近年注目が高まっている「ビッグデータ」を扱う専門職として、「データサイエンティスト」に関心を持っている方もいるのではないでしょうか。そしてデータサイエンティストについて調べていく中で、年収について気になる方も多いはずです。そのため本記事では、データサイエンティストの年収や仕事内容、将来性などについて幅広く解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読していただきたいです。
・データサイエンティストとして現在従事している方
・データサイエンティストを今後検討している方/興味関心がある方
・データサイエンティストの年収について知りたい方
・データサイエンティストの将来性について知りたい方
目次
1.データサイエンティストとは
データサイエンティストとは、データの分析を通じてビジネスに役立つ情報の提供を行う専門職のことです。
企業が必要とするデータを収集し、内容を分析することで経営に役立つ情報や改善点を見つけ出します。たとえば世の中のトレンドや自社製品の評価を分析することで、より効果的な施策の考案につなげることが可能です。
企業活動においてビッグデータの活用が重要性を増している現在では、データサイエンティストの重要性も高まっていると考えられます。ただし重要性が高い職業であるため、データサイエンティストとして活躍するには統計学、プログラミング、ビジネス分析など幅広い分野においてスキルや知識が求められると言えるでしょう。
一方で、データサイエンティストの仕事は企業の重要な意思決定に関わるため、その責任は非常に大きく、統計学やプログラミング、ビジネス分析など幅広い分野の専門知識が求められます。
そのため、高度な数学的思考が苦手な人や、新技術の習得に抵抗がある人、大きな責任にストレスを感じる人には「つらい」「やめたい」と考えるかもしれません。
2.データサイエンティストの年収
データサイエンティストの年収は、厚生労働省のデータによると554.3万円が平均です。
(出典:厚生労働省職業情報提供サイト「データサイエンティスト」)
以下で、データサイエンティストの年収を世代別で全体の平均年収と比較します。
年齢 | データサイエンティストの 平均年収 | 全体の 平均年収 |
---|---|---|
20〜24歳 | 339万円 | 273万円 |
25歳〜29歳 | 413万円 | 389万円 |
30歳〜34歳 | 499万円 | 425万円 |
35歳~39歳 | 585万円 | 462万円 |
40歳〜44歳 | 598万円 | 491万円 |
45歳~49歳 | 661万円 | 521万円 |
50歳〜54歳 | 689万円 | 537万円 |
55歳~59歳 | 686万円 | 546万円 |
60歳〜64歳 | 528万円 | 441万円 |
出典:厚生労働省職業情報提供サイトjobtag「データサイエンティスト」・厚生労働省「令和4年分民間給与実態統計調査」
上記の通り、データサイエンティストの年収は50〜54歳のときに689万円でピークになります。いずれの年代でも全体平均よりも高額になっており、データサイエンティストは十分に年収が高い職業だといえるでしょう。
実際にフリーランスボードで「データサイエンティスト」の求人・案件一覧を確認しても、月額単価より算出した想定年収981万円です。。中には想定年収1,320万円や1440万円、そして1,680万円の案件もあり、データサイエンティストとしてのスキルを高めていくことで十分に高収入を得られる職業だとわかります。(参考:フリーランスボード「データサイエンティスト」)
3.データサイエンティストの仕事内容
この章では、データサイエンティストの仕事内容についてお伝えします。データサイエンティストの仕事内容は、主に以下の通りです。
<データサイエンティストの主な仕事内容>
データ収集~分析
市場分析
データの活用方法の考案
データ収集~分析
データサイエンティストの仕事内容としてまず挙げられるのが、データの収集・分析です。
ビジネスの課題やテーマに応じて情報を収集し、分析を行います。目的に応じて収集したデータの中から不要なデータを削除し、必要なデータのみをデータベースに保存します。また、ケースによってはすでにデータを持っているケースもあります。既にデータを持っていても、ビジネス課題の解決に向けてどの情報が必要なのかわからない場合は少なくありません。
データの収集方法は、以下の通り多種多様です。
<データ収集方法の例>
Webサイトのクローリング
他社からの購入
アンケート
調査会社への依頼
既に持っているデータの中から必要な情報を抽出するために、AIをはじめとする統計技法やツールを使用することもあります。
市場分析
データサイエンティストの仕事内容として、市場分析を行うこともあります。市場分析とは、特定の業界に関して競合企業の情報や顧客ニーズなどを調べる業務です。コンサルティングやマーケティングを行うプロジェクトにおいては、市場調査を行うことが多々あるといえます。
<市場分析において調査することの例>
市場規模
