所得税は個人の所得に基づいて課される税金です。会社員や個人事業主だけでなく、アルバイトやパートタイムで働く人も一定の収入を超えれば納税が義務付けられます。
所得税は、場合によって自分で計算して申告しなければならないこともあります。また個々の事情に応じて税負担を軽減できる控除制度が存在します。そのため税率や計算方法に加えて、控除制度についても理解しておくことが重要です。
そこでこの記事では所得税の税率や計算方法そして税負担を軽減する手段について、分かりやすく説明します。
目次
1.所得税とは?
所得税は個人の所得に対して課される税金です。1月1日から12月31日までの1年間の所得が一定の金額を超えると、納税が必要になります。
まずは所得税がどのような税金であるかについて、詳しく見ていきましょう。
源泉所得税と通常の所得税の違い
源泉所得税とは会社員などの給与所得者の給与からあらかじめ差し引いて納める所得税のことです。
会社員やパート・アルバイトなど給与を受け取っている人々を給与所得者と呼び、その所得税は給与を支払う会社があらかじめ徴収し納税者に代わって国に納付します。給与などから差し引いて納める所得税が源泉所得税です。
源泉徴収された所得税は1年間の給与が確定する年末に会社が正確な納税額を計算し、年末調整で過不足を調整する仕組みになっています。
一方で個人事業主は自分で納めるべき所得税額を計算し、年に一度の確定申告によって自ら所得税を納付します。このように自分で申告し納税する所得税を、申告所得税と呼びます。
所得税は7つの税率に分かれている
所得税は所得が増えるほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。このため所得税の計算では課税所得金額が7つの段階に分けられ、各段階に対して5%から45%の税率が適用されます。
課税される所得金額(1,000円未満の端数は切り捨て)の税率は、国税庁の「No.2260 所得税の税率」で確認できます。
また所得税の計算に用いられる課税所得は、給与の額面金額とは異なることに注意が必要です。給与所得者の場合には年間の給与収入から、収入に応じて設定された給与所得控除や非課税手当を引いてさらに所得控除を差し引いた金額が課税所得となります。
2.所得税計算の基本的なステップ
この章では所得税計算の基本的な流れについて解説します。
① 所得金額の算出
所得税を計算するためには、まず「所得」の概念を理解することが重要です。
所得とは収入から経費を差し引いた残りの金額を指します。具体的には、個人事業主の場合は「総収入金額-必要経費」で、会社員の場合は「給与収入-給与所得控除(収入から引かれる金額)」を用いて計算します。
個人事業主は事業所得を算出する際に売上から必要経費を引くことができますが、会社員は勤務先から受け取る給与に対して、必要経費に相当する部分として給与所得控除を利用する仕組みになっています。
給与所得における非課税の内容
所得の中には社会政策などを考慮して税金が課されないものがあり、これを「非課税所得」と呼びます。給与所得に関しては、以下の例のように課税対象とならないものは所得税の計算に含まれません。
【非課税の手当の例】
通勤手当のうち、一定額以下のもの
転勤や出張のための旅費で、通常必要とされる額
宿直や日直の手当のうち、一定額以下のもの
また非課税所得と同様に、収入から差し引くことができるのが「給与所得控除」や「必要経費」となります。
② 課税所得金額の算出(所得控除について)
所得金額を計算した後、そこからさまざまな所得控除を引いて課税所得金額を算出します。
所得控除は所得税の課税対象となる所得を減少させるものです。損益通算や繰越控除を経た後の総所得金額等(総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の順)から差し引かれます。
所得控除には全部で15種類あり、納税者の個別の事情に基づいた控除です。
このようにして求めた所得から各種控除を差し引き、その結果に税率を掛けることで所得税額が決まります。
③ 所得税額の算出(所得税の税率について)
課税所得金額を算出した後、その金額に応じた税率を掛けて所得税額を求めます。所得税の税率は課税所得が特定の金額を超えると、「その超過部分」に対して高い税率が適用される超過累進税率の仕組みが採用されています。
例えば課税所得が3,400,000円の場合、所得税額は以下のように計算されます。
3,400,000円 × 20%(税率)- 427,500円(控除額)= 252,500円
④ 基準所得税額の算出(税額控除について)
前述の所得税額からさらに控除可能なのが「税額控除」と呼ばれるものです。「所得税額」から「税額控除(所得税額から引かれる金額)」を引いたものが「基準所得税額(控除後の所得税額)」となります。
税額控除は所得からの控除ではなく、税額からの控除であり節税効果が大きい制度です。たとえば政党や認定NPO法人に寄付した場合や、住宅の新築・増築を行った際に利用できます。
課税総所得金額に対する税額(総合課税の税額)から控除されますが、税額控除が残る場合には分離課税に該当する山林所得の税額や退職所得の税額の順に控除されます。
