「人間ドックの費用は経費として計上できるのか?」と疑問をお持ちの個人事業主の方に向けて、役立つ情報をお届けします。
従業員が受診する人間ドックについては、基本的に福利厚生費として経費に計上することが可能です。一方で、個人事業主本人が受けた場合の費用は、原則として経費にはなりません。
本記事では人間ドック費用が経費として認められるケースとそうでないケースについて、経理実務の視点からわかりやすく解説します。
目次
1.人間ドックとは?
人間ドックは病気の兆候やリスクを早期に発見することを目的として行われる、自主的な健康診断の一種です。
厚生労働省によると健康診断には、労働安全衛生法などの法律に基づいて受診が義務づけられている「法定健診(通称:定期健診)」と個人の意思で受ける「任意健診」があります
法定健診は法律により定められた健診で、会社員・乳幼児・妊婦など対象者ごとに内容が決まっています。受診者の年齢・職種・健康状態に応じて、身長・体重測定・血液検査・レントゲン・尿検査など基本的な項目が実施されます。
検査項目は基本的にコンパクトで、所要時間も短めです。また法定健診の費用は原則として受診者本人が負担することはなく、事業者や自治体などが費用を負担します。妊婦健診については自費診療扱いですが、自治体による公費で一部または全額を補助していることが通常です。
一方任意健診は、希望者が自分の判断で受ける健診で人間ドックもこれに含まれます。より精密で多岐にわたる検査が可能です。そのため費用は高めですが健康保険組合や自治体の補助制度を利用することで、自己負担を軽減できるケースもあります。
検査の具体的な内容は医療機関や選ぶコースによって異なりますが、一般的な健診項目に加えて胃カメラ・CT検査・血管年齢検査・脳ドック・女性特有の疾患(乳がん・子宮がん)を調べる検査など、より専門的なチェックが含まれています。
仕事をしている方にとっては日程の調整が必要ですが、法定健診だけでは見つかりにくい疾患の早期発見につながるというメリットがあります。
体調に不安を感じている方や加齢に伴って健康面が気になり始めた方は、通常の法定健診に加えて人間ドックの受診も検討してみてはいかがでしょうか。
2.個人事業主が健康診断を受けるには?その方法を解説
まずは個人事業主がどのようにして健康診断を受けるのか、その方法を確認していきましょう。
国民健康保険組合を通じて健診を受ける
国民健康保険組合とは同じ業種に従事する人たちが集まって構成されている健康保険の制度です。一般的な国民健康保険は市区町村などの自治体ごとに、その地域に住んでいる個人が加入しますが国民健康保険組合では職業ごとに加入する仕組みになっています。
たとえば建設業・税理士・美術家など、さまざまな職業別にそれぞれの国民健康保険組合が存在します。こうした職業に従事している方は通常の国民健康保険に加入するか、自身の業種に対応した国民健康保険組合に加入するかを選ぶことができます。
また国民健康保険組合では定期的な健康診断の実施も行っています。
市区町村など自治体の健康診断を利用する
国民健康保険に加入している方は、地域の自治体が実施する健康診断を受けることができます。自治体のホームページなどで日程や場所が案内されているのが通常です。
医療機関や健診専門施設で直接受診する
国民健康保険や国民健康保険組合が実施する人間ドックの日時や会場が都合と合わない場合には、最寄りの病院や健診センターで自主的に健康診断を受けることも可能です。
ただしその際は費用が自己負担となるケースもあるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
3.個人事業主が自身の健康診断(人間ドック)の費用を経費にすることはできない
会社に勤めている従業員であれば、福利厚生の一部として健康診断の費用を会社が負担してくれる場合が多く見受けられます。
一方でフリーランスの場合は会社員のような福利厚生制度が基本的に存在しないため、自身で健康診断の受診や体調管理を行う必要があります。
そのため「仕事を続けていくうえで健康は不可欠なのだから、健康診断にかかった費用を医療費控除の対象にできないか」「あるいは経費として計上できないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし結論としてフリーランスが受けた健康診断の費用は、医療費控除の対象にはならず事業経費としても認められません。なぜなら健康診断は治療目的ではなく予防を目的としたものであり、医療費とはみなされないためです。
