エンジニアの中には「WEB開発ならMacと聞いた」「企業にMacパソコンを使うよう指示された」など、WindowsからMacに移行するか悩みを持つ方もいます。しかし、日本ではユーザーの視点だとどうしてもWindowsがメインとなりがちで前提知識がなく、Macでの開発環境についてよくわからないこともあります。
そこで、本記事ではMacエンジニアになる場合やその準備のために、Windowsとの違いやMacへ移行するメリットを解説します。この記事を読めば、必要な情報や心構えを知ることができるのです。
目次
1.Macエンジニアとは
Macエンジニアは、Macを搭載したOSパソコンや機材を使って開発するエンジニアのことです。「Mac環境を活用するエンジニア」の意味で使われています。そのため、OSとしてMacと並ぶWindowsやLinuxは、エンジニア間でよく比較対象となります。
Appleの「Mac」とは
Macとは、「Macintosh(マッキントッシュ)」を略した言葉です。Appleが開発・販売しており、Windowsの次に有名なOSとして知られています。この「OS」とは、パソコンの機械言語に指示を出すためのシステムです。これを直感的に行うために、パソコン内にMac専用OSが搭載されています。
Macパソコンを使うエンジニア
Macパソコンには、一般的にデスクトップとノートパソコンがあり、Appleはどちらも製品を開発しています。そのため、日本にはMac愛用者も1割近くいて、特にアプリ開発者やWEB系のエンジニアが後述するプロ仕様のノートパソコンを愛用しています。
2.MacとWindowsの違い(エンジニア視点)
開発で使用するMacとWindowsの違いが何かエンジニアにとっては気になるものです。そこで、エンジニア視点からMacとWindowsの違いを以下に解説します。
ユーザー視点とエンジニア視点にある共通点と差
MacとWindowsの違いの1つ目は、Windowsのユーザーシェアが圧倒的に多く、Macは全体で少数派という点です。これはユーザーの話だけでなく、開発者コミュニティでも同様の傾向が見られます。
StatCounterなどの市場調査によれば、2024年時点でWindowsはデスクトップOSシェアで約70%以上を占め、macOSは約15%前後となっています。
しかし、ユーザー間の割合比率の傾向よりも、プログラム言語を扱う開発エンジニアのほうが、Macをよく使っていることが知られています。
そのため、ユーザーの比率よりも、エンジニアの比率が若干多い傾向にあるでしょう。
数字ではそこまで明確にはでていませんが、エンジニアに多いと考えられる理由としては、iOSアプリの開発に有利なことやUNIX系ツールが標準搭載されているmacOS環境がWeb開発やクラウド環境構築に適していることなど仕事のしやすさの面でWindowsから移行した事例が多々あることです。
開発環境が異なる
エンジニアにとっては、MacとWindowsの大きな違いは、開発環境がすでに用意されていることです。人気を集めた2000年代の当初からデザインを強く意識しており、しかもUNIX系の開発ツールを使えます。そのため、エンジニアにとってデータベースやWEBサーバーを使いやすいという魅力があります。
そしてWindowsで可能な開発は基本的にMacでもできます。これは、デュアルブート(複数OSを入れる方法)でMacにWindowsを入れることができるためです。
もちろん、エンジニアにとって開発先のクライアントに環境を合わせることや古いソフトへの対応可否の違いも出るため、まったく同じではありません。しかし、上手く活用してMacとWindowsを使いわけるケースもよくあります。
アプリ・ソフト開発企業のエンジニアはMacが必須なことがある
Macは企業が採用する業務用パソコンとして提供されることがあります。Windowsと比べて使用者全体の割合は少ないですが、企業の一部では業務に必要となるOSにMacが必須となることがあります。
その理由として例えば、Linuxとの親和性に優れており、「Xcode」を使用できるのはMacだけという点です。そのため、アプリ・ソフト開発企業の一部ではMacが必要となるのです。
クリエイティブな開発が得意
Macは、動画や映像関連、デザインなどのクリエイティブなエンジニア業務用にハイスペックな環境を用意できるのが特徴です。そのため、Windowsよりもクリエイティブな開発現場ではMacのほうがスペック的に使いやすいことがあります。
特にプロ向けのアプリやツールにはMacでしか使えないものもあり、「Homebrew」のソフト開発パッケージや開発向けのコマンド、機能などもそろっています。
3.WindowsからMacに移行する3つのメリット
