日々の会社やフリーランスの業務において、「単純作業」「手順が決まっている作業」などを自動化したいということは多々あると思います。
最近ではRPAツールやノーコードでの開発ツールなどでもそういった自動化ツールを開発することも可能です。しかし、それらのツールでは決まった作業に限定されてしまうことや細かい作業の設定は困難である場合がほとんどになります。
本記事はそういった悩みを「Pythonで自動化できること」を紹介することで解決していくことが目的です。
自動化に関しての新しい手段を探している方は最後まで読んで参考にしてみてください。
目次
1.Pythonの業務自動化とは
まず始めに、Pythonは文法がシンプルで書きやすく読みやすいため、プログラミング言語の中でもトップレベルで習得難易度が低い開発言語です。AIや機械学習、データサイエンスなどの分野で注目されることも多いですが、さまざまな業務タスクの自動化ツールとしても活用できます。
Pythonが自動化ツールの作成に向いているのは、前述の「習得難易度の低さ」以外にもオープンソースのプログラミング言語であるため、便利な機能をまとめたライブラリやパッケージが豊富なことも理由です。詳しくは後から紹介しますが、「Excelなどのアプリ操作」「ブラウザ操作」「メール関連の操作」などがあります。
Pythonで自動化をするメリット
Pythonを業務の自動化に活用することで得られるメリットは、以下の通りです。
さまざまな業務の自動化
人件費などのコスト削減
ヒューマンエラーの防止
モチベーションの向上
対して、デメリットはあまりなく、強いてあげるのであれば「IT人材が必須」「コンプライアンス関連の制度検討」くらいになります。
それではそれぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
さまざまな業務の自動化
前述でも触れましたが、Pythonはオープンソースのプログラミング言語であるため、さまざまなアプリやWeb上の要素などを操作することができるライブラリが豊富です。そのため、基本的な文法を学ぶことができれば、後はライブラリの使用方法を理解するだけで初心者でもツールの作成ができます。
また、ライブラリを作成した方々や開発コミュニティが提供している参考資料も複数用意されている場合も多いので便利です。
人件費などのコスト削減
業務内容によっては専門的な作業はともかく、日々の単純作業などに対して人件費を割くことはよくあります。しかし、それらの単純作業を自動化ツールで代替してしまえば、その分の人件費を削減することも可能です。
例えば、時給1500円で1日6時間の業務だとしたら、月20日出勤で月給18万円、年間で216万円が必要になります。自動化ツールで作業を代替できれば、その分のコストを削減可能ですし、Pythonは無償提供の言語なのでコストはかからないことも利点です。
ヒューマンエラーの防止
自動化ツールはプログラムなので、決まった手順で業務を行ってくれます。そのため、人間の場合に起こってしまうケアレスミスも事前に防ぐことも可能です。特にデータの入力・転記・照合などはミスが起きる可能性も高いため、Pythonの自動化ツールは役立つでしょう。
ミスの防止により、修正のためのリソース削減にもつながるため、さらなるコストの削減や業務効率化にもつながります。
モチベーションの向上
事務作業や単純作業などのルーティンワークのほとんどは成果につながることはありません。そのため、その作業があることでのストレスや不満がモチベーションの向上を妨げていることも多いです。そんな作業を自動化することで空いた時間にやりがいを感じる仕事をすることもできるでしょう。
また、自動化などのIT化を積極的に進めている企業は魅力的に感じる人も多いと思います。こうした意味でもPythonでの自動化はさまざまな面で活躍するでしょう。
2.Pythonの自動化ツールでできること8選
ここからはPythonで自動化可能なタスク8選を紹介していきます。
Pythonの自動化①:スクレイピング
1つ目は、スクレイピングです。スクレイピングとは、「Webサイトにある情報を取得・収集する作業」を指します。Webサイトによっては定期的に更新されることもありますが、更新の度に手動で取得していくのはかなりの手間です。
そこでPythonを使ったスクレイピング自動化が活躍します。
PythonではWebサイトのHTMLコードを取得し、その内容を整理することも可能です。Pythonプログラムを一定の間隔で実行するようにすれば、スクレイピング作業を自動化できます。
Pythonの自動化②:Excel・WordなどのMicrosoftアプリ操作
2つ目がExcelやWordなどMicroSoftアプリの操作です。Pythonの標準機能ではこれらのアプリを扱うことはできません。それぞれ以下のようなライブラリが必要です。
Excel:OpenPyXL
Word:Python-docx
これらのライブラリをインストールすることで、Excelでは「表の作成」「テンプレートからのデータ生成」などができます。Wordでは文章を「新規作成」「内容の編集」「画像の添付」が可能です。
また、2つのライブラリを組み合わせて、ExcelのデータをWordに転記するなどの複数アプリでの操作も可能です。
Pythonの自動化③:ブラウザ操作
3つ目がブラウザ操作で、自動化する場合は「Selenium」というライブラリをインストールすることでできます。「Webサイトへログイン」「フォームへ入力」「要素のクリック」などといった作業の自動化が可能です。
事務関連のデータ管理をWebサイトで行っている場合は自動化することで最低限の入力で業務の自動化を図れるでしょう。
Pythonの自動化④:画像編集
