扶養控除とは所得税法において控除対象扶養親族(16歳以上の扶養親族)がいる場合に、一定の所得控除を受けられる制度です。税法上の扶養親族には配偶者は含まれず、配偶者に対しては「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が適用される点が重要なポイントです。
税法上の扶養親族となるための条件の一つとして、扶養に入る人の合計所得金額が一定金額以下であることが求められます。パートやアルバイトなど給与所得者の場合も一定金額以下であることが基準となります。
そこで本記事では、扶養控除の仕組みや控除金額などについて、分かりやすく解説します。
目次
1.扶養とは
扶養とは生活費を自力で賄えない家族や親族を経済的に支援し、養うことを指します。扶養する側を「扶養者」扶養される側を「被扶養者」と呼び、被扶養者には配偶者・子ども・両親などが含まれます。
扶養には「所得税上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、被扶養者の条件によっては社会保険上の扶養には該当するものの所得税上の扶養にはならない、そしてその逆のケースもあります。
さらに、扶養を受ける人を「扶養親族」と呼ぶこともあります。「被扶養者」は社会保険に関する用語であり「扶養親族」は所得税(扶養控除)に関する用語です。
この2つは同じような意味で使われることが多いですが、実際には対象範囲が異なる点に注意が必要です。
2.扶養控除とは何か
扶養控除は扶養控除の対象となる親族がいる場合に、一定の金額を控除として受けられる制度です。
控除額が大きいほど、年末調整や確定申告時に支払う所得税や住民税の額を軽減することができます。具体的には、所得や税金の計算を行う際の基準となる「課税所得額」を減少させることができます。
扶養親族の範囲について確認しましょう。令和6年4月1日現在法令等においてはその年の12月31日時点で以下の4つの条件を全て満たす人が扶養親族に該当します。
配偶者以外の親族、または都道府県知事から養育を委託された児童、または市町村長から養護を委託された老人
納税者と同一生計であること
年間の合計所得金額が48万円以下(収入が給与のみなら年収103万円以下)であること
青色申告者の事業専従者としてその年に給与を受けておらず、白色申告者の事業専従者でないこと
ただし上記の4つの条件を満たしているからといって、全員が扶養控除の対象となるわけではありません。扶養控除が適用されるのは、その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族に限られます。
また国外に住んでいる扶養親族についてはその年の12月31日時点で16歳以上であることに加えて以下の条件のいずれかを満たす場合に限り、扶養控除の対象となります。
12月31日時点で16歳以上30歳未満
12月31日時点で70歳以上
12月31日時点で30歳以上70歳未満で留学や障害による理由で国内に住所を持たず、納税者からその年に38万円以上の生活費や教育費を受け取っている
なお令和7年度税制改正大綱によって一部条件の変更がありますので後ほど詳細を確認します。
税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い
「扶養」を理解する際に混乱しやすいのは、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の違いです。これらは異なる制度であるため、それぞれを別々に考えることが重要です。
税法上の扶養とは
所得税における扶養(税法上の扶養)とは主に家計を支えている人が収入の少ない同居している配偶者・
子ども・両親などを経済的に支援することです。
扶養を受けると配偶者は「配偶者控除」、子どもや親は「扶養控除」の対象となり家計を支える扶養者(納税者)の税負担が軽減されます。
社会保険上の扶養とは
一方社会保険上の扶養とは、主な生計を立てる人が加入している社会保険において「被扶養者」として認められることを指します。
社会保険上で扶養を受ける人は「被扶養者」と呼ばれ、その扶養者と同じ社会保険に加入することができます。したがって、被扶養者は社会保険料を支払う必要はありません。
配偶者控除・配偶者特別控除との違い
扶養控除に配偶者も含まれるのではないかと考える方もいるかもしれませんが、所得税における扶養控除では配偶者は対象外です。
扶養親族とは「配偶者を除く」6親等以内の血族および3親等以内の姻族のことを指します。配偶者も扶養の対象ではありますが配偶者に対しては「配偶者控除」や「配偶者特別控除」といった別の控除が設けられており、「扶養控除」には含まれません。
なお配偶者控除や配偶者特別控除を受けるためには、いくつかの要件があります。その最も重要な点は、民法上の配偶者であることが求められることです。したがって、いわゆる内縁関係にある人は該当しません。
3.「収入」と「所得」の違いとは?
