5Gは、従来の4Gよりも大幅に機能が向上しているため、私たちの生活を劇的に変化させると期待されている通信方式です。
しかし、5Gにはデメリットもあるため、ただ導入すればよいというものではありません。場合によっては、導入効果が得られないだけでなく、大きな損失を被る可能性があります。
この記事では5Gの特徴から4GやWi-Fiとの違い、導入のメリット・デメリットや導入事例、5Gの今後の展望を詳しく解説していきます。これから5Gを詳しく知りたい方や業務に活かしたいと考えている方は必見です。
ぜひ最後までご覧いただき、5Gの特徴を活かしビジネスに活用してください。
目次
1.5Gとは?
5Gは「5th Generation(第五世代移動通信システム)」の略称で、次世代の通信規格です。前世代である4Gの次世代規格として、2020年3月よりサービスが開始されました。
5Gの登場は、私たちの生活の利便性を劇的に向上できると期待されています。特にIoT(Internet of Things)としてさまざまなものがネットワーク接続されることで、効果を発揮します。
例えば、医療現場での遠隔手術や車の自動運転、タッチレス決済など、4Gの時代と比べると違いを実感できるレベルで変化しているのが5Gです。
2.5Gの特徴
5Gの特徴は主に以下の3点です。5Gを詳しく知るためにも特徴を理解する必要があります。それぞれを見ていきましょう。
高速大容量通信が可能な周波数を使っている
高信頼・低遅延通信ができる
多数同時接続ができる
高速大容量通信が可能な周波数を使っている
5Gは大容量通信がしやすくなりました。2時間の映画を数秒でダウンロードできるようになったのが特徴です。時間のかかる作業でも待ち時間を気にする必要がなくなったのは大きなメリットです。
高速大容量通信ができる主な理由は、従来とは異なる周波数を使っているからです。4Gまでの周波数では、飽和するほどさまざまな用途で使われていたため、通信速度が出にくくなっていました。しかし、5Gでは、新たな周波数を割り当てたため通信速度が向上しました。
さらには、安定した通信を実現するために、ビームフォーミング機能やビーム追従機能を搭載しています。ビームフォーミング機能とは、電波を受けるアンテナを複数同時利用することで、より遠くまで効率よく電波を飛ばせる機能です。ビーム追従機能とは、接続している端末ごとに電波の出力を向けることで、より安定した通信を実現する機能です。
これらの機能を実装しているため、5Gでは高速で大容量通信が実現できています。
高信頼・低遅延通信ができる
正しい通信をすばやく送れる高信頼・低遅延通信ができるのも5Gの特徴です。この特徴を実現するために使われている技術がエッジコンピューティングです。
エッジコンピューティングとは、デバイスとサーバーの物理的な距離を縮めることで、通信時間を短くする技術をさします。4Gまでの通信では、「デバイス→基地局→インターネット→Webサイト」のような通信を行っていました。しかし、5Gの通信は「デバイス→基地局→基地局に設置したサーバー」となり、通信経路を短くし、リアルタイム性を確保しています。
5Gによって高信頼・低遅延通信ができることで、オンライン会議やオンラインゲームでのタイムラグを感じにくくなります。
多数同時接続ができる
多数同時接続ができるのも5Gの特徴の1つです。
4Gでは1平方キロメートル当たりに接続できる端末数は1万台程度でしたが、5Gでは100万台程度まで処理できるため、密集する地域でも通信しやすくなっています。
この特徴を実現するために、グラントフリー方式を採用しています。グラントフリー方式とは、デバイスと基地局の通信をシンプルにすることで、多数のデバイス接続を可能にする方式です。
4Gまでは、デバイスと基地局で通信する際に何度もやり取りが行われていたため、基地局の負担がかかってしまい多くのデバイスを接続できませんでした。しかし、5Gでは基地局の許可なしで通信ができるようになりました。そのため、基地局の負担が軽減され、多くの端末が接続しやすくなっています。
3.5Gと4Gの違い
5Gと前世代の通信規格である4Gの主な違い(差分)は以下のとおりです。
項目 | 5G | 4G | 違い(差分) |
---|---|---|---|
通信速度 | アップロード:10Gbps ダウンロード:20Gbps ※理論値 | アップロード:100Mbps ダウンロード:1Gbps | アップロード:100倍 ダウンロード:20倍 |
遅延 | 1ms程度 | 10ms程度 | 10分の1 |
同時接続台数 | 約100万台/km² | 約1万台/km² | 100倍 |