次に、WindowsユーザーやエンジニアがMacに移行するメリットについて解説します。
メリット1.先進的な開発情報が豊富
近年、先進的な技術をネットに上げるエンジニアは、WEB開発技術の解説時にMac環境の情報を提供するケースも少なくありません。実際に、質問サイトやエンジニアの情報サイトでは、Macベースでの解説が目立ちます。
もちろん、基本的な解説や基礎知識の説明は割合の高いWindowsが占めますが、一歩先に進んだ専門的な開発情報では、環境変化の起きにくいMacで情報提供することも少なくないのです。
WindowsとMacを両方使うのが理想です。しかし、難しい人もいるためMacに移行する場合もあります。その際は、開発環境を取得する最先端の情報にアクセスしてWindows用に翻訳せずそのまま知識や技術として吸収できるメリットがあります。
メリット2.環境構築しやすい
Macには、「UNIXコマンド」と呼ばれるシステム管理コマンドの一種が搭載されています。そのため、コマンド操作でプログラミング言語を扱いやすくなっています。
WindowsではUNIXの環境構築のハードルが高いためです。なかでも「LAMP」というWeb開発の環境構築にはUNIX系に強いMacが有利です。ちなみに「LAMP」とは、Linux、Apache、MySQL、PHPの各プログラミング言語におけるオープンソースのことです。
メリット3.マウスに依存しない操作ができる
Macには、「Trackpad(トラックパッド)」と呼ばれる直感操作のできる装置があります。エンジニアが利用する場合でも効率的な直感操作が可能です。
Windowsのタッチパッドとは異なり、指先での範囲指定にも優れるなど使いやすいのが魅力です。狭い業務スペースでもキーボードと一体化して置くこともできるため、場所を気にせず使えます。コマンドと合わせて、開発時の操作を直感的にできるのがメリットです。
4.Macに移行する5つのデメリット
Windowsを使うのをやめてMacに移行することは、メリットだけでなくデメリットもあります。
デメリット1.環境に慣れる必要がある
1つ目のデメリットは、Mac環境になれる必要があることです。かかる時間は長くありませんが、Windowsで開発することに慣れた人が急に環境を変えると細かい操作性や機能の違いに戸惑うことも少なくありません。環境だけでなく、OSやその周辺への理解度も変わるため、Macの性能を理解するために学習が必要です。
デメリット2.作業フローが変わることがある
MacとWindowsは基本的に開発環境や開発の手順に違いが生まれます。そのため、使用するOSを変えてしまうと、業務フローも少し変わり、以前と同じフローで進めることができなくなります。
これは個人で仕事する場合に自分だけの問題で済みますが、もし企業のもとで開発者やクライアント企業相手に開発する場合には、OS変更をすると業務にトラブルが発生するリスクがあります。そのため、エンジニアは仕事中の案件にOS変更を持ち込まず、両方の環境を保持しながら仕事することが求められるのです。
デメリット3.Windowsで使えたソフトが使用できない
Macに移行した場合、Windowsでしか対応していないソフトがあることもデメリットの1つです。特にOSバージョンによって変わる古いソフトは、Windowsでないと使うことができないケースも少なくありません。
当然、Windowsのシェアが大きいということは、ソフト提供者もWindows環境で動作するものを開発していることになり、Mac向けはWindowsほどのソフトを提供していないことになります。企業によってはソフトの互換性に優れたWindowsをメインに採用しているのはそのためです。
デメリット4.値の張るパソコン本体や機材が多い
Macに移行するデメリットの中には、パソコン本体や周辺機器が全体的に高価なことが挙げられます。
主な理由として、Windowsにはシンプルなデザインが多く、標準スペックのものが数多く販売されて安く価格設定されるのに対し、Macはデザインにこだわっていて、スペックも高いことです。そのため、同スペックでもデザイン性によって費用が高くなり、傾向としても高めのスペックの影響で全体的に値が張るのです。
デメリット5.互換性がない
Macは開発環境がWindowsと異なるだけでなく、基本となるファイル環境の互換性がないこともデメリットの1つです。
特にWindowsとMacの両方を開発で使う場合に発生しやすいトラブルです。Macの文字コードはWEB開発向けのUTF-8に標準設定されており、Windowsは独自環境のShift-JISや他の文字コードを採用しています。