「収入」と「所得」の違いを理解すると、さまざまな税制や扶養の仕組みがより明確に見えてきます。
仕事をして得たお金を「収入」や「所得」と呼びますが、この2つは実は異なる意味を持っています。日常的には同じように使われがちですが、それぞれの違いを理解することで、税金や扶養に関する問題を正しく理解できるようになります。
この章では違いを詳しく解説します。
収入とは、給与や賞与、年金など、すべての収入源から得られる総額
「収入」とは、働いて得たお金や物品が自分のところに入ってくることを指します。たとえば、会社員・アルバイト・パートの方であれば、勤務先から支払われるお金のことです。
この「収入」は税金や社会保険料などを引かれる前の総支給額を指し、実際に手元に残る金額ではありません。個人事業主や店舗経営者の場合には、事業を通じて得た「売上」が「収入」となります。
つまり税金や必要経費を差し引く前の金額が「収入」と呼ばれます。
所得とは、収入から必要経費や控除を差し引いた後の金額(税金計算に使用される)
「所得」とは、経費や所得控除を差し引いた後に残る金額を指します。
会社員・アルバイト・パートの方々は、通常経費の精算を行うことは少なく、年収に基づいて定められた「給与所得控除」を差し引いた後の金額を「給与所得」と呼びます。
給与所得=収入金額-給与所得控除額 |
一方個人事業主の場合は、事業に関連する必要経費(例:交通費・交際費・機器代など)を差し引いた後の残額を「事業所得」と言います。
事業所得=総収入金額-必要経費 |
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4.扶養控除を適用するための手続き
扶養控除を適用する手続きについては会社員は年末調整、自営業者や個人事業主の場合は確定申告で手続きを行うのが一般的です。
年末調整で控除を適用する方法
給与所得者はその年の最初の給与が支給される前に、勤務先へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
また国外に居住する控除対象扶養親族がいる場合は、申告書の提出時に「親族関係書類」「留学ビザ等の書類」「送金関係書類」などの確認書類を添付する必要があります。
会社は年末調整の際に従業員が提出した申告書を基に扶養控除の適用額を確認し、手続きを行います。ただし扶養親族が就職・結婚などで扶養の状況が変わった場合は、その都度「扶養控除等異動申告書」を会社へ提出しましょう。
確定申告で控除を適用する方法
自営業者・個人事業主・フリーランスの方は、扶養控除の手続きを確定申告で行います。
手続きの方法としてまず確定申告書の第一表にある「扶養控除」欄に、控除の合計額を記入します。さらに、第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に必要な情報を記載します。
また国外に居住する控除対象扶養親族がいる場合は、「親族関係書類」「留学ビザ等の書類」「送金関係書類」などの確認書類を提示する必要があります。
5.扶養控除の種類と控除額
扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無に基づいて異なる区分が設けられています。主な区分は以下の通りです。
一般の控除対象扶養親族
特定扶養親族
老人扶養親族
それぞれの区分における対象年齢と控除額について、詳しく見ていきましょう。
一般扶養親族の控除額
一般の控除対象扶養親族は、控除を受ける年の12月31日時点で16歳以上の人が該当します。ただし、後に説明する特定扶養親族や老人扶養親族に該当する場合は、それぞれの規定が適用されます。
一般の控除対象扶養親族に対する控除額は38万円です。
特定扶養親族の控除額
特定扶養親族は控除対象扶養親族の中でも、控除を受ける年の12月31日時点で年齢が19歳以上23歳未満の人が該当します。特定扶養親族に対する控除額は63万円です。
この年齢層は大学などで教育費の負担が大きくなることが多いため、一般の控除対象扶養親族に比べて控除額が25万円多く設定されています。
なお令和7年度税制改正大綱によってこの区分について変更が予定されていますので後ほど解説します。
老人扶養親族の控除額
老人扶養親族は父母や祖父母など納税者およびその配偶者の直系尊属であり、かつ控除を受ける年の12月31日時点で年齢が70歳以上の人が該当します。この場合、控除額は同居の有無によって異なります。
納税者と同居している場合は「同居老親等」となり、控除額は58万円となります。納税者と同居していない場合は「同居老親等以外」となり、控除額は48万円です。
6.特定扶養親族に対する扶養控除の変更
