「働く側として派遣と出向の違いを知りたい」「雇用に関する違反やトラブルを避けたい」とお考えではありませんか。
派遣や出向の違いなど、本人の所属や責任の所在がしっかりと把握できていないと、キャリアにネガティブな影響を与えることも考えられるため、雇用する側だけでなく働く側においても、雇用や契約に関する知識を蓄えて十分に注意する必要があります。
本記事では、派遣や出向に関する法的な根拠を把握しておきたい方のために、派遣と出向の違いや類似する契約形態との違い、派遣と出向のそれぞれのメリットやデメリットをご紹介するとともにトラブルに巻き込まれないための注意点についてお話しします。
目次
1.派遣と出向の違いに関する前提知識
はじめに派遣と出向の違いをしっかりと理解するために、前提として必要な知識について分かりやすく簡単に解説します。
派遣とは
派遣とは、派遣会社と雇用契約を結んだ労働者が、派遣会社と相談しながら、派遣先を決めて働く雇用形態を指します。労働者のスキルや経験に見合った派遣先で働ける可能性が高く、個人で就職活動や転職活動を行うよりも仕事が見つかりやすいこと、すぐに働き始めることができる可能性が高いことが大きな利点です。
派遣には大きく分けて一般派遣、無期雇用派遣、紹介予定派遣の3つがあります。それぞれにどのような特徴があるのかチェックしておきましょう。
一般派遣:登録型派遣
一般派遣及び登録型派遣とは、労働者が派遣会社に登録し、仕事がある時、すなわち派遣先が見つかった時だけ雇用契約を結ぶ働き方です。労働者は派遣先で定められた期間の間は派遣先の指揮命令で仕事をします。派遣期間が終了すると雇用契約も終了する仕組みであり、半年、1年などの期間で区切ってはいるものの、継続的に派遣されるのが一般的です。
一般派遣の場合は労働者側が決めた期間の間だけ働くことも可能であるため、短期間の間仕事をしたい、ある程度仕事を覚えたら違う企業や別の業界や業種で働きたいという場合に向いています。
特に一般派遣は契約が労働者と派遣会社の契約そのものが、期間の終了で解消されるため、正社員の場合の退職が面倒ということはなく、雇用関係をスムーズに終わらせられるという点も働く側の魅力と言えるでしょう。
無期雇用派遣:常用型派遣
無期雇用派遣及び常用型派遣とは、派遣会社と期間を定めない雇用関係を結び、派遣先がない期間、すなわち派遣されない時も雇用が継続される働き方です。労働者は派遣会社の正社員や契約社員として雇用され、派遣先での期間が満了しても派遣会社との契約が解消されることがないため、一般派遣よりも安定した働き方といえます。
一般派遣のように一定の期間で別の企業や別の業界及び業種で働いてスキルアップをしたい、キャリアチェンジをしていきたいが、その都度、契約が切れて雇用関係がなくなるのが不安だという方に向いていると言えるでしょう。また、派遣会社自体の事業や業務に深く携われる可能性があるのも利点と言えます。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、一定期間(最長6ヶ月)、派遣先で働いた後、双方の合意によって派遣先と直接雇用を結ぶことができる派遣の仕組みを指します。働く人は派遣元と契約を結ぶため、もし派遣先が気に入らなかった場合は直接雇用への移行を拒否することができます。
企業側としても相性が合わないと感じたら直接雇用をしなくて済むため、双方に利点がある派遣の仕組みと言えるでしょう。本採用における試用期間と似ていますが、個人として企業と直接的に採用活動するのではなく、派遣会社を通じて企業の募集に応募できるという違いがあるため、状況によっては紹介予定派遣の方が希望する業界や業種を目指しやすい可能性もあります。
出向とは
出向とは、企業や組織同士、企業グループ内の子会社関係会社がそれぞれの人材を交流することで、人材育成や企業間交流による技術力の向上、キャリア形成やキャリア開発などを目的として、一定期間、出向先で業務や作業を経験させる仕組みを指します。
中長期的な視野で考えれば利益も目的とは言えますが、基本的には利益が主たる目的ではなく、人材の育成と交流が主の目的であることをしっかりと覚えておきましょう。
また、出向のもう一つの意味合いとして、定年後にグループ会社や子会社への出向、もしくは早期退職制度を利用して出向する場合などで使われることもあります。出向には大きく分けて2つの種類があるという意味であり、それぞれにどのような違いがあるのかも見ておいてください。
在籍出向
在籍出向とは、出向元の企業や組織に籍を置いたまま出向先で業務を行うことを指します。簡単に言えば雇用関係や雇用契約先に変化はないという意味です。
そのため、雇用に関する不安などを感じる必要はなく、純粋にスキルアップやキャリアアップのために、出向先での業務や作業による成長に集中することができます。最初に決めた期間を経過すれば、出向元に戻って元の業務を行ったり、出向先で学んだことを活かして別の業務や役割を任されることもあるでしょう。
