企業に勤める会社員に比べ、自由な時間に場所を問わず働けるフリーランスの仕事は近年注目を集めています。
働き方改革などもあり、フリーランスとして活躍するユーザーも増加傾向にあります。
フリーランスは自由に働ける一方で、個人事業主としての制限や制約なども存在します。
会社員であれば取得できる有給休暇も、フリーランスでは制度として存在しないため、長期休暇が取れずストレスに感じるケースも少なくありません。
そこで今回は、フリーランスにおける有給休暇の基本的な概要をはじめ、効果的に休暇を取る方法や注意点などについて紹介していきます。
目次
1.フリーランスに有給休暇は無いのか?
フリーランスは会社員ではなく、個人で仕事を請け負う個人事業主に分類されます。
このような個人事業主の場合には、基本的に有給休暇を取得することができません。
有給休暇は、あくまで企業に勤める労働者に対して付与されるものであり、個人事業主はこの限りではないため有給休暇が存在しないということになります。
有給休暇とは?
そもそも有給休暇とは、労働基準法によって定められた労働者向けの休暇制度のことを指します。
正式には年次有給休暇といい、業種業態にかかわらず以下の条件を満たす労働者には必ず付与される制度となります。
雇用した日付から6ヶ月間の勤務した者
期間中の労働日も8割以上に勤務した者
特に近年では、働き方改革の一環として2019年4月に労働基準法が改正され、労働者には年5日の有給休暇を取得することが義務付けられました。
この有給休暇の取得は必須となるため、労働者に有給休暇を取得させなかった場合には、企業(雇用者)側に罰金が科されます。
この結果、従来までの有給休暇を取得しづらい環境から脱却し、労働者は希望するタイミングで有給休暇を取得出来るようになりつつあります。
フリーランスに有給休暇が無い理由
有給休暇は、労働基準法によって労働者向けに付与された制度です。
これに対し、フリーランスは労働者ではなく個人事業主に該当するため、有給休暇を取得することはできません。
そもそもフリーランスは、基本的に企業からの案件を個人の裁量で受注し、報酬(収入)を得る働き方となります。
そのため、自由な時間で場所も問わず働くことができます。
多くの案件を受注すれば収入も増える反面、プライベートな時間は減少しますが、受注する案件を調整すればプライベートの時間を確保することも可能です。
このように、時給制ではなく成果に応じて収益につなげられる点がフリーランスの魅力の一つでもあり、その調整によって自由なタイミングで休暇を取ることができます。
そのため、法律で定める有給休暇という概念は、フリーランスにおいて存在しません。
とはいえ、常駐型のフリーランスの場合には、一部有給休暇が取得できるケースもあります。
常駐型フリーランスの有給休暇とは?
常駐型フリーランスとは、提携先の企業において、その従業員と一緒に働くケースのことを指します。
基本的にフリーランスの仕事は、案件を受注し、完了・納品することで報酬を得る成果報酬型が多くなりますが、中には現場で働く従業員と同じく業務を行う常駐型も存在します。
このような常駐型のケースでは、あらかじめ企業側と業務委託契約などで結んだ考慮すべき月間の契約時間を指す精算幅が存在し、精算幅に応じて有給休暇を得ることも可能です。
例えば、精算幅が140〜180時間で報酬が80万円の場合、月に140時間以上働けば80万円の収入を得ることができます。
加えて、月に180時間以上働く場合には事前に申請・相談を行うことで休暇を得ることも可能です。
受注した案件やプロジェクトの進行状況などにもよりますが、このように常駐型フリーランスの場合には有給休暇を受注先の企業と調整することで取得できます。
2.フリーランスでも効果的に休暇を取る方法
フリーランスでは有給休暇という概念はありませんが、休暇が全く取れないという訳ではありません。
効果的に業務を進めることで長期休暇であっても取得することも可能です。
スケジュール管理の徹底
好きな時間で自由なタイミングで働くことができるフリーランスでは、スケジュール管理が重要視されています。
やみくもに案件を多く受注しても、指定された納期までに対応できなければ収益にもつながらず、受注先企業からの信用を失いかねません。
一方で、スケジュール管理を徹底し、効率よく業務をこなすことができれば、休暇も取りやすくなり効果的に収益化につなげることが可能になります。
このようなスケジュール管理を徹底していくためには、自身のスキルや対応速度はもとより、受注した案件のレベルや業務量、対応見込などを適切に把握しておくことが重要です。
案件に対する対応レベルが曖昧であると、納期までのスケジュールを見誤り、休暇中に仕事をしなければならないことにもつながりかねません。
特に、初めて受ける企業からの案件や、新規案件などは予期せぬトラブルや対応に時間がかかるケースもあるため注意が必要です。
スケジュール管理を徹底し、逆算した対応を行うことができれば、フリーランスであっても効果的に休暇を取ることができます。
前倒しした案件の納品
