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小規模企業共済とは?どこで加入できる?メリット・デメリット、掛金、解約、貸付など解説

公開日:2025/01/28最終更新日:2025/01/28

日本では少子高齢化が進む中で、年金制度への不安がますます広がっています。公的年金だけで老後の生活費をまかなうことが難しくなるのではないかという懸念は、幅広い世代で共有されています。


特に、将来の収入源が十分ではないかもしれないという漠然とした不安を抱えている人も少なくないのではないでしょうか。


こうした不安を抱える中、大企業などに長年勤めたサラリーマンにとって大きな安心材料となるのが「退職金」の存在です。一方でフリーランス・個人事業主・中小企業の経営者にとっては、退職金という制度はあまりなじみがないかもしれません。


しかし、そうした状況でも全く対策がないわけではありません。実は、フリーランスや個人事業主、中小企業の経営者の老後資金対策として、「小規模企業共済」という制度が注目されています。


そこで本記事では、「小規模企業共済」について詳しく解説し、この制度がどのような特徴を持っていてどのように活用すれば老後の生活資金を効率的に準備できるのかを分かりやすくご説明します。


1.小規模企業共済とは?

小規模企業共済はフリーランス(個人事業主)や自営業者など、小規模企業の経営者や役員が廃業や退職に備えるための制度で1965年に設立されました。小規模企業経営者のための退職金制度とも呼ばれています。


これは個人で加入する制度で、掛金を積み立てることで廃業・退職時・引退時に積み立てた金額に応じた共済金を受け取ることができます。


具体的には法人を解散して廃業した場合には「共済金A」、病気・ケガ・65歳以上で役員を退任した場合には「共済金B」、その他の理由で退任した場合には「準共済金」が支給されます。


この制度の運営は、独立行政法人である「中小企業基盤整備機構」(中小機構)が担当しています。

加入できる対象者について

以下の条件を満たす場合、小規模企業共済に加入することが可能です。この制度は、フリーランス(個人事業主)や自営業者など、小規模企業を経営する方やその役員を対象としています。例えば以下の方です。

  • 建設業・製造業・運輸業・サービス業(宿泊業・娯楽業のみ)・不動産業・農業などを営む場合で常時使用する従業員が20人以下である個人事業主または会社の役員

  • 商業(卸売業・小売業)やサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合・常時使用する従業員が5人以下である個人事業主または会社の役員

  • 事業に従事する組合員が20人以下の企業組合の役員、または常時使用する従業員が20人以下の協業組合の役員

  • 農業を主として営む農事組合法人において、常時使用する従業員が20人以下である役員

  • 弁護士法人や税理士法人などの士業法人において、常時使用する従業員が5人以下である社員

  • 上記の条件に該当する個人事業主が行う事業に関わる共同経営者(1人の個人事業主につき2人まで)

各業種や組織の規模に応じて加入資格が定められています。

加入手続きの流れ

小規模企業共済の加入手続きは、加入者の立場や手続きを行う窓口によって異なる場合がありますが、基本的な流れは以下の通りです。

  1. 必要な書類を取得する

  2. 書類に必要事項を記入する

  3. 窓口に書類を提出する

  4. 中小機構から送付される書類を受け取る

必要となる書類

加入者の立場によって必要書類は異なり、大きく分けて「個人事業主」「法人(株式会社など)の役員」「共同経営者」の3つのケースがあります。


例えば個人事業主の場合には確定申告書の控え(税務署の受付印が押印されたものまたは受信通知が付されたもの)が必要です。

申請書類の提出方法

小規模企業共済の加入手続きは、中小機構と業務委託契約を締結している団体や金融機関の窓口で行います。手続きを行う窓口によって詳細は異なり、郵送による手続きは対応していません。


初回の掛金を現金で支払う場合は、払込区分(1か月・半年・1年)に応じた金額を準備して持参する必要があります。

掛金の設定と特徴

小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から70,000円の範囲内で(500円単位で)自由に選べます。支払った掛金は、全額が所得控除の対象となります。掛金の支払い方法は預金口座振替で行います。


また掛金の前納も可能で、その場合は前納金額に対して一定の割引が適用されます。

2.小規模企業共済のメリット

小規模企業共済の最も大きな利点は、掛金全額が所得控除の対象となることです。また掛金の範囲内で貸付を受けることができる制度があるなど、その他のメリットも存在します。

老後資金を準備しながら節税ができる

サラリーマンの場合、勤務先に退職金制度があることが一般的です。長年勤めた企業から退職時にまとまった金額を受け取れるため、老後の生活資金として大きな安心感を得られるでしょう。