市場成長率
競合企業の情報
主な顧客の傾向やニーズ
データの活用方法の考案
データは分析して終わりではなく、分析結果をもとにして活用法を考案することもデータサイエンティストの大切な仕事です。分析した結果に基づく考察を行い、経営層や依頼者から求められる形式でレポートを作成します。レポートは一般的に見やすいことが要求されることから、視覚的に理解しやすいようにグラフを作成することも多々あります。
経営層やクライアントが求めるレポートを作成するには、その業界に関する深い理解が必要です。またケースによっては、ビジネスにおける改善点についてデータをもとに考え出すことも求められます。ビジネスそのものに対する理解も一定必要であることから、単純なエンジニアではない幅広い知識が求められる仕事だと言えるでしょう。
4.データサイエンティストと類似専門職との違い
この章では、データサイエンティストと類似専門職との違いについて整理します。今回データサイエンティストとの違いを整理するのは、以下の3つの専門職です。
<データサイエンティストと間違われやすい専門職>
データアナリスト
データエンジニア
AIエンジニア
データアナリストとの違い
データアナリストとは、統計学を駆使してデータ分析やデータの可視化を行う専門職です。ビジネスの目的達成に必要なデータを収集し、その活用法を経営層やクライアントに提案することを主な仕事としています。データアナリストが扱うのは構造化データが中心であり、統計学の知識を活用して経営側が理解しやすい形式に分析・整理します。
データアナリストもデータサイエンティストもともにデータ分析を行う専門職ですが、データサイエンティストの方がより業務内容の専門性が高いと言えるでしょう。データを分析して視覚的にわかりやすくするだけでなく、予測モデルの構築などもデータサイエンティストは行います。
簡単なイメージとしては、データアナリストがややビジネスサイド寄りな仕事をする一方で、データサイエンティストはよりシステムやアルゴリズム寄りの仕事をしていると言えるでしょう。
データエンジニアとの違い
データエンジニアは、ビジネスで使うためのデータの整理や管理、分析基盤の設計などを行う専門職です。データはただ持っているだけではビジネスに活用できず、必要なデータを利用できる形に加工し、整理しておく必要があります。近年どの業界でも重要なビッグデータを利用するにあたっては、データエンジニアは重要な職種であると言えるでしょう。
データサイエンティストもデータエンジニアも、データの分析に携わる点では共通しています。しかしデータエンジニアは、データの収集や前処理などの作業を主に行う専門職だと言えるでしょう。データサイエンティストが速やかにデータの分析を行うために、あらかじめ準備や処理をしておくのがデータエンジニアの仕事のイメージです。
AIエンジニアとの違い
AIエンジニアとは、人工知能(AI)の開発や実装に携わる専門職です。AI技術を活用して、データの解析や予測モデルの構築などを行います。AI技術の1つである機械学習において、データ収集やデータの前処理、パターンの分析などを行うこともあります。
AIエンジニアとデータサイエンティストは、ともに業務でAIを活用する機会があります。しかしデータサイエンティストの場合はあくまでもAIをツールの1つとして利用する点が、AIエンジニアとは異なると言えるでしょう。AIエンジニアのように、データサイエンティストがAIに関する発明や開発を行うことは通常ありません。
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5.データサイエンティストに求められるスキル・知識
この章では、データサイエンティストに求められるスキルや知識についてお伝えします。データサイエンティストに求められるスキルや知識は、主に以下の通りです。
<データサイエンティストに求められる主なスキル・知識>
プログラミングスキル
数学や統計に関する知識
データベース関連の知識
プログラミングスキル
データサイエンティストに求められるスキル・知識としてまず挙げられるのが、プログラミングスキルです。
データ分析のための機械学習を行ううえでは、PythonやR言語などのプログラミング言語への理解が欠かせません。Pythonは、データ収集や処理の段階で主に使われるプログラミング言語です。一方のR言語は、統計処理を行う上で非常に重要な言語だと言えます。ライブラリやパッケージも合わせて、PythonやR言語を学ぶことが重要です。
プログラミングスキルを有していないと職業に就けないわけではありませんが、データサイエンティストが実際にプログラムを書くケースもあります。そのため、プログラミングスキルを習得しておくことで仕事の幅が広がるでしょう。
数学や統計に関する知識
数学や統計に関する知識も、データサイエンティストには大切です。
データサイエンティストは、毎日の業務で大量のデータを分析します。数学や統計の知識がなければ、データサイエンティストの仕事は務まらないと考えられるでしょう。実際にデータサイエンティストを目指す場合、初期段階から数学や統計の知識を学ぶ必要があります。
