会社勤めで息苦しさを感じているエンジニアの方の場合、フリーランスのエンジニアが「気楽」というイメージがあり、独立やフリーランスへの転向を考えている方もいらっしゃるでしょう。
ただし、フリーランスエンジニアの側としても、会社勤めのエンジニアを「気楽」と感じる部分もあるため、お互いのイメージと現実との乖離を理解した上で、自分にあった働き方を見つける必要があります。
本記事では、両者の立場から見た「気楽」と感じる理由と現実を深掘りし、独立後の後悔を避ける注意点や、フリーランスとして心穏やかに安定して活動するポイントをお話します。
目次
1.会社員から見たフリーランスが気楽と思える理由と現実
はじめに、会社員から見たフリーランスが気楽と思えるありがちな理由をご紹介しながら、現実では気楽そうに見える裏でどのような努力が必要なのかについて解説します。
時間や場所に捉われない
会社員がフリーランスを気楽と感じる大きな理由は、時間や場所に縛られない自由なワークスタイルを実現できるというイメージが挙げられます。満員電車での通勤や定時出社の必要がない生活は、魅力的に映るということです。また、リモートワークによって静かな地方や海外で暮らすという道を選べるのも魅力と言えます。
特にフリーランスエンジニアは、PCとネット環境があれば、自宅やカフェなどで、自分の集中しやすい場所と時間で働けるイメージがあるかもしれません。しかし、セキュリティや情報漏洩のリスクの側面からも、技術分野によっては、どこでも自由に働けるとは限らないでしょう。
雇用に縛られない自由な働き方ができるとはいえ、収入を得るには納期を守り、必要な作業量を確保することが求められます。フリーランスが時間や場所の自由があっても、働かなければ稼げないという現実は変わりません。
自分の好きな仕事を選べる
フリーランスエンジニアはスキルや興味関心に合わせて仕事を選べる点も、会社勤めのエンジニアから見れば気楽に見えます。組織の都合で業務が決まる会社員と異なり、主体的に案件やクライアントを選べるのは事実です。
得意分野や新技術に挑戦すれば、モチベーション維持とスキルアップに繋がり、特定の技術領域でのスペシャリストとして案件の獲得もしやすくなるというイメージもあるでしょう。
同時に、企業勤めのエンジニアでは参加できないようなプロジェクト案件への応募も可能であり、対外的な実績を積み上げやすいのも魅力と言えます。SNSなどで自由に情報を発信し、オファーを受けられる可能性も利点と言えるでしょう。
ただし、フリーランスエンジニアの全員が、常に好きな仕事だけを選べるわけではなく、特に独立初期は希望しない案件を受注することはあります。また、自分の得意とする分野の需要に波がある場合など、仕事を選ぶどころか、稼げる分野の技術を身につけて、得意としない分野でも受注しなければならないという状況もあり得るのです。
給与形態に縛られず稼げる
フリーランスエンジニアは固定給でなく案件毎の報酬のため、成果次第で短い期間でも、大きく稼げる可能性があることも、会社勤めのエンジニアが気楽と感じる理由の一つです。スキルや実績向上で高単価案件を獲得し、会社員時代より大幅な収入増も可能でありながら、働く時間は少ないというイメージはとても魅力的に映るかもしれません。
どんなに頑張っても報われない状況、成長しても稼げない状態が続くよりは、青天井で稼げるとされるフリーランスになってみたいと考えることは自然の流れと言えるでしょう。特にプロジェクトなどでの頑張りが評価されないような状況では、フリーランスは魅力的に感じるのは当然と言えます。
しかし、これは収入不安定リスクと隣り合わせであること、スキルや実績があっても、クライアントの都合や予算の変更など、外的な要因で継続的な受注が打ち切りになることもあるのです。また、自分より優秀なエンジニアがクライアントにアプローチし、知らないうちに継続案件の受注を奪われてしまうということも時には覚悟しておく必要があります。
2.フリーランスから見た会社員が気楽と思える理由と現実
次に、フリーランスから見た会社員が気楽と思える理由と現実として、会社員から独立した後に、会社勤めのエンジニアの方が気楽だと感じやすい要素を解説していきます。
継続的で安定した収入がある
フリーランスが会社員の方が気楽に見えると感じる理由は、自分で仕事を受注しなくても、毎月安定した給与が得られることです。フリーランスは収入変動が大きく、常に将来の収入不安があります。会社員は業績による変動はあっても、基本的に毎月一定収入が保証され、経済的な安定による精神的余裕と将来設計がしやすいことも魅力であると言えるでしょう。
ただし、同時に会社員収入も絶対安泰ではなく、業績悪化やリストラリスクは存在し、昇給ペースも個人の努力だけでは限界があります。同時に、新卒確保のために新卒社員の初任給が既存社員と同等、あるいはそれ以上になるケースや、契約社員の方が高い報酬を得ている場合もあり、収入が安定していてもやりがいやモチベーションがほとんどない、というネガティブな精神状態になることもあるでしょう。
