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フリーランスの消費税を解説|知るべきポイントやインボイス制度の対応策・注意点も解説

公開日:2024/09/24最終更新日:2024/09/24

フリーランスとして活動する際、請求書を作成する時に消費税の取り扱いについて戸惑うことがあるかもしれません。特に2023年から導入されたインボイス制度により、消費税に関する知識はますます重要になっています。この制度の導入に伴い、消費税の計算方法や請求書の記載事項に対する理解を深めることが求められます。消費税に関する正確な知識を持つことで納税に関する不安を解消し、フリーランスとしての活動をより円滑に進めることができるでしょう。


この記事では消費税に関する基本的な知識を提供することでフリーランスの方々が適切に請求書を作成し、納税を行える手助けをします。この記事を参考に消費税について理解を深めれば、フリーランスとしての活動がよりスムーズに行えるようになるでしょう。


目次

1.フリーランスも消費税を請求可能

フリーランスも取引先に対して消費税を請求することが可能です。スーパーやコンビニエンスストアで購入する商品に消費税がかかるのと同じ原理です。フリーランスが提供するサービス・商品にも通常消費税がかかるため、その分の金額を取引先に請求することができます。請求書には消費税込みの総額を記載すれば問題ありません。


注意すべき点として、内税方式と外税方式の違いがあります。請求金額や消費税額の表示方法が異なるため、それぞれの方式に応じた正しい記載を行う必要があります。フリーランスとして請求書を作成する際にはこの点に十分注意し、正確な消費税額を計算して記載することが重要です。

消費税の基本とは?

消費税は商品やサービスの売買時に発生し、消費に対して課される税金です。商品の販売やサービスの提供など広範囲にわたる取引に公平に課税される税金で、消費者が負担し事業者が納付します。


消費税の負担者は消費者ですが納付するのはフリーランスなどの事業者です。

フリーランスなどの事業者の提供する多くのサービス・商品には消費税がかかりますが、土地の譲渡など一部の取引は消費税の対象外となる点にも注意が必要です。


消費税の非課税取引の一部を以下に記載します。

  • 土地の譲渡および貸付け

    借地権なども含まれます。なお1か月未満の貸付や駐車場利用などに伴う土地使用は非課税になりません。

  • 有価証券等の譲渡

    国債・株券・金銭債権などの譲渡。ゴルフ会員権などは非課税ではありません。

  • 支払手段の譲渡

    銀行券、政府紙幣、小切手、約束手形などの譲渡。ただし収集品として譲渡する場合は非課税になりません。

  • 暗号資産の譲渡も非課税です。

  • 預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供

    預貯金・貸付金の利子・保険料など。

  • 郵便切手類や印紙の譲渡

    日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、地方公共団体が行う証紙の譲渡。

  • 物品切手等の譲渡

    商品券やプリペイドカードなど。

  • 国等が行う一定の事務に係る役務の提供

    登記などに関する役務。

  • 外国為替業務に係る役務の提供

内税と外税の違い

消費税には「内税」と「外税」の二つの形式があります。

  • 内税:契約金額に消費税が含まれている。

  • 外税:契約金額に消費税が含まれていない。


具体例として、契約金額が「10万円」の場合を見てみましょう。


・内税の場合

  • 請求金額・契約金額:100,000円

  • 手取り報酬:90,909円

  • 消費税:9,091円


・外税の場合

  • 請求金額:110,000円

  • 契約金額:100,000円

  • 消費税:10,000円


内税と外税では請求額が異なるため、契約時にどちらの形式を採用するかを確認することが重要です。

消費税を納める必要があるフリーランス

フリーランスが消費税を納める必要があるのは、課税事業者である場合です。

課税事業者とは次のいずれかの条件を満たす者を指します。

  • 基準期間における課税売上高が1,000万円を超える者

  • 適格請求書発行事業者(詳細後述)として登録している者

  • 特定期間における課税売上高が1,000万円を超える者


以前は、基準期間・特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合に課税事業者となる場合が多かったです。


2023年10月以降インボイス制度の導入により課税売上高が1,000万円以下のフリーランスも「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することで、課税事業者となるというケースが増えました。詳細は後述します。


