Rubyは、1995年まつもとゆきひろ氏により開発されたオブジェクト指向スクリプト言語です。
RubyはWebサイト制作、Webアプリ開発、モバイルアプリ開発、機械学習を含むAI(人工知能)開発など、小〜大規模開発まで幅広く活用されています。
そんなRuby開発においてRubyフレームワークの種類が多くどの開発にどのフレームワークを活用するのが良いのか、どのフレームワークを習得すべきなのか、フリーランスエンジニアでも迷っている方は多いかと思います。
特定のフレームワークを募集条件にしている開発案件も多くあり、Ruby開発においてフレームワークの習得は必須と言えるでしょう。
また、IT業界はトレンドが早く仮にトレンドではないRubyフレームワークを習得した場合、それに費やした労力が無駄になってしまうことも。
今回はRubyのフレームワークについてわかりやすく解説していきます。
具体的にはフレームワークの説明やライブラリとの違い、Rubyフレームワークのメリットやデメリット、Rubyフレームワークの市場動向、おすすめのRubyフレームワークについて見ていきましょう。
しっかりと開発に適したRubyフレームワークを把握し、フリーランスエンジニアとして第一線で活躍しましょう。
特にRubyフレームワークの記事をご一読していただきたい方
Rubyエンジニアとして活躍をしている方
Rubyエンジニアを今後検討している方
Rubyやエンジニア自体に興味/関心がある方
Rubyフレームワークの知識/理解を学習したい方
Rubyフレームワークの市場動向を把握したい方
どのRubyフレームワークを習得するか迷っている方
目次
1.フレームワークとは?
まず、Rubyフレームワークを解説する前にフレームワークについて解説していきます。
フレームワークとは、全体処理の流れがある程度決められているソフトウェアです。
もともと、フレームワークは枠組みや骨組みといった意味がありますが、エンジニアが使用するフレームワークの意味はソフトウェア開発の土台となるプログラム部品を指します。つまりプログラムのひな形です。
フレームワークには複数の種類があり、Webアプリケーション開発で活用する「Webアプリケーションフレームワーク」やデータのソートや文字列操作、テスト、数学関数などアプリケーション機能や性能、操作性向上のための「ユーティリティ系フレームワーク」などがあります。
フレームワークを活用することにより、システムやアプリケーション開発の工程を向上させることができます。
しかし、フレームワーク特有のコードがありプログラミング言語の習得に加え、一定のコードを習得する必要があります。
2.フレームワークとライブラリの違い
フレームワークについて理解できたところで、フレームワークと混同しやすいのがライブラリです。
この章ではフレームワークとライブラリの違いについて解説します。
フレームワーク:全体処理の流れがある程度決められているソフトウェア、つまりプログラムのひな形のことです。
ライブラリ:関数やクラスという再利用できる部品をまとめたコードの集まり。特にクラスを集めたものをクラスライブラリと呼びます。
フレームワークとライブラリの違いとはフレームワークはアプリケーションの設計レベルの再利用を目的としていることに対して、ライブラリは単にコードの再利用を目的としていることです。
3.Rubyフレームワーク活用のメリット
この章ではRubyフレームワーク活用のメリットを解説していきます。
Rubyフレームワークのメリットをしっかり理解し習得するかどうかの判断材料にしましょう。
開発効率の向上
Rubyフレームワーク活用のメリットは開発効率の向上が挙げられます。
フレームワークは、原形で利用できるテンプレート、再利用可能なクラス、ライブラリ、API等で構成されています。
例えば多くのシステムやアプリケーション開発に利用されているつまり信頼できるRubyフレームワークを導入することで、コーディングの大部分の用意が不必要になり、開発効率の向上に繋がります。
機能やデザインのカスタマイズも簡単に出来るため、短期間で質の高いシステムやアプリケーションを開発することが可能です。
近年MVP開発やリーンスタートアップという言葉が出てきているように、IT/Web業界ではシステムやアプリなどのサービスを最小工数で開発し、短期間でリリースすることが大切です。
バグの減少
Rubyフレームワーク活用のメリットはバグの減少が挙げられます。
Ruby開発において、フレームワークを使わず開発を行うと、多くの箇所でバグが発生する可能性が高くなります。
これは単純に開発の力量が足りなかったこともあり得ますが、フレークワークを使用することで自力で書く際よりもバグが出にくくなる傾向にあります。
また、Rubyフレームワークは世界中多くのエンジニアに活用されており、ある程度のバグは解決されているということもRubyフレームワークを活用するメリットです。
コードの統一性を保持
Rubyフレームワーク活用のメリットはコードの統一性を保持が挙げられます。