転籍出向
転籍出向とは、出向元の企業との雇用関係を解消し、出向先の企業と契約を結ぶことを指します。前述した定年後や早期退職制度の場合だけでなく、従来の出向の目的とは同じでも転籍出向をする場合もあります。
在籍出向と大きく異なるのは、雇用関係と雇用契約先が変わることであり、出向元の企業で得られた給与や福利厚生などは利用することはできなくなることです。
派遣と出向に関する厚生労働省の見解
派遣と出向は、実質的に同じようなものではないのか、働く側からすれば同じだろうと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。その場合は派遣と出向に関する厚生労働省の見解がとても参考になります。
厚生労働省の「労働者派遣と在籍型出向との差異」を確認したところ「在籍型出向については、出向元事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく、出向元事業主と出向先事業主との間の出向契約により、出向労働者を出向先事業主に雇用させることを約して行われていることから、労働者派遣には該当しない。」と明記されています。
ただし、続いて「しかし、在籍型出向の形態は、労働者供給に該当するので、その在籍型出向が「業として行われる」場合には、職業安定法第44条により禁止される労働者供給事業に該当する。」という記載もあるため、出向の目的から大きく外れてしまうと、違法行為になってしまうということを十分に注意しておく必要があります。
派遣と出向のどっちがいいか判断する基準
派遣と出向のどちらかを選ばなければならないという状況が発生するかは別として、働く側としては、派遣と出向のどっちがいいか判断する基準が知りたいと考えることもあるでしょう。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについては後述しますが、出向の場合は所属元に籍が残っている状態であり、出向先の状況に関係なく、何かあったら出向元に戻れるという点は大きな利点と言えます。ただし、良くも悪くも出向元に帰らなければならないということも考慮しなくてはなりません。
派遣の場合は一定の期間を経て別の派遣先、状況によっては切り上げて別の派遣先といったような働き方もできます。職業としての安定性について考えると、出向の方が分があるものの、働きやすさやライフワークバランスを考える場合は派遣にも良さがあるということです。
共通しているのは、働く方のキャリア形成や人生設計によって、どっちがいいか判断する基準は異なってくるということ、その時の状況によってより良い選択肢を選べるようにしておくことが大切だと覚えておいてください。
2.派遣や出向の違いと類似する契約形態との違い
次に派遣や出向の違いをしっかりと理解するために、類似する契約形態の特徴やそれぞれとの違いについて簡単に解説します。
契約形態 | 雇用関係 | 指揮命令権 | 報酬の条件 | 支払元 | 働く場所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
雇 用 契 約 | 派遣 | 派遣元 | 派遣先 | 労働力の提供 | 派遣元 | 派遣先 |
出向 | 出向元 | 出向先 | 労働力の提供 | 出向元 | 出向先 | |
SES契約 | 雇用元 | 雇用元 | 技術的サービスの提供 | 雇用元 | 顧客先 | |
業 務 委 託 契 約 | 請負契約 | なし | なし | 成果物の完成・納品 | 委託者 | 契約による |
委任契約 | なし | 依頼による | 委任された法律行為 | 委任者 | 契約による | |
準委任契約 | なし | 依頼による | 委任された非法律行為 | 委任者 | 契約による |
上記は派遣や出向の違いと類似する契約形態との違いを表にしたものです。実際には派遣も出向も、その他の契約形態においても細かく分類があるため、あくまでも大まかな目安として、状況によっては異なる場合があることに留意してください。
派遣と出向の違い
派遣と出向の違いとして、一番の大きな違いは派遣会社の社員として派遣先で働くか、企業や組織の一員として出向先で働くかという点にあります。派遣の場合は人材派遣会社が雇用した社員を他企業に派遣する事業形態です。派遣先での仕事が終わった場合も別の派遣先での業務を行うことが多いです。
出向の場合は出向が終わったら、実質的に所属する出向元で働くことができるため、キャリアの形成がしやすく、スキルアップとキャリアアップが実現しやすい働き方と言えます。前述したように出向の場合は出向を業務命令された方のスキルアップ、人材育成、人材交流などが目的であることがこのような違いとなっていると言えるでしょう。
