「顧客重視の開発プロセスを構築したい」「デザイン案件での提案力を強化したい」とお悩みであれば、「デザイン思考」の仕組みや考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。
デザイン思考によって新たな視点や取り組み方を手に入れることで、顧客やユーザーの本質的なニーズを把握しやすくなり、共通認識が生まれ、効率的な開発体制の構築もしやすくなるでしょう。
本記事では、デザイン思考に興味をお持ちの方のために、デザイン思考に関する知識をご紹介するとともに、具体的なプロセス、そしてメリットやデメリットについてお話しします。
目次
1.デザイン思考とは何か
はじめに、デザイン思考に興味はあるものの、現時点ではよくわかっていない方のために、デザイン思考に関する基礎的な知識について解説します。
デザイン思考とは
デザイン思考とは、デザイナー目線の考え方であり、商品やサービスを実際に利用する「顧客:ユーザー」を基軸として課題や問題の発見と解決、もしくは潜在的なニーズを把握する手法を指します。いわゆる「ユーザーが本当に求めていたもの」を追求する考え方、その仕組みそのものです。
企業側の一方的なターゲット設定や、固定化されたペルソナにとらわれることなく、商品やサービスの品質や顧客満足度の向上に向けた取り組みができるようになるのです。
デザイン思考はデータ分析や論理的思考に必要な定量的なデータのみを扱うだけでなく、感覚や感情など定性的なデータを積極的に取り扱います。そのため、デザイン思考を通じて改善されたり、新たに開発されたりした商品やサービスは、ユーザーの日常や必要とされるシーンによりフィットします。
その結果、新規顧客の獲得はもちろん、ファンやリピーターの維持が期待できるようになります。
また、競合他社の商品やサービスとの差別化が明確になるため、他社の商品やサービスへの乗り換えを防ぐことにもつながるでしょう。
デザイン思考はビジネスで役立つの?
デザイン思考がビジネスで役立つかという問いに対しては、現代のビジネスにおいて非常に有効な考え方や仕組みであると言えるでしょう。特に現代では、顧客自身が必要な情報を取捨選択できる時代となり、商品やサービスに対する価値観も多種多様になりました。
オンラインショッピングが充実し、サブスクリプションといったオンラインサービスの選択肢も幅広く存在します。
そのため、商品やサービスを提供する企業側としても、競合他社と差別化を図り、自社の優位性を確立した上で、常に品質向上に努める必要性が高まっています。顧客はいつでも他の商品やサービスに乗り換える可能性があるため、既存の商品やサービスの単なる焼き増しでは、事業活動の維持が困難になっているのが現状です。
デザイン思考は、まずユーザーの深い理解を通じて既存の商品やサービスの品質向上を可能にします。さらに、その質の高い体験を軸としたマーケティング活動や顧客サポートは、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上に繋がり、結果として企業の持続的な事業活動に大きく貢献できる可能性を秘めているのです。
デザイン思考が意味ないと言われる理由
デザイン思考はビジネスで役立つ可能性を秘めているものの、情報収集をしていると「意味ない」という情報と結びつくことがあります。デザイン思考の具体的なデメリットや注意点については後の章で詳しく解説しますが、ネガティブな情報を鵜呑みにしないためにも、なぜ「意味ない」と言われるか理解しておく必要があるでしょう。
その理由の一つとして、「ユーザーの声に耳を傾けすぎるだけでは、必ずしも成功するわけではない」という意見が挙げられます。実際に、ユーザーの表面的な要望を鵜呑みにするだけでは、本質的な課題の発見と解決につながるとは限りません。
また、ユーザーの声の中には、建設的なフィードバックだけでなく、多様な意見や時には厳しい指摘も含まれるため、「単なるクレームや否定的な意見と、真のニーズとを区別しにくい」と考えられることもあるでしょう。
同様に、商品やサービスの提供に必要なコストと、ユーザーが考えるニーズが合致しない場合、事業の継続自体が困難になるという懸念も、デザイン思考を安易に「意味ない」と結論付けてしまう理由として推測できます。
2.デザイン思考の主なプロセスやフレームワーク
次にデザイン思考を具体的にどのように行うのか知りたい方のために、デザイン思考の主なプロセス、デザイン思考に関連するフレームワークについて解説します。
デザイン思考の主なプロセス
共感:Empathize
問題定義:Define
アイデア創出:Ideate
プロトタイプ:Prototype
