フロントエンド開発の現場では、いまだにjQueryで書かれたコードに触れる機会が少なくありません。一方で、新規の開発現場ではJavaScriptの活用が主流となっており、「jQueryはもう古いのか?」「これから学ぶならどちらがよいのか?」と悩む人も多いのではないでしょうか。
この記事では、JavaScriptとjQueryの関係や違い、使い分け方、学習の順序について解説します。
目次
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1.JavaScriptとjQueryの関係とは?
JavaScriptとjQueryは、いずれもWebサイトやWebアプリケーションの動的な動作を支える主要な技術です。ここでは、jQueryがどのような立ち位置にあるのか、JavaScriptとの関係や違いを整理しながら解説します。
jQueryはJavaScriptのライブラリ
jQueryは、2006年に登場したJavaScriptのライブラリです。そもそもライブラリは、よく使われる機能や処理をまとめたコードの集まりであり、開発者はライブラリを呼び出すことで効率的にプログラムを構築できます。
JavaScriptには元々DOM操作やAjax通信など、冗長で複雑な記述が求められる場面が多くあり、jQueryはそのような課題を解決する目的で開発され、以下のような処理を簡潔に記述できるようになりました。
要素の取得と操作
イベントの設定
アニメーションの実行
Ajaxによる非同期通信
クロスブラウザ対応
このように、jQueryはJavaScriptの機能を補完・簡素化するために作られたライブラリです。
JavaScriptとの違い
JavaScriptとjQueryは、フロントエンド開発においてよく比較対象として取り上げられます。その背景には、jQueryがJavaScriptをベースに作られたライブラリでありながら、独自の構文や書き方を提供しているという性質があるためです。
開発現場では、動的なページ操作や非同期通信といった機能を実装するためにJavaScriptが利用されてきました。しかし、JavaScriptには、記述が複雑でブラウザによる動作の違いを吸収しづらいという課題がありました。そうした課題を解決する手段として登場したのがjQueryです。
つまり、「どちらを使えば同じ処理をより簡潔・効率的に実現できるか」という観点から、JavaScriptとjQueryは比較される傾向にあります。
JavaScriptとjQueryの大きな違いは、記述方法にあります。JavaScriptは汎用的なプログラミング言語であり、すべてのロジックを自分で記述する必要があります。一方、jQueryはJavaScriptをベースにしながら、よく使う処理を簡単な構文で扱えるようにしています。
例えば、HTML要素を非表示にする処理を比較すると、以下のようになります。
// javascript document.getElementById("sample").style.display = "none";
$("#sample").hide(); |
このように、jQueryはJavaScriptよりも短く簡潔に書ける点が特徴です。これは、jQueryが内部的に多くの処理をまとめて代行してくれているためです。
2.jQueryを使うメリットとデメリット
jQueryは登場以来、多くの開発現場で採用されてきた実績がありますが、現在ではその使用に対する見直しも進んでいます。ここでは、jQueryを使用するメリットとデメリットについて解説します。
jQueryのメリット|導入や学習のしやすさが最大の利点
jQueryの強みは、記述の簡潔さと習得の容易さにあります。具体的には、以下のような利点が挙げられます。
簡潔な構文で記述できる
DOM操作やイベント処理、Ajax通信などが数行で実装可能です。複雑な処理を簡潔に書けるため、初心者でも取り組みやすい環境が整っています。
クロスブラウザ対応が容易
jQueryは内部で各ブラウザの差異を吸収してくれるため、古いブラウザを含む幅広い環境での動作確認がしやすくなります。
プラグインが豊富
スライダーやモーダルウィンドウなどのUI部品は、プラグインを導入するだけで簡単に実装できます。
jQueryのデメリット|現代的な開発には不向きな点も
一方で、jQueryにはいくつかの構造的な課題も存在します。モダンな開発環境や設計方針との相性を考慮すると、以下の点がデメリットとして挙げられます。
モダンJavaScriptとの冗長性
現在のJavaScriptは、querySelectorやfetchなどの標準APIが整備されており、jQueryを使わなくても同等の処理が可能になっています。これにより、jQueryを導入する意義が薄れつつあります。