5Gと4Gの通信速度は、アップロードでは100倍、ダウンロードでも20倍の違いがあります。速度は理論値なのでいつもダウンロードで20Gbpsが出るわけではありませんが、非常に高速な通信が可能ということがわかります。
遅延や同時接続台数も大幅に向上していることからも、5Gと4Gの違いは大きいと言えるでしょう。
4.5GとWi-Fiとの違い
5Gと似た言葉でWi-Fiがあります。違いがわからない方や5Gが使えればWi-Fiは不要なのでは?と思う方もいるのではないでしょうか。結論として、どちらも使い方が異なるため、上手く利用するのがおすすめです。その理由を解説していきます。
5Gはモバイル通信、Wi-Fiは無線LAN通信
5GとWi-Fiの周波数は異なる
5Gを導入すればWi-Fiは不要になるか
5Gはモバイル通信、Wi-Fiは無線LAN通信
5GはスマートフォンやSIMカードを使って行うモバイル通信で、Wi-Fiは自宅や会社、フリーWi-Fiなどで使う無線LANの通信です。
モバイル通信では、自分が契約している通信量までしか快適に利用できません。通信量を超えてしまうと追加料金を払うか、低速のまま使う必要があります。一方、Wi-Fiであれば、通信量の制限はないため、快適に使い続けられます。
しかし、Wi-Fiはどこでも使えるわけではありません。Wi-Fiがない場所ではモバイル通信でWebサイト閲覧や業務を行う必要があります。
5GとWi-Fiの周波数は異なる
5GとWi-Fiで使っている周波数は異なります。
周波数帯 | |
---|---|
5G | 3.7GHz、4.5GHz、28GHz |
Wi-Fi | 2.4GHz、5GHz、6GHz |
一般的に周波数が大きいほど1秒間に送れるデータ量は多くなるため、高速通信になりますが、障害物に弱いため、届く電波は狭くなってしまいます。どの周波数が優れているということはなく、使う場所や状況によって使い分けが必要です。
5Gを導入すればWi-Fiは不要になるか
5Gを導入すれば、Wi-Fiは不要とは今の段階では言えません。
5GとWi-Fiの通信速度と使う際のメリット、デメリットは以下のとおりです。
通信速度(理論値) | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
5G | 20Gbps | ・高速通信が可能 ・低遅延でリアルタイム性が高い ・多数同時接続に強い | ・専用の端末が必要 ・月額費用が発生する ・利用できない場所がある |
Wi-Fi | 9.6Gbps | ・無料で使える ・専用の端末は不要 ・自宅やオフィスの環境を整備すると安定性が高い | ・5Gより速度が遅い ・工事費がかかる ・持ち運びに向いていない |
5Gの最高速度は20Gbpsで、Wi-Fiの最大通信速度は9.6Gbpsです。速度だけを比較すると5Gの方が速いため、Wi-Fiは不要ではないかと思えてきますが、あくまでも理論値です。
5Gの最高速度を出すためには高周波数帯である28GHzを使う必要がありますが、使えるエリアは限られています。3.7GHzや4.5GHz帯を使った5Gの通信速度は、300Mbps超というKDDIの調査結果が出ています。一方でWi-Fiの最大通信速度である9.6Gbpsも理論値で、通常では100Mbps程度となるケースが多いです。
通信速度面では、5Gの方が優れているという結論になりましたが、利用できるエリアが限られていることや接続するためには専用の端末が必要です。さらに5G利用には月額費用が発生してしまいます。Wi-Fiであれば、専用端末不要で無料で使えます。
今後5Gが進化し利便性が向上することで、Wi-Fiは不要になる可能性はあります。しかし、今の段階ではどちらにもメリット、デメリットがあるため、5Gを導入すればWi-Fiは不要となるとは言えません。
5.5Gを利用するメリット
5Gにはさまざまな特徴があることを解説してきました。ここからは実際に5Gを使ったメリットを解説していきます。5Gを使ったイメージを膨らませるためにも最後までお読みください。
生産性が向上する
テレワークやリモートワークが普及する
生産性が向上する
5Gの普及によって、機械の遠隔操作や自動制御が可能となることで、製造業や農業、建築業などの広い分野で生産性の向上に期待できます。昨今ではどの業界も人材不足と言われているため、少ない人数で業務を行えるようになれば、人件費も削減でき、より必要な業務に投資できるようになります。
人材不足に対応でき、生産効率の向上に期待できるのが、5Gを利用するメリットの1つです。
好きな場所で働ける
5Gを利用することで、在宅やリモートワークなど、好きな場所で働きやすくなります。