特定扶養親族の扶養控除(特定扶養控除)が変更されます。年収の上限が引き上げられるとともに、新たに「特定親族特別控除」が導入されることが「令和7年度税制改正大綱」に盛り込まれました。
具体的な変更内容を見ていきましょう。
特定扶養控除の年収上限引き上げ
これまで、特定扶養控除を受けるためには扶養している19歳以上23歳未満の子どもの合計所得金額48万円(給与所得だけなら年収103万円)以下である必要がありましたが、この上限が引き上げられます。
子どもの合計所得金額48万円を超えても所得控除を引き続き受けられるようにすることで、大学生年代の子どもを持つ親の負担を軽減する目的の制度改正です。
特定親族特別控除の導入
大学生年代の子どもの合計所得金額48万円を超えると、扶養控除がゼロになることを避けるために「特定親族特別控除」が新たに導入されることが決まりました。
この控除は、合計所得金額58万円(給与所得だけなら年収123万円)を超えた段階で控除額が段階的に減少する仕組みです。
特定扶養控除の変更と特定親族特別控除導入の背景
国内では少子高齢化が進み、業種を問わず人手不足が深刻化しています。
その中で「もっと稼ぎたい」と思っている学生が扶養内で働かなければ世帯年収が下がる可能性があることから、勤務調整を行っていることがあります。
このような学生が働きやすくなることで学生自身の手取りが増え、企業の人手不足問題も解消される可能性があることから今回の制度変更が行われました。
扶養控除の縮小は見送られた
2024年10月から、児童手当が高校生(16歳〜18歳)にも拡充されました。この拡充に伴い高校生の扶養控除の引き下げ案が提案されていました。
しかし今回の税制改正大綱には盛り込まれず、この問題は2025年以降に先送りされました。そのため2025年も現行通り、扶養控除は所得税38万円となります。
年少扶養控除の復活も見送られた
国民民主党からは15歳までの子どもを持つ親が受けられる「年少扶養控除(38万円)」の復活案が出ていましたが、こちらも見送られました。
年少扶養控除は、児童手当(旧民主党政権時代の「子ども手当」)の導入とともに廃止されていました。復活すれば15歳までの子育て世帯の税負担が減り、手取りが増えることになります。
7.配偶者控除・配偶者特別控除の変更
扶養控除と同様に扶養親族がいる納税者の税額に影響を与える所得控除に、配偶者控除と配偶者特別控除があります。令和7年度税制改正大綱によって変更が予定されています。具体的にはどのような変更点があるのでしょうか。
それぞれの制度についてこれまでの仕組みと変更点を確認し、変更の背景にある「123万円の壁」への引き上げについても触れます。
配偶者控除の変更点
配偶者控除は、以下の4つの条件を全て満たす配偶者を扶養している納税者が受けられる所得控除です。
民法に基づく配偶者(内縁関係は含まれません)
納税者と同一生計であること
年間合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)
青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者でないこと
この条件を満たすと、配偶者控除を受けられます。
令和7年度税制改正大綱によれば、配偶者控除の適用対象となる配偶者の年間合計所得金額が「48万円以下」から「58万円以下(給与収入のみなら年収123万円以下)」に引き上げられることが決まりました。
配偶者特別控除の変更点
配偶者特別控除とは配偶者控除の対象となる上限を超えて配偶者が収入を得た場合でも扶養する納税者の控除額が急激に減らないよう、段階的に控除額が減少する仕組みとして設けられた制度です。
配偶者特別控除を受けるためには納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であることに加え、扶養される配偶者が以下の要件をすべて満たしている必要があります。
法律上の配偶者(内縁関係は対象外)
納税者と生計を共にしている
青色申告者の事業専従者として給与を受け取っておらず、白色申告者の事業専従者でもない
合計所得金額が48万円超133万円以下(給与のみの場合、年収103万円超201万円以下)
配偶者自身が配偶者特別控除を適用していない
配偶者が給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者として、源泉徴収されていない
配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者として、源泉徴収されていない
上記の要件を満たす場合、配偶者の合計所得金額と納税者本人の所得金額に応じて控除額が決まります。