具体的な分野としては、微分・積分や線形代数、そしてもちろん統計などが挙げられます。少なくとも高校卒業程度の数学を身につけてから、データサイエンティストになるための勉強をする必要があるでしょう。大学で理工学部で学んだ人であれば素養は十分にあると言えますが、現在ではオンライン教材も豊富にあることから独学でも十分に習得可能です。
データベース関連の知識
データサイエンティストに必要なスキル・知識としては、データベース関連の知識も欠かせません。データサイエンティストが日々の業務で扱うデータは、すべてデータベースに保存することになるためです。データベースを扱えない場合、データサイエンティストの仕事は困難です。
現在では、Oracle Databaseなどリレーショナルデータベースマネジメントシステム(RDBMS)を扱うことが一般的です。さらにNoSQLに関する知識もあると、膨大かつ非構造化データを扱ううえでは有利です。
6.データサイエンティストが注目される理由
データサイエンティストは、現在多くの注目を浴びている専門職の1つです。データサイエンティストが注目を集めている理由としては、以下が考えられます。
<データサイエンティストが注目を集めている主な理由>
AI・ビッグデータ活用の需要が高まっている
ビジネスへの影響度が大きい
AIやビッグデータの活用に対する需要が非常に高まっている現状では、データサイエンティストの仕事は非常に重要だといえます。AIやビッグデータの活用には、データの分析が不可欠であるためです。また、データの活用は企業の戦略に対して直接的に影響を与えることが多々あり、データサイエンティストの仕事もそれだけ重要性が高いと言えます。
7.データサイエンティストになるには?
データサイエンティストになるためには、以下の方法が考えられます。
<データサイエンティストになるための一般的な方法>
大学で統計学や数学を学ぶ
社会人向け大学院で学ぶ
PythonやR言語のエンジニアから転職する
ITコンサルファームから転職する
独学で学ぶ
データサイエンティストになるためには専門的な学習が必要であり、本格的に学ぶなら大学や大学院レベルの学習が必要です。
ただし経済的にも時間的にも大学や大学院に通うことが難しい場合は、他の専門職にて経験を積んで転職することも考えられます。PythonやR言語を扱うエンジニアとしての経験やITコンサルのデータサイエンス部門で経験を積むことで、データサイエンティストに転職するための基盤が作り上げられるでしょう。
また、近年ではオンラインで学ぶ方法も充実していることから、独学でデータサイエンティストを目指すことも決して不可能ではありません。入門教材から少しずつ勉強を重ね、データサイエンティストに求められるレベルのスキルや知識を身につけましょう。
8.データサイエンティストとして年収をアップさせるための方法
この章では、データサイエンティストとして年収をアップさせるための方法を以下の3つに分けて紹介します。
<データサイエンティストが年収アップを狙うための主な方法>
大企業や外資系企業に転職する
昇進してマネジメント職を目指す
独立する
大企業や外資系企業に転職する
データサイエンティストとして年収アップを狙うための方法としてはまず、大企業や外資系企業への転職が考えられます。
大企業や外資系企業は、年収が高い傾向があるためです。大企業の場合は、事業が安定していることから高収入を安定して受けとることが期待できます。一方の外資系企業は実力主義の給与体系となっていることが多く、スキルや知識さえ身に着けていけが年収も上げていくことが期待できるでしょう。
ただし、転職するためには自分の市場価値を高めておくことが不可欠です。グローバルに働くことも視野に入れて、英語を学んでおくことも重要だと言えます。
昇進してマネジメント職を目指す
昇進してマネジメント職を目指すことも、データサイエンティストが年収を増やすための選択肢の1つです。マネジメント職は、プロジェクトを成功させるためにチーム編成からスケジュール・予算の管理、チームメンバーのマネジメントまで幅広い業務をこなします。やるべき業務量が多く責任が大きいことから、一般的なチームメンバーと比較して年収が高い傾向があります。
自分が理想とする働き方にマッチするのか考える必要はありますが、マネジメント職は収入が増えるだけでなくやりがいも大きい仕事だと言えるでしょう。
独立する
データサイエンティストのキャリアパスとしては、独立して自分で事業をすることも考えられます。
報酬はすべて自分のものになることから、実力次第では収入を大きく増やすことも可能です。ただし、独立すれば毎月の収入を確実にもらえるわけではなくなるため、生活が安定しないことも覚悟しなくてはいけません。自分で営業や経理などの業務もこなさなくてはならないため、チャンスがある反面苦労も大きいと考えられます。近年では業務の一部をアウトソーシングできるサービスも数多く登場していることから、上手に活用して効率的に働くことも大切でしょう。
9.データサイエンティストの今後・将来性は?