スケジュール管理に加え、案件を前倒しして完了・納品することができれば、空いた期間を休暇に充てることも可能です。
あらかじめ月に対応する案件が決まっていた場合、フリーランスであれば業務を前倒しすることで休暇を増やすこともできます。
仮に1ヵ月に対応するべき案件を20日間でこなすことができれば、残りの10日間は休暇扱いすることも可能です。
フリーランスは、会社員のように出勤日が決められている訳では無いため、このように自由に設定・調整できる点は魅力の一つです。
収入を得るためには業務を受注・納品する必要があり、空いた10日間で新規案件を受注すればより収入につなげることもできます。
このように、休暇とどのように調整するかはスケジュール管理とあわせ設定していく必要があります。
受注数の調整
フリーランスが休暇を取るためには、単純に受注する案件を減らすことで対応することも可能です。
極端にいえば、1ヵ月働かなければ丸々休暇として充てることもできます。
とはいえ、前倒しの中でもふれたように、働かなければ当然ながら収入も減少します。
そのため、フリーランスとして休暇を取得する際には、収入と相談しながら検討していく必要があります。
また、受注数の調整はそれまでの案件における状況とも相談していくことが重要です。
例えば、特定の企業から継続的な受注を受けていた場合、長期休暇の取得によって対応できなければクライアントに迷惑がかかります。
企業側も案件を継続しなければならないため、仮に受注数を減らせば、他のフリーランスに案件が取られてしまう可能性も起こりえます。
数日間の休暇であれば問題ないですが、長期休暇の取得によって受注数を調整する際には、あらかじめクライアントと事前に相談しておくことも重要です。
クライアントとの調整
長期休暇の取得に限らず、短期間での休暇取得であってもクライアントとの調整によって取得できるケースも存在します。
基本的にフリーランスは、企業から定められた納期に応じて案件をこなしていきます。
ただ、日々業務を行っていると中には体調不良や急な用事などによって納期に間に合わないことも起こりえます。
このような場合には、クライアントと調整することで納期を遅らせることも相談可能です。これと同様に、あらかじめ休暇のタイミングが決まっていれば、納期を相談・調整することで仕事とプライベートのバランスを取ることもできます。
ただ、企業側の希望よりも納期を後ろ倒しすることは、自身の収益に影響するだけでなく企業側のマイナスイメージにつながる可能性もあります。
そのため、なるべく事前に調整を行うとともに、クライアントと良好な関係を築けるよう尽力することも重要です。
案件を外注する
納期を遅らせずに休暇を取得するためには、案件を外注するという手法も存在します。
フリーランスとして案件をこなすには、何も一人ですべてを対応しなくても構いません。
友人や知人、クラウドソーシングの活用などによって業務を分担・依頼することができれば、効率よく案件を遂行することも可能です。
このような外注手法には利点がある一方で、コスト面での課題も生じます。
仮に報酬単価よりも高く外注してしまえば利益が出ずに損失だけで終わってしまいます。
また、外注すればその品質やスケジュール管理なども求められます。
余計に業務がかかってしまうようであれば、休暇を取得できたとしても全体的な業務量が増えてしまう可能性も起こりえます。
そのため、外注する際には予算や業務量など全体のバランスをみながら検討する必要があります。
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3.フリーランスが長期休暇を取る際の注意点
フリーランスであっても効率よく休暇を取得することは可能ですが、長期休暇の取得に際してはいくつか注意点も存在します。
以下の要素は事前に確認しておくと効果的です。
基本的に仕事内容を他人に依頼することはできない
フリーランスは基本的に個人で働くスタイルであるため、会社員のように長期休暇中に業務を他の担当に任せることはできません。
外注するという方法もありますが、コストが発生するため費用対効果を確認する必要もあります。
そのため、受注している案件をふまえ、スケジュール調整を行った上で長期休暇を取得することが重要です。
仮に長期休暇を取ることによって業務に支障が出てしまえば、納期が遅れ、クライアントに迷惑をかけてしまうことになります。
フリーランスとして安定的な案件を受注するためには、クライアントとの信頼関係が重要になります。
どうしても長期休暇を取得する必要がある場合には、事前に受注先の企業と相談した上で進めると効果的です。
休み明けに仕事への切り替えが難しい
長期休暇を取得した後は、どうしても仕事への切り替えが難しくなります。
会社員であれば職場に出勤する必要があるため、無理矢理にでも身体を仕事モードにすることができますが、フリーランスの場合はより難しい傾向にあります。
自由な時間で場所を問わず働ける環境下では、つい休暇モードのまま仕事に取り組むことも少なくありません。
特に、周囲の目が無い環境下ではサボってしまうことも多くあります。
