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バーティカルSaaSとは?ホリゾンタルSaaSとの違いや大手企業一覧、デメリット、将来性など解説

公開日:2025/06/16最終更新日:2025/06/16

SaaS(Software as a Service)は、ネットだけで契約・利用ができるサービスとして、多くの企業で導入されています。人事・経理・プロジェクト管理など、さまざまな用途に使えるシステムを備えたサービスがあるため、利用することで職場環境の改善に貢献する可能性があるでしょう。


一方で、特定の業界・業種に特化した作業をサポートする機能は、一般的なSaaSに搭載されていないケースがあります。医療や建設、ニッチな領域で事業展開を想定しているスタートアップ企業などは、SaaSを使っても目的を達成できない可能性があるでしょう。


そこでおすすめとなるのが、「バーティカルSaaS」です。専門性の高い業界はバーティカルSaaSを活用することで、事業の成果や業務効率の向上を実現できる可能性があります。本記事ではバーティカルSaaSの特徴やホリゾンタルSaaSとの違い、導入におけるメリット・デメリット、将来性などを解説します。


1.バーティカルSaaSとは?

バーティカルSaaSを利用するのなら、まず「バーティカルSaaSとは何か?」という基本から把握する必要があります。バーティカルSaaSの言葉の意味や基本概念を理解することが、サービスを有効活用するための第一歩となるでしょう。


以下では、バーティカルSaaSの基本について解説します。

特定の業界・分野に特化したSaaS

バーティカルSaaSとは、「特定の業界・分野に特化したSaaS」を意味します。「バーティカル(Vertical)」には「垂直」という意味があり、特定の領域で機能を深堀りして特化することからその名がついたと言われています。


特定の業界や環境で使用されることを想定してシステムが組まれているため、「その仕事ならではの課題」や「ニッチだけどその業界では大きな問題」を解決する能力に長けているサービスがあります。業界・分野の課題について深い理解があるため、バーティカルSaaSのサービスを活用することでスムーズな改善につなげられる可能性に期待できるでしょう。

バーティカルSaaSが浸透している業界・分野

バーティカルSaaSは、既に幅広い業界・分野で利用されているサービスです。例えば以下の業界・分野では、バーティカルSaaSの活用事例をみることができます。

  • 人材

  • 医療

  • 建設

  • 介護

  • 不動産

  • 飲食 など

上記の業界ではバーティカルSaaSを活用することで、さまざまなメリットを得られる可能性があります。

例えば人材業界では、採用管理システムや勤怠管理、給与計算、人事評価などを一元管理するバーティカルSaaSが活用されています。応募者の選考プロセスの可視化、従業員のスキル管理、シフト作成の自動化など、人材に関する業務全般を効率化し、戦略的な人事施策の立案を支援します。


また、建設業では、各現場の進捗チェック、品質や人材管理においてバーティカルSaaSが活用されています。プロジェクト単位・現場単位でスムーズな管轄が可能となれば、建設業における業務を効率化できます。


このように現場と事務に隔たりのある業界ほど、相互理解を深めるためにもバーティカルSaaSの導入による効果が期待できると考えられます。医療も現場と事務で意思疎通ができていないと、適切な職場管理が難しくなるケースが懸念されます。同様に飲食も店舗と本社がそれぞれの状況を把握しきれていないと、顧客ニーズを捉えきれずにビジネスチャンスを逃す可能性があるでしょう。

バーティカルSaaSと逆の意味を持つホリゾンタルSaaSとは?

バーティカルSaaSと比較されるサービスに、「ホリゾンタルSaaS」というものがあります。ホリゾンタルSaaSとは業界や分野に関わらず、さまざまな現場で利用できるシステムを提供しているSaaSです。バーティカルSaaSとは逆の立ち位置になり、例えば会計・経理ソフト、人事ソフト、チャット・会議ツールなどがホリゾンタルSaaSに当てはまります。


ホリゾンタルSaaSのシステムは、バーティカルSaaSが必要な環境でも活用できる点が特徴です。基本的な事業に役立つ機能が揃っているため、バーティカルSaaSほど専門性の高いものが必要でない場合には、先に挙げた業界でもホリゾンタルSaaSを導入することが検討されます。

2.バーティカルSaaSを利用するメリット

バーティカルSaaSを利用する場合、導入後にどのようなメリットを得られるのか具体的に把握しておくことが重要です。どのようなメリットがあるのか分かっていれば、社内でどのように使うべきか素早く判断できるでしょう。


以下では、バーティカルSaaSを導入・利用する際のメリットについて解説します。

専門的なシステムを使える可能性がある

バーティカルSaaSには、業界に特化した専門性の高いシステム・サービスを提供しています。それらのシステム・サービスを使って、現在の課題を解決に導ける点はメリットです。医療や建設などの業界に特化したシステムを活用すれば、特定の問題に対してスムーズな解決を目指せます。