テスト:Test
上記がデザイン思考における一般的なプロセスの流れです。
デザイン思考の「共感」のプロセスでは、商品やサービスに対する顧客を深く理解するために情報収集を行い、顧客が何を考えてるかを把握し、共感することから始めます。
次の「問題定義」のプロセスでは、カスタマーサービスなどに寄せられた顧客の声も参考にしながら、顧客の立場に立ってどのような課題や問題があるのかを精査する段階です。
より品質が向上する要素と改善すべき要素などを精査しながら、「アイデア創出」のプロセスに移り、アイデアに基づいて「プロトタイプ」を作成していくという流れになります。
「テスト」のプロセスでは、実際に市場で商品を販売したり、サービスの一部を顧客に解放したりするなど、フィードバックが得られる状況を準備し、反復的に改善を繰り返す段階です。
テスト終了後、サービスに対する市場の手応えやテスト結果を総合的に判断し、自社の主力商品や新しいサービスとして本格的に提供するかどうかを決定します。これらのデザイン思考のプロセスを経ていくことで、既存の商品やサービスから新たなビジネスチャンスの獲得が期待できるようになるのです。
ペルソナ
顧客情報の収集と分析
ユーザーセグメンテーション
代表的な顧客像の選定
ペルソナシートの作成
上記がペルソナを設定する際の大まかな流れです。
まず、アンケート調査や顧客情報に基づいて、定量的なデータを収集し、ターゲットユーザー層の属性、行動パターン、ニーズ、課題などを分析します。
次は分析結果をもとに、共通の特性を持つユーザーをいくつかのグループ(セグメント)に分類する段階を経て、各セグメントの中から、商品やサービスの主要なターゲットとなる、もしくは注目すべき代表的な顧客像を選定する段階に入ります。
選定した顧客像について氏名、年齢、性別、職業、家族構成、趣味、価値観、ITリテラシー、抱えている課題やニーズ、製品やサービスに期待することなどを、具体的なエピソードや写真なども交えながら詳細に記述した「ペルソナシート」を作成します。
ペルソナは、このように製品やサービスの典型的なユーザー像を、具体的な人物として詳細に設定するフレームワークであり、その他のデザイン思考に関係性の深いフレームワークの基軸となる考え方として役立つでしょう。
共感マップ
顧客調査の実施
ペルソナの設定
情報収集と整理
・「見ていること」
・「聞いていること」
顧客情報の収集と分析
ユーザーセグメンテーション
代表的な顧客像の選定
ペルソナシートの作成
上記がペルソナを設定する際の大まかな流れです。
まず、アンケート調査や顧客情報に基づいて、定量的なデータを収集し、ターゲットユーザー層の属性、行動パターン、ニーズ、課題などを分析します。
次は分析結果をもとに、共通の特性を持つユーザーをいくつかのグループ(セグメント)に
分類する段階を経て、各セグメントの中から、商品やサービスの主要なターゲットとなる、
もしくは注目すべき代表的な顧客像を選定する段階に入ります。
選定した顧客像について、氏名、年齢、性別、職業、家族構成、趣味、価値観、ITリテラ
シー、抱えている課題やニーズ、製品やサービスに期待することなどを、具体的なエピソー
ドや写真なども交えながら詳細に記述した「ペルソナシート」を作成します。
ペルソナは、このように製品やサービスの典型的なユーザー像を、具体的な人物として詳細
に設定するフレームワークであり、その他のデザイン思考に関係性の深いフレームワークの
基軸となる考え方として役立つでしょう。
共感マップ
顧客調査の実施
ペルソナの設定
情報収集と整理
・「見ていること」
・「聞いていること」
・「考えていること・感じていること」
・「言っていること・行っていること」
ペインとゲインの明確化
仮説の検証
上記が共感マップのフレームワークを用いたデザイン思考の考え方の一例です。
まずは顧客調査によって情報収集を行い、ペルソナを設定します。設定したペルソナに合わせてシナリオやストーリーを作り、顧客が実際に考えていることや行動について推測する流れです。推測した情報を整理し、分類しながら次は痛みや課題と言えるペイン、そして喜びは期待といったゲインに分けてさらに情報を明確化していきます。
次は明確化した情報をもとに、実際のユーザーにアンケートやユーザーインタビューなどを行い、仮説の検証を行う段階です。検証した結果によって商品やサービスに反映したり、企業や組織として具体的な行動に移していきます。
共感マップのフレームワークを利用することで、デザイン思考の「共感」のプロセスの情報
が収集され、顧客の感情に基づいた行動といった一連の流れが可視化され、定量的なデータでは把握しきれない心や感情の部分についても推測ができるようになるのです。