昨今では働き方改革によって、会社以外の場所で働く方が増えています。場所によってはWi-Fiがないため、スマートフォンで業務を行ったり、ポケットWi-Fiやスマートフォンのテザリングを使ってパソコンで仕事をする必要があります。
4Gでは、オンライン会議中に声が途切れたり、画面が動かなくなったりするケースが多くありました。しかし、5Gは4Gに比べて飛躍的に利便性が上がったため、業務をスムーズに行えるようになりました。
6.5Gを利用するデメリット
5Gはメリットだけではなく、利用した後に後悔することがないように事前にデメリットもしっかり頭に入れておきましょう。5Gを利用するデメリットは以下の3つです。
サービスを受けるためには専用端末が必要
セキュリティリスクが高まる
対応エリアが限られている
サービスを受けるためには専用端末が必要
5Gのサービスを受けるためには、5Gに対応している端末が必要です。
対応していない機種に5GのSIMカードを挿しても、5Gは使えません。最新の機器であれば5Gに対応している機種が多いですが、すでに導入済みの機器を5Gに対応させるためには、費用がかかります。
さらには、5Gを使ったサービスを導入する際も専門のエンジニアが必要です。5G導入のメリットとして、生産性が向上し、人件費の削減効果があります。しかし、5G導入そのものに多大なコストがかかってしまうのは、デメリットと言えるでしょう。
セキュリティリスクが高まる
5Gを導入することでセキュリティリスクが高まるのは、デメリットの1つです。
多くの端末が5Gを経由してインターネット接続できるようになったことで、離れた場所からでも操作ができ、自動化まで実現しやすくなりました。
しかし、扱うデータの中には個人情報や機密情報も含まれているケースもあり、インターネットをセキュリティ対策なしで経由するのは非常に危険です。もし個人情報が流出すると、社会的信用が低下し顧客が離れていく恐れがあります。
5G導入では、セキュリティ対策をきちんと行い、適切にデータを扱わなければなりません。そのためには、専用の機器や仕組みの導入が必要となるケースが多いため、費用がかかってしまいます。
対応エリアが限られている
対応エリアが限られているため、使える範囲に制限があるのも5G利用のデメリットです。
5G対応エリアは拡大しており、総務省の報道資料によると令和6年3月末で全国の5G人口カバー率は98.1%となっています。しかし、使えないエリアもあるため、どこでも5Gが使えるわけでないことは覚えておかなければいけません。
さらに5Gの通信速度を向上させる28GHz周波数帯の提供は、2024年12月時点でもごくわずかです。まだまだ5Gの普及には時間がかかると予想できるため、利用エリアには注意が必要です。
7.5Gができること
実際に5Gを導入することでできることを紹介します。具体的な使い方を知ることで、自社導入の参考になるはずです。ぜひ最後までお読みください。
車の自動運転
遠隔医療
没入感の高いVR、AR
4K・8Kのスポーツやライブ映像配信
車の自動運転
車の運転は大量のデータをリアルタイムで処理する必要があるため、5Gと組み合わせることで実現が可能です。
自動車をネットワークにつなげるコネクティッドカーは、車両の状態だけでなく、歩行者の位置や交通情報などの情報を常時サーバと通信することに5Gを活用しています。
例えば、歩行者や車両などの障害物をドライバーより早く検知し回避することができたり、目的地までの交通状況や天候などをいち早くキャッチし、走行ルートに反映させたりできます。
教育や医療、建築現場での遠隔操作
教育や医療現場で5Gを使った遠隔操作が可能です。
教育現場の場合は、学校へ行かずとも高画質、低遅延のオンライン授業を受けられます。医療現場は離れた場所からでも細かな診療や処置を行えます。医師がいない地方や離島でもしっかり診てもらえるため、5Gの導入で遠隔操作ができることは大きな変化と言えるでしょう。
また、建築現場や災害復旧現場でもクレーンなどを遠隔操作することで、作業者の安全を守る効果も期待できます。
没入感の高いVR、AR
5Gによって、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)で没入感の高い映像で楽しめるようになりました。
VRでは、ヘッドセットを装着することで、目の前に仮想世界が広がり、あたかも現実世界にいるかのように没入感のある体験ができます。ARでは、スマートフォンのカメラで周囲を見回すと、仮想のキャラクターが話しかけてくれたり、迫力のある格闘シーンを見ることができます。
4K・8Kのスポーツやライブ映像配信
5Gを使うことで、4K・8Kのような大容量通信が必要な通信が実現可能です。スポーツやライブ映像を5Gで配信することで、会場にいなくても同じ臨場感で楽しみやすくなります。
