開発の現場で比較的長い間存在する考え方として、「ペアプログラミング」があります。ペアプログラミングは一般的にはあまり脚光を浴びることのない言葉でしたが、アジャイル開発の手法がとられるようになって採用されるケースも多くなりました。
しかしあまり普段耳にしない言葉であるために、「どんな特徴があるのだろう」と思っているエンジニアの方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、ペアプログラミングの概要ややり方、メリット・デメリットなどについて解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読いただきたいです。
コードレビューと実装力を同時に高めたいプログラミング初学者
チーム開発におけるコミュニケーションスキルを鍛えたい若手エンジニア
効率的なナレッジ共有を目指すスタートアップの技術リーダー
目次
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1.ペアプログラミングとは【アジャイル開発で多用】
ペアプログラミングとは、1つのプログラムを2人のプログラマーがペアになって共同開発する手法です。
ペアプログラミングではプログラマーが1台のパソコンを共有して進めますが、2人で同時に同じ開発作業をするわけではありません。「ナビゲーター」と「ドライバー」の2つに役割を分担し、ドライバーが主にパソコンを使用して業務を進めます。ナビゲーターとドライバーの役割やペアは最後まで同じである訳ではなく、開発の途中で交代するケースも多々あります。
ペアプログラミングは、「アジャイル開発」において採用されるケースが多いと言えます。アジャイル開発とは、短い開発サイクルを反復させることで、クライアントの要望へ柔軟に対応しながら進めていく開発手法です。
アジャイル開発ではプログラムを効率的に開発していく必要があり、作業効率を挙げながらコードの質も確保できるペアプログラミングとの相性が良いと言えます。ペアプログラミングではペアがお互いに意見し合いやすく、アジャイル開発に求められる効率性を高めやすいでしょう。
2.ペアプログラミングのやり方
この章では、ペアプログラミングのやり方を以下2つの役割別に解説します。
ナビゲーターの場合
ドライバーの場合
ただしナビゲーターとドライバーの役割は、常に固定されている訳ではありません。一定のスパンで役割の交替やプログラマーの入替を行った方が良いとされる点は、理解しておくと良いでしょう。
ナビゲーターの場合
ナビゲーターを担当するプログラマーは、ドライバーにプログラミングの指示を出し成果物を評価します。
名前の通りプログラム開発をナビゲートする立場であり、開発の方向性を決めることになるでしょう。基本的にナビゲーターはパソコンを使用せず、指示や評価を口頭でドライバーに伝えます。実際の開発を担うドライバーが混乱したり失敗したりしないように、指示や評価の内容はしっかりと考えることが大切です。
ドライバーの場合
ドライバーを担当するプログラマーは、ナビゲーターの指示に従って実際の開発を進めていきます。
ナビゲーターの指示に従うことが基本ではありますが、ドライバーの方から意見や考えを提案して話し合うことも大切です。ナビゲーターとドライバーがお互いに意見を出し合うことで、プログラミングの質が高まっていきます。
ドライバーは指示を受ける役割ではありますが、受け身の姿勢で仕事をするのではなく能動的に取り組む姿勢が大切でしょう。
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3.ペアプログラミングのメリット
この章では、ペアプログラミングを導入するメリットを以下の5つに整理して解説します。
コードの品質が上がる
作業効率が上がる
チームワークが向上する
学習・教育の効率が上がる
経験することでエンジニアとしての市場価値が高まる
コードの品質が上がる
ペアプログラミングを導入することで、コードの品質向上が期待できます。
ペアプログラミングでは二人で作業を進めることから、プログラムを相互確認してミスを防止しやすいためです。もしミスが発覚しても早期に気づくことができれば、修正にかかる手間や時間も最小限に抑えられます。
また、ペアがお互いに苦手な作業をカバーし合うことで、1人では実現できないプログラムの品質を追求できるでしょう。
作業効率が上がる
