企業の会計担当者や個人事業主は、煩雑な会計業務をスムーズに済ませる必要があります。会計作業に時間を取られてしまうと、他の作業にリソースを割くことができず、業務全体に支障が出る可能性もあるでしょう。特にすべての作業を1人で行っている個人事業主は、会計作業を短縮することがメリットになります。
そこでおすすめなのが、無料で使える会計ソフトの導入です。
本記事では、無料で使える会計ソフトの特徴や選び方、おすすめのソフトを紹介します。「会計にかかる時間を減らしたい」「初心者でも簡単に会計処理を終わらせたい」といった場合には、無料会計ソフトの利用を検討してみてください。
目次
1.会計ソフトの必要性について
そもそも会計ソフトを導入すべきなのか分からず、なかなか利用の一歩を踏み出せない人もいるでしょう。以下では、会計ソフトの必要性について解説します。
エクセルなどを使うより簡単に作業ができる
会計ソフトは、無料で使えるものにもさまざまな機能が備わっています。記帳や仕訳なども直感的な操作で行えるので、手作業と比較すると短時間で必要な業務が完了するでしょう。会計処理は、Microsoftのエクセルを使う形でも代用可能です。そのため現在もエクセルを使って、会計に必要な業務を行っているケースも少なくありません。
しかし、エクセルでは数値の入力などに時間がかかり、その後の管理も難しくなりがちです。人の手による作業となるためミスの可能性も高く、正確性においても信頼度が下がるでしょう。そのためエクセルを使ってきた企業や個人事業主も、会計ソフトを導入することにメリットがあります。昨今のDX化の流れに合わせて、エクセル環境から会計ソフトに移行するのも1つの選択肢となるでしょう。
会計ソフトで使える機能
会計ソフトには多数の機能があり、例えば以下のものを活用できます。
会計データの入力・計算
書類の入力・出力
仕訳帳や決算報告書の作成
請求書などの送付
税制改正への対応
確定申告書類の作成・出力
銀行や各種サービスと連携した自動入力
レポートの自動作成
カメラを使った領収書の読取 など
会計ソフトが1つあれば、上記のような便利な機能を活用できます。人力で行っていた分の労力と時間を節約できるため、よりスムーズに会計処理や必要な書類の作成が完了するでしょう。
これらの機能は、実際に利用する会計ソフトによって使える範囲や利用方法が異なります。また、無料会計ソフトと有料会計ソフトで使える機能に差があるため、複数のソフトを比較して最適なものを選ぶことがポイントです。
正確なデータ管理による経営判断の向上
会計ソフトを利用することで、経営におけるあらゆるデータを正確に管理できます。お金に関するデータをまとめておけるため、さまざまな用途に活用できるでしょう。
例えば会計ソフトに入力したデータを参考に、経営に関する判断を考えることが可能です。支出のバランスを考慮して投資の決断をしたり、売上の推移をグラフ化して、従業員に経営状況を伝えて問題提起を行ったりできます。
個人事業主も、会計ソフトに入力したデータを使って経営判断を行えます。売掛金の回収状況や取引先ごとの収入金額を確認して、問題の発見や解決方法の模索につなげられます。また、会計ソフトを使うことで確定申告に必要なデータが集めやすくなるため、短時間で申告書の作成ができるメリットもあるでしょう。
2.無料で使えるおすすめの会計ソフト5選!
無料で使える会計ソフトには多くの種類があり、それぞれに特徴やメリットが備わっています。
以下では、無料会計ソフトのなかでも特におすすめのソフトを5つに厳選して紹介します。
やよいの青色申告オンライン
やよいの青色申告オンラインは、青色確定申告を行う個人事業主向けの会計ソフトです。
「セルフプラン」「ベーシックプラン」は無料で1年間利用できるため、コストをかけずに基本的な会計作業を完了させられます。確定申告書の作成、仕訳や記帳の自動化、金融機関やPOSレジ連携など、無料で多くの機能を使えるのがメリットです。スマホアプリもあるので、スマホから簡単に操作ができる点も魅力になるでしょう。
青色申告に必要な入力項目だけを表示するので、初めてでも簡単に確定申告書の作成が行えるでしょう。インボイス制度・電子帳簿保存法に対応しているうえ、e-Taxを使ったオンラインでの申告も可能なので、税務署に確定申告書を持ち込む手間もなくなります。
利用方法 | 公式ページの「無料で試す」ボタンをクリックし、アカウントを作成して登録する |
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対応端末 | パソコン、スマートフォン |
対象者 | 青色申告を行う個人事業主 |
機能(無料版) | 確定申告書の作成・e-Tax 仕訳・記帳の自動化 帳票一覧 金融機関連携 経営状況の見える化 POSレジ連携 会計事務所連携 請求書連携 スマホアプリ |
有料プラン | セルフプラン:年額10,300円+税 ベーシックプラン:年額17,500円+税 トータルプラン:年額30,000円+税 |
フリーウェイ経理Lite
フリーウェイ経理Liteは、永久無料で提供されている会計ソフトです。Windowsパソコンならずっと無料で使うことが可能で、基本的な会計機能も備わっています。2024年12月31日時点で406,644ものユーザーが利用しているため、信頼できる会計ソフトだと言えるでしょう。インストールだけでなくバージョンアップも無料なので、税法の改正など会計処理に関する大きな変化があっても、無料プランのまま利用を続けられます。
