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個人事業主の登記について メリットや手続き、登記に関する疑問点を解説!

公開日:2024/09/04最終更新日:2024/09/04

個人事業主として事業をスタートさせる際には、法人登記は必要ないものの、手続きについて不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。一般的には、個人が事業を始めるためには法人登記のような複雑な手続きは不要ですが、一部の業種や地域によっては特定の登録が必要な場合があります。


この記事では、個人事業主として登記を行う際に必要な手続きや提出書類について詳しく解説していきます。また、個人事業主が商号登記を行うことで得られるメリットやデメリットについても掘り下げ、個人事業主としてのスタートにおいて考慮すべきポイントを分かりやすく説明します。

個人事業主としての活動を始める際に必要な情報を得ていただき、安心して事業をスタートさせる手助けとなると思いますので是非ご参考にしてください。


目次

1.個人事業主の登記は必要?

個人事業主として事業を始める場合、法人を設立する場合は法人登記が求められます。一方で、法人登記が必須ではないです。ただし個人事業主でも任意で登記は可能です。


この章では、個人事業主として事業を始める際に関連する登記について詳しく解説します。事業をスムーズに始めるために必要な手続きについて理解を深め、円滑にスタートさせるのにお役立てください。

個人事業主の登記とは「商号登記」のことで必須ではない

個人が事業を始める場合、通常は、税務署へ開業届を提出します。この開業届は、個人事業のスタートを税務署に通知するものであり、屋号を使用して銀行口座やクレジットカードを開設する際にも必要となります。ただし、開業届は法的に必ず必要というわけではなく、提出しなくても罰則は課せられません。


法的な義務はないにもかかわらず、個人事業主は自主的に商号登記を行うことができます。

商号登記を行うと、屋号が法的に認められ、社会的信用を得ることができます。個人事業主にとって法的な証明となります。個人事業主の登記は法的に必須ではありませんが、資金調達などを行う必要がある場合には積極的に行うべきであると言えます。


個人事業主の登記は事業をより信頼性のあるものとし、メリットを享受することが可能です。

2.開業届の提出

一般に、個人事業主とは、法人を設立せずに「個人で独立して継続的な事業所得を得ている人」のことです。


開業届は法的に提出を義務付けられていませんが青色申告でのメリットや社会的信用を得られます。

開業届は国税庁のウェブサイトからダウンロードできますし、提出には手数料はかかりません。

3.開業届の必要性

この章では開業届の必要性について説明します。

(1) 節税できる

「青色申告」の節税メリットを享受するには、開業届を提出する必要があります。

開業届を提出しないと、青色申告が認められません。結果として支払う税金が増えてしまうことが想定されます。

(2) 社会的信用を得られる

事業を展開する上で屋号を用いて銀行口座を開設したり、融資を受ける場合を考えてみます。こういった場合には、開業届を提出することで社会的な信用が向上し、審査プロセスが円滑に進む可能性があります。開業届は、事業主が税務署に事業の開始を通知するものであり、法的な証明を得ることができます。


社会的な信用は、ビジネス活動において非常に重要です。銀行や金融機関は、屋号を有する事業主による開業届はそうでない開業届より信頼性が高いと判断するのが通常です。この信頼性向上は、融資や取引においてより良い条件を得やすくし、事業の発展に役立つでしょう。


開業届を提出することは、社会的信用を築く上で有益であり、事業の安定的な成長を支える一環と言えます。

(3) 商号登記や商標登録ができる

提出した開業届の中で使った屋号は、商号登記や商標登録が可能です。

4.開業届に記載する内容

①タイトル

タイトルは「個人事業の開業・廃業等届出書」で、「開業」に○印をつけます。


②納税地

個人事業主の住所を記載しますが、必要に応じて仕事場の住所に変更できます。


③税務署

住所に対応する所轄税務署を記載します。


④提出日

提出する日付を記載しましょう。


⑤氏名

本名を書きます。


⑥マイナンバー

マイナンバー通知カードまたはマイナンバーカードを参照してマイナンバーを記載します。


⑦職業

自由に記載できます。仕事内容が分かれば十分です。


⑧屋号

不要なら省略可能です。


⑨届出の区分

「開業」に○印をつけ、他は記載しないでください。


⑩所得の種類

該当するものがあればチェックをつけます。


⑪開業日

開業した日を記載します。


開業届にはマイナンバー(個人番号)が必要です。また、税務署での提出時には、本人確認書類が求められることがあります。マイナンバーカードを所持している場合はそれを、マイナンバー通知カードしか持っていない場合は免許証やパスポートなども一緒に持参してください。

5.商号登記と商標登録・法人登記の違いは?