カスタマージャーニーマップ
ペルソナとゴールの設定
ジャーニーのステージ定義
感情の起伏と課題の可視化
・「考えていること・感じていること」
・「言っていること・行っていること」
ペインとゲインの明確化
仮説の検証
上記が共感マップのフレームワークを用いたデザイン思考の考え方の一例です。
まずは顧客調査によって情報収集を行い、ペルソナを設定します。設定したペルソナに合わせてシナリオやストーリーを作り、顧客が実際に考えていることや行動について推測する流れです。推測した情報を整理し、分類しながら次は痛みや課題と言えるペイン、そして喜びは期待といったゲインに分けてさらに情報を明確化していきます。
次は明確化した情報をもとに、実際のユーザーにアンケートやユーザーインタビューなどを行い、仮説の検証を行う段階です。検証した結果によって商品やサービスに反映したり、企業や組織として具体的な行動に移していきます。
共感マップのフレームワークを利用することで、デザイン思考の「共感」のプロセスの情報が収集され、顧客の感情に基づいた行動といった一連の流れが可視化され、定量的なデータでは把握しきれない心や感情の部分についても推測ができるようになるのです。
カスタマージャーニーマップ
ペルソナとゴールの設定
ジャーニーのステージ定義
感情の起伏と課題の可視化
タッチポイントの明確化
課題や問題の抽出
上記がカスタマージャーニーマップのフレームワークにおける主な流れです。
デザイン思考における「共感」や「問題定義」の段階に役立つフレームワークであり、前述した共感マップよりも時系列やタッチポイントに基づいた顧客の感情の変化及び具体的な行動が推測しやすくなります。
カスタマージャーニーマップでは、まずはペルソナとゴールを設定し、ゴールまでのステージ定義を行うことで、時系列とタッチポイントによる変化を把握し、認知拡大や興味関心も含めたマーケティングの効果も検証するのが大まかな流れです。
ペルソナに認知しなかった場合、認知はされたが興味関心が育たなかった場合など、購入や課金に至るまでにボトルネックとなる要因も把握しやすくなるため、商品やサービスの開発とともに、マーケティングの成功に向けた取り組みにも役立つフレームワークといえます。
ブレインストーミング
テーマと目的の明確化
参加者の選定と事前準備
ルールの確認(例)
・批判厳禁
・結論を出さない
・自由奔放な意見を尊重
・質より量を重視
・他者のアイデアに便乗
アイデアの発想と記録
アイデアの整理と発展
上記がブレインストーミングにおける大まかな流れやルールです。
ブレインストーミングはデザイン思考における「アイデア創出」で役立ちます。ブレインストーミングはデザイン思考における共感や問題定義の段階で得られた情報をもとに、具体的に何ができるのか、どのようなことをすべきかを基軸としてディスカッションしていくことが大切です。
ブレインストーミングの参加者としては、経営層や管理職だけではなく、開発部門や営業部門、もしくは各現場の担当者も含めて、幅広い層の人材を集めることが重要と言えます。ルールについてはあくまでも一例ですが、立場を超えて思ったことをはっきり言うことなども加えてみても良いでしょう。
ブレインストーミング自体が各担当者の思いをつなげる役割を持っていることから、チームでの協業もしやすくなり、部門や役職を超えた協力体制の確立にも役立ちます。ブレインストーミングによって得られた結果や情報をもとに、プロトタイプを作成する段階においても、効率的に進められるようになることが期待できるでしょう。
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3.デザイン思考のメリット
次にデザイン思考を実際に取り入れるメリットとして、具体的にどのような効果があるのかという視点で解説します。
顧客の潜在的な需要に気付ける
デザイン思考を取り入れる具体的なメリットとして、顧客自身が気づいていない課題や問題を可視化しやすくなる点、顧客の潜在的な需要に気付ける点が挙げられます。特に企業や組織側の人間として顧客像を想像する場合、商品やサービスの性質にどんなに詳しくても、顧客が本質的に何を求めているかを把握することは非常に難しいです。
また、現時点では商品やサービスに盛り込めていないような事柄であっても、需要に気がつくことができれば適用することが可能であり、品質の向上になる要素が存在する可能性もあります。
デザイン思考の共感のプロセスで顧客に寄り添うことで、顧客が何を求めているか、その上で何が提供できるかを試行錯誤できるようになり、本質的な意味で顧客に向き合うことができるようになるのです.
