先端テクノロジーが次々と産業や生活に導入されていく中、「XR」と呼ばれる技術が近年注目を浴びるようになってきています。XRは既に私たちの身近なところにも活用されており、産業分野においても次々と新たな技術が生み出されている状態です。そこで本記事では、XRに関する概要や代表的なXRの仕組み・具体例、XRの市場規模や将来性などについて解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読いただきたいです。
AR・VR技術を活用して新しいサービスを提案したいフリーランスエンジニア
現場でのトレーニングやシミュレーションを効率化したいITコンサルタント
デザイン・エンターテイメント分野で没入型コンテンツを開発したいクリエイター
目次
1.XR(クロスリアリティ)とは
XR(クロスリアリティ)とは、現実世界と仮想世界を融合させて従来では経験できなかった新たな空間や経験を創造する先端技術の総称です。
「Extended Reality」の略称であり、主に以下の3つを指すことが一般的だと言えます。
VR(Virtual Reality:仮想現実)
AR(Augmented Reality:拡張現実)
MR(Mixed Reality:複合現実)
VRやARは、日常生活の中で聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。近年の画像処理技術発展に伴ってVRやARの境界があいまいになってきており、XRという包括的な呼称が登場しました。
2.VR・AR・MRの仕組み・活用事例
この章では、主なXRであるVR・AR・MRの概要や仕組み、活用事例について解説します。それぞれの概要は以下の通りです。
XRの具体例 | 概要 | 活用事例 |
---|---|---|
VR (仮想現実) | 人工的に創り出されたバーチャル空間を体験する技術 | ・ゲーム ・オンライン会議 ・ネットショップ |
AR (拡張現実) | 現実世界に仮想世界を重ねることで拡張された世界を体験する技術 | ・ナビゲーションシステム ・パンフレットや広告 ・自動運転 ・ドローン |
MR (複合現実) | 現実世界と仮想世界を融合させる技術 | ・バーチャルイベント ・手術の練習 ・製造工程のシミュレーション |
VR(Virtual Reality)
VR(Virtual Reality:仮想現実)は、人工的に創り出されたバーチャル空間を体験する技術のことです。
現実ではない人工的な空間を、専用ゴーグルやVR用のヘッドセットなどのデバイスを活用することで体験します。視覚だけでなく聴覚や触覚の情報もユーザーに提供することで、まるで仮想世界に入り込んだような臨場感や没入感を与える点が特徴的です。
仕組み
VRは「両眼視差」と呼ばれる、両目における視界の違いを活用した仮想現実技術です。
左右の目は、位置が異なることから見えるものも少しずつ異なっています。脳は両眼視差を利用することで、視界に入ったものの立体感や奥行きを認識することが可能です。VR用のゴーグルやヘッドセットでは左右の目に少しずつ異なる映像を流し、両眼視差を意図的に創り出すことで立体的な仮想世界を生み出します。
活用事例
近年におけるVRの具体例としては、ゲーム機器への活用をイメージする方も多いのではないでしょうか。
もちろんゲームをはじめとするエンターテイメント分野への応用は代表的な活用例ですが、近年ではビジネスシーンでも積極的にVRが活用されています。オンラインミーティングにVRを取り入れたりネットショップに活用したりするケースも現在では見受けられます。
AR(Augmented Reality)
AR(Augmented Reality)は、仮想世界を現実世界の環境に重ね合わせることで、現実を拡張するXRです。
スマートフォンをはじめとするデバイスで撮影している現実世界の映像に、デジタルの情報を追加・補完します。ユーザー目線では、現実世界の中にデジタルな要素がプラスされた世界を認識可能です。
VRは仮想世界に入り込んだような体験が特徴的ですが、ARの場合は現実世界の中に仮想世界の情報が重なる点で異なっています。
仕組み
ARの仕組みは、大きく以下の3種類に分けられます。
ロケーションベース
ビジョンベース
SLAM
ロケーションベースとは、センサーやその他の装置によってGPSから位置情報を特定し、周辺情報をデバイスに合成表示するARです。GPSを活用するため、状況によっては正確な位置情報を把握できないこともあります。
ビジョンベースとは、カメラによって空間や画像の情報を取得・認識する技術を活用したARです。カメラに映った情報にデジタル情報を付加する方式であり、カメラによる視認性が悪い状況では十分な動作を得られない可能性があります。