またフリーランス本人だけでなく、家族が従業員として働いている場合にその家族の健康診断費用を負担したとしてもそれを経費にすることはできません。
例外として家族以外の従業員が健康診断を受け、その費用を事業主が福利厚生の一環として負担した場合に限り経費として計上することが可能です。
これは労働安全衛生法に基づき、事業主が従業員に対して年1回以上の健康診断を実施する義務を負っているためです。このような健康診断は事業遂行上必要な支出と見なされるため、事業関連の経費として扱うことができます。
確定申告や帳簿上では「福利厚生費」に分類されるのが一般的です。福利厚生費とは、給与とは別に、従業員のために事業主が提供する報酬や手当などのうち、一定の条件を満たすものを指します。
ただしこの費用を経費として認めてもらうためには、一定の条件をすべて満たす必要があります。次章で解説します。
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4.人間ドックの費用を経費にするための要件
この章では健康診断費用を経費にするための要件について説明します。
すべての従業員が同一内容の健診を受けていること
人間ドックの費用を経費として処理するには、すべての従業員に対して公平に受診の機会を提供していることが前提となります。ここで「すべての社員に受けさせている」とは、次のような条件を満たしていることを意味します。
全社員に対して、同一の検査内容・頻度で人間ドックを実施していること
どの社員も、同じ条件下で人間ドックを受けられる体制になっていること
社員全員に受診を義務づけていること
これらの条件を満たしていることで、人間ドックの費用が社会保険料控除の対象外となる「福利厚生費」に該当することが示されます。
福利厚生費として認められるためには、すべての従業員に対して平等な内容で提供される必要があります。もし一部の社員のみに人間ドックを実施したり受診内容や頻度に差があったりすると、福利厚生費として扱われず従業員の給与として課税されてしまう可能性があります。
一般的な範囲の検査項目であること
人間ドックの費用を経費として認めてもらうには、その金額が社会通念上妥当な範囲内であることが求められます。「常識の範囲内である」とは、具体的に次のような点を満たしていることを意味します。
実施される人間ドックの検査内容や実施頻度が、必要最小限にとどまっている
費用が一般的な相場と比べて適正な水準である
会社の規模や事業内容に見合った支出である
これらの条件を満たしていることで、人間ドックの費用は社会保険料控除の対象外となる「福利厚生費」として取り扱うことが可能です。
反対に検査内容が過度であったり費用が相場よりも著しく高額である場合には、福利厚生費として認められず従業員への給与とみなされて課税対象となる可能性があります。
費用を事業者・法人が健診機関へ直接支払っていること
人間ドックの費用を経費として処理するには、会社が診療機関に直接支払いをしていることが条件となります。
ここで「直接支払っている」とは、次のような状況を指します。
従業員が自ら医療機関を選んで受診し後から会社へ費用を請求するのではなく、会社があらかじめ診療機関と契約を結び社員を受診させていること
従業員が立て替えた費用を会社が後日払い戻すのではなく、会社が診療機関に直接料金を支払っていること
このように費用の支払いを会社が直接行っている場合、人間ドックは社会保険料控除の対象とはならない「福利厚生費」として扱うことができます。
一方で社員個人が医療機関を自由に選び自分で費用を負担した場合、その費用を会社が補填すると給与とみなされて課税対象になる可能性があります。福利厚生費として認められるためには、会社が主体となって手配・支払いを行う必要があります。
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5.従業員の人間ドック費用が経費にならない場合とは
従業員の人間ドック費用が経費にならない場合は以下の通りです。
対象者が一部の従業員に限定されている場合
オプション検査の費用については、経費として扱えないことがある
特定の従業員のみを対象としている場合
特定の従業員だけが人間ドックを受けたり一部の従業員に対してのみ高額な検査内容を提供した場合、その費用は福利厚生費として認められず経費に計上することはできません。
これは福利厚生費が正社員に限らず、パートやアルバイトを含むすべての従業員に対して公平に提供されることが求められているためです。
オプション検査の費用は経費計上できないことがある