しかし個人事業主や中小企業の経営者の場合、事業を廃業したり引退したりしてもサラリーマンのような退職金制度は基本的に存在しません。そのため、現役時代のうちから計画的に老後資金を準備しておくことが重要となります。


そんな中、自営業者や中小企業の経営者にとって、退職金の代わりとなる制度として注目されているのが「小規模企業共済」です。この制度は老後資金を計画的に積み立てられる仕組みであり、さらに支払った掛金の全額が所得控除の対象になるという大きなメリットがあります。


小規模企業共済に加入することで毎月一定額の掛金を積み立てつつ、その全額を所得控除として確定申告時に申告することで節税効果を得られるのです。


また小規模企業共済の最大の特徴は、一定の条件を満たした場合に事業の廃業や引退時に積み立てた掛金に応じてまとまった金額が支給される点です。この払い戻し金はいわば退職金としての役割を果たし、老後の生活資金や新たな挑戦の資金として活用することができます。


さらに個人事業主や経営者が活用できる老後資金準備の手段として、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」もあります。iDeCoは小規模企業共済と同様に、掛金が所得控除の対象となり、老後資金を積み立てることができる制度です。


ただし、両制度は仕組みや条件が異なるため、どちらを選択するかは事業の内容や個々の状況によって異なります。


これらの制度を活用するにあたってはそれぞれのメリットやデメリットを十分に理解し、自分に合った選択をすることが重要です。


適切な制度を選び計画的に老後資金を準備することで、安心した将来を迎えられるでしょう。

掛金の金額を柔軟に変更できる

掛金は1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に設定でき、加入後も増額や減額が自由に行えます。もし経営の悪化などで掛金を支払えない場合、一時的に支払いを停止する「掛け止め」の措置も取ることができます。

受け取り方法は一括または分割から選択可能

共済金は、退職や廃業時に受け取ることができます。満期や満額の制度はなく、受取方法は「一括」「分割」「一括と分割の併用」のいずれかを選ぶことができます。


一括で受け取る場合には税制上「退職所得」として扱われ、分割で受け取る場合は「雑所得」として扱われます。事業所得などと比べて税負担が大幅に軽減されます。


また6か月以上積み立てていると、廃業時に共済金を受け取ることができ、退職金の代わりにすることが可能です。12か月以上積み立てた場合、解約手当金も受け取ることができます。


共済金を受け取るためには印鑑登録証明書・マイナンバー確認書類のほか共済金請求書・退職所得申告書・共済契約締結証書などの書類が必要です。

低利率で利用できる貸付制度がある

事業を営んでいると、経営者は売上の減少や資金繰りの厳しさに直面することがあります。そのような場合に活用できる手段の一つが、小規模企業共済の貸付制度です。この制度に加入していれば、これまでの掛金の一定割合まで貸付を受けることができます。貸付にはさまざまな種類があり、即日貸付も可能です。


貸付の種類には次のようなものがあります:

  • 一般貸付け

  • 緊急経営安定貸付け

  • 傷病災害時貸付け(病気などの場合)

  • 福祉対応貸付け

  • 創業転業時・新規事業展開などの貸付け

  • 事業承継貸付け

  • 廃業準備貸付け

一般貸付は、事業資金を迅速に借り入れることができる便利な制度です。借入額は掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)となります。


現在借り入れがない場合は、中小企業基盤整備機構から送付された最新の「貸付限度額のお知らせ」を確認してください。


もし既に借入れをしている場合やお知らせが手元にない場合は共済手帳などで共済契約書番号を確認し、コールセンターに本人が問い合わせる必要があります(本人確認が求められます)。


貸付限度額は掛金残高と納付月数に基づいて、年に2回(4月と10月)設定されます。

一般貸付制度の借入期間

  • 100万円以下:6か月・12か月

  • 100万円~300万円:6か月・12か月・24か月

  • 300万円~500万円:6か月・12か月・24か月・36か月

  • 500万円以上:6か月・12か月・24か月・36か月・60か月

一般貸付制度の借入金の返済方法

  • 借入期間が6か月以上または12か月の場合:期限一括償還

  • 借入期間が24か月、30か月、60か月の場合:6か月ごとに元金均等割賦償還

一般貸付制度の必要書類

  • 印鑑登録証明書(発行から3か月以内の原本)

  • 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)

  • 貸付金額に応じた収入印紙

  • 共済契約者本人の実印

  • 貸付限度額のお知らせ など

確定申告対策としても活用できる

小規模企業共済の掛金支払い方法は通常月払いですが、年払いを選択することも可能です。そのため、12月の段階で節税対策を行いたい場合には、年払いで共済に加入することができます。