配偶者控除と同じ38万円の控除を受けられるのは納税者の合計所得金額が900万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円超95万円以下(給与のみの場合、年収103万円超150万円以下)の場合です。
2025年の制度改正では、配偶者特別控除の38万円控除が適用される配偶者の給与のみの場合には年収123万円超160万円以下に変更されます。
背景:123万円の壁への引き上げ
配偶者控除や配偶者特別控除の適用基準の引き上げは、「103万円の壁」の引き上げに関連しています。
この壁とは年収103万円以下の場合には所得税がかからない仕組みを指し、多くのパートやアルバイトが意識している金額です。これを「年収103万円以内で働こう」という意識に繋げているため、よく話題に上ります。
令和7年度税制改正大綱では、この壁を「123万円の壁」に引き上げることが示されています。これは税制を見直して、より自由な働き方を促進するための第一歩とされています。
所得税がかかり始める年収が引き上げられることで配偶者控除や配偶者特別控除も調整され、今後の働き方に柔軟性が生まれることが期待されています。
8.社会保険(健康保険)の扶養に該当する範囲
社会保険(健康保険)の運営には、協会けんぽ(全国健康保険協会)と健康保険組合の2種類があります。ここでは加入者が多い協会けんぽを例にとり、被扶養者の対象者やその条件について説明します。
所得税の扶養控除との違い
社会保険上の被扶養者は所得税における扶養親族とは、親族の範囲・対象となる年齢・同居の有無など条件が大きく異なります。
例えば扶養控除(所得税)の取り決めと違って、健康保険の「被扶養者」では配偶者とその他の扶養親族に区別がありません。
被扶養者となる親族の範囲と条件
被扶養者として認められる親族は、配偶者と3親等以内の親族です。所得税の扶養控除とは異なり社会保険(健康保険)では「生計を共にしている」という実態が重要視される点が大きな違いです。
例えば法律上の家族でない内縁関係の配偶者も、健康保険においては被扶養者に含まれます。また内縁関係の配偶者が亡くなった場合、その配偶者の父母や子どもも被扶養者に該当します。
被扶養者に該当する親族は、次の条件を満たす必要があります。
被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹(同居の必要はない)
被保険者と同居し、家計を共にしている3親等以内の親族
被保険者と同居して家計を共にしている配偶者の父母や子どもなど
被保険者は、健康保険に加入している会社に勤務している人を指します。被扶養者として認定されるには、被保険者との関係が確認できる書類(戸籍謄本や住民票など)を提出する必要があります。
健康保険の扶養に入れる年齢の上限
社会保険(健康保険)の扶養対象には、所得税の扶養控除のような年齢制限は設けられていません。
ただし75歳以上になると後期高齢者医療制度に移行し、そのため対象者は後期高齢者医療制度に加入しなければなりません。
この移行に伴い社会保険(健康保険)の扶養対象から外れることになるため、実質的に75歳未満が扶養対象の上限となります。
扶養対象者との同居要件について
社会保険(健康保険)における扶養対象者は配偶者(内縁関係も認められる)だけでなく、直系尊属・子・孫・兄弟姉妹も扶養に含めることができます。これらの親族は、実際に同居していなくても扶養対象とすることが可能です。
ただしその他の3親等以内の親族については、扶養の対象とするために同居している必要があります。
9.社会保険(健康保険)の扶養における収入基準
社会保険(健康保険)で被扶養者として認定されるためには、被保険者からの収入で生活が成り立っていることが証明されなければなりません。認定対象者の収入が一定の基準を下回っているかどうかを確認する必要があります。
所得税の扶養控除における収入基準との違い
社会保険における扶養の収入基準は、扶養控除(所得税)の基準とは異なります。
社会保険での扶養は所得ではなく年収で判断されるため、金額も税法上の扶養と違ってきます。扶養控除では所得に含まれないものが社会保険(健康保険)では収入に含まれる場合があるので、その点を理解しておくことが重要です。
社会保険の扶養条件となる収入基準(130万円)
社会保険(健康保険)の扶養対象となるための収入基準は、年間で130万円未満です。しかし被扶養者が60歳以上の場合や障害厚生年金を受けられる程度の障害がある場合、この基準額は180万円未満に引き上げられます。
重要なのは、社会保険(健康保険)の扶養判定が月々の収入に基づいて行われる点です。
