりも難易度が高いといわれています。未経験からIT業界への転職であれば、SESで経験を積み、Slerを将来的に目指すのが一般的です。


しかし、新卒であれば、スキルがなくてもSlerに入社できる可能性はあります。システム開発やITに関することを入社後にイチから教えてもらえるためです。また、新卒であっても大学時代にプログラミング経験がある人やIT系の学部に在籍している人は優遇される傾向にあります。


一方、SESはSlerと比べて入社難易度が低い傾向にあるため新卒や未経験者も多くいます。ただし、客先常駐となることが多く、仕事に慣れないうちから自社以外で働きます。悩みを相談できる人がいない、帰属意識を感じられないなど、精神的につらいことがあるかもしれません。


Slerは入社難易度が高いため内定を得られるかが最初のハードルになりますが、両者のメリットとデメリットを比べて選ぶことをおすすめします。

SESとSIerは自社開発を行いますか?

SESとSlerはいずれも自社開発を行わない企業が多いです。SIerはクライアントから受託したシステムを開発し、SESは他社のプロジェクトにエンジニアを派遣します。ただし、規模が大きい企業は複数の事業を展開しているため、自社開発に携わる機会もあるかもしれません。


自社開発に携わりたい人は自社開発系の企業への入社がおすすめです。自社のサービス・プロダクト開発に携われます。

SIerとしてフリーランスで働けますか?

Slerはフリーランスとして独立することも可能です。例えば、フリーランス向けの求人サイト・フリーランスボードにはSlerの求人が複数掲載されています。


同サイトにおけるSlerの掲載企業の月額単価の平均は72.1万円。Slerのフリーランス案件・求人の年収の目安は865万円となっています。


企業で業務経験を積み、スキルを高めた後で独立すれば、会社員以上に稼げることもあります。


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7.SESとSIerの企業一覧

ここでは、SESとSlerに該当する企業を紹介します。

SESの企業一覧

企業名

資本金

株式会社NSサービス

1,000万円

株式会社ソアーシステム

1,200万円

ヒューマネテック株式会社

1,400万円

株式会社リナックス総合研究所

1,400万円

株式会社コスモストーク

1,500万円

株式会社キャリアヴィジョン

1,800万円

株式会社東日本技術研究所

5,000万円

株式会社ゴーイング・ドットコム

5,500万円

アドベンテック株式会社

6.000万円

株式会社アビソル

7,000万円

株式会社ピーアンドアイ

7,900万円

株式会社東京システムリサーチ

8,000万円

株式会社クロス・コミュニケーション

9,000万円

コガソフトウェア株式会社

9,756万円

日本テクノストラクチャア株式会社

1億円

メディアファイブ株式会社

1億9,892万円

株式会社第一情報システムズ

3億円

日本コンピュータシステム株式会社

10億8,900万円

日本ラッド株式会社

12億3,948万円

日本プロセス株式会社

14億8,740万円

SIerの企業一覧

続いて、Slerの企業を紹介します。

ユーザー系SIer

ユーザー系SIerには親会社が存在し、親会社向けの業務システムを主に開発します。ただし、大規模なユーザー系SIerの中には他の企業からシステム開発を請け負っている企業もあります。


代表的な企業は以下の3社です。

  • 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

    伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の親会社は伊藤忠商事株式会社です。DX、AI、クラウド、コミュニケーションデザインなどをはじめとするさまざまなソリューションを提供しています。

  • 野村総合研究所

    野村総合研究所は野村証券のグループ企業であるため、金融業界を対象にしたコンサルティングとSIを得意としています。日本最大規模のコンサルティングファームであるITコンサルティング会社としても知られています。

  • 日鉄ソリューションズ株式会社

    日鉄ソリューションズ株式会社の親会社は日本製鉄株式会社です。親会社は鉄鋼メーカーとして世界上位に位置しており、案件規模や与えられる影響力は国内でも最大規模となります。