結果として顧客が抱える真の課題や、まだ満たされていない欲求を捉えることができるようになり、革新的な商品やサービスの開発、あるいは既存事業の新たな方向性を見出すための判断材料を得られるでしょう。
商品やサービスのブラッシュアップが実現
デザイン思考では、共感のプロセスで潜在的な需要が把握できるようになり、問題定義、アイデア創出、プロトタイプ作成とテストのプロセスを繰り返していきます。そのため、商品やサービスのブラッシュアップが実現しやすくなるのです。
商品やサービスの性質によっては、アップデートしたこと、品質向上に向けて取り組んだことが逆効果になる場合もありますが、共感や問題定義のプロセスを経ているため、顧客目線のブラッシュアップが実現しやすいのも大きなメリットと言えるでしょう。
また、テストの段階で顧客からのフィードバックを得ながら進めていくという特徴があるため、ビジネスとしての成功をより確実なものにしたい場合にも向いています。同時に、デザイン思考に関係性の深いフレームワークを利用し、ペルソナや前提条件など、プロセスごとの設定を柔軟に見直していくことでより精度を高めることも期待できるでしょう。
そのため、既存の商品やサービスで売り上げが頭打ちになっていたり、新規顧客獲得どころか顧客離れを起こしている状況の改善も実現しやすくなります。
チーム内の共通認識を醸成しやすい
デザイン思考のメリットとして、チーム内の共通認識を醸成しやすいこと、もしくはプロジェクトメンバーの意思疎通がしやすくなることが挙げられます。デザイン思考を適用する範囲を明確にしていくことで、デザイン思考に基づいて1つの目標に向かって協力しやすくなるということです。
チームやプロジェクトの大きさにかかわらず、共通認識を得られることは、効率化が進むだけでなく、協力的で過ごしやすい職場の雰囲気の構築にもつながっていくでしょう。
特に企業や組織の体制によっては、それぞれの担当者が自分の業務に集中すれば、結果が伴うような仕組みになっています。部門や部署、あるいは役職によっては、顧客の感覚や気持ちが直接的には自身の業務と関係ないと捉えられがちになることもあり、結果として企業全体で顧客に寄り添う意識が希薄になってしまう場合もあるのです。
どんな立場であったとしても、同じ会社の仲間として積極的に協力するという共通の認識によって、事業活動全体の品質が向上するとともに、顧客満足度や従業員満足度の向上も期待できるようになるでしょう。
無駄な開発工程が削減できる
デザイン思考の導入によって、顧客の需要に応じた要素に注力できるようになり、無駄な開発工程が削減できるのもメリットです。特に顧客の需要が分かっておらず、商品のブラッシュアップをしたつもりが需要に応えられずに売れなかったり、不要な機能を盛り込んだ大幅なアップデートを行ってしまったりすることを避けられます。
また、プロトタイプとテストを繰り返すという小規模な改善が前提となっているため、改善自体の時間的なコストが短くなり、同時に確実性が高い状態で商品やサービスを市場に提供できることから、売り上げに到達するまでの時間が短縮できるのもメリットです。
ターゲットやペルソナの気持ちに寄り添った改善を繰り返すこと自体が、新規顧客獲得につながり、既存顧客を失うことなく、持続的な売り上げを確保しやすくなるのも魅力と言えるでしょう。
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4.デザイン思考のデメリット
最後にデザイン思考を導入する際のデメリットや注意点について、具体的にどのようなものがあるのか解説します。
0→1の創出には不向き
デザイン思考のデメリットとして、既存の商品やサービスが全くない状態、0→1の創出には不向きである点が挙げられます。もちろん、ナレッジやノウハウに基づいて新商品や新サービスの開発を行うことはできますが、「顧客の定性的なデータ」が存在しない場合は適用しにくい側面があるということです。
特に感覚や感情などの定性的なデータは、商品やサービスが存在する状態でフィードバックが得られるという前提があります。そのため、単にペルソナの設定を行い、想像のみでカスタマージャーニーマップを作成するなど、商品やサービスを提供する側の思惑だけで進めていくのはおすすめできません。