マニュアル・FAQ・解説動画などがあるため、初めてでも使い方を理解しやすいでしょう。有料プランに変更すると、遠隔サポートや電話・メールでのサポートを受けることも可能です。
利用方法 | 公式サイトで「無料版ユーザーになる」をクリックし、申し込み内容を入力する |
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対応端末 | パソコン(Windowsのみ)、スマートフォン(アプリはなし) |
対象者 | 個人事業主、中小企業 |
機能(無料版) | 仕訳形式・出納帳形式での入力 決算書など各種帳票への出力 他ソフトのCSVファイルを使ったデータの乗り換え グラフ 決算書 自社製品との連携 |
有料プラン | 有料版(企業版):3,000円/年間36,000円(税抜) 有料版(顧問先版)※税理士とデータ共有:金額は税理士事務所に問い合わせて確認 |
ちまたの会計
ちまたの会計は、非営利組織向けに作られた初めての無料会計ソフトです。自治会・PTA・地域や学校のスポーツクラブ・町内会など、非営利ながらも会計処理が必要となる団体・組織にうってつけの会計ソフトとなっています。家計簿をつける感覚で簡単に記帳ができるため、初心者でも直感的に会計処理が可能です。
クラウド型のソフトであるためインストールが必要なく、複数人での管理・操作も行えます。登録アカウントは別の人に引き継ぐことができるため、会計担当者が変わってもスムーズに機能を利用し続けられます。
利用方法 | 公式ページで「新しく開始する(無料)」をクリックし、必要な情報を入力して新規登録を行う |
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対応端末 | パソコン、スマートフォン(アプリはなし) |
対象者 | 非営利組織 |
機能(無料版) | 支出入力 収入入力 銀行口座からの引き出し・振込・振替 会計年度の設定 科目の設定 科目分類の設定 期首残高 会計予算組み ポータル 年度別 収支推移 科目分類別 収支推移 月別収支グラフ 予実管理表 データバックアップ データインポート ヘルプセンター お問い合せ |
有料プラン | なし |
円簿会計
円簿会計は、高性能な機能を無料で使えることに定評がある会計ソフトです。インストール不要のクラウド型ソフトなので、複数人での管理や共同作業にも使えます。税制改正などに対応するバージョンアップにかかる費用もないため、無料のままずっと活用できます。
会計ソフト「弥生会計」と連携しているため、データをそのまま読み込んで円簿会計側で作業を続けられます。逆に弥生会計にデータを戻すことも可能なので、両方を使い比べてどちらをメインにするか判断することも可能です。
セキュリティ面も充実していて、入力したデータは二重に管理されて安全な状態で保管されます。日本国内2か所のデータセンターで保管されているため、万が一トラブルが発生しても、データが完全に削除されてしまう心配はありません。
利用方法 | 公式ページの「クラウド円簿はこちら」もしくは「クラウド円簿から各ソフトにログイン」をクリックし、円簿会計のアカウントを作成してログインする |
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対応端末 | パソコン、スマートフォン(アプリはなし) |
対象者 | 法人、個人事業主 |
機能(無料版) | 会計基本情報の設定 会社(事業者)情報 ユーザー情報の設定 勘定科目の設定 摘要の設定 部門の設定 会計単位の設定 開始残高の登録 仕訳パターンの登録 複合仕訳入力 元帳入力 付箋入力 仕訳帳 出納帳 仕訳検索 合計残高試算表 補助科目合計残高表 消費税課税区分別集計表 総勘定元帳 補助元帳 データ読み込み データ書き出し 期末整理表 決算報告書表示設定 決算報告書(A4縦形式) 決算報告書(A3横形式) 青色申告決算書 所得税申告書 年次繰越 |
有料プラン | 【円簿PROライト】(青色申告・確定申告用) 早期申告パック:2,980円 期間限定パック:3,980円
ベーシック:9,500円/年 スタンダード:19,000円/年 プレミアム:98,000円/年 |
Main財務管理
Main財務管理も、無料で簡単に利用できる会計ソフトの1つです。初心者でも分かりやすい機能性が特徴で、特に弥生会計・SMILEシリーズ・PCA会計・勘定奉行・JDLなどを使った経験がある場合、スムーズに使いこなせるでしょう。
Main財務管理はインストール型のソフトであり、パソコン1台が使用できるシステムとなっています。複数台利用する場合にはプランを変更し、有料で使用する必要があります。
利用方法 | 公式ページの「利用料0円+バージョンアップ0円無料ダウンロードはこちら」をクリックし、「ダウンロード」をクリックする |
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対応端末 | パソコン(Windowsのみ) |
対象者 | 法人 |
機能(無料版) | 各種仕訳処理(振替・入金・出金・仕訳日報) 会計帳票(総勘定元帳・補助元長・現預金出納帳・残高試算表) 分析帳票(残高試算表・貸借対照表・損益計算書・資金繰実績表) 消費税(科目別税区分集計表・消費税集計表・科目別税区分表) 決算処理(期末貸借対照表・期末損益計算書・決算書作成) 拡張機能(受取/支払手形入力・手形一覧表・種別一覧表) |
