会社員の場合には毎月の給与から所得税が源泉徴収され年末調整によって清算されるため、通常は自ら確定申告を行う必要はありません。しかし退職した場合には、所得税の確定申告が必要となることがあります。
そこでこの記事では退職後や定年退職後に確定申告が必要な場合と必要ない場合や手続きなどについて詳しく解説します。
目次
1.転職先で年末調整が可能な場合、年度途中の退職でも確定申告は不要
雇用契約を結んでいる会社員(給与所得者)は年度内に退職しても、同じ年に転職した場合には通常は確定申告が不要です。転職先の企業が、前職での給与も含めて年末調整を行うためです。
2.退職後に確定申告が必要になる場合
退職後に所得税の確定申告が必要となるのは、すでに源泉徴収で納めた税額と実際に支払うべき税額に差異が生じる場合です。以下の3つのケースが該当します。
退職後、年内に就労せずに過ごした場合
年の途中で退職しその後働いていない場合は、給与から源泉徴収された税金が多く納められている可能性が高くなります。この場合には所得税の確定申告を行い、還付申告をすれば払いすぎた税金が返還されます。
会社員の所得税は毎月の給与に基づいて「見込みの税額」が源泉徴収され、年末にその差額を年末調整で調整する仕組みです。しかし退職するとその年末調整が行われないため源泉徴収された税額には各種控除が反映されていないことが多く、結果として税額が過大になる可能性があります。
この場合会社から発行される源泉徴収票をもとに確定申告を行うことで、過剰に支払った税金の還付を受けることができます。
退職後、フリーランスや個人事業主として働き始めた場合
年の途中で退職してフリーランスや個人事業主になった場合、退職前の「給与所得」とフリーランス後の「事業所得」の2種類が発生します。給与所得に関しては源泉徴収で税金が既に支払われていますが、事業所得についてはまだ税金が納められていないため所得税の確定申告が必要になります。
ライターや士業などの職種では仕事の報酬を受け取る際に源泉徴収されることが多いですが、源泉徴収額はあくまで見込みの税額であり確定申告で正確に精算する必要があります。
さらに報酬から源泉徴収される金額は経費を考慮していないため、事業にかかった経費を確定申告時に計上し個人に応じた控除を適用して所得税を再計算します。払いすぎた場合は、確定申告を通じて還付を受けましょう。
退職後に次の勤め先(アルバイト含む)で年末調整を行っていない場合
年の途中で退職しその後別の勤め先で働き始めた場合、新しい勤務先が前の会社の給与も含めて年末調整を行うので基本的に確定申告は必要ありません。
ただしアルバイトなどの仕事が複数ある場合や「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなかったため、どの会社でも年末調整が行われなかった場合は確定申告が必要になります。
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3.退職後に確定申告が不要なケース
退職後に所得税の確定申告が不要な場合もあります。以下のようなケースでは源泉徴収で既に支払った税金と実際に支払うべき税金に差異が生じないため、確定申告を行う必要はありません。
退職後すぐに再就職し、再就職先で年末調整を受けた場合
年の途中で退職し年内に新しい職場に就職した場合、新しい勤務先が年末調整を行うため確定申告は不要です。この場合、退職した会社からもらった源泉徴収票が必要となります。
定年退職の手続きを行った上で退職した場合
年の途中で定年退職し退職金を受け取った場合、退職金の支払いを受ける前に「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を会社に提出すれば退職所得については確定申告を行う必要はありません。
この申告書は、通常会社から提出を求められます。この申告書を提出しない場合退職金には20.42%の源泉徴収が行われ、その後確定申告で所得税を調整することになります。
退職する際に年末調整を済ませている場合
年末調整が行われるタイミング(厳密には12月に支給される給与を受け取った後)で退職した場合、その年の所得税の精算はすでに年末調整で完了しているため確定申告は不要です。通常年末調整は12月中に行われ12月または1月の給与で過剰に支払った税金が還付されるか、追加で徴収されます。
ただしもし12月中に再就職し再び給与を受け取ることになった場合、転職先の会社で年末調整が行われることになります。この場合、前職で行った年末調整をやり直す必要が生じます。
転職先で12月に給与を受けることが決まっている場合、前職で年末調整を行わないように注意が必要です。
4.定年退職後に確定申告が必要な状況
定年退職の場合年末調整を受けていないことが多いため、通常は所得税の確定申告を行う必要があります。しかし「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を提出している場合は、退職金に関する確定申告は不要です。
定年退職後の翌年以降については、以下のような場合に確定申告が必要になります。
