働き方が多様化している昨今、フリーランスを選択する人が増えています。フリーランスはライフワークバランスを保ちやすく、働く場所も自由に決められることが多いです。育児や介護との両立のしやすさも人気の秘訣となっています。また、自分のスキルを活かせる仕事に就きやすく、やりがいを感じながら働けるでしょう。
その一方、フリーランスは会社員よりも安定性に欠けます。例えば、会社員は毎月の収入が安定しており、かつ各種保険にも加入でき、病気になったら補償も受けられます。フリーランスは収入が安定しないばかりか、病気になった場合の補償は基本的にありません。
本記事では、フリーランスが働けなくなった場合に備えるべきこと、フリーランスが病気になった場合に直面するリスクなどを解説します。
目次
1.フリーランスは病気で働けなくなった場合の備えが必要
フリーランスは会社員よりも柔軟な働き方を実現しやすいものの、生活の安定性を保ちにくいというデメリットがあります。
例えば、会社員であれば病気やケガで働けなくなったら傷病手当金を受給できます。傷病手当金とは病気やケガで連続して4日以上働けなくなったときに、平均収入の最大3分の2が支給される手当です。(傷病手当金の支給額は健康保険組合の規定や、被保険者の賃金などによって異なります。)
収入は減るものの一定の収入を確保でき、治療費や生活費などを補えます。一方、フリーランスは傷病手当金の対象外です。国民健康保険に傷病手当金の保障がないためです。このため、働けない期間は貯蓄や自分で加入した保険の給付金などでカバーしなければなりません。
また、会社員は病気やケガで長期的に休業したとしても、体調の回復後に職場に戻れることがほとんどです。しかし、フリーランスは病気などで仕事をキャンセル、もしくはストップすると、そのまま仕事を失う恐れもあります。体調が回復した後、仕事を新たに探さなければなりません。
2.フリーランスが加入しておくべき保険
フリーランスは会社員のように病気になった場合の手当や保障が手薄であるため、自ら保険に加入しておく必要があります。
フリーランスが加入しておくべき保険として以下の3つが挙げられます。
小規模企業共済
所得補償保険
フリーランス協会の有料会員
それぞれ確認していきましょう。
小規模企業共済
小規模企業共済はフリーランス・個人事業主の退職金制度ともいわれています。この制度に加入すると、共済掛金を支払うことで、退職や廃業に向けて準備できます。月額の掛金は500円単位で1,000円〜70,000円の範囲で設定できます。
小規模企業共済は退職への備えを主な目的としていますが、病気とケガへの備えにもなります。傷病災害時貸付け制度を利用することで、病気やケガで5日以上入院した際などは掛金の額に応じて低金利で借入できます。返済の必要があるものの、収入が途絶えた場合に心強いでしょう。
所得補償保険
所得補償保険は支払対象外期間を超えて就業不可能な状態が続くと、給付金を受け取れる保険です。 例えば、支払対象外期間が30日設定の場合、病気やケガで仕事ができない期間が31日を超えると給付金を受け取れます。なお、支払対象外期間は保険会社によって異なります。
また、所得補償保険はうつ病などの精神疾患は対象外となる場合があるので、加入時に保険会社に確認しておく必要があります。フリーランスの中には仕事や生活のストレス、不安などから精神疾患を発症する人もいます。うつ病、躁病、パニック障害、適応障害なども給付金の対象になるのかチェックしておきましょう。
フリーランス協会の有料会員
フリーランス協会とはその名称のとおりフリーランスのための協会です。フリーランス協会の会員には無料でもなれますが、有料会員になることでさまざまなメリットを受けられます。
例えば、ケガや病気で働けなくなった場合は最長で70歳まで補償を受けられます。ケガや病気で働けなくなったことによって喪失する所得を保険金として受け取れます。補償期間は1年間~70歳満了の範囲で選択できます。
また、仕事や日常生活の中でケガや 病気をした際には国内・海外を問わず365日・24時間補償されます。
その他にも、天災によるケガも補償対象となっており、震災などでケガをして働けなくなった場合も収入面で安心です。
3.病気で働けないフリーランスが利用できる制度
フリーランスは自由度が高い働き方が特長であるものの、業務においてのみならず、さまざまな面で自立していることが求められます。その1つとして、病気への備えが挙げられます。とはいっても、収入が安定しないフリーランスや思うような収入を得られないフリーランスも多くいます。
病気を患ったフリーランスが事前の備えなしに利用できる制度として以下の2つが挙げられます。
生活保護
高額療養費制度
生活保護