⑤ 復興特別所得税額の算出
所得税を納付する際には一定の期間中、復興特別所得税も同時に支払う義務があります。
復興特別所得税は東日本大震災の復興を目的とした租税特別措置法に基づき、2013年1月1日から2037年12月31日までの期間に所得に課される税金です。復興特別所得税の計算方法は以下の通りです。
復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%
そのため所得税額に2.1%を加算したものが、実際の所得税率となります。
⑥ 所得税の申告納税額の算出
所得税の最終的な納付額は源泉徴収や予定納税など、すでに支払った税金を考慮して計算されます。予定納税とは前年の予定納税基準額が15万円以上の場合に、あらかじめ納付が必要となる制度です。
この基準額は、その年の5月15日現在で確定している前年の所得金額や税額を基に税務署が計算したものです。
予定納税は原則として、第一期(7月中)と第二期(11月中)にそれぞれ予定納税基準額の1/3ずつ支払うことになります。仮に予定納税額がその年の納付すべき所得税額を上回った場合には、確定申告で過剰に支払った分が還付されます。
令和6年度税制改正による所得税の定額減税について
令和6年度の税制改正では、令和6年分の所得税および住民税に対して「定額減税」が実施されます。これは所得税と住民税からの減税を意味します。
具体的には所得税については納税者本人に対して3万円(同一生計配偶者や扶養親族1人あたりも3万円)、住民税については納税者本人に1万円(控除対象配偶者や扶養親族1人あたり1万円)が控除されます。
減税の対象者は令和6年分の所得税を納める人で、合計所得が1,805万円以下の方です。給与所得者・事業所得者・公的年金受給者それぞれの減税方法は異なります。
所得税から定額減税の控除が不十分な場合は年末調整や確定申告により市区町村が情報を確認し、給付処理が行われます。
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3.給与所得の所得税の算出方法
給与所得とは雇用契約に基づいて支払われる給与・賃金・俸給・賞与および委任契約に基づく役員報酬を指します。給与所得は次の計算式で求められます。
給与所得 = 給与収入(源泉徴収前の金額) - 給与所得控除額
その後の給与所得に対する所得税の計算方法は、基本的に前述の所得税計算の手法に従います。
給与所得控除とは何か
給与所得控除とは、所得税の計算において給与収入から差し引かれる控除額のことです。給与所得者は経費を申告することができないため、実際にかかったと思われる費用を概算して給与収入から引く仕組みになっています。
また給与所得控除の半分を超える特定の支出があった場合には特定支出控除が適用され、年金所得がある場合などは所得金額調整控除が行われることがあります。
給与所得の計算例
以下は、給与収入が500万円の場合の計算例です。
5,000,000円 − (5,000,000円 × 20% + 440,000円) = 3,560,000円(給与所得の額)となります。
4.所得税が課される年収の基準は?
所得税の負担を軽減するためには、控除を活用することが重要です。控除を適用すると、収入があっても所得税が発生しない場合があります。
働き方によって適用される控除が異なるため、所得税がかかる年収の目安を確認してみましょう。
会社員の場合には年収103万円を超えると所得税が発生
会社員の場合、給与所得には「給与所得控除」と「基礎控除」が所得額に応じて適用されます。たとえば総所得が162万5,000円以下であれば給与所得控除は55万円、総所得が2,400万円以下の場合は基礎控除として48万円が差し引かれます。
この結果として年間の所得が合計で103万円を超えると、所得税の対象となります。
パートやアルバイトでは月収8万8,000円を超えると所得税がかかる
パートやアルバイトの場合には月収が8万8,000円を超えると所得税が発生し、勤め先で源泉徴収されます。しかし年間の所得が103万円以下であれば、給与所得控除と基礎控除が適用されて年末調整の際に多く支払った税金が返金されます。
個人事業主は、年間所得が48万円を超えると所得税が課せられる
個人事業主の所得税は「総収入から必要経費と各種所得控除を引いた金額」で計算されます。給与所得控除はありませんが合計所得が2,400万円以下であれば基礎控除48万円が適用されるため、所得税がかかるのは年間所得が48万円を超える場合です。
また副業の所得が年間で20万円を超えると、所得税の確定申告をして納税する必要があります。
20万円以下の場合には確定申告は不要ですが、住民税は課税対象となります。確定申告をした場合はその情報が自治体にも届きますが、確定申告をしていない場合は住民税について別途自治体に申告が必要です。
確定申告が不要な場合でも、住民税の申告を忘れないようにしましょう。
5.所得税と年末調整・確定申告の関係
所得税の納税に関わる言葉として「年末調整」と「確定申告」があります。
年末調整とは何か?