つまり「大きな利益が出て、納税額が増える見込みがある」といった場合、節税として12月中に1年分の掛金を一括で支払って年払いで加入することもできます。

3.小規模企業共済のデメリット

節税効果が高く便利な貸付制度が利用できる小規模企業共済ですが、いくつかの注意すべき点も存在します。加入を考える際には、これらの注意点をしっかりと把握しておくことが重要です。

掛金の納付期間が12か月未満だと掛け捨てになる可能性

共済金は個人事業主が廃業したり、法人が解散または解約した場合に受け取ることができます。


ただし掛金納付月数が6か月未満の場合、掛け捨てになります。また12か月未満の場合、準共済金(法人の解散・病気や怪我以外の理由などの場合)や解約手当金(任意解約や掛金を12か月以上滞納した場合の機構解約)は受け取ることができません。


なお災害など契約者の責任ではない理由(やむを得ない理由)で掛金が滞納された場合は、共済契約を継続することが可能です。

元本割れのリスクがある

掛金納付月数が240か月(20年)未満の場合に任意解約をすると、掛金の合計額が元本を下回り元本割れする可能性があります。


また加入期間が240か月以上であっても、途中で掛金の増減を行いその掛金区分ごとの納付月数が240か月未満になると、解約手当金が掛金の合計額を下回ることがあります。


そのため、20年以上加入しないと逆に損をする場合もあります。目先の節税効果にとらわれず、加入する際には十分に検討することが重要です。

共済金の受け取り時に課税が発生

積立時に支払った掛金は全額が控除対象となり、節税が可能ですが、受け取る際には退職所得(一括)または雑所得(分割)として課税されます。小規模企業共済は「課税を先送りする制度」とも言えるでしょう。


なお退職所得は他の所得とは分けて計算され、税制上の重税を避けるために特別な軽減措置が講じられています。

4.小規模企業共済の共済金や解約手当金

小規模企業共済では、基本的にどのような理由でも共済金または解約手当金を請求することができます。ただし請求の理由や契約者の事業における立場によって、受け取れる共済金や解約手当金の種類が以下の4つに分類されます。

  • 共済金A

  • 共済金B

  • 準共済金

  • 解約手当金

それぞれの種類によって受け取れる金額が異なります。まずは、「自分が該当する請求事由がどの種類になるのか」を確認することが大切です。

「請求事由」によって分類される共済金の種類

請求事由および契約者の事業上の立場に応じた共済金等の種類は、以下のように分類されます。概略として、事業の廃業や解約がやむを得ない場合、または老後の給付を受け取る場合には「共済金」が支給されます。一方で、任意で解約した場合には「解約手当金」が支払われます。


■「共済金等の種類」と「請求事由」の一覧

共済金等の種類

請求事由

個人事業主の場合

個人事業主の共同経営者の場合

会社等役員の場合

共済金 A

個人事業を廃業した場合

×

×

共済契約者が死亡した場合

×

個人事業主の廃業に伴って、共同経営者を退任した場合

×

×

病気や負傷によって共同経営者を退任した場合

×

×

法人等を解散した場合(倒産含む)

×

×

共済金 B

老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払込)

病気や負傷または65歳以上で役員を退任した場合

×

×

共済契約者が死亡した場合

×

×

準共済金

個人事業の法人成りによって、加入資格を喪失した場合

×


平成28年3月以前に個人事業主が配偶者または子供へ事業を譲渡し、共同経営者が退任した場合

×

×

平成28年3月以前に、配偶者または子へ事業の全部を譲渡した場合

×

×

法人解散や病気、負傷以外で65歳未満で役員退任した場合

×

×

解約手当金

任意解約

機構解約(掛金12か月以上滞納)

個人事業が法人成りしたが、加入資格喪失せず解約した場合

×

共同経営者を任意で退任した場合

×

×

このように、請求事由や契約者の立場によって受け取れる共済金等の種類が異なるため、自身の事例にどの種類が該当するかを確認することが大切です。

共済金 A

「共済金A」の請求事由には主に事業の廃業や法人の解散、契約者の死亡が含まれます。事業の譲渡による廃業に関しては譲渡日が重要です。これには注意が必要です。


いずれの請求事由でも掛金納付月数が6か月未満の場合は、共済金の請求資格がなく掛け捨てとなります。共済金の受け取り方法は通常一括ですが、特定の条件を満たす場合には分割受取や一括と分割の併用も可能です。