SLAMとは、「Simultaneously Localization and Mapping」の略です。カメラやセンサーから得た情報をリアルタイムで処理し、環境地図作成と自己位置推定を行うARです。空間を3次元的に処理し、自分がいる場所や周辺情報の把握に役立ちます。
活用事例
ロケーションベースのARは、ナビゲーションシステムに活用されています。ビジョンベースのARに関しては、パンフレットや広告をカメラでスキャンして画像・動画を視聴できるサービスに活用されているケースが良い例です。そしてSLAMは、自動運転やドローンなどさまざまな分野に活用されています。
MR(Mixed Reality)
MR(Mixed Reality)は、現実世界と仮想世界を融合させる技術です。
現実世界と仮想空間が連携することで、仮想空間で作り出した物体を現実世界に反映させたり、現実世界の物体を操作したりできます。ARと混同されやすい技術ですが、以下の点で両者は異なります。
AR:現実世界に仮想世界を重ねるのみ(相互作用がない)
MR:現実世界と仮想世界が融合している(相互作用がある)
ARとは異なり、MRでは仮想世界で行ったことが現実世界の対象物に影響・干渉する点が特徴的です。XRの中でもさらに先端の技術であり、今後の活用に注目が集まります。
仕組み
MRは通常、ゴーグルやヘッドマウントディスプレイなどのデバイスを利用する仕組みを取っています。
デバイスにはカメラやセンサーがあり、現実世界の情報を取り入れて仮想世界にコンテンツを表示させます。そしてユーザーの位置情報も併せて把握することで、仮想世界に存在するコンテンツをさまざまな角度から眺めることが可能です。
活用事例
MRは、エンターテイメント分野をはじめとして以下のようにさまざまな分野で活用されています。
医療
製造業
建築業
MRは提供できる情報量が多く、バーチャルコンテンツに触ったり干渉したりできる点からさまざまな分野の情報伝達やトレーニングなどにおいて活用が期待される技術です。たとえば医療分野における手術のトレーニングや製造分野における製造工程のシミュレーションなどが例として挙げられるでしょう。
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3.XRの市場規模
XRの市場規模は、近年急速に拡大しています。
カスタムメイドの調査を受託する情報サービス企業が公表している調査によると、XRの世界市場規模は2024年で1,055億8,000万米ドルです。さらに2029年には4,723億9,000万米ドルに成長し、5年間で約3倍以上もの規模になると予測されています。
実際にXRは医療やエンターテイメント業界、製造業などさまざまな分野・業界で活用が進められており、今後ますます拡大していくと十分に考えられるでしょう。
4.XRがもたらすメリット・デメリット
この章では、XRを利用・導入するメリットとデメリットについて解説します。
メリット
XRがもたらすメリットとしては、以下が考えられます。
作業効率向上と品質向上を両立できる
コストの削減につながる
新たなビジネスの創出につながる
作業効率向上と品質向上を両立できる
XRを導入することで、作業効率向上と品質向上を両立させられます。
作業手順を理解する際、これまでマニュアルを読みながら理解してきました。しかしXRを活用することで、視覚的に把握しやすいガイド映像を手軽にチェック可能です。また従業員のデータを取得してどのような点に時間がかかっているのか、ミスが多いのかなどをデジタルに把握することで、品質向上につなげられるでしょう。
結果として作業効率が上がるだけでなく、品質向上に向けた効果も同時に期待できます。
コストの削減につながる
XRによって、コスト削減効果も期待できます。
さまざまなシミュレーションを現場で容易に・リアルタイムで行うことで、必要な物理的リソースの節約につながります。製造業や建設業などでは施策や設計も仮想空間内で行えば、物理的リソースを費やすことなく効率的に作業を進められるでしょう。
新たなビジネスの創出につながる
XRの活用は、新たなビジネスの創出にもつながると考えられます。
これまでXRを利用していなかった業界や分野の企業が次々と参入していけば、市場は拡大し新たなビジネスも生まれていきます。XRは私たちに従来ではできなかった体験を提供してくれるため、これまで想定しなかったようなビジネスモデルにつながる可能性は大いにあるでしょう。
幅広い業界・分野で活躍する会社員やエンジニアにとって、XRはチャンスにあふれた技術であると考えられます。