さらには、リアルタイムでの通信がスムーズになるため、選手の動きや観客の反応など、細部まで映し出される革新的な体験が実現できることも期待されています。
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8.5Gの導入事例
実際に5Gが企業に導入された事例を紹介します。どの事例も5Gを活用することで働き方が劇的に変化しています。新しいビジネスの参考になるため、最後までご覧ください。
ARスマートグラスを使った保守作業の効率化
地方や過疎地域への遠隔医療
ARスマートグラスを使った保守作業の効率化
世界52か国の自動車や航空機、医療機器などの製品を現場に送り出しているキタムラ機械株式会社は、5G導入で保守作業の効率化を実現しました。
キタムラ機械株式会社は、日本でも稀なマシニングセンタ専業メーカーです。マシニングセンタを扱うには膨大な知識と経験が求められるため、保守作業は本社の熟練者にメールや電話などで指示を受ける必要がありました。その結果、復旧まで時間がかかるという課題を抱えていました。
課題を解決したのが、5GとARスマートグラスの組み合わせでした。カメラが搭載されているARスマートグラスを現場作業者に装着し、5Gを使って映像や音声をリアルタイムで伝送することで、本社の熟練者が現場にいるかのように現場作業者をサポートでき、復旧までの時間を大幅に短縮することに成功しました。
地方や過疎地域への遠隔医療
徳島県立海部病院は、徳島県南地域の海部郡に位置する病院です。2020年の海部郡の高齢化率は全国平均より20%も高い49.6%となり、地域の基幹病院としての役割も担っています。しかし、常勤医が2003年には18名いましたが、3分の1にまで減少した時期もあり、医師不足が深刻です。
この状態を改善するために、徳島県の3つの病院で5Gを使った遠隔診療を開始しました。現場から高品質な映像を転送可能になったため、細かな作業に対しても的確な指示が出せるようになりました。この結果、海部病院に医師がいなくても、他の病院の医師が指示を出せるようになり、人材不足を補うことに成功したのです。
遠隔医療は、人材不足を補うだけでなく、若手医師の勉強の場としての効果もあります。
このように5Gを活用することで、医療業界にも大きな恩恵をもたらしてくれています。
9.5Gの今後の展望とは?6Gはいつ?
5Gの主な特徴である「高速大容量通信」「低遅延」「多数同時接続」を生かして、車やVR・AR、遠隔操作などのビジネスシーンに利用されています。5Gはキャリア回線だけでなく、ローカル5Gと呼ばれる企業でも導入できる通信技術が普及しています。
ローカル5Gとは、企業や自治体などが主体的に5Gを導入できる通信技術です。自らの敷地内にアンテナを立てられるため、キャリアの5Gに比べるとセキュリティを担保しやすく、また、通信品質を向上できるなどのメリットがあります。アンテナを立てるための費用がかかってしまうのがデメリットですが、今後も5Gの利用は拡大していくといえます。
さらに、5Gを進化させた6Gの研究が始まっています。ドコモ6Gホワイトペーパーで記載されている6Gの特徴は以下です。
超高速大容量通信:最大100Gbps超
超低遅延:1ms以下の低遅延
超多数同時接続:約1000万台/km²
超カバレッジ拡張:エリアカバー率100%。海や空、宇宙までカバー予定
超低消費電力・低コスト化:充電不要となる超低消費電力デバイスやコスト削減
超高信頼通信:幅広い利用方法で品質保証と高いセキュリティと安全性
5Gの特徴がさらに向上するだけでなく、海や空、宇宙まで使えるようになるのが6Gの主な特徴です。
6Gは2030年ごろに利用開始できるように研究が進んでいるようです。5Gよりも使い勝手が飛躍的に向上すると期待されているため、今から5Gを導入しようと考えている担当者の方は、6Gの動向も頭に入れておくとより業務効率化が進む可能性が高まります。
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10.まとめ
今回は5Gについて、特徴や4Gとの違い、導入のメリット、デメリット、できることや実際の活用事例、5Gの今後の展望をお話ししました。
高速大容量通信や高信頼・低遅延での通信や多数同時接続ができることなど、5Gの特徴を意識することで、今の生活をより効率よくできるようになったり、新しいビジネスに活かせたりと大きな変化をもたらしてくれる可能性が高くなります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。