人間ドックにオプション検査を付け加えた場合、その費用が経費として認められないケースがあります。人間ドックの経費計上について法的に明確な上限は設けられていませんが、一般的な相場を大きく超えるような内容になると福利厚生費として認められない可能性があるため注意が必要です。
オプション検査として追加される主な項目には以下のようなものがあります。
腫瘍マーカー検査
脳の精密検査
認知症の検査
甲状腺機能の検査
肺がんの検査
上腹部(肝臓・胆のう・すい臓・腎臓・脾臓)の検査
膵臓がんや胆管がんの検査
大腸の検査
骨粗しょう症の検査
希望する検査項目をオプションとして人間ドックに追加する場合は、その内容や費用が常識的な範囲に収まっているかを十分に確認することが大切です。
6.経費にできるかどうかに関係なく人間ドックを受けるべき理由
人間ドックの費用を経費として計上できるかどうかは、企業にとって大きな関心事ですがそれだけが焦点ではありません。経費処理の可否にかかわらず、人間ドックは従業員の健康を守るうえで非常に重要な役割を担っています。
人間ドックの受診がもたらす意義には、次のような点があります。
通常の健康診断では見逃される病気の発見につながる
人間ドックは、通常の健康診断とは性質が異なります。
健康診断は法律で受診が義務づけられているもので、主に血液検査や尿検査など基本的かつ簡易的なチェックを行うのが一般的です。一方で健康診断では内視鏡やCTといった高度な検査は含まれていないため、早期の疾患を見逃してしまう可能性もあります。
これに対して人間ドックでは、より精密な検査が実施されます。たとえば内視鏡検査やCTスキャンなどを通じて、体内の状態を詳しく調べることができるため健康診断では発見が難しい病気を早期に見つけられる可能性が高まります。
病気の早期発見で迅速な治療につなげられる
人間ドックを受診することで病気を早期に見つけ出し、すぐに治療へつなげることが可能になります。「早期治療」とは症状が悪化する前の段階で治療を開始することを指し、次のような利点があります。
病気の進行や合併症を未然に防ぐことができる
完治の可能性や生存率が高まる
症状に応じた適切な治療法や薬の選択肢が広がる
通院期間や医療費の負担を抑えることができる
日常生活や仕事への影響を最小限にできる
このように早期の治療は本人の健康維持はもちろんのこと、周囲の家族や職場にとってもプラスとなります。たとえば、治療の遅れによる長期の休職や退職などのリスクを軽減できる点も重要です。
人間ドックでは通常の健康診断では見落とされがちな病気も検出することができ、病気の早期発見・早期対応につながります。結果として健康状態の悪化を防ぎ、従業員が安心して長く働ける環境づくりにも寄与するのです。
また早期に対応することで治療の効果が上がるだけでなく、通院や治療に要する時間やコストの削減にもつながります。
7.人間ドックの費用は医療費控除やセルフメディケーション税制の対象になる?
この章では人間ドックの費用が医療費控除やセルフメディケーション税制の対象になるかどうかを解説します
人間ドック・健康診断の費用は基本的に医療費控除の対象外
医療費控除とは同じ生計の配偶者や家族の1年間の医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を行うことで所得から差し引くことができる税制上の優遇措置です。
ここでの「医療費」とは医師による診療・治療にかかった費用や、治療・療養に必要な医薬品の購入費などが該当します。
一方人間ドックや健康診断といった検査はあくまで健康状態の確認や病気の予防を目的として行われるものであり治療を伴わないため、原則として医療費控除の対象外とされています。
ただし健康診断などを受けて重篤な疾病が見つかり、そのまま治療に至った場合にはその診断にかかった費用も「治療に先立つ診察」とみなされ医療費控除の対象となることがあります。
特定健康診査(特定健診)も通常は医療費控除の対象外
特定健診(特定健康診査)とは40歳以上75歳未満の人を対象に実施される健康診断で、主に生活習慣病のリスクを早期に発見することを目的としています。
この健診でリスクが高いと判断された場合、医師・看護師・管理栄養士などの専門家によって特定保健指導が提供されることがあります。
特定健診および特定保健指導にかかる費用は加入している公的医療保険の種類によって異なりますが、自費で受けた場合の費用については原則として人間ドックと同様に医療費控除の対象にはなりません。
ただし特定健診の結果として高血圧・脂質異常・糖尿病などの疾患と同等の健康状態であると判断されてさらにその診査を行った医師の判断に基づいて特定保健指導が行われた場合、その健診にかかった費用(自己負担分)は医療費控除の対象として扱われます。