有料プラン | 2台まで:200,000円 1ライセンス追加:200,000円 |
3.無料会計ソフトの選び方
無料で使える会計ソフトを選ぶ際には、いくつかのポイントを確認するのが重要です。以下では、無料会計ソフトの選び方について解説します。
必要な機能が備わっているか確認する
会計ソフトを利用する際には、目的や用途を明確にして、必要な機能を事前に把握することがポイントです。無料会計ソフトによって使える機能の範囲や使いやすさは異なるため、もっとも重視する機能が簡単に使えるか、そもそも無料で利用できるのか調べておきましょう。
会計ソフトによっては、有料プランに移行しないと使えない機能があります。無料で使えるのが1番ですが、有料プランにすることで得られるメリットが大きいのなら、プランを変更することも1つの選択肢になります。
分かりやすい・使いやすいものを優先する
会計ソフトを使ううえで、分かりやすさと使いやすさは重要な指標となります。高度な機能が多数付いていても、使いこなせないのなら意味がありません。実際に無料プランで会計ソフトに触れてみて、分かりやすい・使いやすいと感じるか試してみると良いでしょう。
最初は分かりづらい・使いづらいと感じても、マニュアルを読んだりFAQを参考にしたりすることで、スムーズに利用できるようになる可能性もあります。マニュアルやFAQなどのサポートが充実しているかどうかも、無料会計ソフトを選ぶ際のポイントです。
スマートフォンで利用できるかも重要
クラウド型の会計ソフトなどは、スマートフォンからもアクセスして利用できます。買い物時にその場で会計処理をしたり、隙間時間を使って作業を済ませたりできるため、さらなる時間の短縮につながるでしょう。専用のアプリがあると会計作業がスムーズに進められますが、スマートフォンから会計ソフトにアクセスできるだけでも、より手軽に機能を利用できます。
スマートフォンで会計処理をする予定があるのなら、パソコンにインストールするタイプではなく、クラウド型のソフトを使うのがおすすめです。
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4.無料会計ソフトを使うときの注意点
無料の会計ソフトを使う場合、注意点を確認しておくことも大切です。
以下では、無料会計ソフトを有効活用するために注意すべきポイントを紹介します。
利用期間が限られているソフトに注意
会計ソフトのなかには、無料で使える期間を制限しているケースがあります。数週間〜1ヶ月程度の期間が過ぎると、有料プランへの変更を促され、それ以降は無料で使えなくなる可能性もあるでしょう。メインの会計ソフトとして導入するのなら、利用期限がなく永久的に使い続けられるソフトを選びましょう。
機能が制限されているケースに注意
有料プランがある無料会計ソフトの場合、機能が制限されているケースがあります。無料で使える機能は必要最低限になっていて、より快適に使いたい場合には有料プランに変更する必要があるというパターンも珍しくありません。そのため無料で使い続けたいのなら、十分な機能が無料プランに備わっているか確認することが重要です。
先に紹介したおすすめの無料会計ソフトは、無料のままでも便利な機能が備わっています。必要な機能をピックアップして、制限されている無料プランでも問題なく利用できるか考えてみましょう。
サポート対応がされていないソフトもある
無料会計ソフトは、サポート面が充実していないケースもあります。分からないことがあっても問い合わせができず、自分で調べて解決する必要があるでしょう。特に個人事業主は、周囲に頼れる人がいない可能性が高いため、無料会計ソフトを使いこなせないことも懸念されます。
有料プランになると、専用の問い合わせ窓口が利用できたり、電話や遠隔操作でのサポートを利用できたりします。どうしても会計ソフトの使い方が分からない場合には、1度有料プランに変更してサポートを受けて、その後無料プランに戻す方法も検討されるでしょう。
セキュリティにも注意
無料会計ソフトを使う場合、セキュリティに注意が必要なケースがあります。基本的に無料会計ソフトもしっかりとしたセキュリティ体制を整えていますが、使用している自身の環境次第では危険性が高まる可能性があるでしょう。特にパソコンに直接インストールするタイプの会計ソフトは、マルウェアなどの感染によってログイン情報が漏洩し、そのまま情報が流出してしまう危険が考えられます。
インストール型の会計ソフトは、バックアップを自発的に取らないと、故障した際にデータの復旧が難しくなるケースもあるので、セキュリティを考慮するのならクラウドタイプのソフトを使うのがおすすめです。
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5.まとめ
会計ソフトは、無料で利用できるものがたくさんあります。有料ソフトと比べても遜色ない機能を備えたものもあるので、中小企業や個人事業主は、無料会計ソフトで十分な場合も考えられます。現在使っている会計ソフトに不満がある人や、コストカットを進めたい人は、無料で使える会計ソフトに乗り換えることもおすすめです。
上記で紹介した5つの無料会計ソフトを参考に、気になるソフトをまずはお試しで利用してみてはいかがでしょうか。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。