商号登記と似た言葉として「商標登録」と「法人登記」がありますが、これらは異なる意味を持っています。それぞれの言葉の意味を説明し、商号登記との違いについて見ていきましょう。

商標登録と商号登記の違い

商標は、事業者が自身の商品やサービスを他者と区別するために使用するマークを指し、その登録には商品やサービスに対する特許庁への申請が必要です。一方、商号登記は個人事業主が自分を表すために用いる屋号を法務省に登録するものであり、商標登録と商号登記はそれぞれ特許庁と法務省が担当しているという違いがあります。

商号登記と法人登記の違い

『法人登記』は法律によって義務付けられた制度で、法人の設立に関する重要な事項を登記する手続きです。法人登記が法人に必要な手続きに対して行われるのに対し、商号登記は個人事業主が行います。法人登記に必要な書類は数多く、商号登記と比較して手続きがより複雑であると言えます。

6.屋号と商号は何が違う?

屋号と商号は、ビジネス上での公に知られた名前としては似ていますが、法的な拘束力には大きな違いがあります。具体的には、同じ名前を他者が使用し、トラブルが生じた場合に、権利を主張できるかどうかが異なります。

屋号は個人事業主が名乗るお店や事務所の名前

屋号は、個人事業主がお店やオフィスにつける名前のことで、法的な拘束力がないため、同じ名前を利用されてもトラブルを解決するのが難しい場合があります。屋号は、税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」に書くことで使えるようになりますが、必須ではありません。


ただし、屋号を選ぶ際には実態を適切に表すように特定のキーワードを入れないようにしたり、既に商標登録されている名前は使えない点には注意が必要です。一般的には「~屋」「~商店」「~サロン」「~事務所」など、どんな業種かが分かる名前を選ぶことが一般的です。

商号は会社の名前

商号は、法人登記をした会社の正式な名前で、法的に拘束力があります。屋号と異なり、同じ商号を同じ場所に登録することはできません。


商号は法人設立時に行う会社登記で法務局に登録され、株式会社などの場合は「株式会社」というワードを利用するなどの適切な表記が必要です。株式会社なのに合同会社と名乗るなど、異なる種類の会社を名乗ったり、銀行でないのに「銀行」といった語を不正に使用することは認められません。

7.屋号を持つメリット

個人事業主が持つ屋号は、必須ではなく自由な選択です。ただし、屋号を持つことにはいくつかのメリットがありますので、個人事業主としてはこれを把握しておいた方が良いでしょう。この章で説明します。

クライアントに見つけてもらいやすくなる

事業において屋号を持つことは、クライアントが検索エンジンを利用して仕事を探す際に、職業名や地域名を組み合わせて検索するという傾向を考慮するとメリットがあります。具体的な屋号があることで、検索結果においてもより目立ちやすくなり、クライアントからの仕事の依頼を受ける機会が増える可能性があります。


屋号を通じて専門性などをアピールすることで、クライアントが求めている条件との合致がアピールしやすくなります。また、新規クライアントとの出会いやビジネス機会の拡大にも寄与するでしょう。


屋号を持つことは事業のプロフェッショナリズムをアピールし、クライアント獲得に役立つと言えるでしょう。

クライアントに信頼されやすい

屋号が名刺やメールの署名に掲載されている場合はそうでない場合と比べて、クライアントからの仕事相手としての信頼を築きやすくなります。名刺やメールに屋号が明示されることで、ビジネスにおいてプロフェッショナリズムをアピールできるからです。


取引先や顧客は取引相手がしっかりとしたビジネスを営んでいるという印象を受ける可能性が高くなります。取引の円滑な進行が期待されます。


クライアントからの信頼性の向上は、クライアントとのコミュニケーションや取引のスムーズな進展に寄与することでしょう。

屋号付き口座を開設することができる

屋号を所有することで、銀行口座の名義に屋号を使用することが可能です。このことのメリットは、事業用の資金を効果的に管理しやすくなることです。さらにクライアントからの信頼感を醸成する一環となります。銀行口座に屋号を関連付けることで、取引相手やクライアントは事業主への信頼性を感じやすくなります。


