近年になって、多くの企業がビジネスへのデータ活用に注目するようになってきています。そして企業のデータ活用において大切なのが、「データドリブン」という考え方です。データドリブンのアプローチを実践することで、企業経営の効率化や業績向上に役立てられるでしょう。そこで本記事では、データドリブンの概要や注目される理由、メリット、注意点、基本ステップ、活用できるツール・システムについて解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読いただきたいです。
意思決定にデータを活用できるようになりたいスタートアップの経営者
広告効果やユーザー行動を数値で分析したい若手マーケター
データ分析に基づいた提案が求められているフリーランスのWebコンサルタント
目次
1.データドリブンとは
データドリブン(Data Driven)とは、マーケティングやWeb解析、売上などのさまざまなデータに基づいた判断や行動を取ることを指します。
データをベースとした意思決定は、従来よりビジネスにおいて行われてきました。しかし近年におけるテクノロジーの進歩や社会の変化により、改めてデータドリブンの考え方が注目を浴びるようになっています。
勘や経験に頼らずデータをベースとしたアクションを取ることで、ビジネスや経営にさまざまな好影響を期待できるでしょう。データを活用したマーケティングを「データドリブンマーケティング」、経営を「データドリブン経営」と呼びます。
データドリブンとデータ活用の違い
データドリブンとデータ活用は似ている言葉ですが、以下の通り異なる概念です。
データドリブン:個別の業務や施策についてのアプローチ
データ活用:企業内のさまざまな部署が連携して行うアプローチ
データ活用と言えば、一般的にはデータをビジネスや業務改善に役立てることを指します。データ活用は個別の施策に対して使用することが一般的であり、企業内の横断的な体制構築を指すデータドリブンとは異なります。
2.データドリブンが注目される背景
この章では、データドリブンが注目される背景について以下の3点に整理して解説します。
テクノロジーの進歩
顧客の購買行動の多様化・複雑化
業務の複雑化
テクノロジーの進歩
データドリブンが注目されるようになった理由としてまず挙げられるのが、テクノロジーの進歩です。
デジタル化が進んだことでより幅広いデータを収集・分析できるようになり、活用できるケースが増えました。またSNSが一般にも広く浸透したことで、口コミを大量に収集することも可能になっています。
さらに近年ではAIやIoTも発達しデータを活用できるツールやシステムが増えたことも、データドリブンが注目を浴びるようになった大きな要因だと考えられます。
顧客の購買行動の多様化・複雑化
データドリブンが注目されるようになった背景としては、顧客の購買行動が多様化・複雑化したことも挙げられます。
パソコンやスマホなどのデバイスが普及したことで、一般消費者が商品・サービスの情報にアクセスすることが容易になりました。数多くの情報より自分が良いと思う商品・サービスを選択する行動が一般化していますが、一方で顧客の購買行動が多様化・複雑化したことで購買行動を予測することは難しくなっています。
こうした状況の中で多くの企業が、商品・サービスの売り込みに際してデータを活用するようになったと言えるでしょう。
業務の複雑化
現代では顧客の購買行動が複雑化したことで、企業の業務も複雑化していると考えられます。
複雑化する顧客ニーズに合わせて、企業は柔軟に商品・サービスを提供する必要があるためです。業務が複雑化すれば、従業員の負担は必然的に大きくなります。そこでデータを活用して業務効率化や利益率のアップを図り、経営を効率化させたいと考える企業が増えている状態です。
また技術の進歩に合わせてビジネスの変化も活発になっており、変化へ柔軟に対応していくためにもデータドリブンの考え方は重要になっています。自社が持つデータを最大限活かすことで効率経営の実現につながることが、現代の企業にとって重要な考え方になっていると言えるでしょう。
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3.データドリブンを活用するメリット
この章では、データドリブンを活用するメリットを以下の3点に整理して解説します。
客観的で再現性のある意思決定の実現
業務効率化の促進
顧客満足度の向上
客観的で再現性のある意思決定の実現
データドリブンを取り入れることで、客観的なデータによる再現性のある意思決定が可能になります。
従来の経験や勘に頼った意思決定方法では、思い込みや誤解による判断ミスが起きることも十分に考えられるでしょう。しかしそこにデータによる根拠を加えることで客観性が増すだけでなく、再現性も高まります。
社内の担当者が変更されたとしても同様の流れで意思決定できるようになり、業務の俗人化を回避可能です。
業務効率化の促進
データドリブンな組織を作ることで、業務効率化の促進にもつながります。