条件を満たすと人間ドックや健診費用が医療費控除の対象になることも
人間ドック・健康診断・特定健診にかかる費用が医療費控除の対象となるのは、一定の条件を満たした場合に限られます。なお医療費控除の適用可否については、最終的に税務署の判断に委ねられることがあるためケースによって扱いが異なる場合があります。
そのため実際の会計処理や申告を行う際には、所轄の税務署などに事前相談されることをおすすめします。
人間ドック・健康診断の結果、治療が必要となった場合
人間ドックや健康診断の費用が医療費控除の対象となるのは、検査の結果として重大な病気が見つかりその後に治療を受けた場合に限られます。ただし医療費控除の対象となる「重大な疾病」について、国税庁は具体的な疾患名を示していません。
そのため、一般的には以下のような病気が該当するケースが多いと考えられています。
各種のがん
心疾患(例:心筋梗塞、狭心症 など)
脳血管障害(例:脳梗塞、くも膜下出血、脳出血 など)
高血圧症
脂質異常症
糖尿病 など
特定健診後に医療行為が行われた場合
特定健診の費用が医療費控除の対象となるのは健診の結果、高血圧症・脂質異常症・糖尿病と同等の状態であると診断されてそのうえで医師の指示に従って特定保健指導が実施された場合です。診断に基づいて実際に治療や保健指導を受けることが必要です。
また「重大な疾病」に該当するかどうかの判断は、税務署の判断によって異なる可能性があります。判断に迷う場合は、確定申告を行う前にあらかじめ所轄の税務署へ相談することをおすすめします。
メタボ治療やポリープ切除、スポーツジムの利用費が控除対象となるか
上記に加えて人間ドック・健康診断・特定健診の結果に基づいて治療などが行われた場合に、医療費控除の対象となる可能性がある具体的なケースをご紹介します。
メタボと診断され、治療を受けた場合
高血圧や脂質異常症などはいわゆる「重大な疾病」とみなされる可能性があり、これらはメタボリックシンドロームに該当する代表的な疾患です。
人間ドックや健康診断または特定健診の結果、メタボリックシンドロームに相当する状態と診断されその後に継続的な治療が行われた場合にはこれらの検査費用が「治療に先立って実施された診療」とみなされる可能性があります。結果として、医療費控除の対象となる場合があります。
ただし医療費控除の適用可否については税務署の判断によって異なることがあるため、申告前に所轄の税務署に確認することをおすすめします。
便潜血陽性の後、大腸ポリープを切除した場合
大腸ポリープが「重大な疾病」に該当するかどうかは、最終的には税務署の判断によります。
たとえば便潜血検査で陽性となって精密検査として実施された大腸内視鏡(大腸カメラ)検査の結果、悪性のポリープが発見されその後に継続的な治療を受けた場合には該当する人間ドックや健康診断の費用が医療費控除の対象となる可能性があります。
一方でポリープが良性で、切除のみで治療が完了してその後の治療を要しなかったケースでは、医療費控除の対象とならない場合も考えられます。
判断が難しい場合は、確定申告の前に必ず所轄の税務署に確認しておきましょう。
生活習慣病の治療として医師指導のもと運動療法を受けた場合
特定健診を受けた結果特定保健指導の一環として「定期的な運動を行うように」とのアドバイスを受けてスポーツジムやフィットネスクラブを利用したとしても、施設利用料は控除対象外です。
一方で人間ドックや健康診断、特定健診の結果として高血圧症・脂質異常症・糖尿病・虚血性心疾患などの病気が判明して医師の診断と指導のもとで特定の施設を利用して運動療法を実施した場合には、条件を満たせば人間ドック等の費用や施設使用料が医療費控除の対象となる可能性があります 。
医療費控除の適用対象となるのは対象となる疾病(例:高血圧症、糖尿病など)と診断され、医師の運動療法処方箋に基づいて指定施設で週1回以上・8週間以上の運動療法を受けた場合です。
控除を受けるには、利用後に医師の署名が記載された「運動療法実施証明書」を提出する必要があります 。
これらの施設は限られており必要書類の準備など手続きも煩雑なため利用には一定のハードルがありますが、医療的に運動療法が必要とされ通える範囲に指定施設がある場合は主治医と相談のうえ医療費控除の活用を検討してみるとよいでしょう。
なお温泉施設を活用した健康増進についても医師が作成した「温泉療養指示書」と、施設利用後に発行される「温泉療養証明書」が揃えば医療費控除の対象になるケースもあります。
セルフメディケーション税制の対象になる健康診断・人間ドックの扱いは?