ペアプログラミングを導入することで、作業効率の向上も期待できます。
一人で作業をしていると、問題やトラブルが発生した際に「なぜうまくいかないのか」の部分がなかなか判明しないケースは多々あります。しかしペアと考え方を共有しながら進めることで、バグの発生を未然に抑えることが可能です。バグが減ればその分修正の工数が減り、限られた時間でより多くの成果を出せるでしょう。
また2人組で作業をすることで、どちらか一方が休んだとしてももう一方ができる範囲で作業をしてプロジェクトを前に進められます。
チームワークが向上する
ペアプログラミングを行うメリットとしては、チームワークの向上も挙げられます。
ペアで作業を行うことで、メンバー同士のコミュニケーションを自然に促進可能です。意見交換や教え合い、話し合いを日常的に行う雰囲気を作り出すことで、メンバー間の連携が強まるでしょう。
1人で黙々と仕事をしていると、どうしても孤独を感じてしまいやすいものです。しかしペアと協力し支え合って仕事を続けることで、仕事へのモチベーションアップも期待できるでしょう。
学習・教育の効率が上がる
学習・教育の効率が上がることも、ペアプログラミングを行う大きなメリットの1つです。
プログラマーが一人で作業をしていると、分からないことに直面した際どうしても考えたり調べたりする時間が多くなってしまいます。しかしペアがいれば、分からないことや知らないこともその場ですぐに教えてもらえる可能性があります。もちろんペアが何でも知っているわけではありませんが、お互いの知恵を借り合える点は学習効率の点から非常に魅力的です。
特に、新人教育の場面でペアプログラミングは効果を発揮します。経験豊富なプログラマーと新人をペアにすることで、困ったときにいつでも相談・質問をできる体制を構築できるためです。分からないことをその場ですぐに解決することで開発に集中でき、効率的に成長していけるでしょう。
経験することでエンジニアとしての市場価値が高まる
ペアプログラミングを経験することで、エンジニアとしての市場価値向上も期待できます。
ペアプログラミングが多くされやすいアジャイル開発が、近年多くのプロジェクトにおいて採用されるようになっているためです。ペアプログラミング自体は決して難しい開発手法ではありませんが、実際に経験があるかどうかは求職や案件獲得において一定の違いになると考えられます。
今後のキャリアの幅を広げるために、ペアプログラミングを経験しておくのも1つの方法でしょう。
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4.ペアプログラミングのデメリット
ペアプログラミングにはいくつものメリットがありますが、一方で注意しておきたいポイントもあります。
そこで本章では、ペアプログラミングのデメリットを以下の4点に整理して解説します。
お互いが経験者でないと効果が出にくい
ペアの関係が作業効率に影響する
コストが高まる傾向がある
リモートワークにはあまり適さない
お互いが経験者でないと効果が出にくい
ペアプログラミングのデメリットとしてはまず、ペア同士がお互い経験者でないと効果を期待しにくい点が挙げられます。
どちらか一方に知識やスキルが足りていないと、もう一方の意見や考えを理解することに時間がかかってしまうためです。また2人とも初心者である場合はそもそもアドバイスできる担当者がおらず、誤った方向性のまま作業が進んでしまう恐れもあります。
新人教育にペアプログラミングを活用することも1つの方法です。しかし作業のスピード感や完成度を重視するなら一定のスキルを持った経験者同士でペアプログラミングを行った方が良いでしょう。
ペアの関係が作業効率に影響する
ペアプログラミングを行うにあたっては、ペアになった2人の人間関係が作業効率に影響してしまう点も把握しておくべきです。
2人が協力し支えあえている場合は、お互いの欠点や苦手を補完できて作業効率に好影響が期待できるでしょう。しかし2人の考え方に違いがあり意見が対立してしまうケースでは、作業効率が下がってしまう恐れもあります。
特にお互いが経験者で仕事の進め方にこだわりを持っている場合、意見の対立には気を付けなくてはいけません。意見の妥協点を見つけ出し、お互いの仕事を尊重しながら進められるようでなければ、ペアプログラミングが失敗に終わってしまう恐れもあるでしょう。
意見の対立を避けるために、あらかじめコーディングに関するルールを決めておく方法も考えられます。
コストが高まる傾向がある