他のSaaSで基本的なシステムを構築するだけでは、なかなか現場特有の問題の解決までは至らないこともあります。だからこそバーティカルSaaSを活用し、専門性の高いシステムを軸にした職場環境を作ることにメリットがあるでしょう。


例えば現場管理に特化した「SPIDERPLUS」は、アプリとクラウド環境を使ってさまざまなシステムを活用できるバーティカルSaaSです。図面や施工状況などを複数の人たちと素早く共有したり、帳票作成を効率化するシステムを使って事務作業の負担を軽減したりと、多数の使い方が可能です。紙媒体のデータの電子化も進められるため、職場のDXにも貢献してくれます。

低コストでスムーズな導入が可能

SaaSは、簡単かつ低コストでの導入が可能なサービスです。社内から直接アカウントを作成して必要なツールなどをダウンロードするだけで、すぐにでも利用を開始できます。バーティカルSaaSも同様に、スムーズな導入を実現できる点がメリットです。


初期費用も多くはかからないため、手軽に導入を試せる点もメリットです。バーティカルSaaSのなかにはトライアル期間を設けていて、その間は無料でサービスを使えることもあります。いくつか気になるバーティカルSaaSをピックアップし、トライアルを試してしっくりきたものを導入する方法もおすすめです。


また、バーティカルSaaSの導入時には、サポート面もチェックしておくと良いでしょう。道入に関するサポートだけでなく、実際の使い方をレクチャーしてくれるサービスであれば、安心して利用できます。バーティカルSaaSのサポートのなかには定期的に勉強会やセミナーを開催し、導入後の使い方を指導してくれるケースもあります。


初めてバーティカルSaaSを利用する際には、手厚いサポートが整っているサービスを利用するのも1つの方法です。


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3.バーティカルSaaSを利用するデメリット

バーティカルSaaSを利用する際には、デメリットになる部分も把握しておくことが大切です。メリットだけに注目していると、意外なデメリットに足元をすくわれ、道入・利用に手間取る可能性があるでしょう。


以下を参考に、バーティカルSaaSを利用するデメリットについて確認してみてください。

サービスの選択肢が少ない

バーティカルSaaSは特定の業界やニッチな産業に特化したサービスであるため、製品数に限りがあります。ホリゾンタルSaaSよりも市場規模が小さいため、サービスを自由に選べるほど選択肢がない点がデメリットになるでしょう。


仮に、特定の問題を解決するために必要なシステムを提供しているバーティカルSaaSが1社だけだった場合、選択肢はなくなってしまいます。他の機能に不満があっても、使わざるを得ない状況になる可能性もあり得ます。


また、既存のバーティカルSaaSが多くのシェアを得ている場合、新規参入する企業が増えない可能性も懸念されます。いつまでもバーティカルSaaSの業界内で競争が発生せず、サービスの進化が鈍化する恐れもあるでしょう。

別サービスへのデータ移行が難しいことも

バーティカルSaaSに限りませんが、別サービスへのデータ移行が難しい点もデメリットの1つです。SaaSのシステムで動く環境が完成してしまうと、そこから大量のデータ・システム設定を別のサービスに移行するのは困難となります。そのため1つのバーティカルSaaSを使い続ける結果になり、新しいサービスが出ても気軽に乗り換えづらくなる可能性があるでしょう。


データ移行が難しい問題があるため、利用し続けるバーティカルSaaSは慎重に選ぶ必要があります。仮にサービスを提供している企業が倒産してしまうと、別サービスへの移行を強いられることになります。先の通りデータ移行は困難なため、最悪の場合には一からシステム環境を作り直さなければならないケースも懸念されるでしょう。


選択肢の少ないバーティカルSaaSでは難しいことですが、可能な限り継続して使える信頼性の高いサービスを選ぶのもポイントです。信頼のあるサービスを利用することは、セキュリティ面の安心を買う結果にもなります。クラウドを活用するサービスであるため、SaaSの提供側が厳重なセキュリティ環境を整備していないと、情報漏洩などの問題に発展することも考えられるでしょう。

4.バーティカルSaaSのカオスマップとは?

バーティカルSaaSへの理解を深めるには、「カオスマップ」について知ることもポイントです。

カオスマップとは、特定業界の中身をカテゴリー別に一覧にしたものを指します。業界地図と呼ばれることもあり、一覧化した図を作成してロゴなどを配置し、市場全体を簡単に把握できるように工夫されています。


バーティカルSaaSのような特定業界・業種とピンポイントで契約するサービスは、カオスマップを参考にして参入しやすい場所を見つけ出す方法が考えられるでしょう。また、市場についての理解を深めたり、ベンチマーク企業を把握したりする際にもカオスマップが使われます。

5.バーティカルSaaSの大手企業一覧

バーティカルSaaSを導入する際には、さまざまな企業のサービスを参考にして、自社に最適なものを選ぶ必要があります。以下では、バーティカルSaaSの大手企業を一覧で紹介します。

バーティカルSaaS企業のランキング化は難しい?