将来性の観点で導入リスクがある
新規案件でjQueryを選択するケースは年々減少しており、技術的なサポートやコミュニティの活発度も相対的に下がりつつあります。新たな開発人材がjQueryに習熟しているとは限らず、長期的な保守体制に不安が残る可能性もあります。
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3.JavaScriptとjQueryの使い分け
JavaScriptとjQueryは、目的やシステムの状態に応じて適切に使い分けることが求められます。両者には役割と強みがそれぞれあり、単にどちらが優れているかで判断するのではなく、どのような場面で有効かを基準に選択しましょう。
jQueryを使うのに適しているケース
jQueryは現在ではモダンな開発環境において主流ではなくなりつつありますが、特定の条件下では今なお有効な選択肢とされる場面があります。
1. 古いシステムの保守・改修を行う場合
レガシーシステムやCMSの開発プロジェクトでは、jQueryで構築されたものが多く存在します。こうしたプロジェクトでは、既存の構造を大きく変えずに機能追加・不具合修正を行う必要があるため、jQueryの知識が不可欠です。
2. 簡易な動的処理を短時間で実装したい場合
LPやキャンペーンサイトなど、一時的な用途で動的演出を短時間で実装したい場合には、jQueryが向いているでしょう。DOM操作やアニメーション、Ajax通信などを短時間で実装できるため、コストを抑えられます。
3. 対応ブラウザの幅が広い場合
jQueryは複数のブラウザ差異を吸収するように設計されているため、古いブラウザを含めた対応が求められるプロジェクトでは、安全かつ効率的に開発を進められる利点があります。
JavaScriptを使うのに適しているケース
一方で、Web開発の主流はJavaScriptおよびjQueryではないモダンなフレームワークに移行しつつあります。
1. 新規のWebアプリケーションを開発する場合
ReactやVueなどのフレームワークを導入したWebアプリケーション開発では、仮想DOMやコンポーネント志向の設計が前提となるため、jQueryとの併用は非推奨です。JavaScriptをベースとした構成に統一することで、保守性や拡張性が確保されます。
2. パフォーマンスを重視する場合
モバイル対応やSPA(Single Page Application)開発で重要なのが、ファイルサイズの最適化と描画の高速化です。jQueryを読み込むことで不要なバンドルサイズが増加する場合は、JavaScriptのみで完結させるほうが適しています。
3. 将来的な運用を見据える場合
モダンなフレームワークの登場によって、開発者コミュニティや学習教材の主流は、ES6以降のモダンJavaScriptに移行しています。新たに参画する開発者の習得コストや、技術的な陳腐化リスクを避けるためにも、JavaScriptによる実装が長期的な観点から望ましいといえます。
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4.JavaScriptとjQueryのどちらを習得すべきか
フロントエンド開発を学び始めるにあたって、「JavaScriptから始めるべきか、jQueryから学ぶべきか」という疑問を持つ人も多いでしょう。レガシーシステムの保守と新規アプリケーション開発の両方に関わる可能性がある場合は、どちらの技術を優先すべきかの判断が重要です。ここでは、学習の優先順位とその理由について解説します。
JavaScriptを先に習得することが基本方針
結論から述べると、JavaScriptの習得を先行させましょう。その理由は以下の通りです。
jQueryはJavaScriptのライブラリであり、基盤となる文法を理解していなければ応用が難しい
jQueryだけでは、モダンなフレームワーク(React、Vueなど)やTypeScriptなどへの展開力が身につかない
JavaScriptそのものがフロントエンド開発の中心であり、将来性が高い
例えば、jQueryの $().hide()という記述が内部でどのようにDOMに作用しているのかを理解するには、document.getElementByIdやstyle.displayなどのJavaScriptの基本的な知識が欠かせません。
学習を始める際には、まずJavaScriptの基礎文法・構造を正しく理解し、それをベースにjQueryの動作を捉えるという順序が適しています。
jQueryを後から学ぶことで、古いコードの保守にも対応可能
JavaScriptの基礎を習得した後でjQueryを学べば、レガシーシステムの保守に対応できます。実際、多くの企業では依然としてjQueryが使われている既存システムが稼働しており、以下のような場面ではjQueryのスキルが求められます。