そのため、収入の安定よりもリスクに伴う稼ぎということを考えると、フリーランスの方が高いモチベーションで挑戦と成長を繰り返し、さらに稼げる可能性があることも考え方の一つとして覚えておいてください。
福利厚生と社会的信用がある
会社員の充実した福利厚生や高い社会的信用の高さも気楽に見える要因です。社会保険に加え、企業により住宅手当や退職金制度もあり、会社員の身分はローン審査等で有利なことも多いです。
フリーランスの場合は会社に雇用されていないため福利厚生の制度はなく、単価ベースで稼いだ金額と費用などの支出を差し引いた金額に課税され、国民健康保険や年金はあるものの手厚いとまでは言えません。
ただし、会社員エンジニアの場合は福利厚生を維持するための負担として、産休や育休の同僚やスタッフの負担を担うこともありますし、自分自身では使えない制度もあるため、会社員エンジニアの全員が福利厚生の恩恵を受けているとは言えないこともあります。
また、収入の安定と福利厚生が充実していたとしても、エンジニアとして成長できる現場とは限らず、フリーランスとしての独立や転職などに挑戦できない要因になることも留意しておく必要があるでしょう。
個人に対する責任の負担が少ない
会社員エンジニアは業務上のミスやトラブルでも最終責任は組織が負うことが多く、フリーランスから見れば、気楽に見えるかもしれません。フリーランスはすべての責任を個人で負うことになり、業務上のミスやトラブルから損害賠償リスクさえあります。
また、会社員は上司や部署がサポートし、個人の責任範囲が限定されるため、精神的プレッシャーが軽減されるため、フリーランスエンジニアよりも責任において相対的に悩むことが少ないです。ただし、会社員も責任が皆無ではなく、重大な過失や違反には厳しい措置が講じられることもありますし、組織の一員として不本意な決定に従わなければならないということもあります。
同時にフリーランスが個人責任を請け負うからこそ、プロフェッショナルとして正当な報酬を得られるということも忘れてはなりません。技術範囲に戻りますが、同じ仕事をしていても責任によって給与や報酬に差があるということを理解しておく必要があります。
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3.フリーランスが独立後に後悔しないための注意点
次にフリーランスへの独立をお考えの方、もしくは独立して後悔したくない方のために、独立前に押さえるべき注意点を解説します。
得意とする技術分野の需要を調査しておく
フリーランスとして独立する前に、自身のスキルが市場で本当に通用するのか、現実的に案件を獲得できるのかを見極めることが大切です。得意とする技術分野でスペシャリストだったとしても、市場需要がなければ案件獲得は難しいのが実情です。
そのため、自分の得意とする技術分野のスキルだけでフリーランスとして働き続けられるか、市場評価を冷静に判断する必要があります。技術分野によっては案件数は多くても、競合フリーランスが多い可能性や、逆に案件数は少なくてもニッチな技術で安定的に獲得できる可能性なども調査することが重要です。
可能であれば、独立判断のための事前調査としてクラウドソーシングサイトなどを利用し、副業として実際に案件を獲得できるか、自身の市場価値を確認し、現実的な案件獲得のシミュレーションをしてみることをおすすめします。
独立前に必要なスキルを身につけておく
エンジニアの方がフリーランスになった時、必ずしも順調に案件が受注でき、収入が安定するとは限りません。収入の不安定さや案件を獲得できない不安な状態のままでは、新しいスキルを身につけるのが難しいということを、まずは知っておきましょう。そのため、独立前に必要なスキルを前もって身につけておくことをおすすめします。
自分の得意とするスキルの習熟だけでなく、得意不得意に関係なく稼げそうな技術的なスキルに目星をつけて、受注して成果物を完成できるレベルまで底上げしておくと良いでしょう。また、実務経験がエンジニアの領域のみの場合、営業力やクライアントワークについても学んでおくことが求められます。
技術はあってもコミュニケーション能力不足、アピール不足で案件が獲得できないということもあらかじめ留意しておいてください。
独立=個人事業主であることを理解する
フリーランスが気楽そうに見える場合、独立=個人事業主であるということを理解し、税金や法律など必要な知識を身につけていくことも大切です。特に会社員エンジニアの場合は企業側のほとんどの手続きをしてくれるため、公的機関への手続きのことを知らず、おろそかになってしまう可能性があるので注意しましょう。
納税、国民年金、国民健康保険、個人事業主としての開業届、民間のフリーランス保険などの手続きとともに、クライアントとの契約時における業務委託契約などの法的な根拠などについても学んでおくことが求められます。
