少なくない人が「転職は年齢を重ねたら難しくなる」「転職できるのは30代前半まで」といった言葉を聞いたことがあると思います。しかし、これらは必ずしも事実ではなく、時代によっても変わるものです。現在は少子高齢化により、働き手が不足している企業や業界は多く、かつ60代以降も働く人は珍しくありません。こうしたことから、転職を諦めるべき年齢というのは一般的に定められていないように思います。
とはいっても、転職活動がうまくいかないと、転職を諦めるべきか悩んだり、仕事は諦めが肝心だと思いなおしたりすることもあるでしょう。
本記事では、年齢別の転職状況を確認した上で、転職活動で自分を見失ったときの対処法、転職活動に成功するためのコツなどを解説します。あわせて、転職活動を行っている人はどのような理由から転職を試みたのかも見ていきましょう。
目次
1.転職を諦めるべき年齢とは?35歳限界説の真相
転職するなら35歳までという言葉を聞いたことがある人は少なくないのではないでしょうか。また、転職は年齢を重ねるごとに難しくなると世間では言われており、ミドル層以上になると転職を諦めるべきなのか悩む人は多いと思います。
しかし、転職を諦めるべき年齢というのは一般的にありません。また、35歳限界説もありません。
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」における「年齢階級別転職入職率」 によると、男女ともに25~29歳の転職入職率がもっとも多くなっているものの、いずれの年齢においても転入職している人が存在します。
男 | 女 | |
---|---|---|
19歳以下 | 16.6% | 17.5% |
20~24歳 | 14.6% | 16.5% |
25~29歳 | 15.6% | 19.1% |
30~34歳 | 10.0% | 14.2% |
35~39歳 | 8.5% | 12.4% |
40~44歳 | 6.3% | 11.4% |
45~49歳 | 5.3% | 8.9% |
50~54歳 | 5.6% | 9.0% |
55~59歳 | 6.6% | 7.6% |
60~64歳 | 13.5% | 6.6% |
65歳以上 | 12.6% | 6.6% |
上記表の数字を見ると、男女ともに30代までの入職率は高いものの、40代以上も一定数いることが分かります。
企業は若い人材を将来性などを考慮し、求めている傾向にあります。とはいっても、若い人は経験が浅く、マネジメントも難しいことが多いため、20代や30代前半ばかりでは会社をまわすのは難しいです。
また、50歳、60歳になって今後のことも考えてキャリアチェンジを考える人は特に最近は多いですが、キャリアチェンジに成功している人も少なからずいます。この年代を対象にした求人は管理職やマネジメント職が目立ちますが、これらのポストでは長年にわたって経験を積んだ人が想定されています。
2.転職を諦める前に考える転職しないメリットとデメリット
転職せず現職に留まるメリットとデメリットを見ていきましょう。
転職しないメリット
転職をせず一つの職場で働くメリットとして、社会的信用の高さが挙げられます。近年は終身雇用にこだわる人は少なくなってきているものの、一つの環境に長く身を置いている人はさまざまなシーンで信頼を得られやすいといえます。
勤続年数が長いと、住宅のローンや車のローン、住居の賃貸契約などといった金融機関の審査が通りやすくなります。
また、勤続年数が長いほど多くの退職金を得られたり、職場内でキャリアアップできたりします。
転職しないデメリット
自分にとってより活躍できる環境があるにもかかわらず現職にとどまっていると、得られるチャンスを得られないこともあります。環境を変えることによって、より社会貢献度が高い仕事を任されたり、好待遇で働けたりすることもあります。
また、現在の職場が自分にとって過度のストレスになっている場合、心身の不調の悪化にもなりかねません。無理して働き続けると、鬱病などで休職を余儀なくされることもあります。
3.転職活動を行う理由とは?