セルフメディケーション税制とは健康管理や病気の予防に積極的に取り組んでいる方が、一定の条件を満たすスイッチOTC医薬品(医療用から一般用へ転用された市販薬)を年間で12,000円以上購入した際にその費用の一部を所得から差し引くことができる制度です。
この制度では、生計を共にする配偶者や家族の分も合算して計算することができます。ただし、セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は併用できずどちらか一方のみが適用されます 。
人間ドックや健康診断の費用自体はこの制度の控除対象とはなりませんが、セルフメディケーション税制を受けるために必要な「健康維持・疾病予防に関する一定の取り組み」として扱われるため健診の領収書や検査結果通知書などは大切に保管しておく必要があります。
セルフメディケーション税制の対象となる「一定の取り組み」の例は以下の通りです。
健康保険組合や市区町村国保などが実施する健康診査(例:人間ドックや各種健診・検診)
自治体が健康増進の一環として行う健康診査(生活保護受給者等向け)
予防接種(インフルエンザワクチンなどの定期接種を含む)
勤務先が実施する定期健康診断(いわゆる事業主健診)
特定健康診査および特定保健指導
自治体によるがん検診(健康増進事業として実施されるもの)
これらの取り組みを証明する書類(領収書や結果通知書など)は確定申告で提出する必要はありませんが、制度の利用にあたっては申告から5年間は自宅で保管する義務があります。
また結果通知書に勤務先や保険者の名称などの記載がない場合には、別途で証明書を取得しなければならないケースもあります。
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8.健診費用の経費処理でよくある疑問
この章では健診費用の経費処理に関するよくある疑問について解説していきます。
経費にならない健康診断費用は確定申告でどう取り扱う?
先にご紹介した「健康診断費用を経費として計上するための条件」のうち1つでも条件を満たしていない場合、その健診費用は経費にはなりません。その場合、事業主が負担した役員や従業員の健康診断費用は給与や報酬の一部と見なされ課税対象となります。
これは経費と認められない健診費用が、従業員に対する「経済的利益」と判断されるためです。
たとえば月給30万円の従業員に対して、会社が1万円の健診費用を負担した場合を例に取ってみましょう。
給与手当(基本給):300,000円
給与手当(健診費用):10,000円
合計支給額:310,000円
このように健診費用も含めた31万円が給与とされ、そこから所得税や社会保険料が算出されることになります。
もしこれを給与扱いとせず処理してしまうと源泉所得税の未徴収や、従業員側の所得税・住民税の申告漏れが発生するリスクがあります。結果的に従業員の税務にも影響が及ぶことになるため、慎重に取り扱う必要があります。
健康診断だけでなく人間ドックの費用も経費にできるの?
人間ドックの費用についても、条件を満たせば経費として計上することが可能です。このようなケースでも、先述した「健康診断費用を経費とするための条件」をすべて満たしていることが前提となります。
人間ドックの仕訳に使える勘定科目
すべての従業員が公平に利用できる福利厚生サービスについては、「福利厚生費」として経費に計上することが可能です。
人間ドックもその一例であり、特定の社員だけでなく全従業員を対象としている場合には、福利厚生費の勘定科目で処理することができます。
ただし役員のみを対象とした人間ドックの費用は、福利厚生費として認められず会社がその費用を負担した場合は「役員報酬」や「給与」として扱われることになります。
例えば高級な個室付きで食事も含まれ1人あたり20万円といった人間ドックの場合、一般的な費用水準から逸脱しており福利厚生費として経費にするのは難しいと考えられます。仮に全従業員が対象であったとしても、常識的な金額を超えていれば福利厚生とはみなされない可能性があります。
また「全従業員が利用できる」という条件は、現時点での全社員が一律に対象である必要はありません。たとえば「40歳以上の従業員に提供」といった年齢制限を設けた場合でも、医学的・社会的に妥当と判断される条件であれば福利厚生費として認められます。
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9.まとめ
また「全従業員が利用できる」という条件は、現時点での全社員が一律に対象である必要はありません。たとえば「40歳以上の従業員に提供」といった年齢制限を設けた場合でも、医学的・社会的に妥当と判断される条件であれば福利厚生費として認められます。
従業員の人間ドック費用は、福利厚生費として経費に含めることが可能です。ただし、その対象が全従業員であることが前提となります。一方でフリーランスが自身で受診した人間ドックや健康診断にかかる費用は、原則として事業経費には該当しません。
なお人間ドックに関する費用を経費に含める際に申告内容に不安がある場合は、税務署へ相談するのがおすすめです。
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