業務プロセスやオペレーショマーケティング戦略などに関するデータを集積・分析することで、改善点の把握が可能です。またデータに基づいて社内リソース配分について判断することで、ムダやムリ、そして機会損失の発生を回避できます。
企業が経営資源を無駄にせず利益を最大化するために、データドリブンは重要な手法だと考えられるでしょう。
顧客満足度の向上
顧客満足度の向上も、データドリブンによるアプローチに期待できるメリットの1つです。
顧客データを収集・分析して商品やサービス自体やプロモーションに活かすことで、一人ひとりにパーソナライズされた提案ができます。顧客データや販売データをマーケティング施策に活かすことで、顧客満足度を高めるだけでなく利益率の向上も期待できるでしょう。
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4.データドリブンの課題・注意点
この章では、データドリブンにおける課題や注意点について以下の3点に整理して解説します。
専門性の高い人材の確保が必要
定性的な情報を見落とす可能性
社内の連携が必要
専門性の高い人材の確保が必要
データドリブンの実践には、専門性の高い人材の確保が必要です。
データドリブンの実践においては、データの分析に高い専門性を必要とするためです。収集しただけのデータは、何らかの事実を客観的に示すもの以上の存在ではありません。大切なことは、「データをどう分析して意思判断に活かすのか」だと言えます。
分析の時点で目的に合わない判断をしてしまえば、意思決定も誤ってしまうでしょう。データドリブンには、以下のような専門家の力が必要だと考えられます。
アナリスト
データアーティスト
日本国内ではまだ上記の専門人材が不足している状況であり、企業としては専門人材の育成にも力を入れていく必要があるでしょう。
定性的な情報を見落とす可能性
データドリブンには、定性的な情報を見落とすリスクもあります。
データドリブンは、定量的なデータを分析して意思決定に役立てるためです。数字に現れない以下のようなデータは、データドリブンのみでは見落とすリスクがあります。
社会状況の変化
顧客の思い
従業員の考え
定量的なデータは確かに客観的ですが、定量的なデータを把握しきれないと意思決定を誤る可能性もあるでしょう。データドリブンを取り入れる場合、定性的な判断により本質がどこにあるのか判断することもときには大切です。
社内の連携が必要
データドリブンによるアプローチには、社内の連携が不可欠です。
どんなに立派な仕組みを考案しても、実行できなければ効果は望めません。例えばデータが各部署で連携されていなければ、部署によって判断が異なる、業務プロセスが部署ごとに異なるなどの事態が発生する可能性があります。
また、従業員がデータ分析やアクションプランの策定を行ったとしても、経営陣の理解が乏しければ実行まで進めない事態も考えられるでしょう。データドリブンを取り入れるには、企業が一丸となれるよう連携体制を取る必要があります。
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5.データドリブンを成功させる基本ステップ
この章では、データドリブンを成功させるための基本ステップを以下の5段階に分けて解説します。
必要なデータの定義
データの収集
データの可視化
データの分析
意思決定・実行
①必要なデータの定義
データドリブンのアプローチをするにはまず、必要なデータの定義が必要です。
企業が関わるデータは、以下のように多種多様であると言えます。
顧客データ
在庫データ
製品データ
会計データ など
しかし「データであれば何でもよい」というスタンスでは、意思決定に役立つ結果には結び付きにくいでしょう。最初の段階で必要なデータを定義しておくことで、効率的・効果的なデータ収集につなげることが大切です。
②データの収集
データを定義したら、次にデータの収集に移ります。
データの収集を問題なく効率的に進めるためには、環境整備を行うことが大切です。企業が持つデータを一元管理するシステムやツールがなければ、導入から始める必要があります。POSシステムやCRMなどを導入し、企業が持つデータをデジタル化・一元管理化することが大切です。
③データの可視化
データ収集後は、分析に向けた可視化を行います。
収集したデータには、目的の達成に不要な情報も含まれているためです。データを人が見て判断できるように加工することで、分析作業が効率的に行えるようになります。データの可視化は手動で行うこともできますが、効率的とは言い難く時間も手間もかかってしまいます。
DMPやBIツールなどさまざまなツール・システムを活用することで、効率的にデータの可視化を実施可能です。
④データの分析
データを可視化してひと通りの準備を行ったら、データの分析に移ります。
一見関連性がないように思えるデータ同士の関連性を見出したり時間的変化を確認したりすることで、目的に応じて必要な情報を見出していくことが大切です。Web解析ツールをはじめとするツールを活用することで、担当者の専門性に関係なく一定程度の分析を行えます。