外資系SIer

外資系SIerは海外に本社がありますが、日本にも支社を置いています。海外の先進的な技術に対応していたり、最先端のビジネスを展開している企業も多いです。


代表的な企業は以下の3社です。

  • アクセンチュア株式会社

    アクセンチュア株式会社は世界53ヵ国に拠点があり、約50万人の社員を抱える世界最大規模のコンサルティングファームです。テクノロジー、デジタル、コンサルティングの3つの事業を主に展開しています。

  • 日本オラクル

    日本オラクルはアメリカのオラクルコーポレーションの日本法人です。ソフトウェア・ハードウェア製品、クラウドサービス、ソリューションの提供、コンサルティングなどさまざまな事業を展開しています。

  • 日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

    日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社はアメリカに本社があるIBMの日本法人です。コンピューターメーカーとして培った最先端の技術力やノウハウを活かし、コンサルティング、システム保守などを請け負っています。

独立系SIer

独立系SIerはユーザー系Slerのように親会社がありません。このため、自社で営業活動を行って案件を受注します。親会社がないため案件の自由度が高く、幅広いプロジェクトに携わることが可能です。また、特定領域において高いレベルの技術をもっています。


代表的な企業は以下の3社です。

  • Sky株式会社

    Sky株式会社は受託開発と自社パッケージ商品を展開しています。学習活動ソフトウェアやクライアント運用管理ソフトウェアなどさまざまなサービスを展開しています。

  • TIS株式会社

    TIS株式会社はプライム・コントラクターとして企業の基幹システムを長年にわたって支えています。クライアントの基幹システム構築におけるコンサルティングやシステム企画、要件定義から運用管理・保守まで一貫してサービスを提供しています。

  •  富士ソフト株式会社

    富士ソフト株式会社は ソフトウェア の開発・販売、システムインテグレーションなどさまざまな事業を行っています。あらゆる業種や問題にITの力で対応しています。また、イベントやセミナーなども多く開催しています。

メーカー系SIer

メーカー系Slerはパソコン関連、ハードウェア、情報通信系の親会社を持つSIerです。親会社がIT系であることからも高い技術力を誇っています。メーカー系SIerはシステムインテグレーションとハードウェアをセットで提供することが可能です。


代表的な企業は以下の3社です。

  • 株式会社日立製作所

    株式会社日立製作所は三菱電機、東芝に並ぶ国内の大手総合電機メーカーです。ITやOTといった最先端の技術を活用して社会に価値を与えています。また、自社の利益を高めることだけでなく、地球環境にやさしいグリーンなエネルギーとモビリティで地球にも寄り添っています。

  • 東芝情報システム株式会社

    東芝情報システム株式会社は組込み製品向けのハードウェアからソフトウェアにわたる開発、商品、サービスを提供しています。アプリケーションからプラットフォームまで一貫したサービスを行っています。

  • 富士通株式会社

    富士通株式会社はサーバー製品の国内シェア率が高く、理化学研究所と共同でスーパーコンピューターである富岳の開発も手がけています。また、コンサルティングやセキュリティ面のサービスも行っています。子会社である株式会社富士通エフサスがグループ最大規模のSIerとしてシステムインテグレーション機能を担っています。

8.まとめ

SESとSlerは混同されがちですが両者は異なるため、いずれかで働きたい人は違いを理解しておきましょう。SESはエンジニアの技術リソースの提供を行う企業、SIerはシステム開発を請け負う企業を意味しています。


また、両者では働き方にも違いがあります。SESがクライアント先に常駐することが多いのに対し、Slerは自社で基本的に仕事を行います。


SlerはIT業界の中でも業務内容が難しく、業務に必要なスキルを取得するまでに時間がかかります。IT業界未経験者やスキルがない状態でIT業界で働くことを考えている人はSlerからはじめてみるのもおすすめです。


給与が少ない、業務内容が単調などと感じることがあるかもしれませんが、業務を通してスキルをアップすることで、プロジェクトにおける高い工程に携われるようになるはずです。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

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