チームを含む1人以上でRuby開発を行う際、フレームワークを活用することでコードの統一性を保てます。
コーディングなどのスキルはフリーランスエンジニアごとで異なり、その人の個性やクセが出ます。
そのため開発効率が落ちたり、バグが多くなったり、エラー時の対応やコードを引き継ぐ際に時間がかかったりなどコードに統一性が無いことのデメリットは多いです。
Rubyフレームワークという共通ルールを使うことにより、フリーランスエンジニア毎のコーディングの違いを減らし、多人数開発にも対応しやすくなります。
4.Rubyフレームワーク活用のデメリット
この章ではRubyフレームワーク活用のデメリットを解説していきます。
Rubyフレームワークのデメリットをしっかり理解し習得するかどうかの判断材料にしましょう。
フレームワーク習得時間が必要
Rubyフレームワーク活用のデメリットはRubyフレームワーク習得に時間が必要ということです。
特に経験が浅い方や今後Rubyエンジニアを目指している方はRuby自体のプログラミング言語習得以外にRubyフレームワークの習得にも時間を使う必要があります。
そのため、Rubyスキルのために素早いキャッチアップが必要です。
ドキュメントは英語で作成されていることも多くかつ、マイナーなRubyフレームワークの場合、情報があまりないことなども有り得ます。
フレームワーク活用で処理が重くなる
Rubyフレームワーク活用のデメリットはフレームワーク活用で処理が重くなることが挙げられます。
Rubyフレームワークは汎用化されており、処理が重かったりさらにファイルサイズも大きいこともあります。
つまり、フレームワークの機能の一部しか使用しなくても同じ仕組みを利用するため、その分負荷がかかります。
Rubyフレームワークを活用する際は、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
Rubyフレームワークの脆弱性
Rubyフレームワーク活用のデメリットはRubyフレームワークの脆弱性が挙げられます。
Rubyフレームワークの中には脆弱性が報告されるものもあります。
フレームワークに脆弱性が発見されると、開発したシステムやアプリケーションなどサービスのセキュリティにも脆弱性があるということに繋がるので、最悪の場合信頼性が失われる恐れがあります。
主流Rubyフレームワークになるにつれて多くエンジニアやサービスに活用されているため、脆弱性が発見されることは稀ですが、事前に精査した上でRubyフレームワームを活用しましょう。
5.Rubyフレームワークの選び方
この章ではRubyフレームワークの選び方を解説していきます。
どのRubyフレームワークを習得するか迷っているフリーランスエンジニアの方はどの選び方が最適なのかしっかり考えましょう。
目的別で選択
Rubyフレームワークの選び方として、目的別で選ぶ方法があります。
Rubyフレームワークは開発規模の大きさやどのようなものを開発するかなど、得意な部分がそれぞれ異なります。
一定数の学習時間がかかる多機能なフレームワークや最低限の知識があれば活用できる軽量なフレームワークなど様々です。
また、開発者の知識や開発を担当する機能に応じて、考えると良い場合もあります。
自分の環境で選択
Rubyフレームワークの選び方として、自分の環境で選ぶ方法があります。
Rubyフレームワークには様々なものがありますが、「いざとなったら質問や相談を周りにできるエンジニアはいるのか?」や「プログラミングスクールや社内研修で取り扱っているのか?」などフレームワークの習得に対して、自分の周りの環境に目を向けてみましょう。
もし詳しい人や学習環境が整っているRubyフレームワークが身近にある場合は、そのRubyフレームワークから始めるのも良いでしょう。
トレンドや将来性で選択
Rubyフレームワークの選び方として、トレンドや将来性で選ぶ方法があります。
上記解説した2点以外に特別な要件がなければ主流のRubyフレームワークや世界中で注目されているRubyフレームワークを選びましょう。
トレンドや将来性もあるフレームワークは、コードが記述やテストが簡単であるなど、何かしら注目されている理由が存在します。
また、トレンドや将来性のあるRubyフレームワークはドキュメントや参考になる記事などの情報も豊富に公開されているので習得しやすいでしょう。
6.フレームワーク案件数から見るRubyフレームワーク市場動向
この章ではフレームワーク案件数から見るRubyフレームワーク市場動向を解説していきます。
フリーランスエージェントで公開されている案件を参考に、Rubyフレームワーク案件数を見ていきましょう。
Rubyフレームワーク案件数はRuby on Railsが3,893件、RSpecが193件、Sinatraが9件です。
上記データから、Rubyフレームワーク市場は主にRuby on Railsに依存しており、他のフレームワークの案件数は非常に少ないことがわかります。このことから、Ruby on Railsが企業において最も支持されているフレームワークであることは明らかです。
