Reactは、JavaScriptのライブラリの1つです。コンポーネントベースでUIを作成するのが特徴で、再利用性と保守性、拡張性が高いことから世界中で人気のライブラリです。現在のWeb開発では欠かせない存在となっています。「Reactが難しすぎる」という意見もあるようですが、それ以上にReactでできることは魅力的です。本記事では、Reactでできることを中心に、Reactでできないことや入門用にReactの導入から基本的な使い方までをわかりやすく解説します。
目次
1.Reactとは
ReactとはJavaScriptのコンポーネントベースUIライブラリであり、動的でインタラクティブなWebアプリケーションを効率よく構築するためのツールです。Meta社(旧Facebook)によって開発され、オープンソースとして提供されています。
そのシンプルさと拡張性の高さから、現在のWeb開発では欠かせないライブラリです。ここでは、Reactの概要や歴史と進化などを解説します。
Reactの概要
Reactの歴史と進化
HTMLとJavaScriptが合体した独自の記法(JSX)
Reactの概要
Reactは、コンポーネントという単位でUIを構築します。コンポーネントとはUIの部品として機能し、再利用性や保守性を高めるために設計されています。
Reactの最も大きな特徴は、コンポーネント間でデータをPropsというプロパティを使って渡し、Stateという状態管理で動的なUIを実現する点です。
また、仮想DOM技術という仕組みを使って、DOMの更新効率を改善します。これによってUIの更新が高速になり、パフォーマンスの向上が図られます。
Reactは特に動的でインタラクティブなUIを必要とするSNSやECサイト、ビジネスチャットアプリなどのアプリケーションに適しています。
Reactの歴史と進化
Reactは2013年にMeta社(旧Facebook)によって公開されました。公開当初はMeta社内部での使用を目的としていましたが、シンプルで効率的なアーキテクチャにより、すぐにオープンソースとして公開され世界中の開発者に採用されるようになりました。
その後、Reactの進化は仮想DOMやコンポーネントベースの開発に加えて数々の革新をもたらしています。2017年にリリースしたReact 16では下記の機能が追加されました。
エラーバウンダリ
フック
Fiberアーキテクチャ
サーバーサイドレンダリング(SSR)
さらに多機能なライブラリへと進化したReactは、Webアプリケーション開発だけでなく、React Nativeの登場によってモバイルアプリケーション開発にも使用されるようになりました。
Reactは、常にコミュニティによって進化を遂げ、最新技術に対応するライブラリとして、フロントエンド開発における定番となっています。
HTMLとJavaScriptが合体した独自の記法(JSX)
Reactは、JSX記法を使用しています。JSX記法は、JavaScriptのコード内にHTMLのような記述を行うことです。JSX記法は、UIを宣言的に定義するため、HTMLとJavaScriptの両方の長所を活かせます。
// RenderListコンポーネントの作成 const RenderList = (props) => { return (<ul className="fruits"> {props.items.map((item) => <li>{item}</li>)} </ul>); }
const items = ['リンゴ', 'バナナ', 'パイナップル']; <RenderList items={items} /> |
上記のコードは、配列の値をリスト表示する簡単なコンポーネントの作成とその利用です。<li>や<ul>はHTMLで使用する記述ですが、その中に変数や関数の計算結果を出力するために波括弧({})を記述します。
このようなJSX記法はReactが解釈して通常のJavaScriptにコンパイルされます。
2.Reactでできることとメリット
Reactでできることやメリットによって、さまざまな用途に対応できます。ここではReactを使用して実現できる主な機能やメリットを解説します。
UIコンポーネントの作成
イベントハンドリング
データバインディングと状態管理
React Routerを使用したルーティング
Reactのフック(Hooks)
サーバーサイドレンダリングと静的サイト生成
モバイルアプリケーション開発
高速で高品質な開発
UIコンポーネントの作成
ReactではUIコンポーネントの作成が中心になります。コンポーネントはボタンや入力フォームなどの画面上のUI要素を独立した部品として定義する方法です。この方法によってUIのコードが整理され保守性が高まります。
各コンポーネントは、内部で状態を管理しデータに基づいた描画を行います。コンポーネントは再利用可能なため、同じ部品を複数回使いたい場合でも簡単に再利用でき、開発効率が向上します。
イベントハンドリング
Reactではクリックやフォームの送信などのユーザーのアクションを処理するためのイベントハンドリングが簡単に実装できます。通常のJavaScriptでのDOM操作では各イベントごとにリスナーを設定する必要がありますが、Reactでは簡単に扱うための構文を提供しています。