共済金 B

「共済金B」は、主に老齢給付を対象としています。会社等の役員については、その他の請求事由も認められます。契約者の事業上の地位ごとの請求事由は上表の通りです。


個人事業主

  • 老齢給付を受ける


個人事業主の共同経営者

  • 老齢給付を受ける


会社等役員

  • 老齢給付を受ける

  • 65歳以上で役員を退任した(退任日が平成28年4月以降の場合)

  • 病気やけがにより役員を退任した

  • 共済契約者が死亡した

老齢給付を受けるためには、「65歳以上」であり、「掛金納付月数が180か月以上」であることが条件です。事業の廃止は必要なく、働きながらでも共済金を受け取ることができます。


共済金Bも掛金納付月数が6か月未満の場合には掛け捨てとなります。


受け取り方法については共済金Aと同様に、基本的には一括受取ですが条件を満たす場合には分割や一括と分割の併用も可能です。

準共済金

「準共済金」は主に共済金AやBの対象とならない場合に、加入資格を失った場合に適用されるものです。ただし契約者が個人事業主で、加入日が平成22年12月以前であれば法人成りにより資格を失った場合でも共済金Aが適用されます。


契約者の事業上の地位ごとの請求事由は以下の通りです。


個人事業主

  • 個人事業を法人成りしたため、加入資格を失った

  • 事業を配偶者や子に全て譲渡した(譲渡日が平成28年3月以前の場合)

個人事業主の共同経営者

  • 個人事業を法人成りしたため、加入資格を失った

  • 事業主が事業を配偶者や子に譲渡したため、共同経営者も地位を譲渡し退任した(譲渡日が平成28年3月以前の場合)

会社等役員

  • 65歳未満で役員を退任した(共済金A・Bに該当しない場合)

請求条件が少し厳しく、掛金納付月数が12か月未満の場合は掛け捨てとなります。共済金の受け取り方法は一括のみで、分割や併用は選べません。

解約手当金

解約手当金は、共済金のすべてに該当しない場合に請求できるものです。これには任意解約の他、掛金未払いによる機構解約も含まれます。ただし、不正行為による機構解約では解約手当金を請求することはできません。


契約者の事業上の地位ごとの請求事由は以下の通りです。


個人事業主

  • 任意解約を行った

  • 掛金を12か月以上滞納し機構解約となった

  • 個人事業の法人成り後、加入資格を失わずに解約した

個人事業主の共同経営者

  • 任意解約を行った

  • 掛金を12か月以上滞納し機構解約となった

  • 個人事業の法人成り後、加入資格を失わずに解約した

  • 共同経営者を任意で退任した

会社等役員

  • 任意解約を行った

  • 掛金を12か月以上滞納し機構解約となった

なお掛金納付月数が12か月未満の場合、掛け捨てとなります。受け取り方法は一括のみで、分割や併用はできません。

5.小規模企業共済の受取方法と税制上の取り扱い

小規模企業共済の共済金には、次の3つの受け取り方法があります。

  • 一括

  • 分割

  • 一括と分割の併用

ただし受け取り方は、特定の条件を満たす場合にのみ選択できます。受け取り方法によって税法上の取り扱いが異なるため、解約時には注意が必要です。

共済金などの受け取り方法について

小規模企業共済の共済金は、通常一括での受け取りが基本となります。しかし共済金AおよびBについては以下の条件を全て満たす場合に限り、分割または一括・分割の併用で受け取ることができます。

  • 請求事由が共済契約者の死亡でないこと

  • 請求事由が発生した時点で60歳以上であること

  • 分割受け取りの場合、金額が300万円以上であること

  • 併用受け取りの場合、一括分が30万円以上、分割分が300万円以上であること

税制上の取り扱い

共済金等の受け取り方法や請求事由により、税法上の取り扱いが異なります。これにより課税される税金の種類や控除額も異なるため、最適な受け取り方法を選ぶことが重要です。