年間収入が130万円未満という基準は、月収に換算すると月10万8,333円未満に該当します。この金額を超える月収が続いた場合、扶養対象から外れることになりますので注意が必要です。
例えば1月から6月までは収入がなかった人が、7月から新しく仕事を始め7月から12月まで毎月20万円の給与を得た場合には年間給与収入は120万円となり年間基準の130万円未満には該当します。
しかし月々の収入が10万8,333円を超えているため、7月以降は被扶養者として認められなくなります。
被扶養者の年収による判定基準
被保険者と被扶養者が同居している場合には被扶養者の年収が130万円未満であり、かつ被保険者の年収の半分未満であれば被扶養者の条件を満たすことになります。
一方被保険者と別居している場合でも、同様に年収が130万円未満であり被保険者からの仕送り額が被扶養者の年収を下回っていれば、被扶養者として認定されます。
10.扶養に入ることで得られるメリットと注意点
家計を支えている親族が1人の場合、他の親族や配偶者が扶養に入るかどうかによって働き方に影響を与えることがあります。この章では、扶養に入ることのメリットと注意点について改めて確認しておきます。
扶養に入ることで得られるメリット
親族の扶養に入ることで、次のようなメリットが得られます。
扶養控除が適用により、扶養される人の税負担が軽減される
社会保険(健康保険)に加入できる
扶養手当を受け取ることができる場合がある
扶養控除の適用により、扶養される人の税負担が軽減される
収入がある人は所得税を納める必要がありますが親族が扶養に入っている場合は「扶養控除」配偶者が扶養に入っている場合は「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を適用することで、所得税や住民税を軽減することができます。
社会保険(健康保険)に加入できる権利が得られる
国民健康保険には扶養という制度がないため、家族全員が個別に保険料を支払う義務があります。一方社会保険(健康保険)の被扶養者になると、個別に保険料を支払う必要がないという利点があります。
社会保険(健康保険)に加入している企業に勤務している人の扶養家族になることで、被扶養者は国民健康保険に加入する必要がなくなります。
社会保険の適用は2022年9月までは従業員数が501人以上の企業が対象でしたが、2022年10月以降は101人以上の企業も対象となりました。さらに2024年10月からは、51人以上の従業員を抱える企業にも適用されることに注意が必要です。
2024年10月の法改正により、従業員数51~100人の企業で働くパートやアルバイトの方も社会保険にすることになります。以下の条件を満たす従業員が対象となります。
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
所定内賃金が月額8.8万円以上
2ヶ月以上の雇用見込みがある
学生でない
扶養手当を受け取れる可能性がある
収入がある従業員が働いている企業によっては、扶養家族がいる場合に扶養手当(家族手当)を支給することがあります。扶養の対象となる範囲は企業ごとに異なります。
扶養に入ることで生じるデメリット:
親族の扶養に入ることで、以下のデメリットが生じる場合があります。これらについて詳しく説明します。
年金受給額が減少する
収入に制限がかかる
将来の年金受給額が少なくなる可能性がある
厚生年金保険や共済組合などに加入している会社員や公務員は「第2号被保険者」とされます。収入が年間130万円未満で、第2号被保険者の扶養に入っている20歳から60歳未満の配偶者は「第3号被保険者」と呼ばれます。
第3号被保険者が将来受け取る年金は国民年金のみで、厚生年金は受け取れません。そのため第2号被保険者と比較して、将来受給できる年金額が少なくなります。
一定の収入制限があるため、働き方に制約が生じる
扶養に入ったまま働く場合、年間の収入には制限があります。その範囲で働く必要があります。
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11.まとめ
子どもや親、祖父母の扶養には、経済的な負担が大きくのしかかります。
扶養控除は、そのような納税者の負担を軽減するための制度です。扶養の対象となるかどうかは収入や生活状況など、さまざまな要因によって判断されます。
共働き世帯の増加や高齢者の就業機会の拡大に伴い、配偶者控除や扶養控除の収入制限を気にする人が増えているのではないでしょうか。
また扶養控除に関しては政府が現在制度の見直しを検討しているため、今後も最新の情報を確認することが重要です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。