プロフェッショナルな印象が与えられ、資金のやり取りが屋号付き口座を通じて行われることでビジネス取引の信頼構築が促進され、長期的なパートナーシップの形成の一助となるでしょう。

実績を残すことができる

屋号を有することで、将来的に法人化を検討している場合には、その屋号を法人名として継続して使用することが可能です。このことのメリットは、過去の事業実績や顧客ベースをそのまま継承できる点にあります。法人名が既にクライアントや取引先として認知されている場合、法人化後もビジネスの連続性を保ちやすくなるからです。


屋号を法人名に転換することで、事業の安定性や信頼性を維持しつつ法人化を進めることが可能です。クライアントやパートナーとの関係性を損なわずに法人形態への移行ができ、円滑なビジネス運営に役立ちます。

8.商号を持つメリット

この章では商号を持つメリットについて説明します。

他人との誤認を避ける

商号を有することの最大のメリットは、商売で他者と同じ名前にならないという点です。商号は法的に拘束力があり、同一の所在地における同じ商号の登記が禁止されているため、自らの事業を他者と明確に区別することができます。競合他社との混同を避け、ブランドの一貫性を確保できます。


同一の商号が登録されないことは、事業の信頼性や独自性を強化する点で重要です。クライアントや取引先にとっては、独自の商号を持つ事業を識別しやすくなります。商号を有することは独自性を確保して、市場での差別化を行うことに役立ちます。

商標登録がしやすくなる

商標登録を行う際、出願人の名前に商号を使うことができます。商標登録は事業者が区別され、商標権が確立される重要なステップです。商号があれば、商標権を保護しやすくなります。

9.法人設立時の法人登記と商号登記の違い

法人登記と商号登記は異なる手続きで、必要な書類や登記事項も異なります。


商号登記は個人事業主が自身を表すために使う屋号や営業・サービスを提供するときに使う正式名称を登記する手続きで、通常は商号、営業所の住所、事業主の住所、事業主の氏名、事業の種類が登録されます。商号登記の必要書類には商号登記申請書などがあり、登録免許税は3万円です。


一方、法人登記は法人を設立する場合に行う手続きで必要な書類は定款など十種類以上あり、内容も複雑です。法人登記には株式会社の場合、資本金の額に応じた登録免許税がかかります。また資本金の最低金額に制限はないため、1円以上なら設定可能です。法人登記には株式会社の場合、さらに会社法に基づく様々な事項(発行可能株式総数、取締役会の設置有無など)が登記されます。

10.個人事業主の商号登記手続きと必要なもの

個人事業主の商号登記の手続きは、必要な書類を用意し、それを法務局に提出して対応を受ける手続きです。必要な書類が整っていれば手続き自体は複雑ではなく、法務局の担当者の指示に従って進めることができますので、スムーズに進めるようにしましょう。

11.商号登記に必要なものは?

商号登記を行うためには、以下の必要なものがあります。

ハンコ

商号登記にはハンコが必要です。最低限、実印が必要で屋号印や商号印があればそれも持参しましょう。

書類

  • 個人実印の印鑑証明書

    商号登記手続きには不可欠な書類です。必ず用意してください。

  • 印鑑届書

    商号に関するハンコを登録するために必要な書類で、個人実印や(あれば)屋号印・商号印を登録します。

  • 商号登記申請書

    指定のフォーマットはないためインターネットでひな形を見つけるか、法務局で記載事項を確認しながら現地で作成します。

現金

個人事業主の商号登記にも登録免許税がかかります。

12.個人事業主の商号登記のメリットとデメリットについて

この章では個人事業主の商号登記のメリットとデメリットについて説明します。

メリット

個人事業主が商号登記を行う際の重要なメリットは、信頼性の向上にあります。


商号登記により、屋号や代表者の氏名などの情報が公になり、個人事業主が事業を誠実に運営していることをアピールできます。個人事業主は法人に比べて社会的信用が低い傾向があるため、信頼性を高めることは非常に重要です。


将来的に法人化を検討している場合、個人事業主の段階で商号登記を行っておくことがおすすめです。商号登記をしておくと、法人化後も同じ屋号を継続利用できるため、現在の屋号に愛着がある場合は特に有益です。