また併用受け取りの場合は、一括部分と分割部分で異なる税法上の扱いが適用されますので注意が必要です。

退職所得として扱われるケース

次のいずれかに該当する場合、退職所得として扱われ退職所得控除が適用されます。

  • 共済金(死亡の場合を除く)または準共済金を一括で受け取った場合

  • 65歳以上の方が任意解約を行った場合、または65歳以上の共同経営者が任意退任した場合

  • 個人事業主が法人成りをした結果、加入資格は保持したものの解約を行った場合

公的年金等の雑所得として扱われるケース

共済金を分割で受け取った場合、公的年金等の雑所得として扱われて公的年金等控除が適用されます。

一時所得として扱われるケース

以下のいずれかに該当する場合、一時所得として扱われます。

  • 65歳未満の方が任意解約を行う場合、または65歳未満の共同経営者が任意退任する場合

  • 12か月以上の掛金未払いによる解約(機構解約)で解約手当金を受け取る場合

一時所得は総合課税の対象となり、給与や事業所得などその他の総合課税対象と合算して最終的な納税額が決定されます。


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6.小規模企業共済以外で個人事業主が利用できる制度

小規模企業共済は「経営者の退職金」として知られていますが、同様に活用できる制度として、iDeCoや年金制度についても触れておきます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は「individual-type Defined Contribution pension plan」の略称で自分自身が主体となって掛金を支払い、選択した金融商品で運用を行いながら将来の年金資金を積み立てる私的年金制度の一つです。


この制度は国が運営している公的年金に加えて、自分で準備を進めることで老後の資金を確保するために活用されています。


iDeCoの掛金は加入者の状況に応じて毎月一定額を積み立てる形で運用され、65歳まで掛金を支払うことが可能です。そして積み立てた年金資金は原則として60歳以降に受け取ることができます。


受け取り方法についても年金形式で分割して受け取る方法や、一時金としてまとめて受け取る方法が選べるなど柔軟性が高い仕組みとなっています。


この制度の大きな魅力の一つが、税制上の優遇措置です。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため掛金を支払うことで課税所得が減少し、結果的に所得税や住民税の負担を軽減できます。


また積み立てた資金が運用されて発生する運用益も受け取るまで非課税となるため、効率的に資産を増やすことが可能です。


この所得控除については小規模企業共済と同様に、確定申告の際に「小規模企業共済等掛金控除」の欄で申告する形になります。


一方でiDeCoは小規模企業共済とは異なる特徴を持っています。最大の違いは、iDeCoでは掛金を自分で運用する点にあります。


iDeCoでは投資信託・預金・保険などの金融商品を自身で選び、それらの運用結果に応じて将来受け取る金額が決まります。そのため運用次第では元本を上回る利益を得られる可能性がある一方、元本割れのリスクも伴うため投資判断が求められる制度です。


小規模企業共済は掛金を積み立てるだけであり、運用に関する意思決定が必要ない点が異なります。


どちらの制度が適しているかはそれぞれのリスク許容度や老後資金の目標額、また事業や収入の状況に応じて異なります。


iDeCoは自分自身の運用スキルやリスク管理能力を活用して資産形成を行いたいと考えている人にとって、非常に魅力的な選択肢です。

国民年金・厚生年金

個人事業主が加入する年金制度は国民年金であり、これは老後の生活資金を支える基盤として位置づけられています。


ただし国民年金はあくまで基本的な生活費を補うためのものであり、退職金としての性質を持つものではありません。そのため現役時代に収入の一部を計画的に蓄えておくことが、老後の生活を安定させるための鍵となります。


国民年金の保険料を支払った場合、それは確定申告の際に「社会保険料控除」として申告することで全額を所得控除の対象にすることができます。これにより所得税や住民税の負担が軽減されるため、支払う保険料が節税効果をもたらすというメリットもあります。


この控除の仕組みを活用することで少しでも手取り収入を増やしつつ、将来の年金受給のための基盤をしっかりと築くことが可能です。ただし国民年金だけでは老後の生活費をすべてカバーするのは難しいでしょうから、他の資金準備と組み合わせて計画を立てることが重要です。


特に過去にサラリーマンとして働いていた経験があり、その際に厚生年金に加入していた場合、将来受け取ることができる年金額が異なってきます。そのため、厚生年金分を含めた老後資金の総額を事前にシミュレーションしておくことをお勧めします。


さらに、老後資金をより効果的に準備するためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済などの制度を併用することで、老後の生活資金を多角的に準備することができます。


国民年金を基盤としつつ厚生年金や私的年金制度を上手に組み合わせることで、老後の安心感を大きく高めることができるでしょう。


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7.まとめ

個人事業主や中小企業の経営者は、事業のリスクを考慮しながら将来の備えをしておくことが重要です。小規模企業共済は引退後だけでなく、事業運営中に起こるさまざまな状況にも対応できる制度ですので検討する価値はあるでしょう。


掛金を多く支払い続けるのは難しいかもしれませんが、事業の資金繰りに負担がかからない範囲で無理なく続けていくことが大切です。


いざという時に貸付制度などを利用できる状況を整えておくと、安心感を得られるでしょう。

本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

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