ただし、派遣の場合においても、一定の期間を経て別の派遣先で働けることから、様々な環境でスキルアップや成長ができる点は似ています。
SES契約との違い
派遣や出向とSES契約との違いとして、SES契約の場合は技術力を持ったエンジニアを提供することが大きな違いと言えるでしょう。そのため、エンジニアが派遣されるような場合においては、派遣とSES契約はほとんど同じという見方ができますが、実際には、法的にも契約的にも別の契約形態であるということも理解しておく必要があります。
SES契約の場合は指揮命令権が雇用元にあり、基本的には顧客先及びクライアント先での命令は受けないということも大きな違いです。SES契約が技術者の専門性を重視し、クライアント企業の指揮命令に左右されずに業務を遂行することを目的としていることが理由であり、派遣先や出向先の主となる業務を行うのではないという部分が違いとも言えます。
業務委託契約との違い
派遣や出向と業務委託契約との違いとして、業務委託契約の場合は雇用関係が生じないという点にあります。委託元と委託先の関係性は対等であり、報酬の支払いはあるものの上下関係はないということです。
そのため、契約にはよるものの基本的には指揮命令権も発生しないため、委託先の企業や組織、または個人事業主及びフリーランスの方の裁量で業務が進められます。
また、依頼や委託の内容以外の命令、業務の進め方に対する指示は受けないこと、働く場所などにおいても委託先の裁量で決められることも違いと言えます。業務委託契約は、請負契約・委任契約・準委任契約の総称であるような存在でもあるため、特徴的な違いについては、それぞれの項目で簡単に解説します。
請負契約との違い
派遣や出向と請負契約との違いとして、仕事の完成義務の有無です。
請負契約では、請負人(受託者)は委託者に対して特定の仕事を完成させる義務を負い、その成果物の完成によって報酬請求権が発生します。一方、派遣では労働力の提供自体が目的であり、特定の成果物の完成義務はありません。
また、指揮命令関係も異なります。派遣では派遣先が労働者に直接指揮命令を行いますが、請負契約では発注者(委託元)は請負人に対して具体的な指揮命令を行うことができません。請負人は独立した事業者として、自らの裁量と責任で業務を遂行します。
さらに、請負契約では完成した仕事に瑕疵(欠陥)があった場合、請負人は瑕疵担保責任を負うのに対し、派遣では労働者個人がこのような責任を負うことはありません。
請負契約は個人事業主やフリーランス、企業間取引でも広く用いられており、契約で定められた成果物を納品することで報酬を得る仕組みとなっています。
委任契約・準委任契約との違い
派遣や出向と委任契約との違いとして、委任契約は法律行為を行うことが一番の違いであり、雇用関係が生じないということも違いと言えます。
例えば弁護士や税理士にしかできない業務を依頼して、法律行為をしてもらうことが委任契約です。準委任契約は非法律行為を行うことで報酬を得るというのが違いであり、その他の業務委託契約と同様に雇用関係が生じないことが違いです。
業務委託契約では指揮命令権が発生しないものの、委任契約や準委任契約として委託される内容や要請自体は細かな指示が必要なこともあり、実質的には指揮命令権が生じているという見方をする場合もあります。
そのため、表では「依頼による」という表現にしてあり、実際に委託される契約と業務内容によっては様々なケースがあるということは覚えておきましょう。
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SES契約とは|準委任契約・請負契約・派遣契約・準委任契約との違いやメリット・デメリットを解説
3.派遣のメリット・デメリット
次に派遣と出向の違いをさらに明確にするために、まずは派遣のメリットとデメリットについて簡単に解説します。
派遣のメリット
大手や有名企業で働ける可能性がある
スキルや経験に合った仕事を選びやすい
スキルの習得や成長が期待できる
正社員よりも高い時給で働ける
ライフスタイルに合わせて働き方を選べる
上記が派遣のメリットです。
派遣のメリットは派遣会社が様々な企業と契約を結んでおり、個人ではなかなかたどり着けないような企業でも働ける点にあると言えます。所属としては派遣会社の社員であったとしても、それぞれの職場環境で様々な成長ができることは強いメリットと言えるでしょう。
また、正社員よりも高い時給で働ける可能性があること、最初に決めた派遣期間を過ぎれば別の派遣先で働けることなどもメリットと言えます。
派遣のデメリット
正社員と比べて雇用が不安定
キャリアアップの機会が限られる
福利厚生が正社員よりも劣る
責任のある仕事を任せてもらえない
同じ職場で長く働くことが難しい
上記が派遣のデメリットです。