商号登記を行い正式な屋号を確立した後、屋号付きの銀行口座を開設することで、社会的信用が向上します。屋号付きの銀行口座は商号登記を行わなくても開設可能ですが、登記を行うことで事業の信頼性がより強調され、誠実な事業運営の証となります。


個人事業主の商号登記は事業成功の一助となる可能性もあります。

デメリット

商号登記の欠点の一つは、手続きに費用がかかることです。商号や代表者氏名の登録には、それぞれ登録免許税がかかります。屋号が比較的自由に変更できるのとは異なり、商号登記を変更する際も税金が発生します。費用が発生するため、屋号ほど気軽に登録できないと考えられます。


また登録料金を支払うだけでなく、書類を用意して法務局に提出する必要があるため、手続きが開業届の提出よりも複雑で手間がかかります。費用だけでなく、手続きにかかる時間や手間も検討しておいた方が良いでしょう。


商号登記を検討する際には、事業のニーズや将来の展望に合わせた選択を行うことが重要です。

13.個人事業主が商号登記するメリットは大きく、デメリットは少ないと言える

個人事業主の商号登記には手続きやコストがかかりますが、それほど複雑ではないため、商号登記を検討する価値は大きいと考えられます。


再度強調しますが、商号登記の最大のメリットは、商号が法的に保護され、取引時の信頼性が向上することです。事業を拡大する上で社会的信用は不可欠であり、商号登記によってこれを確立できるのです。また、商号登記を怠ると、将来的に法人化する際に以前使っていた屋号が他者に既に登録されていて、屋号を変更しなければならない可能性があります。このリスクを回避するためにも、商号登記は重要です。


商号登記にはデメリットとして登録料や手続きにかかる手間が挙げられますが、社会的信用の向上というメリットを考慮すれば、商号登記は十分に価値があると言えます。


検討する際には、コストとメリットをバランスよく考え、自身の事業に最適な選択を行うことが肝要です。

14.商号登記の申請手続きはオンラインで可能か?

ここまで、法務局に訪れて手続きを行う場合の説明をしましたが、商号登記の申請手続きはオンラインでも可能です。以下がオンラインでの商号登記の手続きの流れです。

  1. 申請書情報の作成:商号登記申請書の情報をデータで作成します。

  2. 必要な添付書面の情報を申請書に添付:個人実印の印鑑証明書などの必要書類をpdfなどで添付します。

  3. 申請書情報と添付書面情報をオンライン申請システムに送信:パソコン上で登記・供託オンライン申請システムにデータを送信します。

  4. 申請データが到達し、受付のお知らせが届く:法務局からのお知らせがオンライン上で届きます。

  5. 登録免許税を納付:電子納付か領収証書又は印紙納付を行います。

  6. 補正・取下げ(不備がある場合):もし不備があれば、補正や取下げが必要です。

  7. 完了

手続きが正常に完了したら、商号登記が終了します。

15.個人事業主の登記に関するよくある質問

この章では個人事業主の登記に関するよくある質問についてお答えします。

Q. 個人事業主が登記をしないメリットはありますか?

個人事業主が登記をしないメリットは、登記のための費用や手間がかからないこと、屋号の変更が簡単なことです。

Q. 個人事業主が登記をする場合、どのような情報が一般に公開されますか?

個人事業主が登記をする場合、屋号や代表者氏名、住所などの情報が一般公開されます。

Q. 商号登記を申請する際、どのような方法で類似商号がないか調査できますか?

オンライン登記情報提供サービスの利用、法務局での商号調査などの方法で登記を調べることができます。

16.個人事業主の場合は登記簿謄本は取れない?

個人事業主であっても、商号登記をしている場合は、登記簿謄本を取得できます。逆に言えば、個人事業主が登記手続きを行わずに事業を始めた場合、企業の登記簿謄本のようには、登記簿謄本を取得することはできません。


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17.まとめ

個人事業主も登記(商号登記)が可能であり、登記することで得られるメリットについて重点的に説明しました。自社のブランドや信頼性を保護するためには商標登録も検討すべきだとも述べました。


素晴らしい名前を考えたけれども、他社が既に使用している場合や逆に先に使用していたにもかかわらず模倣されるケースもあり得ます。その場合法的な争いに巻き込まれ、名称を変更せざるを得なくなり大きな損失が生じる事例も実際に発生しています。


営業と拡販を進めながらも、同時に法的な保護や法令遵守を適切に行うことが重要であると言えます。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

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