データサイエンティストは、非常に将来性が高い職種の1つだと言えます。データサイエンティストの将来性が高いと判断できるのは、主に以下の理由からです。
<データサイエンティストの将来性が高いと言える主な理由>
AIやビッグデータ活用の重要性が高まっている
企業のDXへの取り組みが盛んになっている
データサイエンス教育が進展している
データサイエンティストの今後について考えるうえでは、やはりAIやビッグデータの活用について考えることが大切でしょう。AIやビッグデータの活用が今後さらに拡大すると考えられ、データサイエンティストの仕事の間口も広がっていくと想定されます。
近年ではDX推進を重視している企業も多数あり、今後データサイエンティストの需要が高まっていくと考えることが自然でしょう。今後は義務教育の段階からデータサイエンスに関する学習を行うように変化していくとされていることからも、データサイエンティストは十分に将来性が高い職種だと考えられます。
10.データサイエンティストとして活躍するために有効な資格
ここでは、データサイエンティストとして活躍するために有効な資格を以下の通り4つ紹介します。
<データサイエンティストにおすすめの資格>
データサイエンティスト検定リテラシーレベル
G検定・E検定
統計検定
Python3エンジニア認定基礎試験
データサイエンティスト検定リテラシーレベル
データサイエンティスト検定リテラシーレベルは、データサイエンスに関する基本知識やスキルを問う検定試験です。2021年に実施が開始された新しい資格試験であり、データ加工や機械学習、データ分析など、データサイエンティストに求められる知識を幅広く学ぶ機会になります。同検定試験では、データサイエンティストのレベルを以下の4段階に分けています。
<スキルレベルの段階>
シニアデータサイエンティスト
フルデータサイエンティスト
アソシエートデータサイエンティスト
アシスタントデータサイエンティスト
データサイエンティストになるための勉強を始めたばかりであれば、アシスタントデータサイエンティストの合格を目指すと良いでしょう。
G検定・E検定
G検定・E検定は、AIの基礎や機械学習、ディープラーニングに関する専門知識を問う資格試験です。G検定は、事業に活用できるレベルのディープラーニングの基礎知識を学べる資格試験です。一方のE検定では、ディープラーニングの理論を理解し、実装までできる高いレベルの知識が問われます。データサイエンティストとしては最終的にE検定に合格したいところですが、勉強を開始するにあたってはG検定の取得からまず目指すと良いでしょう。
統計検定
統計検定は、統計学のスキルや知識を問う検定試験です。統計に関する知識は、データサイエンティストとして働くうえでは欠かせません。レベル別にいくつもの試験が用意されているので、自分の学習レベルに合わせて適切な試験を選択すると良いでしょう。データサイエンティストに必要なスキルを証明するためには、データサイエンス基礎と発展、エキスパートの3レベルの合格が基本です。
Python3エンジニア認定基礎試験
Python3エンジニア認定基礎試験は、Pythonの基本的なスキルを証明できる資格試験です。データサイエンティストの業務における機械学習やデータ解析には、Pythonの知識が不可欠だと言えます。データサイエンティストとしては、基礎試験の突破を目指すと良いでしょう。
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10.まとめ
データサイエンティストは、データの収集や分析、分析した結果を元にしたビジネスへの提案などを行う専門職です。近年のAIやビッグデータの活用に対する需要の高まりや企業のDX推進などにより、データサイエンティストの市場価値は高まってきているといえます。
その分年収も高い職種であり、実力次第では1,000万円以上の年収も十分に狙うことが可能です。
データサイエンティストにはさまざまなキャリアパスがあり、自分の理想とする働き方に合わせて未来を描ける点も魅力的だと言えるでしょう。データサイエンティストとしてのキャリアに興味がある方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。