年末調整とは会社が1年間に給料から差し引いた所得税と、その年に実際に支払うべき所得税の額を調整する手続きです。対象となるのは会社に「扶養控除等申告書」を提出している人ですが、給与が2,000万円を超える人は年末調整の対象外となります。
確定申告とは何か?
確定申告は個人事業主やフリーランスが毎年2月16日から3月15日の間に、前年の所得を自分で報告する手続きです。彼らは自分で所得税を支払う必要があります。
一方会社員は基本的に確定申告をする必要はありませんが、医療費が一定額を超えて支払った場合に医療費控除を受けたり副業の収入を報告したりする場合は、年末調整後に自分で確定申告を行います。
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6.所得税の納税方法
所得税の納税方法について、会社員と個人事業主のケースに分けて説明します。
会社員の場合
勤務先と雇用契約を結んでいる従業員は、毎月の給与から源泉徴収税としておおよその所得税が自動的に引かれます。また年間の所得税額の確定と調整は、必要な書類を提出することで勤務先が年末調整を行います。
これにより1年間の所得税を計算し、実際の税額との差額が還付または徴収されます。
このように毎月の源泉徴収税は会社が従業員の代わりに納税しているため、もし収入が会社からの給与だけであれば個人で確定申告をする必要はありません。ただし医療費控除や住宅ローン控除の初年度の適用を受ける場合などは、確定申告が必要になります。
個人事業主や副業をしている場合
個人事業主の場合には一定額以上の譲渡所得や一時所得があると、原則として確定申告が必要です。また年末調整を受けている会社員でも副業などで一定の給与以外の所得がある場合は、確定申告をしなければなりません。
納税方法には税務署の窓口での納税のほか、口座振替・e-Taxを使った電子納税などがあります。確定申告後の所得税の支払い方法には、以下のような選択肢があります:
ダイレクト納付(e-Taxからの口座振替)
インターネットバンキング納付
クレジットカード納税
スマホアプリ納税
コンビニ振込
振替納税
窓口納付
自動ダイレクト(2024年4月から利用可能)
また所得が少なくて課税されない場合でも、確定申告をすることで源泉徴収された所得税の還付を受けられることがあります。そのため納税額に関係なく確定申告を行う方が有利な場合が少なくありません。
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7.所得の種類と各所得の計算方法
所得税法では、所得を10種類に分けています。一部の所得は社会政策上の理由から非課税とされることがありますが一般的にはこれらのいずれかに分類され、所得税の課税対象となります。
給与所得
先述しておりますが、給与所得は労働の対価として支払われる所得です。給与に含まれるのは、俸給・給料・賃金・歳費・賞与など、これらと同様の性質を持つ給付です。
基本的に給与所得額は給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額であり、所得税はこの金額に対して課税されます。
不動産所得
不動産所得とは、土地や建物を貸すことで得られる収入のことを指します。また地上権や借地権といった不動産に関連する権利を貸し出すことや、船舶や航空機を貸すことによっても得られる所得が含まれます。
具体的には地代や家賃・礼金・権利金などが不動産貸付から得られる所得です。
事業規模で不動産を貸していても、その収入は不動産所得として扱われ、ホテル業や下宿のようにサービスを主に提供する業種は事業所得として扱われます。また、不動産を売買して得た利益は譲渡所得に分類されます。
どの所得区分に当てはまるか迷った場合は、不動産の扱い方や目的を考慮すると良いでしょう。
不動産所得は、次の計算式で求められます。
不動産所得 = 不動産所得に関わる総収入 - 不動産所得に関わる必要経費
事業所得
事業所得とは、事業を行うことで得られる収入のことです。これは主に本業から生まれる所得を指し、農業・漁業・製造業・小売業などさまざまな業種が含まれます。
事業を継続的に営んでいて定期的に所得が発生する場合は、この事業所得として計算されます。
具体例としてはフリーのWebデザイナーの報酬・フリーライターの報酬・YouTuberの広告収入・アフィリエイターの収入などが含まれます。
確定申告では事業所得は農業による所得(農業所得)とその他の事業所得(営業等所得)で分けて計算されるため、両方の所得がある場合はそれぞれを別々に計算しなければなりません。