転職活動を行う理由は人によって異なるため一概にはいえません。しかし、転職入職者が前職を辞めた理由について、厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概要」を参照することで見えてくることもあります。
同調査では、いずれの年代においても「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した人が目立っています。男性については30~34歳は12.0%、40~44歳は14.6%の回答、女性については20~24歳は13.3%、25~29歳は14.8%、35~39歳は13.1%、45~49歳は18.7%、55~59歳は15.7%となっています。企業にとって戦力となる年代の多くが人間関係を理由に退職していることがうかがえます。
また、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」と回答した人は、男性が9.1%、女性が10.8%でした。近年、労働条件の見直しを行う企業も多いものの、それでも1割程度が労働条件に不満を抱き、退職しています。
4.転職活動で自分を見失った時の対処法
転職活動が長引くと、自己評価が下がったり、転職活動を行っている理由が分からなくなったりすることがあります。
転職活動において自分を見失ったときの対処法として、以下の4つが挙げられます。
自己分析を再度を行う
自分の将来を再検討する
周囲に相談する
自分にできそうな仕事を探す
それぞれ確認していきましょう。
自己分析を再度を行う
転職活動では転職の軸を決めた上で、自己分析を行います。自己分析を行うことで自分の特徴や強み、これまでの実績を把握し、履歴書や面接などで自分をアピールしやすくなります。
転職活動で行き詰ったときに自己分析を再度行うことで、最初に自己分析を行ったときには見えなかった自分が見えたり、仕事に対しての考え方や価値観に新たに気付けたりします。
また、自己分析では客観的な視点も重要です。特に、転職活動で自分を見失った場合は家族や友人に自分について聞いてみてください。自分では気づけなかった自分のよさや強みに気づけることもあります。
自分の将来を再検討する
転職活動を行う中で自分を見失ったら、自分の理想の姿や将来の目標について思い出してみてください。転職後、自分がどのようなキャリアを築きたいのか、自分がどのように社会に貢献したいのかを具体的にイメージすることが大切です。将来について考えることで、失った自分を取り戻せたり、モチベーションが高まったりします。
その上で、自分が思い描くキャリアを実現するのに必要な経験やスキルをもう一度洗い出してみてください。
周囲に相談する
転職活動で行き詰った際には自分一人で抱え込まず、周囲に勇気を出して相談してみることをおすすめします。
恋人や結婚相手、友人、家族に相談すれば適切なアドバイスをもらえるだけでなく、心が落ち着く可能性も高いです。生計を共にする相手であれば相手の生活にも影響することなので、一緒に考える必要があります。
また、現職に転職に成功した人がいれば、その人に相談してみるのもおすすめです。職場の人は自分と同様のスキルや経験をもっていることが多いため参考になることがいろいろとあるでしょう。似たような境遇にあった人に自分を置き換えることで、見えてくるものもあります。
その他にも、転職エージェントへの相談もおすすめです。転職エージェントは転職のプロであるため客観的、かつ有益なアドバイスをもらえる可能性があります。さらに、条件やスキルに合った求人を紹介してもらえることもあります。
自分にできそうな仕事を探す
自分のやりたい仕事に就けるようにと転職活動に励んでいる人は多いと思います。しかし、自分のやりたいことが社会や転職市場に必ずしもマッチしているわけではありません。
例えば、自分は事務職として働きたいと思っていても、事務は人気が高いため求人は少なく、かつ倍率も高いです。事務職未経験で事務の求人のみに応募していると、転職活動が長引きかねません。
5.転職を諦めたくない方に向けた転職成功のコツ
転職活動はコツを押さえて行うことで円滑に進められます。
転職を諦めたくない方に向けた転職に成功するためのコツとして、以下の4つが挙げられます。
転職理由を明確にする
応募書類や面接の対策を行う
自己分析を丹念に行う
有効求人倍率を分析する
有効求人倍率を分析する
スキルを取得する
それぞれ確認していきましょう。
転職理由を明確にする
転職活動では転職理由について聞かれることがほとんどです。
面接で転職理由を聞かれた際に現職の不満ばかりを話したり、理由を答えられなかったりすると印象が悪くなる恐れがあります。面接官はすぐに不満を抱く人、理由もなく転職を繰り返す人というイメージを抱くためです。
転職理由はポジティブな理由が好ましいといわれています。例えば、「これまでの経験をより活かせる環境に身を置きたい」「取得した資格を活かせる分野で活躍したい」「チームで協力しながら成果を上げられる環境に身を置き、成長したい」といったものが挙げられます。
応募書類や面接の対策を行う
転職活動では応募書類や面接の対策を行うことが大切です。転職希望者の中には学生時代に面接対策を行ったから、対策を再度行う必要はないと考える人もいます。しかし、学生時代の就職活動と転職活動は異なります。
応募書類ではこれまでの実績や経験、職歴などが求められますし、面接で聞かれる内容も異なります。転職理由や前職で担当した仕事、マネジメント経験の有無などは、転職の面接ならではの質問です。
自己分析を丹念に行う
自己分析は自分の性格や職歴、資格を書き出して終わりではありません。自己分析を行う際は自分について深堀し、将来についても考える必要があります。
自己分析は「振り返り」→「Will」→「Can」→「Must」の順で行うのがおすすめです。
振り返り | 学生時代の学びや前職での経験などを洗い出す。 |