派遣先の企業の業績などによっていきなり派遣を切られてしまうようなこと、すなわち雇用が不安定である点は大きなデメリットと言えます。また、同じ職場環境であっても、一定の業績や成果を上げてもキャリアアップには繋がらないというのもモチベーションが下がるという意味でデメリットです。
やはり、正社員ではないという部分で区別されてしまうことが、派遣として働く上でのデメリットに感じてしまうことは避けられないと言えるでしょう。
4.出向のメリット・デメリット
次に出向のメリットやデメリットがどんなものなのか、実際に働く方がどのようなことを感じるのかという視点で簡単に解説します。
出向のメリット
新しいスキルや経験を習得できる
キャリアアップの機会が得られる
所属は出向元で雇用が安定している
給料が下がる心配があまりない
出向先で人脈や友好関係を築ける
上記が出向のメリットです。
特徴的なメリットとして、所属が出向元で雇用が安定することが挙げられます。出向の場合は、出向元と出向先が基本的には金銭的な利益のための契約関係を目的としていないため、派遣のように何らかの事情で急に仕事がなくなるということは考えにくいということです。派遣と共通するのは、働く方が新しい環境でスキルアップや成長につなげられる点と言えるでしょう。
出向のデメリット
出向先を気に入っても戻らなければならない
出向先の従業員との給与や待遇に差がある
業務命令のため我慢しなければならない
慣れない環境で働く必要がある
出向先での実績が評価に繋がりにくい
上記が出向のデメリットです。
一番のデメリットは基本的に業務命令であるために、出向しなければならないという点にあります。派遣の場合はある程度は個人のスキルや経験と意志を尊重することもありますし、状況によっては別の派遣先に変えてもらうこともできるため、出向との大きな違いと言えるでしょう。その他については、ほとんど派遣と同じようなデメリットと言えます。
5.出向や派遣に関連する違反
次に出向や派遣に関連する違反として、代表的なものを3つご紹介します。いずれも知らなかったでは済まされない内容でもあるため、雇用する側も雇用される側の両方の立場で、しっかりと理解して覚えておきましょう。
偽装出向
偽装出向とは、所属する企業から出向として命令を受けているにもかかわらず、実質的には労働者派遣もしくはその他の契約形態で業務させる違法行為を指します。
例えば、出向によって本人や出向元の企業、もしくは出向先の企業にとって有益な結果をもたらすことが目的ではなく、出向元が出向先から得られる利益を目的として出向を行うケースです。
また、状況によっては本人が知らないまま出向先の所属になっていたり、または個人事業主のような扱いで法的な保護が受けられなかったりするような可能性も高いため、働く側に何のメリットもない不当行為と言えるでしょう。
偽装請負
偽装請負とは、形式上は請負契約を結んでいるにも関わらず、実質的に労働者派遣と同じように発注者(委託者)が労働者に対して直接指揮命令を行っている状態を指します。請負契約の場合は仕事の完成義務が本質であり、請負人が独立した事業者として自らの裁量と責任で業務を遂行することが前提となります。
直接的な命令を受けたり、報酬となる給与に対する評価をされたりするような行為は全て違法になるということです。偽装請負は責任区分が働く側に不利になる状況になってしまうため、何かあった時の責任を働く人が負わされるという非常に悪質な違法行為と言えます。
そのため、「知らなかった」という状況下でトラブルが発生したとしても、契約上は損害賠償などを働く人が負う必要があるということをしっかりと理解して、偽装請負にならないように回避しなくてはなりません。
二重派遣:多重派遣
二重派遣及び多重派遣とは、派遣先の企業がさらに別の企業及び組織に派遣されてきた人材を派遣する違法行為を指します。二重派遣及び多重派遣は働く人の報酬が目減りする可能性があること、法的な保護が得にくいこと、責任の所在が曖昧で思わずリスクが発生することなど社会的な問題になっているため注意しなくてはなりません。
派遣される方は自身の立場を弱いと感じてしまうため、派遣先や働く場所での命令を聞かざるを得ない状況となる場合もあり、同時に常に人手不足な状況下においては、それぞれの所属などがわからないまま違法な状態が発覚しにくいことも違法な状況になる原因になっています。
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6.法令違反やトラブルを回避するための注意点
次に働く方や人材を手配する方が、前述した偽装出向や偽装請負、二重派遣や多重派遣などの法令違反に関わらないようにするために、どのようにトラブルを回避するべきかの注意点について解説します。
契約と実態が合致しているかを把握する