公的年金などの年間収入が400万円を超える場合
退職後に年金を受け取る場合で公的年金などの年間収入が400万円を超えると、確定申告が必要となります。
公的年金以外の所得が年間20万円を超える場合
定年退職後に受け取る公的年金などの収入が年間400万円以下であっても、公的年金以外の所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。以下のような場合が該当します。
アルバイトやパートで収入を得ている場合
アルバイトやパートで得た収入は給与所得に分類され他の公的年金など以外の所得と合算して年間20万円を超える場合、確定申告を行う必要があります。給与所得は「給与収入-給与所得控除」で算出されます。
例えば年収162万5,000円以下の場合、給与所得控除は55万円です。アルバイトやパートの年間給与が75万円を超えると給与所得控除後に20万円を超えることになるため、所得税の確定申告が必要となります。
個人年金を受け取っている、または原稿料の収入がある場合
個人年金や原稿料から得た収入は雑所得に分類され、他の公的年金等以外の所得と合算して年間20万円を超える場合には確定申告を行う必要があります。
株式の配当を受けている場合
株式の配当から得られる収入は配当所得として扱われます。配当所得が他の公的年金等以外の所得と合算して年間20万円を超える場合、確定申告が求められます。
ただし分離課税の特定口座を利用している場合は、確定申告は不要です。
生命保険の満期返戻金を受け取った場合
生命保険の返戻金は保険料を支払った人と保険金を受け取る人が同一で一時金として受け取った場合、受け取った金額から払込金額を差し引いた額が一時所得として扱われます。
この一時所得が他の公的年金等以外の所得と合算して20万円を超える場合、確定申告が必要となります。
所得控除や税額控除を受けたい場合
定年退職後に各種所得控除や税額控除を適用したい場合は、自分で確定申告を行う必要があります。これにより適用された控除分だけ納税額が軽減され、年金から源泉徴収された税金が還付されます。もし適用可能な控除があれば、確定申告をすることが重要です。
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5.確定申告で税金が還付される状況
退職後は再就職しない限り年末調整が行われないため、源泉徴収された税額と実際に支払うべき税額に差が生じることがあります。これを解消するために自分で確定申告を行うことで過剰に支払った所得税を還付してもらったり、翌年の住民税を減らしたりすることができます。
そのため確定申告の時期には、確定申告を行ったほうが得になるケースについて事前に確認しておくことをおすすめします。自分の状況に合った場合には、ぜひチェックしてみてください。
退職所得申告書を未提出の場合
退職金を一時金で受け取った際に「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を提出しなかった場合、確定申告を行うことで過剰に支払った税金を取り戻せる可能性が高いです。
「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を提出していないと、退職金から一律で20.42%の税金が源泉徴収されます。例えば退職金が2,000万円の場合、408.4万円が税金として引かれた後に支払われます。
しかし仮に勤続年数が40年であれば2,200万円の退職所得控除を受けることができるため、確定申告をすることで過剰に徴収された408.4万円を取り戻すことが可能です。
確定申告を行う際は退職した会社から交付される「退職所得の源泉徴収票」を使用しますので、申告時期まで大切に保管しておきましょう。
年の途中で退職や転職をした場合
年の途中で退職や転職をした場合には退職金については確定申告は不要ですが、給与所得に関しては確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります。
先述した通り、年の途中で退職すると過剰に税金を支払っている可能性があります。特に年の前半(1月~6月など)に退職した場合差額が大きくなることが多いので、確定申告を行い払いすぎた税金を取り戻しましょう。
また転職後に転職先で年末調整が行われると本来は税額が正しく計算されますが、前職の源泉徴収票を提出していない場合には正しい税額が計算されません。特に転職によって空白期間があった場合などは、過剰に税金を支払っている可能性が高くなります。
確定申告を行う際には、退職した勤務先から発行された「給与所得の源泉徴収票」が必要です。もし源泉徴収票を紛失した場合は、退職した勤務先の経理担当者に連絡して再発行を依頼しましょう。
生命保険料を支払った場合
生命保険料や個人年金保険料を支払っている場合、「生命保険料控除」を利用することができます。
確定申告を行う際には、毎年10月~11月頃に保険会社から送付される生命保険料控除証明書が必要です。支払いがまだの場合は支払い後に順次送付されます。確定申告の時期までこの証明書を大切に保管しておくようにしましょう。