しかしハイレベルな分析を行う必要がある場合は、データサイエンティストやアナリストなどの専門人材を確保する必要もあるでしょう。
⑤意思決定・実行
最後に、分析したデータをもとに意思決定し、アクションプランを実行します。
意思決定にあたっては、施策の効果だけでなく必要なコスト・リソースについても考慮することが大切です。予算や時間の都合と効果の両方を勘案しながら、バランスの良い意思決定をすることが求められます。
そして実際に実行へ移した場合は、結果の検証も併せて行うことが大切です。実行結果からさらにデータ収集や分析を繰り返し行うことで、施策の改善を続けていくようにしましょう。
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6.データドリブンの支援ツール
この章では、データドリブンに活用できる支援ツールとして以下の6つを紹介します。
DMP(データマネジメントプラットフォーム)
MA(マーケティングオートメーション)
SFA(セールスフォースオートメーション)
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
Web解析ツール
BIツール
DMP(データマネジメントプラットフォーム)
DMP(Data Management Platform:データマネジメントプラットフォーム)は、収集したデータを管理して分析に活かすためのプラットフォームです。
DMPでデータを管理することで他のツールと連携させることも容易になり、Web領域において集客に活用されることも多いツールです。DMPが管理するデータは社内の情報だけでなく、外部企業が提供する「パブリックデータ」も含まれます。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)は、マーケティングの作業や実行フローを自動化できるツールです。
主に集客後の顧客情報を管理し見込み客の育成を行うためにMAが役立ちます。近年では顧客の販売行動が複雑化し、顧客との接点も多様化しています。そのため、顧客情報を分析しマーケティングに活かせるMAの存在は重要だと言えるでしょう。
SFA(セールスフォースオートメーション)
SFA(Sales Force Automation:セールスフォースオートメーション)は、営業活動の可視化や自動化に利用できるツールです。
日本語では「営業支援システム」と呼ばれ、以下のように営業シーンにおけるさまざまな業務で活用できます。
営業メンバーの管理
案件管理
顧客管理
活動報告支援 など
情報共有によって業務の属人化を防いだり売上予測の精度を高めたりと、SFAにはさまざまな効果を期待できます。SFAを取り入れることで、営業活動の業務効率化や生産性向上を期待できるでしょう。
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
CRM(Customer Relationship Management:カスタマーリレーションシップマネジメント)は、顧客情報を管理することを指します。
CRMツールを用いることで、以下のような情報の管理を一元化可能です。
顧客の属性
顧客のキーパーソン
担当者
購買履歴
アプローチ履歴 など
顧客情報が増えてくると、管理だけでも営業担当者に大きな負担がかかります。CRMツールを活用し、業務効率化を図ることが可能です。
Web解析ツール
Web解析ツールは、Webサイトの状況を把握・分析するのに役立つツールです。
現在では、以下のようにさまざまなWeb解析ツールが存在します。
Google Analytics
Mixpanel
Adobe Analytics など
Webサイトのアクセス解析やコンバージョン分析などを比較的容易に行えて、サイト改善やマーケティング施策の最適化などに利用可能です。データドリブンにおいても、Webサイトに関するデータは有益だと考えられるでしょう。
BIツール
BI(Business Intelligence:ビジネスインテリジェンス)ツールは、データの収集や可視化、分析に活用できるツールです。
データをレポートにまとめることでビジネス利用がしやすくなります。操作性が高いツールを活用することで、専門知識がなくてもデータドリブンのアプローチを進めるためには重宝します。
7.まとめ
データドリブンとは、データに基づいた判断や行動を取ることを指す言葉です。現代ではWeb解析やマーケティングなどによりさまざまなデータが存在しており、データ活用は企業にとって重要事項になっています。
データドリブンを成功させることで再現性の高い意思決定の実現につながり、業務効率化や顧客満足向上などさまざまなメリットが期待できるでしょう。現在ではさまざまなツールやシステムが存在しており、データドリブンの実現に役立てられます。
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