---|---|
Will | 自分が何をやりたいのかを明確にする。転職後になりたい自分の姿、そのために必要なことを整理する。 |
Can | 今の自分ができることを洗い出す。取得した資格やマネジメント経験、過去に行った仕事などを洗い出すことで見えてくる。 |
Must | 転職したい企業が求めるもの、そのためにやるべきことを明確にする。この段階では不足要素があっても問題ないが、その欠けた要素をどのように補うか、将来のビジョンを面接で話せるようにしておく。 |
有効求人倍率を分析する
有効求人倍率とは求職者1人に対する求人数です。例えば、有効求人倍率が2倍であれば求職者1人につき2件の求人があり、有効求人倍率が0.5倍だと求職者2人につき1件の求人があるということになります。
つまり、有効求人倍率が高い場合は求職者が有利となる売り手市場、有効求人倍率が低い場合は企業が有利となる買い手市場です。
例年、建設業界や自衛官や警察官、ITエンジニアなどは有効求人倍率が高く、美術家、デザイナーなどは有効求人倍率が低い傾向にあります。
事務職は女性を中心に人気職であるものの、事務職にのみしぼって転職活動を行うと転職先が決まるまでに時間を要するケースは珍しくありません。
スキルを取得する
転職活動では、20代や第二新卒であればスキルがなくても、未経験の業界に転職できる見込みがあるといわれています。20代は現在のスキルだけでなく、ポテンシャルが重視されるため、基礎学力や意欲がある人であれば中途採用でも会社に育ててもらえる可能性が高いです。
しかし、30代以上になると、即戦力として働くことが求められます。採否を決める上で、経験や実績が重要なポイントになります。未経験の業界で働きたい場合は派遣やアルバイトで経験を積んだり、資格を取得したりするなどして、即戦力になれることをアピールする必要があります。
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6.転職活動についてよくある質問
転職活動を行う際や転職活動が長期化すると、転職活動についてさまざまな疑問がわいてくるものです。
転職活動についてよくある質問として、以下の4つが挙げられます。
転職を諦める年齢はありますか?
転職活動がもう無理な場合はどうすれば良い?
転職活動が1年以上続いている場合、どうすれば良い?
転職できないのは詰んだということですか?
それぞれ確認していきましょう。
転職を諦める年齢はありますか?
転職を諦めるべき年齢はないため、スキルや意欲次第では何歳であっても転職活動を行えます。
どの年代においても10〜15%程度転職される方はおります。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」を参照すると、男女ともに社会経験をある程度積み、なおかつ年若い25~29歳の転入職率が最も高いものの、いずれの年齢においても転入職している人は存在しています。
特に、近年は60代以降も働く人が多く、かつさまざまな産業において人材が不足しています。かつては、30代をすぎると転職は難しいといわれることも多くありましたが、現在は転入職はいずれの年齢もできるでしょう。ただし、業界によって転職のしやすさは異なりますので注意してください。
ミドル層以上の人も転職活動をしてみる価値はあるでしょう。
転職活動がもう無理な場合はどうすれば良い?
転職活動がもう無理だと感じたら、転職活動を一時的にストップするのも一つの手です。思い詰めるほどうまくいかなくなります。転職活動をストップしている期間は自分の好きなことをしてリフレッシュしたり、親しい人に現状を相談したりしてゆったりと過ごしてみてください。
また、現職にもう一度向き合ってみることで、意外と継続して働けそうだと思い直すこともあります。転職しなくてもよいと思えれば、転職活動をする必要はありません。一方、やはり転職したいと思えば、転職活動の意欲が高まるはずです。
転職活動が1年以上続いている場合、どうしたら良い?
1年以上続く転職活動は一般的に長いといえるものの、珍しいことではありません。人によっては1年以上かけてじっくりと転職活動をしている人もいます。
また、転職活動が1年以上続く原因として、理想の高さが挙げられます。現在の自分のスキルや経験に対して転職先の理想が高すぎる場合は転職活動が長期化しがちです。大企業や人気企業は人手不足の今も倍率が高く、優秀な人材が求人に集まるため、簡単には採用されません。
自己分析を再度行った上で自分に合った企業や職業を探したり、転職先の理想を下げたりすることをおすすめします。
転職できないのは詰んだということですか?
転職活動がうまくいかない、もしくは転職活動に失敗したからといって詰んだわけではありません。
生活するには働く必要がありますが、正社員として働いたり、特定の業界で働いたりする必要はありません。例えば、アルバイトや一つの企業に所属しないフリーランスという働き方もあります。
また、失業保険の活用、失業中の人を対象にした職業訓練の受講もおすすめです。経済的に安定した状況で、スキルアップすることで精神状態が安定するはずです。
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7.まとめ
転職活動は多くの人にとって容易なものではなく、ストレスを感じるものです。うまくいかない日々が続けば、転職を諦めるべきか思い悩むこともあるでしょう。
しかし、転職活動を諦めずに行うことでこそ得られる未来もあります。転職活動に成功すればよりよい待遇で働けたり、自分がやりたかった仕事に従事できたりすることもあるでしょう。
転職を諦めるべきか思い悩んだら周囲に相談したり、自己分析を再度行ったりして、自分の思いを再度確認し、モチベーションを保つことが大切です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。