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AGI(汎用人工知能)とは?従来のAIとASIの違いって?実現時期や社会影響をわかりやすく解説

公開日:2025/05/03最終更新日:2025/05/05

AI(Artificial Intelligence、人工知能)は、さまざまな場面で生活の中に関わってきています。AIは人間に近い知的なタスクに対応できるように設計されたコンピュータープログラムです。


AIの先に、より高度なタスクや幅広い分野への対応ができるとされる「AGI(汎用型人工知能)」というものがあるのはご存じでしょうか。


本記事ではそんなAGI(汎用人工知能)の概要と実現による影響などについて紹介していきます。


1.AGI(汎用人工知能)とは

AGIは何の略語か

AGIは「Artificial General Intelligence:汎用人工知能」の略で人工知能「Artificial Intelligence」に「汎用」「一般的」などの意味を持つ「General」という言葉を付けることで「人間のように汎用的な知能を持つAI」とされています。

AGIの概要

AGIは特定のタスクにとらわれず、さまざまな知的課題に対する知識とスキルを人間のように学習して、問題解決や創造活動を行えるとされる人工知能です。複数タスクの対応や今までに経験のない課題に対する試行錯誤などが期待されます。


AGIの特徴は以下の通りです。

  • 幅広いタスクへの対応力

    AGIは人間の知能に近いレベルの高い知的能力を持つとされるため、特定のタスクや分野の制限がなく、汎用的な知識やスキルを用い、さまざまな問題を解決することが可能とされているのです。

    また、知識やスキルが特定の分野に限定されていないため、「抽象的な課題」「研究開発」「創造的なタスク」などにおける判断や推論を展開できる可能性があるとも言われています。

    AGIの実現によりさまざまな分野において人工知能の発展が見込まれるでしょう。

  • 柔軟な学習能力

    AGIは転移学習と呼ばれる「既存のAIを利用した新たなAIの作成」ができるとされています。そのため、新しい経験から学習し、知識やデータを蓄積することで自己進化することが可能であり、タスクに対して最適な対応や判断が可能です。

  • 高い意思決定能力

    前述の通り、複数の分野への対応が可能であり、新たな分野に対しては転移学習や蓄積された知識やスキルから複雑な対応ができます。従来のAIでは特定のタスクに対する限られた選択肢になっていましたが、AGIでは多角的なデータによる独自の意思決定が可能です。

このような特徴を持つAGIは人間の制限を超えた判断や法的枠組みから逸脱した結果を生み出す可能性もあるため、AGIが行った作業の透明性や説明責任が伴うともされています。そのため、AGIが実現して実用化される際には社会全体による安全性に関する議論が必要となるでしょう。

2.AGIの構成要素

AGIは人間が行うような複雑なタスクへの対応が可能とされるため、構成方法は多岐にわたります。そのため、本項で紹介するのは代表的な構成です。


その構成要素は以下のようになります。

  • 機械学習

  • 認知アーキテクチャ

  • 認知ロボティクス

それぞれ詳しく見ていきましょう。

機械学習

機械学習がAI技術において重要な要素であるため、AGIにとっても欠かせない要素です。


AGIでは、機械学習の中でも高度な技術とされている「深層学習(ディープラーニング)」と「強化学習」という手法を組み合わせて使用することが想定されています。


ディープラーニングではニューラルネットワークという人間の神経細胞を参考にして作成された仕組みを階層的に組み合わせることで高い学習能力と知能を取得可能です。そして、強化学習では与えられたデータから人間の感覚や行動を学習することで、タスクごとに最適な行動を学んでいきます。

認知アーキテクチャ

認知アーキテクチャは、人間の思考パターンから、物事を認知するためのアーキテクチャ(構造)を作り出し、AIの学習をしていくことで人間がもつ認知機能をモデル化できるようにするのに必要な要素です。これにより、AGIが人間に近い認知機能による判断や意思決定力を高めることができます。

認知ロボティクス

認知ロボティクスとは、高い認知能力をロボットや機械に与えるための研究分野です。認知ロボティクスの実践と改善を繰り返すことでより高度な認知能力をAGIに与えることができるとされます。


このように高度な知識やスキルを必要とする要素がAGIに含まれていることを覚えておきましょう。


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3.AGIとAI・ASIの違い

従来のAIとの違い

従来のAIとAGIの大きな違いは特定のタスクに依存しないという点です。他にも学習や用途、性能などの面でさまざまな違いがあるため、以下の表にまとめてみました。

従来のAI

AGI

特徴

特定のタスクや分野への対応に特化

人間と同レベルの知識とスキルを活用して幅広いタスクや分野へ対応可能

利用分野

音声認識、画像認識、自然言語処理などの特定の分野

人間が行うような抽象的であったり、複雑であったりする問題解決や創造的活動

学習能力

あらかじめ決められたプログラムに従って学習

あらかじめ与えられたデータ以外にも新たな経験からも学習

問題解決能力

特化した分野に関するタスクを効率的に解決

未知の課題に対しても既存の知識やスキルを使用して試行錯誤しながら解決

意思・感情

ない

意思や感情を持つ可能性はある

AGIとASIとシンギュラリティ

「ASI」とは、「Artificial Super Intelligence」の略で日本語では「超知能AI」「人工超知能」という意味の言葉です。これはAGIが自己学習や自己進化をしていった上で「人間の知能を凌駕するAI」とされています。


人間と違い基本的には時間による劣化(老化)もなく、自律的に学習を続けることが可能とされているため、人間では解決が困難な問題も解決できると期待されている人工知能です。