基準期間は通常その年の2年前の1月1日から12月31日までの期間を指し、特定期間はその年の前年の1月1日から6月30日までを指します。

消費税の納税が免除されるフリーランス

フリーランスが消費税の納税を免除されるのは、免税事業者である場合です。免税事業者に該当するのは、以下の条件を全て満たす場合です。

  • 基準期間における課税売上高が1,000万円以下の者

  • 適格請求書発行事業者に登録していない者

  • 特定期間における課税売上高が1,000万円以下の者


基準期間はその年の2年前の期間を指しますので、例えば2024年の消費税納税について判定する場合は2022年の課税売上高が1,000万円以下かどうかを見ます。また特定期間とは前年の1月1日から6月30日までの期間を指しますので2024年の消費税納税について判定する場合は2023年の1月1日から6月30日までの期間の課税売上高が1,000万円以下かどうかを見ます。

インボイス制度への対応策

2023年に導入されたインボイス制度に対応するため「適格請求書発行事業者」になると課税売上高に関係なく消費税の納税義務者になります。適格請求書発行事業者になるべきかどうかは、消費税額や取引状況などを総合的に考慮して決定する必要があります。

フリーランスが支払うその他の税金

消費税以外にフリーランスが納めるべき税金には、所得税・住民税・個人事業税などがあります。所得税や住民税は会社員も支払っているため、多くの人にとって馴染みがあるでしょう。個人事業税は地方自治体に納める地方税で、通常の会社員は支払わない税金です。

2.消費税の納税方法

消費税の納税は通常、まず消費税が免除されるかの確認から始めます。納税義務があれば対象期間における納付すべき消費税の額を計算します。対象期間は確定申告を行う前年の1月から12月までです。次に確定申告で納税額を申告します。最後に納税期間内に消費税を納付します。

消費税納付までの手順

消費税納付までの流れは以下のとおりです。


1. 消費税が免除されるかの確認

通常開業してから2年未満かまたは基準期間・特定期間の課税売上高が1,000万円以下であれば消費税が免除されます。

2. 消費税の計算

通常預かった消費税と支払った消費税の差額が納付すべき消費税となります。

計算方法については詳細を後述します。


3. 消費税の申告

消費税の申告は通常毎年2月から3月末までに行います。

前年の1月から12月までの消費税を申告書に記入し、期限までに提出します。


4. 納税

申告した納税額を税務署に納めます。


納税時期は2月初めから3月末までなので、申告と納税は余裕を持って行いましょう。

納付する消費税の計算方法

納付する消費税の計算方法には本則課税と簡易課税の2種類があります。

  • 本則課税:通常の方法

  • 簡易課税:小規模事業者向けに本則課税を簡易にした計算方法


以下でそれぞれの方法について説明します。

本則課税方式

本則課税は消費税の標準的な計算方法です。計算式は次のとおりです.

納付すべき消費税=(課税売上高×消費税率)-(課税仕入高×消費税率)

課税売上高と課税仕入高にそれぞれ消費税率を掛けて、その差を求めます。

以下の例で計算してみましょう。

税率:10%の取引のみ

課税売上高:3,000,000円

課税仕入高:1,000,000円


(3,000,000円×10%)-(1,000,000円×10%)=200,000円

納付すべき消費税の金額は200,000円となります。

簡易課税方式

簡易課税という計算方法は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の小規模事業者向けの制度です。本則課税とは異なり簡易課税は「みなし仕入れ率」を使って計算します。計算式は次のとおりです。

納付すべき消費税=受け取った消費税-受け取った消費税×みなし仕入れ率

業種は小売業で受け取った消費税:300,000円と仮定して計算してみます。

小売業のみなし仕入れ率:80%

300,000円-(300,000円×80%)=60,000円

みなし仕入れ率を使うと課税仕入高にかかる消費税を計算しなくても消費税が求められるのが特徴です。

4.フリーランスが契約時に注意すべきこと

フリーランスとして契約する際には、報酬金額に消費税が含まれているかを確認しましょう。契約の段階で消費税についてしっかり取り決めておくことが重要です。

契約時に消費税を請求することに同意しておく

消費税は商品やサービスに対してかかる税金です。フリーランスとして働く際の報酬にも消費税が発生するのが通常です。契約を結ぶときには報酬が税込か税別かを確認しましょう。契約する前の段階で報酬に含まれる消費税について確認し、トラブルを避けるために双方が合意することが大切です。

減額交渉に応じるかは状況次第

新型コロナウイルスの感染拡大や増税の影響で仕入税額控除の対象外の消費税分について報酬の減額を交渉してくる業者がいます。減額交渉に応じるかべきであるかどうかは状況次第であるといえるでしょう。