住宅ローン控除が適用される場合
住宅ローンや耐震・省エネ・バリアフリー化のリフォームローンを利用している場合、「住宅ローン控除」を受けられることがあります。
この控除を適用するには、入居した翌年に自分で確定申告を行う必要があります。翌年以降は勤務先の年末調整で手続きできますが、退職後は確定申告をする必要があります。
ふるさと納税など寄付を行った場合
ふるさと納税で都道府県や市区町村に寄付をしたり、定められた要件を満たす公益社団法人や特定非営利活動法人に寄付をした場合には「寄付金控除」を受けることができます。
ふるさと納税は寄付額に対して税金が直接減額されるわけではありませんが、寄付額の最大3割相当の返礼品がもらえる点が大きな魅力で利用者が増加しています。
税金の精算が簡単にできる「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をしなくても控除が適用されます。この制度は、確定申告が面倒だと感じる人でも利用しやすい方法です。ワンストップ特例制度を使わない場合は、確定申告を通じて寄付金控除を申請する必要があります。
高額な医療費を負担した場合
1月から12月までに支払った医療費の自己負担額が10万円以上(年収が200万円未満の人は総所得金額等の5%)に達した場合、「医療費控除」を受けることができます。
医療費控除の対象には病院や薬局で支払った医療費のほか、通院費やドラッグストアで購入した市販薬や自費での歯科インプラントや治療目的でのマッサージ・鍼治療なども含まれます。
医療費控除を申請する際には領収書を保管することが基本となるため、病院の領収書や市販薬のレシートはできるだけ保存しておくことをおすすめします。そして年が明けたら昨年分の医療費の合計額を計算し、医療費控除が適用できるかどうかを確認しましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金を払っている場合
個人型確定拠出年金(iDeCo)・小規模企業共済・心身障害者扶養共済制度に対して掛け金を支払った場合、その掛け金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として控除対象となります。これらの制度を利用している方は控除額が大きいため、確定申告を行って税負担を軽減しましょう。
また2022年の改正により、iDeCoの加入年齢が60歳未満から65歳未満に引き上げられました。退職して無職の場合は国民年金への任意加入が条件となります。iDeCoや国民年金への任意加入は、老後の生活資金をサポートするための有益な制度です。利用可能かどうか、確認してみることをおすすめします。
天引きされていない社会保険料を支払った場合
自分や家族の国民年金保険料・国民健康保険料・介護保険料などの社会保険料を支払っている場合、「社会保険料控除」を受けることができます。
年金受給者の場合には公的年金から国民健康保険料があらかじめ差し引かれる特別徴収が行われており公的年金等の源泉徴収票に記載された社会保険料額が実際に支払った金額と一致すれば、自動的に社会保険料控除が適用されます。この場合、特に確定申告は必要ありません。
しかし「配偶者や子どもの年金保険料を支払っている」「国民健康保険料を特別徴収にしていない」など、源泉徴収票に記載されていない社会保険料を支払った場合は確定申告を行うことで社会保険料控除が適用され、過剰に支払った税金を取り戻すことが可能です。
扶養家族がいるまたは家族構成が変わった場合
家族の状況によって、所得控除を受けられる場合があります。例えば18歳以上の子どもがいる場合は「扶養控除」、一定の収入以下の配偶者がいる場合は「配偶者(特別)控除」を適用できます。
退職後に公的年金等を受け取る人は、公的年金等の支払者に「扶養親族等申告書」を提出していれば確定申告をせずとも自動的にこれらの控除を受けられます。
もし「扶養親族等申告書」を提出していなかったり年の途中で家族が仕事を辞めて扶養親族になった場合などは、確定申告を行うことで税金が還付されることがあります。
災害や盗難の被害にあった場合
台風や地震などの自然災害または盗難や横領などで自宅などに損害を受けた場合、「雑損控除」を活用することで税金の負担を軽減することができます。
確定申告を行う際には災害による支出の領収書や被災状況を確認できる写真など、関連する資料が求められることがあります。災害に関する証拠や書類はしっかりと保管しておくことが重要です。
不動産所得や事業所得が赤字の場合
給与・年金・退職金といった収入がある一方で不動産所得・事業所得・譲渡所得などで損失が発生している場合、「損益通算」を利用することで税金の負担を軽減できることがあります。
不動産投資や事業運営をしている人だけでなく、株式投資などで損失が生じた場合にも適用できる可能性があります。該当するかもしれない人は、確認してみると良いでしょう。
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6.死亡退職金や失業手当は確定申告が必要か?
