「半導体エンジニア」は、あらゆる製品で欠かせないものとなっている「半導体」を取り扱う専門のエンジニアです。昨今の技術革新を支える半導体を取り扱うプロフェッショナルであることから、半導体エンジニアの需要は高まっています。今後も将来性のある職業だと言えるため、半導体エンジニアへの転職やキャリアパスを計画することも考えられるでしょう。
本記事では、半導体エンジニアの特徴や仕事内容、転職に必要なスキルや向いている人の特徴などを解説します。これから半導体エンジニアを目指す人や、半導体の技術に興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.半導体エンジニアとは
半導体エンジニアを目指すのなら、まず職業の基本情報を把握することが重要です。以下では、半導体エンジニアとはどんな職業なのか解説します。
半導体に関する業務全般を担当する専門職
半導体エンジニアとは、半導体に関する業務全般を担当する専門職です。例えば電子デバイスや集積回路(IC)の設計を行ったり、開発や製造業務に携わったりと、幅広い仕事を担当します。
集積回路(IC)とは、半導体を製品に組み込む際に必要とされる電子部品です。そのため半導体エンジニアとして働く際には、集積回路(IC)を設計する技術・知識が重要となります。
また、半導体が使用されている電化製品、自動車、スマートフォン、IoT製品、その他AIやVRに関する技術についても学び、専門知識を身につけることが求められます。
半導体エンジニアの需要・将来性について
半導体エンジニアの需要は、世界規模で高まっています。近年はAI技術などを筆頭に、あらゆるシーンでデジタル化が進行しています。デジタル化には半導体を用いた製品が必要ですが、専門知識・技術を使って製造・開発が行える半導体エンジニアの数は、十分ではありません。
そのため半導体エンジニアとして働ける人材、働く意欲のあるエンジニアは、高い需要を見出せるでしょう。
半導体エンジニアは、将来性のある職業としても注目されています。半導体は今後も多くの製品で使用され、さらに高い技術を用いて進化していくと予想されます。そのため半導体エンジニアは将来的に、これまでよりも高く評価される可能性があるでしょう。
また、半導体エンジニアに関する技術発展は、近年海外が主流となって進んでいます。そのため国内の事業成長を促すために、国や企業が積極的に半導体エンジニアを雇用・育成してくれる可能性にも期待できます。
半導体エンジニアの年収はどれくらい?
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」で「半導体技術者」の項目を参考にすると、平均年収は全国で688.2万円となっています。ハローワーク求人統計データを参考にした場合、令和5年度の半導体技術者の月収は27.5万円です。
令和5年賃金構造基本統計調査では正社員エンジニアの平均年収は約557万円です。そのため、平均年収よりも半導体エンジニアは高い水準にあると言えるでしょう。そのためエンジニアとして働いているけれど、現場の待遇に満足していない人は、半導体エンジニアの転職を検討するのも1つの方法です。
2.半導体エンジニアの仕事内容
半導体エンジニアに興味があるのなら、具体的な仕事内容について知ることも大切です。以下では、半導体エンジニアの主な仕事内容を紹介します。
半導体の集積回路を設計する
半導体を製品に取り入れるための集積回路(IC)の設計は、半導体エンジニアが担当する重要な仕事です。設計にもいくつかの種類があり、例えば半導体の機能を明確にするシステム設計、電子回路のロジック設計、ICチップのレイアウト設計などが担当領域になります。
製品開発や品質のチェックをする
半導体エンジニアは、製品開発や品質チェックも担当します。設計・開発時の安全性や機能性の確保を行ったり、コスト面を考慮して生産性向上や業務効率化を図ったりといったことも、半導体エンジニアの仕事に含まれます。
安定して高品質な製品を開発するために、何が必要なのか考えるのも半導体エンジニアの役割です。
半導体の製造環境を整える管理業務
半導体エンジニアは、半導体の製造・開発環境を整えたり、管理業務を担当したりすることもあります。半導体の製造プロセスおよび生産技術の開発に携わり、微細加工技術の改善業務や、製造装置の使い方を最適にするなど、さまざまな仕事が考えられます。