デザイン思考自体が様々な推測や憶測も含めて進めていく考え方と流れではあるものの、一定量のデータに基づいて進めるのが前提であると理解し、一方的な決めつけのみ、理想の顧客像のみでは進められないと覚えておいてください。
感覚や感情など定性的で難しい
デザイン思考で取り扱うデータは、数値として判断しやすい定量データもあるものの、感覚や感情など定性的で難しいというデメリットがあります。実際にある顧客ではポジティブに受け止められており、他の顧客ではネガティブに受け止められている部分があった場合、どちらを優先すべきかわからないということがありえるのです。
また、アンケートやインタビューなどにおいて、受け止め方次第で商品やサービスにどう適用していくかが異なってしまうこともあります。同じく、改善すべき要素ではないのに、顧客の声が多かったからといって改善してみたら、売上にマイナスの影響が生じたということも想像に難くありません。
デザイン思考は感覚や感情など顧客にとって大切な「顧客体験」に関する要素を言語化することを目標としつつも、言葉通りの分析ではうまくいかないということも覚えておくべきです。
コストに見合わない可能性がある
デザイン思考のデメリットとして、分析や改善に要する時間や労力といったコストが、必ずしも成果に見合うとは限らない点が挙げられます。デザイン思考のプロセス自体は建設的に見えるものの、各プロセスで十分な検討を重ねるためには相応の負担が生じ、結果として売上という具体的な成果に結びつくまでの時間が長引いてしまうことがあります。
試行錯誤が長引きすぎたり、適切な方向に進まなかったりする状態が続いてしまえば、商品のプロトタイプ作成やテストといった検証段階にスムーズに移行できません。また、プロトタイプやテストの段階においても、実際に市場で受け入れられるか、あるいは収益に繋がるか不確実な状態で投資を続ける必要があります。
「顧客の声を大事にする」という前向きな姿勢も、全ての顧客が望んでいる本質的な需要とズレていた場合、品質向上に繋がらず、投下したコストが無駄になったり、最悪の場合は既存顧客を失ったりするリスクも考慮しなければなりません。
変化への柔軟さが顧客にも求められる
デザイン思考を企業や組織として導入し、効果的に活用していくためには、組織全体として「変化への柔軟さ」が求められます。そのため企業や業界の体質によっては、無理に進めること自体が無駄になってしまうというデメリットが生じます。
また、変化への柔軟さが求められるのは従業員だけでなく、間接的に顧客にも求められることから、不要な負担を生じさせてしまうということも忘れてはなりません。
顧客の需要に応えるために高品質ではあるものの金額も高くなってしまったり、必要とされた機能を追加したつもりが課金額も高くなってしまったりすれば、求めていない顧客は離れてしまうことも考えられるでしょう。また、商品のパッケージやアプリケーションのメニューの配置など、良かれと思って変更したことが、一部の顧客にそぐわないことも考えられます。
デザイン思考による改善を行う際の大きなデメリットでもあるため、改善したつもりが改悪にならないようにプロトタイプやテストの段階で十分に精査する必要があるでしょう。
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5.まとめ
本記事では、デザイン思考に興味をお持ちの方のために、デザイン思考が具体的にどのようなシーンに向いているのか、メリットやデメリットを紹介しながら、適切に活用していくための考え方についてお話ししてきました。
デザイン思考は企業や組織における改善や改革に役立つ考え方であり、運用次第で商品やサービスの品質改善、顧客満足度や従業員満足度の向上に役立つことが期待できます。ただしデザイン思考はあくまでも考え方の一つであることを忘れず、その他の改善するためのフレームワークや考え方にも視野を広げて、多角的な分析と改善を実現できる環境を整えていくことが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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