仕入税額控除については次章で詳細を説明します。

5.インボイス制度の理解とフリーランスへの影響

インボイス制度は2023年10月1日から導入された消費税の仕入税額控除の方式です。

この制度では課税事業者である「適格請求書発行事業者」が発行する「適格請求書」(通常はインボイスと呼ばれます)を保存していないと通常仕入税額控除ができません。

この章ではインボイス制度の詳細について解説します。

インボイス制度について

インボイス制度では通常仕入税額控除を受けるために仕入先が発行した適格請求書(インボイス)を保存する必要があります。そして適格請求書を発行するには適格請求書発行事業者として登録している必要があります。もし仕入先が適格請求書発行事業者として登録していない場合、通常仕入元は仕入税額控除を行うことができず支払うべき消費税額が増えてしまいます。(ただし、一定期間の経過措置があります)


念のため用語の説明を以下に記載します。

仕入税額控除:仕入れで支払った消費税を受け取った消費税額から差し引くこと

適格請求書発行事業者:適格請求書を発行できる事業者

インボイス:適格請求書発行事業者が発行した仕入税額控除に必要な請求書

フリーランスへのインボイス制度の影響

ではフリーランスにとってはどのような影響が考えられるでしょうか。ポイントは次の2つです。

  • 免税事業者のままでいることで適格請求書を交付できない場合取引先企業からの発注が減る可能性がある。

  • 免税事業者同士の取引の場合影響はあまりないと推測される。


仕入元が課税売上高1,000万円を超える課税事業者の場合は注意が必要です。2023年10月以降仕入先が免税事業者の場合、適格請求書を交付できないためです。


課税事業者である仕入元にとっては仕入先に支払った消費税分の仕入税額控除ができず、消費税の納税額が大きくなってしまいます。仕入元は適格請求書を交付してくれる別の事業者に仕事を依頼するか、消費税額相当分の値引きを交渉してくるということが考えられます。


一方お互いに免税事業者の場合には消費税の納税義務がないので、仕事への影響はほとんどないと言えるでしょう。

フリーランスが対策を取るべき時期と方法

フリーランスの方がインボイス制度に対応するためには、以下のスケジュールを押さえておくことが重要です。


2029年までの期間には「経過措置」と呼ばれる期間があります。この期間では条件が満たされていれば、適格請求書発行事業者でない事業者からの仕入れについても一定の割合で仕入税額とみなして控除が可能です。


いずれにせよフリーランスは適格請求書発行事業者としての登録を検討する必要があります。

また令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合、課税選択届出書を提出せずとも適格請求書発行事業者としての登録が可能です。

6.フリーランスのためのインボイス制度への対応

ここまでインボイス制度の内容について説明してきました。

この章ではフリーランスの方が実際にインボイス制度に対応する際のポイントを紹介します。

ステップ1. 適格請求書発行事業者への登録のメリットとデメリットを把握する

フリーランスが適格請求書発行事業者になるかどうかを検討する際に重要なのは、「適格請求書発行事業者になるには課税事業者にならなければいけない」という点です。適格請求書を発行できる事業者になるには、これまで消費税の申告・納税義務のなかった免税事業者も課税事業者になる必要があります。


フリーランスが免税事業者から課税事業者になると、次の2つのマイナスの影響が考えられます。

  • 所得が消費税の納税分だけ減る

  • 消費税の申告・納税に伴う事務処理が煩雑になる


これまで納税の義務がなかった消費税を申告・納税することになるため所得が減少します。


納付することになるであろう消費税の金額を大まかに計算しておきましょう。

また消費税の申告に必要な帳簿の作成や会計ソフトの導入などの準備も必要です。


これらを考慮して適格請求書発行事業者に登録するかどうかを慎重に検討しましょう。


なお条件を満たせば適格請求書の交付を受けなくても仕入税額の80%を仕入税額控除できる特例があります。

利用できるのは2023年10月1日から2026年9月30日までの期間です。この特例は事前の届出は必要ありませんが、

経過措置を受けるためには、次の項目が記載された帳簿や請求書等を保存する必要があります:


帳簿

  • 取引先の名前

  • 取引の日付

  • 取引内容と経過措置の適用を受ける旨

  • 支払額

  • 「80%控除対象」や「免税事業者からの仕入れ」などの表記。取引に「※」や「☆」などの記号を付け、その意味を別に説明する方法も可能。


請求書等

  • 書類作成者の名前

  • 取引の日付

  • 取引内容/軽減税率対象の場合、その旨を記載。

  • 税率ごとの合計金額

  • 受取人の名前


免税事業者から受け取った請求書等に「軽減対象資産の譲渡であること」と「税率ごとに合計した税込み金額」の記載がない場合、自分でその内容を追記して保存することが認められています。電子的に提供された請求書を印刷し、追記して保存することも可能です。