死亡退職金を受け取った場合や、退職後に失業手当を受け取った場合の確定申告について説明します。
相続人に死亡退職金が支払われた場合
退職金のうち働いていた人が亡くなった際に遺族が受け取る死亡退職金は、原則として相続税の対象となります。
ただし死亡退職金には非課税枠があり、法定相続人1人につき500万円までは非課税となります。もし受け取った死亡退職金の額がこの非課税枠を超えた場合、相続税が課されることになるので、注意が必要です。
退職後に失業手当を受け取った場合
退職後に再就職活動を行うと、雇用保険から失業手当を受け取ることができる場合があります。
失業手当は収入にあたりますが生活支援を目的とした制度であるため、所得税は課税されません。したがって、失業手当については確定申告を行う必要はありません。
7.退職後に確定申告をしないと?
もし確定申告が必要な場合に納期限を過ぎても申告しなければ、ペナルティとして加算税が課されることがあります。この加算税は、申告義務を適切に果たさなかった場合に課される制裁的な税金です。確定申告の期限(個人の場合には通常は翌年の3月15日)までに申告をしなければ、「無申告加算税」が発生する可能性があります。
無申告加算税は、納税額に以下の割合を加算する形で課されます。
税務署からの調査通知前に自主的に期限後申告を行った場合:税務署から調査の事前通知を受ける前に自発的に期限後申告を行った場合は、納付する税額に加えてその税額の5%に相当する無申告加算税が課されます。
税務署から調査通知後に期限後申告を行った場合(調査による決定を予知する前の申告):税務署から調査の事前通知を受けた後に期限後申告を行った場合は、納付すべき税額に10%の無申告加算税が加算されます。税額が50万円を超える場合は、超過部分に対して15%の加算税が適用されます。
さらに令和6年1月1日以降に申告期限が到来する場合は税額の50万円以下の部分には10%・50万円を超え300万円までの部分には15%・300万円を超える部分には25%の加算税が適用されます。加えて過去に無申告加算税や重加算税が課された場合は、さらに10%の無申告加算税が加算されます。
税務署の調査後に期限後申告を行った場合(調査による決定を予知して行った申告) :税務署の調査後に申告した場合や税務署から納税額の決定を受けた場合は、税額に対して15%の無申告加算税が課されます。税額が50万円を超える場合、その超過分には20%の加算税が適用されます。
令和6年1月1日以降に申告期限が到来する場合、50万円までの部分には15%・50万円を超え300万円までには20%・300万円を超える部分には30%の加算税が課されます。さらに過去5年間に無申告加算税や重加算税が課された場合は、10%の加算税が追加されます。
帳簿の提示義務を怠った場合の加算税:令和6年1月1日以降税務調査で帳簿の提示を求められた際に提出しなかった場合や売上金額の記載が半分未満だった場合には、10%の加算税が課されます。売上金額の記載が3分の2未満の場合は、5%の加算税が課されます。
無申告加算税が免除される条件:法定申告期限から1か月以内に自主的に申告を行っており、かつ申告期限内に申告しようという意思が認められること。
所得税の納期限は確定申告の期限と同じ日です。もし税務署から指摘を受けて納税が遅れた場合、延滞税(通常、2ヶ月以内は7.3%、2ヶ月超過後は14.6%)が加算されることもあります。
他にもローンなどで必要な所得証明書が発行されないなど、さまざまな不利益が生じる可能性があるため確定申告は期限内に行うようにしましょう。
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8.退職後の確定申告に必要な書類
確定申告の内容は、個人の状況によって異なります。例えば以下のようなケースでは、確定申告に必要なのは基本的に確定申告書のみです。
年度途中で退職し、再就職先が決まっていない場合
定年退職後に退職金を受け取り、その後は仕事をしていない場合
定年後に公的年金だけを受け取り、その他の所得がない場合
確定申告書は、個人の1年間(1月1日から12月31日まで)の所得や税額を税務署に報告するための書類です。通常、翌年の3月15日までに提出する必要があります。