生活保護とは生活に困窮する人を保護する制度で、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものです。生活保護にはさまざまな受給条件がありますが、病気を患い、働けず、かつ頼れる存在がいなければ、受給の対象になる可能性は高いでしょう。
入院費や治療費の支払いの懸念、病気をきっかけに仕事を失って生活が立ち行かなくなった場合は役所に相談してみるのも一つの手です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは医療費の家計負担が重くならないように、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費の1カ月の上限を決めたものです。上限額は年齢や所得に応じて定められています。
高額な治療費や入院費が必要になったときも多額の支払いに悩まされることを回避できます。
4.フリーランスを長期的に続けるためには健康管理が不可欠
フリーランスは病気やケガなどで働けなくなった場合、収入だけではなく、仕事を失う可能性もあります。クライアントと長年にわたり信頼関係を築いてきたとしても、仕事を請け負えない状態が続けば、クライアントは別の人に仕事を依頼するようになるでしょう。
復帰後に再度依頼してもらえるケースもありますが、相手企業のそのときの状況や人員によってはどうにもならないこともあります。
フリーランスとして長期的に働くためには健康管理がポイントになります。健康的な食生活を心がけ、適度に運動し、睡眠時間をしっかりと確保することが大切です。
忙しさを理由に生活が不規則になったり、十分な栄養を摂取できなかったりすると病気を患い、仕事が今後できなくなるかもしれません。
また、健康診断を定期的に受け、自分の健康状態を把握するようにしましょう。
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5.フリーランスが病気になった場合についてのよくある質問
フリーランスやフリーランスへの転身を検討している人の多くが、病気になった場合のことを考えて不安になっているように思います。
ここでは、フリーランスが病気になった場合についてのよくある質問を4つ紹介します。
自営業やフリーランスの人が入院した場合、生活費はどうなりますか?
個人事業主やフリーランスはうつ病手当をもらえますか?
フリーランスは働けなくなったらどうなりますか?
フリーランスは労災保険に加入できますか?
それぞれ確認していきましょう。
自営業やフリーランスの人が入院した場合、生活費はどうなりますか?
フリーランスは自分の仕事に対して報酬が支払われるため、仕事をしない期間は収入が発生しません。入院期間中の生活費や入院費などは貯蓄で補ったり、自身で加入している保険の給付金で補ったりすることになります。
貯蓄がなく、かつ受け取れる給付金がない場合は親族からの援助、生活保護の受給も検討しなければなりません。
個人事業主やフリーランスはうつ病手当をもらえますか?
国民健康保険にしか加入していないフリーランスは傷病手当金の対象外となるため、うつ病手当の対象には基本的にはなりません。ただし、自分でうつ病手当対象の保険に加入している人はうつ病を患った際に給付金が支給されることもあります。
うつ病などの精神疾患で働けなくなった場合に備えたい人は、精神障害補償特約などが付属する保険の加入が必要です。
フリーランスは働けなくなったらどうなりますか?
フリーランスは働けなくなったら貯蓄や、加入している保険の給付金で生活することになります。あるいは、家賃収入や本などの印税といった不労所得があれば、生活費をカバーできます。
これらが見込めない場合は親族に援助をお願いしたり、生活保護を検討したりします。
フリーランスは労災保険に加入できますか?
令和6年11月からフリーランスは労災保険に任意で加入できるようになりました。労災保険に特別加入することで、仕事中や通勤中に病気になったり、ケガをしたりした場合に補償を受けられます。
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6.まとめ
フリーランスは各種保障が手薄なことから、会社員と同等の給与であればフリーランスの方が生活水準が下がるともいわれています。
病気などで働けなくなった場合に備えて、各種保険に自ら加入しておく必要がある他、貯蓄を心掛ける必要もあるため、所得のうち自由に使えるお金が少なくなるためです。また、仕事は安定しないため、その月に入ったお金をすべて使ってしまうと、収入が下がったときに生活できなくなります。
フリーランスとして成功するには特定のスキルが高いのはもちろんのこと、将来についてしっかりと考え、備える力も不可欠です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。