ステップ2. 適格請求書発行事業者への登録なしで取引を継続できるか確認する

仕入元がインボイスの発行を求めない場合や免税事業者・簡易課税制度を選択している場合、適格請求書発行事業者に登録しなくても取引にほとんど影響がないと考えられます。


一方仕入元が本則課税を適用している課税事業者である場合、仕入税額控除をするには通常仕入先からの適格請求書が必要です。フリーランスは適格請求書発行事業者に登録するかどうかで今後の取引に影響する可能性があります。事前に確認しておきましょう。


適格請求書発行事業者であるかどうかに関わらず仕事を依頼したいと言われる場合は、必ずしも適格請求書発行事業者に登録する必要はありません。フリーランスとして提供できる価値を向上させることも、インボイス制度への対策の一環となります。

ステップ3. 適格請求書発行事業者への登録を検討する際に簡易課税制度を検討する

ステップ1および2を検討した上で適格請求書発行事業者になる決定を下す場合、簡易課税制度の選択も考慮しましょう。


簡易課税制度を選択すると消費税の申告・納税手続きが簡略化されるため、事務処理の負担を大幅に軽減できます。簡易課税制度では、課税売上から受け取った消費税額を元に、納税すべき消費税額を簡易的に計算できます。適格請求書の保存がなくても仕入税額控除は可能ですが、法的には受け取った請求書をしておく義務があります。


フリーランスが自己で経理を行う場合には簡易課税制度を有効活用することで、事務処理の手間を大幅に削減できます。


関連記事

インボイス制度に抜け道や支援策は?分かりやすく解説!

7.消費税に関する各種手続き

この章では消費税に関するその他の手続きについて解説します。

消費税の還付手続き

消費税の還付手続きは支払った消費税が受け取った消費税より多い場合に、その差額を返金するための手続きです。消費税の申告時に「消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)」を提出します。

課税事業者が免税事業者に戻る場合

免税事業者に戻る場合は「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出する必要があります。

8.フリーランスが消費税を支払う際の留意点

消費税を支払う際にはいくつかの重要な点に留意する必要があります。

消費税の納付が遅れた場合

消費税の支払いが遅れると通常「延滞税」が課されます。遅延が長引けば長引くほど延滞税の額も増加するため、必ず支払いを行いましょう。また消費税を支払えないために申告で虚偽の記載をすると、「重加算税」という追加課税を受ける可能性があります。万が一消費税を支払うことが難しい場合は、税務署に猶予を申請することを検討してください。

「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出を見落とした

フリーランスは通常簡易課税制度を利用します。この制度を活用するためには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出する必要があります。この書類の提出期限は課税期間の初日の前日までです。


この届出書を提出しないと制度を利用することができず、すべての取引において課税仕入高から消費税額を計算しなければならなくなるので注意が必要です。

9.フリーランスが消費税を節税するためのポイント

フリーランスは事業の余裕を確保するために支払う税金を抑えることが理想と言われることがあります。消費税を抑えるために、以下の節税ポイントに注意しましょう。税金の支払い過ぎは事業の持続性にも影響する可能性があるため、節税ポイントをしっかり押さえておくことが重要です。

売上を調整し、経費を適切に活用する

適格請求書発行事業者ではないフリーランスが消費税を納めなければならないのは、基準期間・特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合です。課税売上高を1,000万円以下に抑え経費を適切に活用すれば、消費税を納付する必要はないのが通常です。


課税売上高の調整が可能であれば、適切に調整して節税することができます。

事業に合った課税方式を選択する

消費税の納税額は、本則課税方式と簡易課税方式のどちらかで計算されます。前述した通り、本則課税方式は1年間に徴収した消費税から実際に支払った消費税を差し引いて算出されます。


一方簡易課税方式は売上の税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」を乗じて経費の税額計算を行い、納税額を求めます。納税額は計算方法・業種・業績によって異なりますが、どちらが節税に有利かは一概に言えません。自身の売上状況や業種に応じて計算方法を選択しましょう。


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10.まとめ

この記事ではフリーランスの消費税について概要・納税方法・納税時の留意点・インボイス制度による影響などを解説しました。フリーランスの中には免税事業者のまま活動している方も多いかと思いますが、売上が拡大して課税対象となった場合やインボイス制度に対応する場合に備えて計算方法を正しく理解しておくことが重要です。


2023年から実施されたインボイス制度によりこれまで免税事業者だったフリーランスでも課税事業者に移行する可能性があります。課税事業者となれば消費税の計算・提出書類作成・納税が求められます。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

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