このASIの登場によって「シンギュラリティ」という現象が発生すると言われています。この「シンギュラリティ」は、人間の知能を凌駕するASIがもたらす技術革新により、人間の予測をはるかに超えた社会変化がもたらされるという概念です。


これが起こった後には、人間ではなく人工知能が新たな人工知能を生み出し、さらなる変化をもたらす可能性があるともされています。


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4.AGIが変える未来ー実現時期と社会への影響

AGIはいつ実現するのか

現時点では明確ではありませんが、多くの有力者が見解を述べています。具体的には以下のような方々です。

ASIは10年以内に来る:孫正義

ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2024」において、ソフトバンクの創業者である「孫正義」氏が特別講演を行い、前年度の「AGIは10年以内に来る」から変わって「2、3年以内に来る」と語り、10年以内に来るのはAGIの進化先である「ASI(超知能AI)」の方であるという意見を述べました。


参考リンク:AIは数年で超知性へと進化し、パーソナルメンターに。孫正義 特別講演レポート

今後10年でAIが多くの分野で専門家のレベルを超えるだろう:サム・アルトマン

同じく2023年にOpenAI社CEOのサム・アルトマン氏が同社のブログにおいて、「10年以内に複数の分野において専門知識をつけ、大企業と同レベルの生産活動が可能になる可能性がある」というように述べているのです。


参考リンク:Governance of superintelligence

AGI実現のカギとなりうる技術

AGIの研究がされていく中で重要視されているAI技術があります。

生成AI

1つは膨大なデータからの学習により、テキストや音声、画像などを生成できる「生成AIモデル」です。さまざまなパターンを学習することによって、人間が作成したものと同レベルを生成することも可能になってきているため、人間のように課題に取り組むAGIの参考となるとされています。

自然言語処理

もう1つが人間の言語を理解することによって、生成や判断を行う「自然言語処理モデル」です。自然言語を使用する処理はもちろん、人間と同様の知識やスキルを身に着けるという面でも自然言語を理解する仕組みはなくてはならないとされています。

AGI実現がもたらす変化

AGIが実現し、導入が進むとさまざまな活躍が期待されており、それによる変化も重要なポイントです。

考えられる影響についてみていきましょう。

業務プロセスの変化

AGIが普及すれば、現状はAIに置き換え切れていないルーティンワークや単純作業などを削減することが可能です。また、複雑なデータ解析や処理などのサポートも期待できるため、柔軟なビジネスモデルや経営戦略の立案による効率的なプロセスを組みなおすことができるでしょう。


顧客対応のパーソナライズや市場予測・競争などを分析することで顧客満足度の増加や各企業の成長を継続的なものにすることも期待できます。

働き方の変化

物流や交通機関などでの物理的な作業はドローンや工業用ロボットなどの発展も必要になるため明言はできませんが、事務的な作業や規格化された作業に関してはAGIが代替してくれるでしょう。


それにより、リモートワークやフレキシブルタイムなどの導入も増やすことができ、ワークライフバランスを向上できる企業も増えることが考えられます。

各業界への影響

現在、人間が行っている作業の効率化や代替がAGIには期待されるため、予想されるのが各業界への影響です。


例えば、自動車業界ではAGIによるデータ分析や作業の効率化により、「自動車の設計開発の効率化」、人間が行う作業の代替による「生産ラインの効率化と自動化率の向上」、AGIによるサポートで「安全性と品質の向上」が考えられます。


他にも銀行業で考えられるのは、資産に関する対応におけるAGIによってパーソナライズされた「リスク管理」「投資やビジネス戦略」の提供です。しかし、これは顧客満足度の向上が見込める反面、AGIでの単純作業や手作業の代替により、迅速で柔軟な対応ができるスリムな組織設計も必要になると考えられます。


また、IT業界においては「データサイエンティスト」や「AIエンジニア」などのAIの構築や評価に関係する職種の地位向上に繋がつ可能性が高くなることが考えられるでしょう。


対して、通常のITエンジニアは企画・設計などの上流工程への影響はほぼないでしょうが、製造やテストなどの下流工程に関してはAGIによって代替される可能性が高いため、危機感を持つ必要があると考えられます。

法整備

AGIは自ら学習や意思決定を行うことが可能なため、AGIがかかわったプライバシーや著作物などに関する法整備が必要です。そもそも、AGIが行ったタスクにおける責任の所在を法律や契約などで決めておかないとAGIによる問題解決が滞ってしまう可能性があります。


政府や関連機関によるガイドラインの策定や安全性・公平性を担保するための包括的な法整備が重要になっていくでしょう。


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5.まとめ

ここまでAGIの概要と実現による影響に関して紹介していきました。まだ、実現するかもわからない技術ではありますが、実現することで社会全体に大きな影響を与えることは間違いない技術になります。


良い結果も悪い結果もどちらももたらす可能性がありますが、法整備や管理体制が整えられ、うまく活用できれば、よりよい社会を作ることもできるでしょう。そのため、今のうちに学習を進めておくのがおすすめです。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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目次

1.AGI(汎用人工知能)とは

AGIは何の略語か

AGIの概要

2.AGIの構成要素

機械学習

認知アーキテクチャ

認知ロボティクス

3.AGIとAI・ASIの違い

従来のAIとの違い

AGIとASIとシンギュラリティ

4.AGIが変える未来ー実現時期と社会への影響

AGIはいつ実現するのか

ASIは10年以内に来る:孫正義

今後10年でAIが多くの分野で専門家のレベルを超えるだろう:サム・アルトマン

AGI実現のカギとなりうる技術

生成AI

自然言語処理

AGI実現がもたらす変化

業務プロセスの変化

働き方の変化

各業界への影響

法整備

5.まとめ