ペアプログラミングを実施するうえでは、コストが高まる可能性についても考慮しなくてはいけません。
ペアプログラミングでは、1つのタスクに対して2人の人員を割くことになるためです。作業効率が上がってコードの品質が高まれば、コスト増も大した問題にならない可能性があります。しかし単純なタスクをペアプログラミングで進めると、プロジェクト全体の生産性が下がってしまう恐れがあるでしょう。
また、ペアで仕事を進めるためにはお互いのスケジュールを一定程度合わせていかなくてはいけません。他のプロジェクトにも参画している場合、スケジュールの調整が難しくなる恐れもあります。スケジュール管理に大きなコストがかかってしまうようでは、ペアプログラミングの効果が半減してしまいます。
リモートワークにはあまり適さない
ペアプログラミングは、リモートワークとの相性があまり良くないと言われることがあります。
ペアプログラミングの効果は、担当者同士が直接コミュニケーションを取ることで最大限発揮されるためです。リモートを基本としているプロジェクトにおいては、ペアプログラミングは採用しにくいかもしれません。
しかし近年ではWeb会議システムや連絡ツール、スケジュール・タスク管理ツールなどが充実してきており、遠隔からでもコミュニケーションを取りやすい環境になってきてはいます。コミュニケーションツールを活用することで、リモートでも問題なくペアプログラミングを導入できる可能性はあるでしょう。
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5.ペアプログラミングはなぜ「嫌い」と言われる?
ペアプログラミングについて情報収集をしていて、「嫌い」「嫌だ」との声が気になった方もいるのではないでしょうか。
ペアプログラミングが嫌いだと言われてしまう理由は、おおむね以下の通りだと考えられるでしょう。
1つのタスクに対する効率が悪い
相手との相性が悪いと業務に影響が出る
相手が初心者だと自分にメリットが薄い
マイペースに業務を進められない
ペアプログラミングは作業効率やコードの質を高められる手法ではありますが、1つのタスクに対して2人のプログラマーを割くことになります。チェックツールが発達している現在においては、ペアプログラミングの意義があまり大きくないと考える方もいるでしょう。
またペアとの相性や実力に業務が影響を受けてしまう手法ではあり、マイペースに作業を進められないことからストレスを感じる方も一定数いると考えられます。
ペアプログラミングの導入にあたっては、プロジェクト全体に好影響を及ぼせるよう事前の準備や確認が重要だと言えるでしょう。
6.ペアプログラミングではコミュニケーションが大切
ペアプログラミングの効果を最大限発揮させるためには、ペアになる2人のコミュニケーションを大切にすることが求められます。
作業中に分からないことが出てきた際に、ドライバーがナビゲーターにすぐ相談・質問をできないとタスクが進行しません。ナビゲーターとドライバーの意見交換が活発になるように、工夫を凝らすことが大切です。
たとえば、ペア同士がお互いの苦手分野や得意分野をしっかりと共有しておくと、お互いをサポートしあえて作業効率が上がります。またドライバーが初心者の場合は、ナビゲーター側が相談しやすい雰囲気を作ることが大切です。
さらにペアプログラミングを導入する企業の経営者や総務担当者にとっては、コミュニケーションツールを充実させることが大切でしょう。Web会議システムやチャットツールなどを充実させることで、リモートでもコミュニケーションを取りやすくなります。
7.まとめ
ペアプログラミングとは、2人でペアを組んでプログラミングをする開発手法です。ペアプログラミングを導入することで作業効率が上がり、コードの質も高まることが期待できます。お互いに意見交換をすることで学習効率が上がり、経験者と初心者をペアにすることで初心者の成長にも役立てることが可能です。
1つのタスクを2人で行うためコストが割高になりやすいとは言われますが、ペアのコミュニケーションを円滑にすることでペアプログラミングの効果を最大化できるでしょう。作業効率化や若手プログラマーの教育などに、ペアプログラミングの導入をご検討してみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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