その他、半導体の製造過程で使用される機器のメンテナンスや修理なども、半導体エンジニアが担当します。
3.半導体エンジニアの種類について
半導体エンジニアには、いくつかの種類があります。以下では、種類ごとの特徴や担当する仕事内容を紹介します。
半導体プロセスエンジニア
半導体プロセスエンジニアとは、製造過程における設備の設計、管理、生産計画の立案などを行う職種です。製品のデータ分析の他、開発時にトラブルが発生しないように適切な管理を実施することも求められます。
ミスを減らす環境づくりを通して生産性を向上させたり、高品質の製品開発を目標に各プロセスの改善を進めたりするのも、半導体プロセスエンジニアの役割です。
半導体製造装置メンテナンスエンジニア
半導体製造装置メンテナンスエンジニアとは、製造過程で使用される機器の維持管理を行う職種です。定期的にメンテナンスを実施して問題を確認したり、故障の際には速やかに修理して問題を解決したり、性能向上に必要な計画を立てたりといった業務を担当します。
安全管理やリスクに対する予防策の考案など、現場における重要な仕事を任されるケースもあります。
半導体設計エンジニア
半導体設計エンジニアは、その名の通り設計に関する業務全般を担当する職種です。半導体の開発・製造において、電子回路の設計・レイアウトの設計などは基本かつ重要な業務となっています。また、専門知識を用いて設計を最適化し、評価するのも仕事になります。
安全性や耐久性を考慮した設計や、品質の安定化を実現するための設計など、目的に合わせて業務を進めることも半導体設計エンジニアの役割です。
4.半導体エンジニアに求められるスキル・資格
半導体エンジニアを目指すのなら、仕事で必要となるスキルを事前に学んでおくのがおすすめです。以下では、半導体エンジニアに求められるスキルや資格について解説します。
海外の情報を積極的に学ぶスキル
半導体エンジニアになるには、海外発の情報を積極的に学んでいく必要があります。半導体に関する最新情報の多くは、海外から発信されるケースが多いです。そのため国内の情報に限らず、海外も視野に入れて勉強をするのがコツです。
海外の情報をスムーズに収集するには、ある程度の英語力が必要です。海外の情報は基本的に英語で記載されているため、素早く学ぶには英語を読む能力が重要となるでしょう。
他業種や部署と連携して働くスキル
半導体エンジニアは、他業種や部署と協力して働くことがあります。基本的に半導体エンジニアは、設計・開発・管理など、現場で行う仕事が多いです。一方で、営業や販売など、別業種の人たちに専門知識を提供し、企業の利益拡大に貢献することも半導体エンジニアの役割になります。
他業種の人たちと接触することで、半導体関連のプロジェクトに良い刺激を得られる可能性もあるため、積極的なコミュニケーションを取って連携していくスキルも重要です。
プログラミングスキル
半導体エンジニアも、多くのエンジニア職と同様にプログラミングスキルが必要になります。例えば集積回路の設計および組み込みの際には、C言語、C#、C++などのプログラミング言語を使います。その他、CADやCAMなどのソフトウェアを使えるスキルも求められます。
電気や電子工学に関する知識
半導体エンジニアの業務には、電気や電子工学に関する知識が必要です。電気・電子工学の知識は、半導体における原理・構造などを理解する結果につながります。
その他、電子材料、デバイスの集積技術、ネットワークの知識なども、電気や電子工学の分野から学べます。より高度な業務を担当できる半導体エンジニアを目指すためにも、早くから電気や電子工学の勉強をしてスキルアップに励むのがおすすめです。
半導体エンジニアに必要な資格
半導体エンジニアを目指す際には、資格の取得も検討されます。業務に活かせる資格を取得することで、就職・転職を有利に進められるでしょう。例えば以下の資格は、半導体エンジニアになるときに要チェックとなります。
半導体製品製造技能士
ディジタル技術検定
QC検定
CAD利用技術者試験
統計検定 など
5.半導体エンジニアに向いている人の特徴
半導体エンジニアになる際には、「向いている人の特徴」を把握するのも1つのポイントです。以下を参考に、どのような人が半導体エンジニアに向いているのか確認してみてください。
最新情報を学ぶのが好きな人
最新技術や情報に興味関心があり、自分から学ぶことが好きな人ほど、半導体エンジニアに向いています。半導体に関する技術革新のスピードは早く、それまで最先端だったものがあっという間に古くなるケースも珍しくありません。