4つ目は画像編集のような複雑な作業です。画像編集の自動化には「Pillow(PIL)」というライブラリが必要になります。Pillow(PIL)を使えば、「画像のサイズや色の変更」、「画像の容量圧縮」などの作業を自動化可能です。
専門のツールは使用しないが、単純な画像編集を頻繁に行う場合は、自動化することでかなりの業務効率化が期待できるでしょう。
Pythonの自動化⑤:メール関連
5つ目がメール関連の操作です。業務の中で決まったアドレスに日報や発注など定期的にメールを送ることも多いでしょう。そういったメール関連の作業の自動化には「smtplib」や「imaplib」といったライブラリを使うことで、メールのSMTPやIMAPのサーバに接続できます。これらを活用すれば、メールの作成から送信までを自動化可能です。
また、GmailのAPIとPythonの連携により、Gmail特有の機能を利用した自動化もできるため、より便利な効率化ができるでしょう。
Pythonの自動化⑥:ファイル操作
6つ目がファイル操作で、Pythonには「os」という標準ライブラリで簡単な作業を自動化できます。これを利用することでファイルの「作成」「削除」「読み込み・書き込み」などを自動化することができます。ファイル操作では細かい作業も多く、手戻りなども多くなりやすい作業の1つのため、自動化により業務効率化には貢献できるでしょう。
Pythonの自動化⑦:PDF操作
7つ目がPDF操作です。PDF操作を行う場合、「ReportLab」「PyPDF2」「pdfminer」といった複数のライブラリが必要になります。
これらのライブラリを活用できれば、PDFファイルの「作成」「ファイルから情報抽出」などをすることが可能です。複数のライブラリを使用するため、難易度は若干高いですが、PDF操作を行うことが多い方は自動化に挑戦してみるのも良いでしょう。
Pythonの自動化⑧:APIとの連携
8つ目がAPIとの連携です。APIとは、「他のソフトウェアと機能や情報を共有・連携させる仕組み」を指します。例えば、複数のSNSアカウントを使用する場合、他のSNSアカウントを連携させることで登録不要でログインでき、アカウント1つで複数のSNSが利用可能です。
APIとPythonを連携させることで他のソフトウェアで収集した情報をPythonに取り込んで、整理や分類などさまざまな作業ができます。
関連記事
【Pandas入門】Pythonデータ解析ライブラリ「Pandas」の概要と使い方、メソッド一覧など解説
Flask【Python】とは?入門向けにインストール方法やコード付で使い方を解説
3.Pythonの自動化に必要な知識
Pythonでの自動化にはいくつかの必要な知識があり、スムーズにツールの作成をする際には必要な知識も多いため、事前に学習しておくのがおすすめです。
Pythonの使い方
まずはPythonの使い方を学ぶことからになります。ソースコードの書き方やPythonファイルの実行方法、ライブラリの準備方法などができるようになることが必要です。
Pythonの文法などの基礎知識はProgateやドットインストールなどの学習サイトで、実践も交えながら学習することができます。Pythonはプログラミング言語の中では習得難易度は低いため、プログラミングの学習経験があるなら独学で習得できるでしょう。
また、スクレイピングやMicrosoftアプリの操作などでは文字列に対して処理を行うことも増えるため、upperやstrip、replaceなどの文字列処理のメソッドは欠かせなくなります。ライブラリなどの学習に入る前にこれらの標準メソッドの使い方にも慣れておくと良いでしょう。
ライブラリの知識
前述でも触れたように自動化したい作業によって、「OpenPyXL」「PyPDF2」「Selenium」などのさまざまなライブラリを使えるようになる必要があります。
ライブラリに関しては参考になるサイトなどを「Python 対象のライブラリ名」で検索すれば、サンプルコードを交えてまとめられている資料を見つけるのは簡単です。そのサイトを参考にしてプログラムを作成しながら、覚えるのが良いでしょう。
HTML/CSSの知識
自分だけが使用するツールであれば、特に問題はありませんが、社内での共有や外部への公開などを考えている場合、ツール操作画面の見た目を整えるのは重要になります。
HTML/CSSもProgateやドットインストールなどの学習サイトを使用することで基礎的な内容は習得可能です。こちらもそこまで習得難易度は高くないため、ツール作成に入るまでに習得しておくことをおすすめします。
数学・統計学の知識
Pythonでの業務効率化を図る際に統計学や数学の知識も必要になってきます。スクレイピングやExcelなどから取得したデータの傾向やパターンなどを分析・解析するためには、統計学の知識と「線形代数」「数理統計学」「微分/積分」といった数学の知識が必要です。
また、Pythonには統計解析を効率化する際に便利な「NumPy」「SciPy」「Pandas」などのデータ分析関連のライブラリが豊富にあります。これらはAIや機械学習などでも使用される程なので、活用できれば収集したデータの分析や加工に役立てられるでしょう。
AI(人工知能)・機械学習の知識
AIとは、人間のような知的作業をコンピュータに行わせるために人工的に作られたシステムを指します。
機械学習とは、コンピュータに学習させ、人間が行うようなタスクを実行できるようにするためのAI技術のことです。膨大なデータから指定したアルゴリズムに従い法則性や傾向を学習させることで、データの分類やデータからの予測・判断などを行います。
これらの技術はPythonとの相性もいいため、学習を進めることでさらなる業務効率化を図ることができるでしょう。
関連記事
【Python初心者向け】Pythonで作れるものや入門用のサンプルコード、おすすめの参考書を紹介!