どちらもUTF-8で設定し直せますが、ベースが異なるために急な環境変化ではすぐに対応できず、ファイルのやり取りでもコンパイルが必要になって手間がかかります。「Windowsではファイルが開けたのに、Macでは開けない」といった問題が発生しないように対処することが必要となって面倒が生じるのです。
5.エンジニアがMacパソコンを導入する際の4つのポイント
エンジニアが開発も視野に入れて導入する場合は、以下のポイントを押さえることが大切です。Windowsパソコンしかこれまで使ってこなかったエンジニアの方は特に参考にしていただきたいです。
Macは独特の本体名称やその性能表示があるため、事前に最低限の知識を備えておくことも重要です。
ポイント1.開発に必要な機能・スペックを搭載
ポイントの1つ目は、開発に必要な機能・スペックを搭載したMacパソコンを選ぶことです。
その際にまずは、開発用のスペックが十分なことです。スペックに余裕があれば、動きがスムーズになりやすいのです。スペックが低く動きが遅いとスムーズな開発作業ができなくなります。特に開発の規模が大きくなれば安物だとスペックが不足するのです。
また、データやさまざまなソフトを入れることも多くなるため、スペックの余裕を持って買うことがおすすめです。ただし、高性能CPUは費用が一定のラインを超えると急に高くなるため、映像処理やクリエイティブな作業が必要ない開発環境ではスペックにこだわりすぎないようにします。
ポイント2.仕事環境を踏まえたパソコンにする
2つ目のポイントは、仕事環境を踏まえたパソコンにすることです。エンジニアは開発の中でどの仕事を担当するかで変わります。
特に営業や打ち合わせ、クライアント先とのコミュニケーションで外出が多いならノートパソコンは必須となります。しかし、画面の大きさなどが限られるノートよりもデスクトップを好む方もいるため、両方用意するか、用意できない人は仕事環境を踏まえて1つに絞るよう判断すると良いでしょう。
ポイント3.デザインや自分の好みを入れる(モチベーションアップ)
3つ目のポイントは、Macパソコンは基本的にデザインに優れているため、自分好みの形状やカラーを選ぶことです。
業務上のモチベーションも高まりますし、デザイン性が高ければ仕事で外出時に持ち運んでもスタイリッシュに決めることができます。とはいえ、企業から貸与される業務パソコンのケースもあるため、その場合は自宅用のパソコンだけ選びます。
ポイント4.小型デバイスや外部装置の機材を活用する
4つ目のポイントは、Macパソコンに取り付けたり連携したりするデバイスを選定することです。
特にアプリ開発や出入力に使う装置は、自分で性能や価格を比べて選ぶことが必要となります。企業指定のものでない限りは、エンジニアに必要と思われるものをピックアップしておきましょう。もちろん、企業がすべて用意するケースもあるため、必要な場合のみです。
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6.Macを導入する際の2つの注意点
Macに移行してOSやパソコンを導入する際は、本当にMacがいますぐ必要か検討するなどして、以下の注意点に気をつける必要があります。
注意点1.Macの必要性を調べておく
大学や専門学校、企業の多くではWindowsを使うことが通例となっており、推奨されるOSもWindowsのケースが少なくありません。そのため、Mac導入の際は、その必要性を自分の状況に合わせて調べる必要があります。
エンジニアから「Macを使っているから君もMacを使いなさい」といわれて、そのとおりにするのはよくありません。開発状況や今後の就職・転職、周囲の環境などを照らし合わせて、本当に今後必要なOS選択をすることです。
注意点2.Macに変えて開発環境がどう変わるか事前に把握する
Mac移行の際に、Windows利用者に陥りがちなこととして、同じような使い方ができると考えていることがあります。しかし、MacとWindowsでは開発環境も大きく変わりますし、使い勝手にも変化があるのです。
普段どちらのOSを利用しているかでも操作や使えるソフトが変わります。これを知らずにOSだけ変えてしまうと、環境の変化に対応できず、使っていたソフトが使えないということにもなりかねません。
事前にOS移行で何が変わって、自分が開発時にどこが変わると何に影響を受けるのか、把握しておくことが大事です。
7.エンジニアに必要な推奨スペック
エンジニアに必要な推奨スペックを以下にまとめています。
OSは「Mac Book Pro」
推奨のMacOSは以下の2つです。
「Mac Book Air」
「Mac Book Pro」
簡単な開発だけなら「Mac Book Air」のOSスペックのパソコンで十分です。ただし、MacBook Pro(M1チップ搭載)はエンジニアにも人気のOS性能に優れた機種です。スペックを多少抑えてMacBook Airでも十分に普段使いができます。