jQueryベースで構築されたシステムの改修
CMSのテーマ編集
jQueryは新規開発のために学ぶものではなく、既存システムの保守や移行のために必要なスキルと位置づけるのが妥当です。
jQueryを最初に学ぶべきでない理由
初心者がjQueryから学習を始めることには、いくつかのデメリットがあります。
抽象化された構文に慣れすぎて、JavaScriptの仕組みを理解しづらくなる
ライブラリ依存の思考が癖付き、応用力が育ちにくくなる
学習範囲がjQueryに限定され、他の技術を習得する際にスムーズに移行できない
例えば、$('.btn').click(function(){...})という書き方に慣れてしまうと、addEventListenerを使ったイベント処理や、非同期処理の本質的な理解が後回しになってしまうことがあります。
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5.JavaScriptとjQueryの習得順序
JavaScriptとjQueryの両方を習得するには、段階的に学んでいくことが重要です。jQueryはJavaScriptの文法や構造を理解していることを前提とするライブラリであるため、JavaScriptの基礎を飛ばして進めてしまうと、実務に対応できなくなる可能性があります。
ここでは、JavaScriptを習得し、jQuery習得へとつなげていくための4つのステップを紹介します。
ステップ1. JavaScriptの基礎文法を学ぶ
まず、JavaScriptの基本的な文法や構造を理解しましょう。このステップでは以下の要素を中心に学習を進めます。
変数の宣言(let、const、var)
データ型(文字列、数値、配列、オブジェクトなど)
条件分岐(if、switch)
ループ(for、while、forEach)
関数の定義と呼び出し(通常関数、アロー関数)
こうした基礎知識は、Web上の動作を自分でコントロールするための出発点であり、jQueryを含むあらゆるJavaScript関連技術の土台になります。
ステップ2. DOM操作やイベント処理を習得する
JavaScriptの基礎を習得したら、次はDOMの操作やイベント処理の方法を学びましょう。
DOMの取得(getElementById、querySelectorなど)
HTML要素のテキストや属性の変更
要素の追加・削除
イベントリスナーの設定(addEventListener)
ユーザー操作(クリック、入力など)への反応
この段階で、JavaScriptだけでWebページの見た目や動作を動的に変更できるようになります。
ステップ3. 非同期処理(Ajax)やモダン構文を学ぶ
Webアプリケーションでは、外部のサーバーと通信しながら画面を更新する非同期処理も不可欠です。このステップでは、以下のような構文を習得しましょう。
fetch API によるAjax通信
Promiseやasync/awaitによる非同期処理の記述
配列の高階関数(map、filter、reduceなど)
テンプレートリテラルや分割代入などのES6構文
この段階まで進めば、JavaScriptによるフロントエンド開発の主要な要素を一通り扱えるようになります。
ステップ4. jQueryの基本構文と活用法を学ぶ
JavaScriptの基礎が固まったら、jQueryの学習を始めましょう。jQueryで重点的に学ぶべき内容は次のとおりです。
$()による要素の取得と操作
チェーン記法による処理の連続実行
DOM操作(addClass()、html()、hide()など)
イベントハンドラ(.on()、.click()など)
Ajax通信(.get()、.post()、.ajax())
このステップでは、jQueryの構文とJavaScriptの構文を比較しながら、実務でよく使われるコードを模写・検証して理解を深めていくとより理解が深まります。
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6.まとめ
JavaScriptとjQueryはそれぞれにメリットとデメリットがあります。技術的な流行だけで判断せず、現場の要件や将来の拡張性を見据えたうえで使用する技術を選択する姿勢が、プロジェクト全体の質と効率を左右します。
現場でjQueryが使われている場合は頭ごなしに否定するのではなく、技術的背景を理解したうえで、段階的な改善や再設計を検討していきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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