事業所得は次の計算式で求められます。
事業所得 = 事業による総収入 - 事業に関わる必要経費
配当所得
配当所得とは、株主や出資者が企業の利益や剰余金から受け取る配当金・投資法人からの分配金・投資信託の収益分配などによって得られる所得のことです。
配当所得は次の計算式で求められます。
配当所得 = 配当による収入(源泉徴収前の額) - 株式などを取得するための借入金の利子
借入金の利子は、株式を保有している期間に相当する部分だけが収入から差し引けます。ただしすでに売却した株式の配当に関する利子など、一部の利子は配当所得の計算から控除できません。
退職所得
退職所得とは退職時に企業から一時金として受け取る退職手当や社会保険制度からの退職一時金、適格退職年金契約に基づく退職一時金のことです。
退職所得の計算式は次の通りです。
退職所得 = (収入額(源泉徴収前の額) - 退職所得控除額) × 1/2
ただし特定役員(勤続5年以下)の場合、勤続年数に応じて支払われる退職手当の一部は1/2の計算を適用しません。
退職所得控除額は特定の計算方法で求めた金額です。もし障害者となったために退職した場合は、この控除額に100万円が加算されます。
退職所得は分離課税の対象で、他の所得とは別に税金が計算されます。退職所得と他の所得を合算すると税率が上がり、税負担が増えるのを防ぐためです。
利子所得
利子所得とは国債・地方債・社債の利子や預金の利子・公社債投資信託からの収益の分配などから得られる所得のことです。ただし個人間の貸付で得た利子や、金融業者としての貸付からの利子は利子所得には含まれません。
利子所得の計算式は次の通りです。
利子所得 = 収入額(源泉徴収前の額)
利子所得は他の所得とは別に税金が計算される「源泉分離課税」に該当します。金融機関からの入金額は、すでに所得税が引かれた後の金額です。
利子所得には経費や控除がないため、再計算や確定申告は必要ありません。
譲渡所得
譲渡所得とは事業用の商品や山林を除いた、販売を目的としない資産の売却によって得られる所得のことです。例えば所有している土地や建物の売却益、株式の売却益がこれに当たります(ただし、生活用の動産は除きます)。
譲渡所得には、売却する資産によって適用される課税方式が異なります。具体的には、分離課税(他の所得とは別に税金を計算する方法)と総合課税(他の所得と合算して税金を計算する方法)の2つがあります。
譲渡所得の中で、ゴルフ会員権や貴金属は総合課税に分類されて株式や投資信託・土地・建物は分離課税に分類されます。
① 土地や建物の譲渡所得(分離課税)
土地や建物の譲渡所得は、次のように計算されます。
譲渡所得 = 収入額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額
取得費には土地や建物の購入費から減価償却分を引いた金額や、造成費が含まれます。
譲渡費用には売却時の仲介手数料・印紙税・土地を売るために必要な建物の取り壊し費用などが含まれます。
特別控除は、土地や建物の売却に関する特別な控除のことを指します。たとえば公共事業のために土地を売却した際には5,000万円の控除が受けられたり、マイホームを売却した場合には3,000万円の控除が適用されたりします。
② 株式等の譲渡所得(分離課税)
株式などの譲渡所得は分離課税で、上場株式と一般株式(非上場株式など)に分けて計算する必要がありますがどちらも同じ計算式を使います。
株式などの譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 委託手数料など)
ここで譲渡価額は株式を売ったときの金額・取得費は株式を買ったときの費用・委託手数料は売却にかかる手数料を指します。
③ その他の譲渡所得(総合課税)
土地・建物・株式以外の資産を売却した場合、その所得は総合課税の対象になります。具体的には、ゴルフ会員権や貴金属の売却によって得られた所得がこれにあたります。
譲渡した年の1月1日現在での所有期間によって、譲渡所得は短期譲渡所得(所有期間が5年以下)と長期譲渡所得(所有期間が5年を超える)に分けられ、それぞれ異なる計算式を使用します。
短期譲渡所得 = 短期譲渡所得の総収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額(最大50万円)
→ 短期譲渡所得は全額が総合課税の対象となります。
長期譲渡所得 = 長期譲渡所得の総収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額(最大50万円)