Reactで実装するイベントハンドリングは、クロスブラウザ対応でイベントが一度バブリングされ、最適化された形式で処理されます。バブリングとは、ネストされた要素を次々に上に登るように実行することをいいます。
これによって、Reactでのイベントハンドリングは効率的かつコードもシンプルに実装可能です。
データバインディングと状態管理
Reactでは状態管理が重要な概念です。コンポーネントの状態(State)は、UIに動的な変化をもたらします。Reactのデータバインディングによって状態が代わるたびにUIが自動的に再描画され、ユーザーに最新の情報が表示されます。
例えば、フォームの入力値やボタンのクリックによって状態が変更されると、その変更が即座にUIに反映される仕組みです。Reactでは親のコンポーネントから子のコンポーネントにデータを受け渡しする際に、Propsというプロパティを使用するため、データの流れが明確にわかります。
React Routerを使用したルーティング
Reactを使ってシングルページアプリケーション(SPA)開発をする場合、React Routerを使用したルーティング機能が不可欠です。React RouterはReactに特化したルーティングライブラリで、URLに基づいて異なるコンポーネントをレンダリングします。
React Routerによってページ遷移を実現し、URLの変更に応じてUI更新がされるため、ユーザーに快適なナビゲーションの提供が可能です。
Reactのフック(Hooks)
Reactのフック(Hooks)は、React 16.8で導入された機能です。フックを使用することで関数型コンポーネントでも状態管理や副作用の処理ができるようになりました。
従来はクラスコンポーネントで行っていたことが、関数型コンポーネントで実現可能になり、よりコードがシンプルで再利用性の高いものになります。
代表的なフックには下記のようなものがあります。
useState(状態管理)
useEffect(副作用の処理)
useContect(コンテキストAPI)
サーバーサイドレンダリングと静的サイト生成
Reactではサーバーサイドレンダリング(SSR)や静的サイト生成(SSG)が可能です。これによって検索エンジン最適化(SEO)が向上し、ページの初期表示が速くなります。また、ユーザーにとってよりスムーズで快適な体験を提供できます。
モバイルアプリケーション開発
Reactは、モバイルアプリケーション開発が可能です。モバイルアプリケーション開発にはReact Nativeを使用します。React NativeはReactをベースにしたモバイルアプリケーション開発のフレームワークで、iOSやAndroidアプリケーションを単一のコードで開発可能です。
ネイティブなUIコンポーネントを使用し、パフォーマンスの高いモバイルアプリケーション開発ができるため、Reactを使用するWeb開発者はモバイルアプリケーション開発にも挑戦しやすいメリットがあります。
高速で高品質な開発
Reactを使用することで、高速で高品質な開発を実現できます。コンポーネントベースの設計によりコードの再利用性が高まり、それによって保守性や拡張性も向上します。
また、Reactのエコシステムには多くのライブラリやツールが揃っており、開発をサポートします。
例えば、React DevToolsを使用すれば、リアルタイムでUIや状態の変更を確認でき、デバッグが簡単になります。さらに、パフォーマンス向上のための最適化手法も充実しており、効率的に高品質なWebアプリケーションを作成できます。
3.Reactでできないこととデメリット
Reactはできることとメリットが多く非常に強力なライブラリですが、いくつかのデメリットもあります。
日本語のドキュメントが少ない
国内企業で採用されているケースが少ない
メモリ消費量が多い
環境構築が難しい
日本語のドキュメントが少ない
Reactの公式ドキュメントは英語で書かれており、日本語のドキュメントがやや少ないのが現状です。そのため、日本語の情報を集める開発者は情報収集に苦労する場合があります。
しかし、最近ではReactの公式サイトやチュートリアルが日本語で翻訳されたものを公開しており、徐々にこの問題は解決されつつあります。
国内企業で採用されているケースが少ない
Reactは世界的に広く使用されている一方で、国内企業での採用事例はまだ少ない傾向にあります。
「State of JavaScript 2023」の調査結果によるとフロントエンドフレームワークの世界の利用率は8年連続でReactが1位です。国内でReactがどのくらい需要があるのかを調べるために、フリーランスボードに掲載されている求人数を見てみます。
比較の対象には、「State of JavaScript 2023」の調査で2位のVueと3位のAngularを挙げます。
フロントエンドフレームワーク | 求人数(2024年11月時点) |
---|---|
React | |
Vue | |
Angular |
こうしてみてみると、Reactの求人数が最も多く、国内企業でもReactを使用したWebアプリケーション開発に力を入れようとしている動きが伺えます。そのため、これから国内でのReactの採用事例が増加していくことが予想されます。
メモリ消費量が多い
Reactは仮想DOMを使用して効率的にレンダリングを行いますが、メモリ消費が多いことがあります。特に大規模なアプリケーションや頻繁に状態が変わる場合、メモリ使用量が増加し、パフォーマンスに影響を与えることがあります。