Rubyフレームワーク市場は、Ruby on Railsの圧倒的なシェアと安定した案件数に支えられている一方で、他の言語やフレームワークとの競争や技術選択の多様化が進んでいます。Rubyを学習する際には、Ruby on Railsを中心に市場のトレンドを注視しつつ、JavaScriptやPHP、Pythonなど他開発言語や新しい技術を同時並行して学ぶことが、今後Rubyを学習するエンジニアもしくは現在Rubyエンジニアの方は重要と考えられます。
7.Rubyフレームワークのトレンド
この章ではRubyフレームワークのトレンドについてやトレンドから見えてくる市場動向を解説していきます。
どのRubyフレームワークが頻繁に検索されているのかGoogleトレンドで見ていきましょう。
Rubyフレームワークのトレンドの結果はRSpec、Ruby on Rails、Sinatra、Padrino、Ramazeの順となりました。Rubyフレームワークでは、RSpecが一番のトレンドとなります。
しかし先述したフレームワークの案件数の観点から見るとRuby on Railsが一番求人・案件数が多いこともあり、トレンドと求人・案件数とは相関関係がない可能性があります。
なお、Rubyの市場動向を少し見ていきましょう。
Googleトレンドの検索結果では、RSpecやSinatraなどの軽量フレームワークやツールへの関心が高まっていることがわかります。これらのデータは、Rubyフレームワーク市場がRuby on Railsを中心としながらも、多様なフレームワークやツールへの注目が広がっていることを示唆しています。
Rubyは多くのサービスで活用されており、Twitter、Wantedly、Airbnb、Gunosy、クラウドワークス、食べログ、クックパッド、Huluなどの企業やシステム、アプリケーションに採用されています。これらの事例は、RubyがWebアプリケーションやクラウドベースのシステム開発において引き続き重要な役割を果たしていることを示しています。
しかし、PythonやJavaScriptなど他プログラミング言語のエコシステムが急速に成長している中で、Rubyフレームワーク市場が持続的に成長するためには、Railsをはじめとするフレームワークの性能改善や、軽量フレームワークの活用促進が重要です。
そのため、Rubyフレームワークの市場では引き続きRuby on Railsが中心的な役割を果たしつつ、RSpecやSinatraなどの特化型フレームワークがニッチなニーズを支えていると考えられます。これらの動向を踏まえると、Rubyフレームワークを学ぶ際には、まずRuby on Railsを習得し、必要に応じてRSpecやSinatraのような特化型ツールを補完的に学ぶことが推奨されます。
8.おすすめのRubyフレームワーク7選
この章では、Ruby開発の際に活用されるRubyフレームワーク7選を紹介します。
Ruby開発に携わるフリーランスエンジニアの方は、ぜひ興味/関心のあるRubyフレームワークを探してみましょう。
Ruby on Rails
Ruby on RailsはRubyで実装されたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークです。
Ruby on Railsは代表的なRubyフレームワークです。
Ruby on Railsは2004年にリリースされ、2024年11月時点では7.2.1.2が最新バージョンとなっています。
Ruby on RailsはTwitter、クックパッド、Airbnbなど多くの企業に活用されています。
Ruby on Railsには、DRY(Don’t Repeat Yourself)やCoC(Convention over Configuration)など、効率よく開発できることを目的とした原則があります。
DRY(Don’t Repeat Yourself)は「コードの繰り返し記述は避けよ」という原則です。
CoC(Convention over Configuration)は「設定より規約」という原則です。
Ruby on Railsの特徴としてMVCアーキテクチャを採用していること、コード記述がシンプルであること、ドキュメントが豊富で学習コストが低いこと、拡張性が高いためサービス成長に合わせて柔軟に対応可能であること、Rubyの中で最もメジャーなフレームワークのため案件獲得しやすいことなどが挙げられます。
また、Ruby on Railsは処理速度がやや遅いという特徴もあります。
Ruby on Railsは個人のWebサイトなど小規模な開発から〜大規模のWebアプリケーション/Webサービス開発まで幅広く活用できるRubyフレームワークです。
Sinatra
SinatraはRubyで記述されているオープンソースのWebフレームワークです。