まずは雇用する側も雇用される側も、契約と実態が合致しているか、しっかりと把握することが大切です。雇用する側の場合は、派遣や出向をしている人が、派遣や出向の契約や条件と合致している場所、もしくは決められた命令系統で仕事をしているかを定期的にチェックすると良いでしょう。
雇用される側、の場合、例えば働く場所、命令する権限の有無などに契約の違いがあれば、早い段階で雇用元に報告することをおすすめします。
実際に働く会社や命令する人の身分を明確にする
法令違反やトラブルになってしまう理由として、実務の現場では実質的にどの企業および組織なのか、一緒にいる人がどんな身分なのかが分かりにくいということが挙げられます。そのため、実際に働く会社や命令する人の身分を明確にすることを務めましょう。
これらは雇用される側である働く人が自分自身で身を守るために行っていく必要があります。もちろん、実際に働く現場の責任者の方や従業員の方が、会社名や身分を偽った場合は発覚しにくいですが、仕事をする中で違和感があったらすぐに実質的な雇用関係のある企業や組織に報告をして、状況を改善することが大切です。
法的な根拠を調べてから派遣や出向を手配する
法令違反やトラブルになってしまう原因として、雇用する側、すなわち派遣や出向を手配する側が法的な根拠を理解していないケースと、違法であることを理解しているケースの2つがあります。
前者の場合は人手不足や突発的な人員補充の要望に対応するタイミングで、安易に都合よく人を手配しないように注意してください。必ず、法的な根拠を調べること、手配する人材の身分や所属、契約などをしっかりと把握した上で、命令する権限を持つ人を明確にし、働く場所や行う業務も相違がないように手配を進めることが大切です。
7.派遣や出向に関するよくある質問
最後に派遣や出向に関して勘違いや思い違いをしてしまうような内容も含めて、よくある質問とその回答をご紹介します。
派遣社員を出向させるのは違法ですか?
派遣社員を出向させるのは、二重派遣及び多重派遣であり違法です。故意ではない場合にありがちなのが、普段から一緒に働いている現場のスタッフを、一時的に別の現場や作業場所で仕事をしてもらったものの、そのまま所属や契約を見直すことなく働かせてしまうことがあります。
もしくは、二重派遣及び多重派遣であることを理解しつつ、派遣先が利益のために違法行為をさせることもあるので注意しなくてはなりません。
派遣や出向は公務員も可能ですか?
公務員の場合でも派遣は出向は可能です。ただし、国家公務員法や各府省の規定に基づく必要があり、民間のような派遣や出向とは意味合いが異なるという点に注意しなくてはなりません。また所属元の身分を保持したまま別の行政機関や民間企業、国際機関等へ派遣及び出向することがあります。
そのため、公務員の場合は別の法的な根拠をしっかりと理解した上で、人材の調整や派遣及び出向の対応をする必要があると覚えておいてください。
違法な場合は働く側も罰せられますか?
状況によっては働く側も罰せられる可能性があります。ただし、雇用する側と比べて、雇用関係という立場的な弱さもあるため「知らなかった」という状況に陥っているケースなどにおいては、罰せられるとは断言できません。
同じく状況にはよるものの、法的な根拠なく働くことで、将来的なキャリア形成にネガティブな影響となることも考えられます。働く側も雇用や契約についての理解を深めて、自分自身の身を守る必要があるということをしっかりと覚えておきましょう。
特定派遣とは何ですか?
特定派遣とは、2015年の労働者派遣法改正前に存在した派遣形態の一つです。派遣元企業と常用雇用契約(実質的に正社員でない場合も含む)を結んだ労働者を、特定の専門的な業務を行わせるために派遣する形態でした。
しかし、届出制であったために参入障壁が低く、資金力に乏しい派遣業者が増加してしまうことで、業績悪化時に労働者への給与未払いや解雇が発生するなど雇用の不安定化や労働者の保護の不十分さが問題視されました。、そのため法改正により特定派遣は廃止、以降は許可制となりました。現在では特定派遣という名称も法的な根拠なども存在しません。
8.まとめ
本記事では派遣や出向に関する前提として理解しておくべき情報、法令違反やトラブルを回避するための注意点など、これからのキャリアを考えている方やフリーランスの方、または雇用する側の担当者が理解しておくべきことをお話ししました。
派遣や出向などの雇用に関する法令違反については、故意ではなくても知らず知らずのうちに関わってしまう可能性があるため、雇用する側と雇用される側の双方が注意し、防いでいく必要があります。現場の忙しさやスケジュール的な理由で法的な根拠を無視せず、正規の手続きを経て合法的に働けるように意識して実践していくことが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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