→ 長期譲渡所得の半分(×1/2)が総合課税の対象となります。
特別控除額は短期譲渡所得と長期譲渡所得を合わせた場合最大50万円が控除されます。両方の所得がある場合は短期譲渡所得から先に控除されます。
山林所得
山林所得とは5年以上所有している山林を伐採して売却したり、そのままの状態で譲渡したときに得られる所得のことを指します。5年以内に所有していた山林を売る場合は、事業所得や雑所得として扱われます。
また、山林をまるごと譲渡する際の土地部分は譲渡所得として処理されます。
山林所得の計算方法
山林所得 = 山林譲渡による総収入金額 - 必要経費 - 特別控除(最大50万円)
さらに、山林所得は他の所得と合算せずに分離課税されます。税額は独自の計算式で求められ、次のように計算されます。
税額 = (課税山林所得金額 × 1/5 × 税率) × 5
一時所得
一時所得とは営利を目的としない継続的な活動から生じる所得で、労働の対価や資産の譲渡による所得ではないものを指します。具体的には生命保険の満期保険金や損害保険の満期返戻金(契約者が保険料を支払っていた場合)・懸賞や賞品・競馬の払戻金などが含まれます。
一時所得の計算方法は以下の通りです。
一時所得 = 総収入金額 - 収入を得るための支出 - 特別控除(最大50万円)
この計算の結果の半分(1/2)が総合課税の対象となります。
雑所得
雑所得とは、これまで説明した9種類の所得のいずれにも当てはまらない所得のことです。
代表的なものには、公的年金(国民年金や厚生年金など)・副業からの所得・講演料・生命保険契約に基づく年金などがあります。
雑所得は総合課税の対象でさらに「公的年金等」・「業務に関連するもの」・「その他の雑所得」の3つに分けられ、それぞれ異なる計算方法が適用されます。
① 公的年金等
公的年金等は以下の計算式で求められます。
公的年金等の雑所得 = 収入金額 - 公的年金等控除額
公的年金等控除額は、定額控除額と定率控除額を合わせたものです。
〈計算例〉
70歳で公的年金300万円を受け取っている人で、他に所得がない場合(合計所得1,000万円以下)
定額控除:40万円
公的年金等雑所得を除いた合計所得金額が1,000万円以下の場合、定額控除額は40万円、1,000万円超から2,000万円以下の場合は30万円、2,000万円を超える場合は20万円となります。
定率控除:(300万円 - 50万円)× 25% = 62.5万円
定率控除は50万円控除後の年金収入の 360万円までの部分 25%、720万円までの部分 15%、950万円までの部分 5%となります。
控除額合計:40万円 + 62.5万円 = 102.5万円
しかし、最低保証額110万円が適用されます。
最終的に、公的年金等に関する雑所得は次のように計算されます:
公的年金等雑所得 = 3,000,000円 - 1,100,000円(控除額) = 1,900,000円
② 先物取引に関連する雑所得等
特定の先物取引の差金決済については、先物取引に関する事業所得・譲渡所得・雑所得を合算して他の所得とは別に申告分離課税で税額を計算します。
③ その他の雑所得
公的年金・業務に関する雑所得・先物取引に関連しない雑所得は、総合課税の対象となります。この雑所得は、次の計算式で求められます。
その他の雑所得 = 総収入金額 - 必要経費
ただし特定の先物取引の差金決済については先物取引に関する事業所得・譲渡所得・雑所得を合算し、他の所得とは別に申告分離課税で税額を計算します。
非課税所得とは?
非課税所得に該当するのは以下のようなものです。
財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄の利子
給与所得者の通勤手当
生活必需品の譲渡による所得
学資保険金
損害保険金
傷病手当や健康保険からの給付金
生活保護の給付金
遺族年金
宝くじの当選金
これらの非課税所得は通常、手続きなしで課税対象外となります。
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8.まとめ
会社員で給与所得のみの場合には基本的に勤務先が源泉徴収と年末調整を行うため、個人で税額を計算して申告する必要はありません。ただし個人事業主や複数の所得がある人は、確定申告をして所得税を申告して納税する必要があります。
特に事業をしている場合は所得税を計算する前の所得の計算が複雑になるため、会計ソフトなどを活用するのが良いかもしれません。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。