Python3エンジニア認定データ分析試験とは?合格率や難易度、対策方法を解説
4.Pythonの自動化での注意点
Pythonのバージョン指定
Pythonにはさまざまなバージョンが存在していますが、互換性があるわけではありません。使用したいライブラリや機能によって、インストールするPythonのバージョンが最新ではないことも考えられます。目的と用途、使用するライブラリなどをしっかりと精査して、Pythonの環境構築をしていきましょう。
Pythonは使用可能か
Pythonを企業で使用する場合には外部からのインストールが必要ですが、企業のセキュリティルールによっては外部のソフトのインストールが許可されない場合があります。自動化をしようにもPythonが使用できないと意味がありません。
企業のルールをしっかりと確認してから、自動化の検討を始めるようにしましょう。
セキュリティ面の対策
Pythonのみに限った話ではありませんが、データ操作を行うプログラムにはセキュリティリスクが伴います。自動化ツール使用者のデータアクセスに関する権限やセキュリティルールでは操作してはいけないデータであっても、操作できるようにプログラムを書くことは可能です。そういったプログラムを作成してしまった場合、重要データの破損や外部への漏洩などのセキュリティ事故にもつながります。
企業にとって重要な信頼を損ない長期的な売上の低下も考えられるため、セキュリティリスクへの警戒と対策を行いましょう。
関連記事
【2025年版】Pythonの最新バージョン|新機能やバージョンの選び方、インストール方法を解説
5.Pythonの自動化ツールでの業務効率化の事例
ここからはPythonの自動化ツールで行われた業務効率化の事例を紹介していきます。
①事務データの転記作業
これはWebシステムから情報を取得し、Excelファイルに転記する作業が業務時間を圧迫していた際の対策として、Pythonでの自動化を行った例です。
具体的には以下のような作業の自動化になります。
事前に取得したい情報をまとめたExcelファイルを用意
Pythonを実行し、社内システムログイン(IDとパスワードの入力は手動)
1で用意した情報をもとに社内システムから必要な情報を取得(Excel操作とWeb操作)
取得した情報をExcelに転記
実行の度に取得する情報が違ったとしても1で用意するExcelファイルの情報を変えてしまえば、Webシステムから手動で情報を取得する手間を減らすことが可能です。さらに実行され始まれば、他の作業を行いながら待つことも可能なため、業務効率の向上をすることができます。
PythonでのExcel操作とWeb操作を学習すれば、すぐにでも自動化できる内容です。
②複数ファイルの結合
月ごとや作業者毎に作成したPDFファイルをひとまとめにする作業に業務時間を圧迫されていた例になります。
ここで自動化された内容は以下の通りです。
元データと出力データ用のフォルダを用意
元データフォルダに結合したいPDFファイルを配置
Pythonプログラムを実行
Pythonプログラムにより、出力データフォルダに結合されたファイルが生成
手動では1つ1つのファイルを操作して結合をしていた作業が、ファイルの移動とPythonファイルの実行のみにすることができます。
PDF操作を覚えれば、すぐに実装可能です。
6.まとめ
ここまでPythonの自動化について紹介していきました。Pythonは習得難易度も低く、ファイルやWeb関連、アプリなどのさまざまな処理が可能なライブラリがあるため、専門業務以外の単純作業を自動化するのに便利です。
また、複数のライブラリの組み合わせやAI関連の知識を応用することで単純作業のみならず、複雑な作業も自動化できる可能性を秘めています。セキュリティリスクや使用する企業などでのルールに注意しながら、活用してみると良いでしょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
「フリーランスボード」は、数多くのフリーランスエージェントが掲載するITフリーランスエンジニア・ITフリーランス向けの案件・求人を一括検索できるサイトです。
開発環境、職種、単価、稼働形態、稼働日数など様々な条件から、あなたに最適なフリーランス案件・求人を簡単に見つけることができます。
単価アップを目指す方や、自分の得意なスキルを活かせる案件に参画したい方は、ぜひ「フリーランスボード」をご利用ください。