また、税金を多く支払っていた場合には、還付を受けるために確定申告書を使って還付申告を行います。還付申告は、翌年1月1日から5年間、提出が可能です。
確定申告書を作成する際に必要な書類
確定申告書を作成するために必要な書類は、申告内容によって異なります。
給与所得や退職所得がある場合、勤務先や元勤務先から発行された源泉徴収票が必要です。公的年金を受け取っている場合は、日本年金機構などから送付される公的年金等の源泉徴収票を用意します。これらの源泉徴収票は以前は確定申告に添付する必要がありましたが、2019年4月以降は添付は不要となりました。
その他所得控除や税額控除を受ける場合は、そのための証明書類を準備する必要があります。例えば医療費控除を申告する場合は、医療機関から発行された領収書が求められます。申告内容によっては追加で添付が必要な書類もあるため、分からない場合は税務署に確認するか税理士に相談することをおすすめします。
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9.退職金に対する税金の種類
退職金に関連する3つの税金について、以下で詳しく説明します。
住民税
所得税
復興特別所得税
それぞれの税金について、順を追って解説します。
住民税の取り扱い
住民税は、居住地である都道府県や市区町村が課す税金です。退職金に対する住民税は分離課税され、給与所得とは別に計算されます。なお退職金に関する住民税の計算および納税手続きは勤務先が所定の手続きを行うことで処理されるため、退職した人自身が税務手続きを行う必要はありません。
所得税の適用
所得税は、個人が得た所得に対して課せられる税金です。会社員や自営業者が収入を得ると、その所得に応じた税額を納めます。1年間の総所得から、個別の状況に応じた所得控除を差し引いた後に残る課税所得を基に税額が決定されます。
所得税は所得が増えるほど税率が高くなる「累進課税」を採用しているため、高所得者ほど高い税率が適用されます。
復興特別所得税の課税
復興特別所得税は、基準となる所得税額に2.1%を上乗せした追加税です。この税金は平成25年から令和19年までの期間中に毎年所得税と一緒に申告し、納付する必要があります。
復興特別所得税は東日本大震災からの復興支援のための財源を確保する目的で徴収されており、所得税を納める義務のある個人はこの税金も合わせて納めなければなりません。
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10.退職金に対する税額の計算方法
退職金を一括で受け取る場合には分離課税が適用され、他の収入とは区別して退職所得として課税されます。退職所得の算出においては、「退職所得控除」を利用することができます。
退職所得控除の算出方法
勤続年数が20年以下の場合:勤続年数 × 40万円(ただし、合計額が80万円未満の場合は80万円となります)
勤続年数が20年を超える場合:800万円 + (勤続年数 - 20年)× 70万円
退職所得控除額を算出した後、退職所得は次の計算式で求められます:
退職所得 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2 |
収入金額は源泉徴収前の金額を指します。上記の計算式で退職所得を算出し、退職金に対する所得税額を計算することができます。
また、企業年金やiDeCoを一時金として受け取る際に退職一時金も受け取る場合があります。その際それぞれの退職金の受け取りタイミングによって退職所得控除額に調整が必要となることがあるので、注意が必要です。
11.退職金が非課税となるケースはある?
退職金が非課税で受け取れる場合とは、退職金の金額が退職所得控除額を下回る場合です。勤続年数が長いほど非課税枠が広がるため、退職金が非課税で受け取れる可能性が高くなります。
12.まとめ
退職後に確定申告が必要となる場合があります。例えば途中で退職し再就職先が決まらない場合や、定年退職後にパートで働き始めて一定の収入がある場合などです。
確定申告が必要かどうかは個々の状況によって異なりますので、今回説明した内容を元に自分の状況がどのケースに該当するかを確認してみましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。