同様に契約時における収入のタイミング、その他の支出のタイミング、そして確定申告時に困らないようにするためにも、簿記の基礎についても学ぶことをおすすめします。
大切なのは得意とする技術で稼げるか、複数の技術で稼げるようになったか、技術分野だけでなく営業力や個人事業主として必要な事務作業についても身についたかで判断し、会社員勤めの間に色々な知識やスキルを身につけておくことを重視しましょう。
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4.フリーランスとして気楽に過ごすためのポイント
最後にフリーランスとして気楽に過ごすためには、フリーランスとして独立した後も、がむしゃらに努力するだけでなく、ポイントを押さえて成長していく必要があります。具体的にどのような考え方や方向性に基づいて行動すべきか、いくつかのポイントについて解説します。
余裕を持って稼げる状態を維持する
フリーランスとして気楽に過ごすためには、エンジニアとしての成長が必須であり、成長のためには時間と経済的な余裕の両立が重要です。いつも納期ギリギリで稼げていたとしても、気楽とは言えませんし、時間的な余裕がないことで新しい知識やスキルの獲得ができません。
また、案件が獲得できずに収入が不安定な状態では、時間的な余裕があっても成長することは難しく、単価を下げてでも仕事を受注したくなってしまい、同時に生活に対する不安があるために新しい知識の習得やスキルアップを楽しめなくなってしまいます。
まずは精神的な負担を減らすためにも、50%〜80%のモチベーションで稼げる状態にすること、常に新しい案件を受注できる時間的な余裕を持ち、受注済みの案件についても、無理のないスケジュールで完了できるように調整していくことが大切です。
収入源の分散と調整を両立する
収入面での不安を解消し、気楽に過ごす状態を維持するためには、最低限の安定的な収入を確保し、複数クライアントとの継続的な契約と、状況に合わせて調整できる関係性の構築が求められます。数ヶ月分の生活費貯蓄も重要で、無理をしない範囲で稼げる時には稼ぐこと、経済基盤安定が精神的余裕と質の高い仕事に繋がります。
同時に、特定クライアント依存は契約終了で収入途絶の可能性があり、同じく1つのスキルで稼ごうとすると、需要の波で受注できない時期が訪れる可能性があるため、クライアントと技術の両方の分散をするという考え方を持ってみてください。
また、クラウドソーシングを利用する場合、1つのサービスの終了や不具合により、収入が途絶える可能性も考慮し、複数のクラウドソーシングサイトや案件獲得が可能な情報源を持つことをおすすめします。
単価とスキルアップを欠かさない
フリーランスエンジニアとして気楽な状態を維持するためには、自身の知的好奇心や興味関心を維持しつつ、新しい技術に触れ、同じくスペシャリストとして得意分野の技術力を習熟させていくことが求められます。エンジニアとしての成長が単価のアップにつながるということを忘れず、単価とスキルアップの両立を続けていきましょう。
そのため、長い付き合いから、単価が上げられないクライアントがいる場合など、同じ技術分野で単価の高い新しいクライアントを探し、クライアントを整理することも検討する必要があります。新規案件の獲得が実現できている状態であり、継続案件が複数ある状態を維持できている場合においても、同じ作業量でより収入が得られることを目標としてみてください。
重要なのはフリーランスとしての活動が長くなるにつれ、実績と実力は増えていくこと、同じく単価も上げられるということです。単価を下げることを前提とせず、自分の実力に見合った単価の案件が得られるように、ポートフォリオを見直しながら、交渉力と説得力の強化についても努めてみてください。
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5.まとめ
本記事では、フリーランスを目指す方が気楽に見える理由と現実をご紹介し、後悔しないための注意点やフリーランスとして気楽に過ごすためのポイントなど、フリーランスとして長く働き続けるために必要な考え方をお話ししました。
一番大切なのは、フリーランスとしての気楽さが成長が収入に直結すること、そのため、学びに対するモチベーションが高くなり、楽しそうに日々を暮らせることだということです。技術力が高まれば単価も上がり、自分の望む生活ができるようになれば、稼ぐためだけに無理に時間を費やすこともありません。
フリーランスとしての気楽さを得るためには、自分で好きな仕事を獲得できるようになること、スケジュール調整も柔軟に行えること、何よりも収入面での不安をなくし、スキルアップに前向きになることだということを覚えておいてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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