とはいえ、働かなければ収入にはつながらず、後回しにすることで納期までのスケジュールに影響を及ぼす可能性も起こりえます。
このようなリスクを防ぐために、長期休暇明けにはコワーキングスペースを活用するなど、仕事モードへの切り替えを効率よく行うと効果的です。
病気やケガに注意が必要
個人で働くフリーランスでは、自身の体調管理も重要になります。
長期休暇のタイミングで病気やケガを起こしてしまうと、その間に働くことができず、収入にも大きく影響してきます。
会社員であれば社会保険や休業補償などもありますが、このような補償制度もフリーランスにはありません。
そのため、長期休暇の過ごし方には会社員以上に注意が必要です。
また、近年ではフリーランス向けに任意の所得補償保険や、健康保険の負担を軽減できるサービスなども増加傾向にあります。
長期休暇の取得に限らず、このようなサービスも活用して万が一のリスクに備えておくことも効果的です。
収入が減少する可能性がある
フリーランスは成果に応じて収益につなげる働き方となります。
当然ながら長期休暇を取得すればその間は働かないため、収入が減少することにつながります。
また、長期休暇の間にクライアントが他のフリーランスに依頼してしまうことで、安定した案件が受注できなくなってしまうリスクも起こりえます。
新規案件の受注には営業活動など労力もかかるため、短期ではなく長期休暇の取得となると先々のスケジュールも意識した上で検討する必要もあります。
業務過多によるストレスや体調不良に陥ってしまえば意味がありませんので、リフレッシュを兼ねて長期休暇を取得することも重要です。
案件や収入状況をふまえスケジュール管理した上で、バランスよく休暇を取得していくと効果的です。
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4.長期休暇を取得しても収入減を抑える方法
有給という概念が無いフリーランスにおいて、長期休暇を取得することは収入減というリスクがあります。
しかし、この収入減を抑えつつ休暇を取得する方法も存在します。
単価の高い案件の受注
基本的にフリーランスの収入は、受注する案件の数によって決まりますが、収入を上げるためには受注数を増やす以外にも単価の高い案件を受注するという方法もあります。
例えば、1件あたりの報酬が10万円の案件を5つ行うよりも、1件50万円の案件を1つ対応した方が効率的な場合もあります。
その上で、10万円を5つ行うよりも50万円を1つ行う方が短時間で完了・納品できれば、空いた時間を休暇や別の業務に充てることも可能になります。
このように、案件対応にかかる時間と報酬をふまえ、日々の業務をスケジュール管理していくことで、収入減を抑えつつ休暇を取得することができます。
単価アップの交渉の検討
収入減を抑えるためには、案件に対する単価を上げることも有効です。
1件あたりの報酬を10万円から15万円に上げることができれば、仮に長期休暇によって受注数を減らしたとしても収入減を抑えることが可能になります。
また、アップした報酬分を活用し、外注することで業務量を減らすこともできます。
ただし、報酬単価を上げるためにはクライアントとの交渉が必要となります。
その上で、了承してもらうためにはクライアントと良好な関係を築くことができ、品質をはじめ納品物の実績を高めておくことも求められます。
信頼感を得るためにも、まずは日々の業務を誠実に進めていくことが重要です。
ストック型のビジネスモデルの検討
収入減を抑えるだけでなく、フリーランスとして安定した収益化につなげるためには、ストック型のビジネスモデルを検討することも効果的です。
ストック型ビジネスモデルとは、システムやサービスなどにおいて月額利用料や定額料金制によって収入を得るビジネスのことを指します。
このようなビジネスを展開できれば、停止や解約されない限り利益が積み重なるため、安定した収入を得ることが可能になります。
また、新規案件を定期的に受注する必要もないため、休暇が取りやすい利点もあります。
とはいえ、ストック型ビジネスを一から構築し、軌道に乗せるためにはコストや労力もかかるため、実施の際には長期的な視点で検討していく必要もあります。
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5.まとめ
個人事業主に該当するフリーランスは、会社員のような有給制度は存在しません。
ただ、有給でなくとも休暇は自由なタイミングで取得できます。
フリーランスは基本的に案件数に応じた収入となるため、休暇を取得することによって収入減につながる可能性も起こりえます。
特に長期休暇の取得には、受注した案件の進行状況なども影響してくるため、クライアントと調整しつつ、スケジュール管理を徹底しながら進める必要があります。
今回紹介した内容も参考に、フリーランスならではの有給を効率よく取得し、効果的なワークライフバランスを保っていきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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