この点は、特にモバイルアプリケーション開発において注意が必要です。
環境構築が難しい
Reactの開発環境構築は、初心者には難しいと感じる場合があります。React自体は簡単にインストール可能ですが、WebpackやBabelなどの他のツールとの連携や設定が必要な場合も多く、最初の学習コストが高く感じることがあります。
しかし、Create React Appなどのツールを使うことで、簡単に開発環境を整えることができるようになっています。
関連記事
4.Reactの導入と基本的な使い方
Reactを使い始めるために、導入と基本的な使い方を解説します。
Node.jsのインストール
Create React Appを使用したReactアプリケーション作成
コンポーネントの作成
コンポーネントの使用
Node.jsのインストール
まず、Node.jsをインストールしましょう。Node.jsは、サーバーサイドでJavaScriptを動作させるためのツールですが、最近ではWebpackなどフロントエンドを便利に開発するためのツールとしても使用されるようになっています。Reactの使用においても、Node.jsを利用するのが便利です。
Node.jsの公式ページからNode.jsをダウンロードし、ダウンロードしたパッケージを解凍することでインストールが始まります。インストールが完了すれば、Node.jsとnpmのバージョンを確認します。npmはNode.jsをインストールすると一緒にインストールされるパッケージマネージャーです。
// Node.jsのバージョン確認 node --version
npm -v |
どちらもインストールされているバージョンが表示されていれば、インストールは成功しています。
Create React Appを使用したReactアプリケーション作成
次に、Create React Appを使用してReactアプリケーションを作成しましょう。Create React Appは、Reactプロジェクトのための環境をセットアップするための公式サポートツールで、WebpackやBabelなどの設定を自動的に行ってくれます。
下記のコマンドを実行すると、myappというReactアプリケーションを作成できます。
npx create-react-app myapp |
次に、myappディレクトリに移動して開発サーバーを起動します。
cd myapp npm start |
ブラウザが自動的に開かれ、localhost:3000でアプリケーションが表示されます。
コンポーネントの作成
早速、コンポーネントを作成してみましょう。先ほど作成したmyappをお好きなテキストエディタで開きます。今回はVSCodeを使用しました。myappのsrcフォルダにあるApp.jsに下記のWelcomeコンポーネントを作成します。
function Welcome(props) { return <h1>Hello, {props.name}</h1>; } |
Welcomeコンポーネントは、nameという名前のPropsを受け取り、メッセージを表示する<h1>要素を返します。
コンポーネントの使用
コンポーネントが定義できたら、次はコンポーネントを使用します。
function App() { return ( <div> <Welcome name = "タロウ"/> <Welcome name = "ジロウ"/> <Welcome name = "サブロウ"/> </div> ); } export default App; |
Appコンポーネントは、namePropsを保持する3つのWelcomeコンポーネントをレンダリングします。ファイルを保存すると、ブラウザには下記のように表示されます。
このように、Create React Appを使用することで簡単にReactアプリケーションが構築可能です。
5.Reactで作られたWebアプリ・サイト例
Reactをもっと深く知るために、Reactを使用して開発されたWebアプリケーションの例をみてみましょう。
Facebook
PayPal
Shopify
Facebookは、世界中の人が利用しているSNSです。Facebookのような大規模なアプリケーションでは、Reactの特徴であるコンポーネントベースのアーキテクチャが非常に有効です。複雑なUIや動的なインタラクションを効率的に管理するためにReactが選ばれています。
PayPal
PayPalは、決済サービスの1つです。UIのパフォーマンス向上と開発効率を考慮してReactが採用されています。Reactは、特に動的なページ更新が求められる決済システムに適しています。
Shopify
Shopifyは、誰でもすぐにネットショップを開始して商品を販売できるサービスです。Reactを使用してオンラインショップの管理機能を提供しています。リアルタイムのデータ更新や複雑なUIの制御にReactのメリットが活かされています。
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6.まとめ
今回は、Reactを学び始めたばかりで、その活用方法や可能性を知りたい方や、現在のプロジェクトにReactを導入すべきかを検討しているエンジニアやプロジェクトマネージャーに向けてReactでできることについて解説しました。