バーティカルSaaS企業が参加している市場規模は小さめであるため、単純にランキング化するのは難しいと言えます。そのためランキング上位のサービスを選ぶのではなく、実際にどんな企業がどのようなSaaSを展開しているのか調べて、マッチするものを選別していくことがポイントです。

注目されているバーティカルSaaSの大手企業一覧

最新版「バーティカルSaaS カオスマップ」を参考にすると、以下の企業がバーティカルSaaS企業として名を連ねています。


(引用元:One Capital株式会社


こちらでピックアップされている企業は、「業界特化型SaaSを提供している」「スピーダ(旧INITIAL)に掲載のある国内スタートアップ(調査終了、上場企業の子会社など除く)」の2点に当てはまるものとなっています。ジャンルに関しては、以下のように分けられています。

  • Business Products & Services

  • Materials & Resources

  • Consumer Products & Services

  • Financial Services

  • Energy

  • Healthcare

本調査によると、プロダクトが多いRestaurants、Hotels、Eventsの分野において、前年比32%増という結果になっています。また、Agriculture、Chemicals & Gasesの分野は前年比からプロダクト数が倍増しています。


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6.バーティカルSaaSの将来性

バーティカルSaaSは、将来性にも期待できます。特定の業界・分野に特化している点は、独自の魅力としてバーティカルSaaSの将来性を高めていくでしょう。


以下では、バーティカルSaaSの将来性について解説します。

市場規模が拡大傾向にある

バーティカルSaaSの市場規模は決して大きくありませんが、拡大傾向にある点が特徴です。Business Researchの記事によると、バーティカルSaaSの市場規模は2023年に91.9億米ドルと評価されています。2032年までには317.49億米ドルに達すると予想され、予測期間中は16.3%のCAGRが示されています。


日本はアメリカとは異なり、まだまだバーティカルSaaSの浸透度が足りないとも考えられます。アメリカのベンチャーキャピタルBessemer Venture Partnersの集計結果によると、バーティカルSaaSの時価総額は15.5兆円にもなります。一方で日本は0.9兆円にとどまっているため、まだまだ発展の余地があると言えるでしょう。

ブルーオーシャンを理由に参入が増える可能性もある

先に「既存のバーティカルSaaSが多くのシェアを得ている場合、新規参入する企業が増えない可能性も懸念されます」と述べましたが、逆に言えばライバル企業の少ないブルーオーシャンであるため、新しいビジネスアイデアを活かして参入する企業が増える可能性もあり得ます。


既存のバーティカルSaaS企業ではカバーしきれていない部分を補う形で、新規企業が参入するケースもあるでしょう。また、既存のバーティカルSaaS企業の顧客満足度が低い場合などには、新規企業が歓迎されることも考えられます。ブルーオーシャンである点がメリットになり得る点は、バーティカルSaaSの将来性を高める理由の1つになるでしょう。

7.まとめ

バーティカルSaaSは、特定の業界・分野において重要な役割を担うサービスです。医療・建築・飲食などの分野ならではの課題を独自のシステムで解決するバーティカルSaaSは、今後も多くの企業で活用されると予想されるでしょう。この機会にまずはバーティカルSaaSの基本を確認し、自社に導入するのに最適なサービスを探してみてはいかがでしょうか。


また、エンジニアの方はバーティカルSaaSで働き、業界に特化したスキル・ノウハウを身につけることも考えられます。転職やフリーランスとしての独立を検討しているのなら、この機会にバーティカルSaaSの求人・案件を確認してみるのもおすすめです。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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この記事の監修者

笠間 慎

大学卒業後、人材紹介会社にコンサルタントとして従事。フリーランスとして独立。その後、フリーランス案件サイト「フリーランススタート」の立ち上げに編集長兼ライターとして参画し、月間30万人が利用する人気メディアへと成長させる。 2024年より、フリーランスボード編集長に就任。自身の経験を元に、フリーランスの活躍を支援する情報を発信している。

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目次

1.バーティカルSaaSとは?

特定の業界・分野に特化したSaaS

バーティカルSaaSが浸透している業界・分野

バーティカルSaaSと逆の意味を持つホリゾンタルSaaSとは?

2.バーティカルSaaSを利用するメリット

専門的なシステムを使える可能性がある

低コストでスムーズな導入が可能

3.バーティカルSaaSを利用するデメリット

サービスの選択肢が少ない

別サービスへのデータ移行が難しいことも

4.バーティカルSaaSのカオスマップとは?

5.バーティカルSaaSの大手企業一覧

バーティカルSaaS企業のランキング化は難しい?

注目されているバーティカルSaaSの大手企業一覧

6.バーティカルSaaSの将来性

市場規模が拡大傾向にある

ブルーオーシャンを理由に参入が増える可能性もある

7.まとめ