特に最新OSで3年以内に出たパソコン機種のmacOSは、ソフトの互換性や開発でのドライバやライブラリ対応の十分な機能が見込まれます。その中から推奨のmacOSを選びましょう。
CPUはM2以上かつ10コアCPUモデルが狙い目
MacではCPU性能の表示にM1、M2、M3などの表記を用いています。例えば、「MacBook Air」のM2で「8コアCPUの8コアGPU」のスペックとなり、「MacBook Pro」のM2Proでは「10コアCPUの16コアGPU」搭載です。本格的な開発なら「MacBook Pro」の10コアCPUを推奨します。
メモリ16GB以上推奨
推奨メモリは、16GB以上です。また規模の小さい開発やデータ量の少ないものであれば、8GBでも問題ありません。
ただし、メモリが少ないと同時処理の動作に影響が出るため、実際に使った感覚で十分に問題ないか確認する必要があります。Macの「MacBook Pro」の機種ならM3で16GBメモリがあります。
ストレージは余裕を持って256~512GB推奨
推奨ストレージは、256GB以上で、最低限128GBは必要となります。パソコンのスムーズな利用にストレージ容量が影響するため、エンジニアならできれば理想として多めの512GBは欲しいところです。
メモリの推奨と同じく、Macの「MacBook Pro」の機種ならM3で512GBストレージモデルがあります。
8.WindowsからMacへの移行するときのエンジニア向けQ&A
ここでは、エンジニアがWindowsからMacへの移行で事前に知っておきたいよくある質問とその回答を紹介します。
WindowsからMacへの移行すると何が良いの?
Macは開発に向いたOSとして知られています。そのため、コマンドによる開発環境の充実とUNIX系のメリットが得られます。
例えば、ディレクトリ構成を本来のUNIX準拠で使うことができます。また、カスタマイズ性にも優れており、開発環境に柔軟に対応できます。キーボードの配列を変えられることや、全体的に画面解像度が高く優秀なのも良さの1つです。iOSアプリも開発しやすいといえます。
企業からMacを使うように指示されたけどなぜ?
企業では、開発環境に合わせたOSを直接指示してエンジニアが開発を進めるケースも珍しくありません。使うパソコンOSがバラバラでは開発工程で無駄が生じやすく、業務フローにも影響が出るためです。
そのため、採用された企業や部署ごとに使うOSを指定することがあり、貸与パソコンや業務用パソコンに慣れる必要が出てきます。その際は、WindowsとMacの違いを理解し、カスタマイズを試します。また、Macエンジニア超初心者の場合は、基本操作も押さえておくことが大事です。
Web開発にMacが増えているのは本当なの?
実際に増えているかどうかは不明な部分です。企業全体で統計をとっているわけではないので、Macの増え幅が大きいかどうかはわかっていません。
しかし、エンジニア個人が発信する情報の中には、Macが増えていると公言する方もいます。これは、MacOSのパソコンが開発に適した環境を用意できることやAppleしかMacが提供されないため、開発環境が頻繁に変化しにくいことなどが好まれ、増えていると思われている理由です。
Macを使った開発環境の構築方法は?
Macを使った開発環境の構築では、まずどのプログラミング言語が必要かを確認し、システムの設定やパッケージのインストールを行います。
JavaならJDKのインストールやIDEの設定、PythonならHomebrew(のpyenv)やPythonを順にインストールします。
他にも、開発内容に応じてターミナルやエディタ、シェルなどを設定しましょう。MacならWindowsよりも開発環境の構築が容易なので、その点も開発環境の構築に必要な手間が省けます。
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9.まとめ
今回は、Macを導入する場合についてエンジニア目線でWindowsからの移行のメリットやデメリット、Q&A(開発環境の構築方法など)を取り上げました。
エンジニアにとってOSの選択は、開発環境の変更を意味するため、自分の置かれている状況や業務内容、所属する企業の方針などを踏まえて、総合的に判断することが必要です。例えば、iOSアプリやWEB開発に向いている反面、国内ではWindows開発が多数を占めることなども踏まえます。
その上で、MacOS導入時はパソコンのスペックや価格などを考慮し慎重に検討しましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。