そのため普段から情報収集を徹底し、知識のアップデートをすることが、半導体エンジニアを目指す際のポイントです。
英語が得意な人
英語が得意な人ほど、半導体エンジニアに向いている傾向にあります。先の解説通り半導体の知識は英語で公開されることがあるため、海外の情報を素早く読める英語力は重要です。職場によっては海外や外資系企業と連携することもあり得るので、英語が話せるとスムーズにコミュニケーションが取れるようになるのがメリットです。
半導体エンジニアを目指すのなら、英語の基本的な勉強をしつつ、実際に半導体に関する英語の文献を読んでみるのがおすすめです。
コミュニケーション能力が高く、チームで働くのが好きな人
半導体エンジニアは、コミュニケーション能力が高い人や、チームに貢献することが好きな人ほど向いている職業です。黙々とプログラミング作業を練習するのではなく、周囲と話し合って業務を改善・進行していける人材を目指すのがポイントになるでしょう。
半導体に関する知識や技術は、同僚や同業者から提供してもらえる可能性もあります。半導体エンジニアとしてキャリアアップを実現するためにも、コミュニケーションを重視した働き方を意識するのも重要です。
6.半導体エンジニアが「きつい」「やめとけ」と言われる理由
半導体エンジニアの仕事は、「きつい」「やめとけ」と言われることがあります。なぜ「きつい」「やめとけ」と言われるのかを、以下で解説します。
クリーンスーツを着用しながらの作業が「きつい」と言われている
半導体エンジニアは、作業中に埃などが入り込まないように、クリーンスーツを着用します。クリーンスーツは通気性が悪く、着用中にストレスを感じることもあるため、それを理由に仕事が「きつい」「やめとけ」と言われることもあります。
しかし、半導体エンジニアは常にクリーンスーツを着用するわけではありません。開発や設計業務に関しては、他のエンジニアと同様の姿で仕事ができます。そのためクリーンスーツに対して、過度に不安を覚える必要はないでしょう。
高度な技術と継続学習が求められる
半導体エンジニアとして働き続けるには、高度な技術と継続的な学習が求められます。そのため半導体に強い興味がない限り、仕事を続けるのが「きつい」と感じることもあるでしょう。
しかし、高度な技術を習得したり、習慣的な学習を身につけたりすることは、自己の成長につながります。それは結果的にエンジニアとしての自信を獲得し、将来のキャリアパスを実現するきっかけになり得ます。半導体エンジニアは将来性のある職業なので、勉強してスキルを得ることには大きなメリットがあるでしょう。
未経験から半導体エンジニアになれる?
未経験から半導体エンジニアになるのは、簡単なことではありません。多くの専門知識・技術が求められるため、事前に勉強をしてスキルを高めておかないと、就職・転職の実現は困難となるでしょう。
そのため未経験から半導体エンジニアを目指すのなら、まず半導体についての文献・書籍などを読み込み、基本からしっかりと学習を進めます。そのうえで資格勉強やエンジニアとして働く技術の向上に努め、即戦力として仕事ができるレベルの人材を目指すのがポイントです。
未経験から半導体エンジニアになるのではなく、半導体に関する管理職や営業職などで経験を積み、それからエンジニアに転職するのも1つの方法です。
関連記事
半導体技術者検定とは?合格率や難易度、メリット・デメリット、対策方法について解説
IT業界の今後を予測|最新トレンドから今後の成長分野までわかりやすく解説
7.まとめ
半導体エンジニアとは、世界の技術を支えている半導体を取り扱う専門職です。半導体の製造・開発の他、管理や作業環境の整備などの業務で幅広く活躍できる半導体エンジニアは、今後も多くの職場で重宝されるでしょう。
これからIT業界への就職を目指す人や、別のエンジニア職からの転職を検討している人は、この機会に半導体エンジニアの基本をぜひ確認してみてください。
半導体エンジニアは需要が高く、将来性もある職業です。豊富な知識と高度な技術が求められるものの、努力してでも目指す価値のある仕事だと言えるでしょう。この機会に半導体エンジニアになるためのスキルや向いている人の特徴を確認し、具体的なキャリアパスを考えてみるのもおすすめです。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。