Sinatraは2007年にリリースされ、2024年11月時点では3.1.0が最新バージョンとなっています。
Sinatraの特徴として軽量かつシンプルな設計であることやクロスプラットフォームに対応していること、記述が簡単であるため、比較的習得が容易であることなどが挙げられます。
SinatraはAppleやスタンダード大学、BBC、イギリス政府、GitHub、LinkedIn、Herokuなど、有名な団体や優良企業で導入されているWebアプリケーションフレームワークです。
Sinatraは小規模〜中規模のWebシステム開発やWebアプリケーション開発に適したRubyフレームワークです。
Padrino
PadrinoはRubyで記述されたオープンソースのWebアプリケーションフレームワークです。
PadrinoはSinatraをベースに開発され、2024年11月時点では0.14.4が最新バージョンとなっています。
Padrinoの特徴として、MVCを採用していること、フルスタックフレームワークであること、軽量かつ簡単なコード記述が可能であることなどが挙げられます。
Padrinoは小〜大規模Webシステム開発やWebアプリケーション開発に適したRubyフレームワークです。
cuba microframework
cuba microframeworkはRubyで記述されたマイクロフレームワークです。
cuba microframeworkの特徴として最低限の機能しか搭載していないため、シンプルな構造であることや実行速度が速いことなどが挙げられます。
また、ドキュメントはRuby on RailsやSinatraに比べて非常に少ないため学習コストは高いです。
cuba microframeworkはマイクロフレームワークであるため、小規模のWebシステム開発やWebアプリケーション開発に適したRubyフレームワークです。
Camping
CampingはRuby用のWebアプリケーションのマイクロフレームワークです。
Campingは2010年にリリースされ2024年11月時点では3.2.6が最新バージョンとなっています。
Campingの特徴としてMVCを採用していること、軽量かつシンプルであること、Ruby on Railsへの移行が簡単であることなどが挙げられます。
Campingはcuba microframework同様マイクロフレームワークであるため、小規模のWebシステム開発やWebアプリケーション開発に適したRubyフレームワークです。
Ramaze
RamazeはRubyに活用されるオープンソースWebアプリケーションフレームワークです。
Ramazeは2006年にリリースされています。
Ramazeの特徴としてKISSとPOLSなど8つの原則を取り入れていること、シンプルな構造であること、自由度が高いこと、MVCを採用していることなどが挙げられます。
KISS (Keep It Super Simple):Rubyを知っている人ならば簡単に書けること
POLS (Principle of Least Surprise):直観的で簡単。驚きを最小限に
Ramazeは軽量かつシンプルであるため、小〜大規模のWebサービスやWebアプリケーション開発に適したRubyフレームワークです。
HANAMI
HANAMIは、Rubyに活用されるオープンソースWebアプリケーションフレームワークです。
HANAMIは2017年にリリースされており、2024年11月時点ではv2.2.0が最新バージョンとなっています。
HANAMIの特徴としてHanamiはDDD(ドメイン駆動設計)をベースにし柔軟性に富んだ開発が可能であること、フルスタックフレームワークであること、レスポンスが速いこと、メモリ消費を抑えられること、サーバダウン防止機能が搭載されていることなどが挙げられます。
HANAMIは小〜大規模のWebサービスやWebアプリケーション開発に適したRubyフレームワークです。
関連記事
9.まとめ
今回はRubyに焦点を当ててフレームワークの説明やライブラリとの違い、Rubyフレームワークのメリットデメリット、フレームワーク案件数から見たRubyフレームワーク市場動向、おすすめのRubyフレームワークについて解説していきました。
Rubyフレームワークの活用によって、セキュリティ面の確保やバグの減少など開発効率の向上を図ることができます。
また、Rubyフレームワークはそれぞれ特徴があります。
例えば大規模開発はRuby on RailsやPadrino高速開発はSinatraやCampingなど規模や環境、開発分野によって使用するフレームワークは異なります。
Rubyフレームワークをはじめとし、開発スキルには流行り廃りがあり、日々新しいものが開発され、消えていっています。
そのためRubyやRuby周辺知識に関する最新情報を常に確認し、アップデートしましょう。
フリーランスエンジニアとして自分の開発スキルや習得環境に適したRubyフレームワークを選択し、IT業界で常に活躍していきましょう。