デメリット
XRを利用するうえでは、以下のデメリットを把握しておくことが大切です。
導入には一定の知識・技術が必要
イニシャルコストがかかる
著作権の問題がある
導入には一定の知識・技術が必要
XRの導入にあたっては、どうしても一定の専門知識や技術が必要です。
導入にあたっては従業員の教育プランをしっかりと検討し、研修カリキュラムを充実させることが重要でしょう。また顧客に対しXR体験を提供する場合は、サポート体制の充実やインターフェイスの改善なども継続的に行っていく必要があります。
今後XRの活用を幅広い分野において進めていくには、技術的な問題の解消・緩和が重要になると考えられるでしょう。
イニシャルコストがかかる
XRの導入においては、一定のイニシャルコスト発生を想定しておかなくてはいけません。
高レベルの本格的なXRサービスやコンテンツを提供しようとすれば、高度なデバイスがどうしても必要になります。できるだけコストを抑えるには、以下のような工夫が想定可能です。
段階的な導入
レンタル・シェアサービスの活用
クラウドサービスの活用
イニシャルコストがかかる一方で、導入後さまざまな場面においてコスト削減につながる点がXRの大きな魅力です。イニシャルコストを確認し、無駄をできるだけ省いて導入することが大切でしょう。
著作権の問題がある
XR活用を進める中では、著作権の問題について理解・対策していく必要があります。
著作権があるコンテンツをXRに使用する場合、著作権者から許諾を受けることはもちろん、しっかりと契約を結んでから使用することが大切です。また法的な問題をできるだけ避けるには、自社のオリジナルコンテンツを生み出すことも重要になるでしょう。
著作権の問題以外にもプライバシー保護や情報漏洩、詐欺・不正などの犯罪リスクも懸念されています。
5.XRが注目されている背景
XRが近年注目を集めている理由には、主に以下が挙げられます。
技術の進歩
社会的ニーズの変化
テクノロジーが変化することで、XRが活用されるケースが拡大したと考えられます。5Gネットワークが普及することで、XR体験の質が向上しました。また、デバイスやソフトウェアが発達したことで、XRの普及が加速したと考えられます。
また、社会的ニーズの変化も、XRが注目される背景にあります。新型コロナウイルスの影響により、リモートコミュニケーションが社会全体に広く浸透しました。その結果として、エンターテイメントをはじめとしてさまざまな分野においてXRのニーズが拡大したと考えられます。
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6.XRとメタバースの違い
XRについて情報収集をする中で、「メタバース」という概念との違いについて気になった方もいるのではないでしょうか。
「メタバース」とは、インターネット上に構築された3D仮想空間のことです。ユーザーは自分の分身として存在する「アバター」を通じて、仮想空間で他ユーザーとのやり取りやゲームを楽しめます。XRとメタバースの違いを簡単に整理すると、以下の通りです。
XR:現実世界と仮想世界をつなぎ合わせる技術のこと
メタバース:仮想世界・仮想空間自体のこと
上記の通り両者は全く異なる概念ですが、密接に関わり合っているとも言えるでしょう。
7.XR技術の今後・将来性
XR技術は今後さらにさまざまな分野での発展が期待される技術です。
XRの普及が進むことで、これまで現実世界で行っていた移動を伴う活動の多くが、仮想世界で行えるようになるでしょう。例えば、打ち合わせや会議などがその好例だと考えられます。また、セミナーや各種説明会なども、日常的に仮想世界で行うことが十分に可能になるでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大以降、既にリモートコミュニケーションは多くの人にとって身近なものになっています。そのためXRに関しても、今後ますます活用が進むと十分に想定できるでしょう。
8.まとめ
XRとは、現実世界と仮想世界を融合させて新たな体験を生み出す先端技術です。VR・AR・MRなどが主なXRの例として挙げられ、それぞれの技術は既に私たちの生活や産業に活用されつつあります。
XRの世界市場は近年急速に拡大しており、今後もますます多くの分野で利用されるようになると考えられるでしょう。これからのエンジニアにとって、XRの分野に関する学習や研究は、非常に魅力的だと考えられます。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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