個人事業主が使用する事務所には、賃貸している物件を利用しているケースと自宅を所有してそこを仕事場として使っているケースの両方があります。そして、これらが自宅兼事務所という形で運用されていることもよく見られます。
たとえば家賃に関しては確定申告時にどのように経費として処理できるのか、また家事按分による割合の算出が必要になるのかなど気になる点は多いでしょう。
賃貸契約を結ぶ際には敷金などの初期費用も発生しますが、それらが青色申告と白色申告でどう取り扱われるかも押さえておきたいポイントです。
さらに事業の規模が大きくなった際に従業員へ社宅を提供する場合のルールや節税につながる取り組みについても詳しく解説していきます。
目次
1.自宅やワンルームでもOK!家賃を経費にする「家事按分」の基本
確定申告や経費計算で「按分」と言うと、個人事業主が支出した費用をプライベートと事業での使用分に分ける「家事按分(かじあんぶん)」を指します。
例えば個人事業主やフリーランスが自宅の一部を事務所として利用していたり車を仕事とプライベート両方で使った場合、家事按分を行うことで事業に使った分の費用を経費として計上できます。
家事按分を適用できる代表的な費用には、家賃・水道光熱費・通信費・交際費・交通費などがあります。
今回の記事では家賃の家事按分について特に詳しく解説します。
2.家賃を経費にするメリット
家賃を家事按分することで、さまざまな利点を得ることができます。
家賃だけでなく水道光熱費やインターネット代など、事業と私用が混在する費用も事業に使った分をしっかり区分することで経費に計上できます。家事按分をうまく活用すれば経費の幅が広がり、その結果として課税対象となる所得が抑えられるため納税額の軽減にもつながります。
ぜひ知っておきたいポイントです。
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3.個人事業主の家賃はどこまで経費にできる?ワンルームでも対象になる?
個人事業主が自宅を事務所として使用している場合、事業用に使った家賃や光熱費などを経費として計上することができます。経費として計上できるのは事業活動に関連する支出であり、自宅で仕事をしている場合家賃や光熱費もその対象になります。
ただし全額を経費として計上できるわけではありませんので詳しく解説します。
住居と仕事場を兼ねた場合は、家賃の一部が経費として認められる
自宅と共用している店舗や事務所などを借りているケースでは、支払っている家賃のうち事業に使用している割合だけを必要経費として認めることができます。
個人事業主が確定申告を行う際、同一の支出が私生活(家事)と事業の両方に関係する場合には「家事関連費」として取り扱われます。たとえば、自宅兼事務所として使っている物件の家賃や水道光熱費などがその代表です。
こうした家事関連費に該当する支出は全額を経費にすることはできず、業務に使っている部分と私生活で使っている部分を適切に分けそのうち業務分のみを経費として算入します。
このように使用割合を区分して経費額を決定する方法が「家事按分」です。
家事按分によって経費に計上できる割合は申告の形式によって取扱いが異なります。のちほど青色申告と白色申告の違いを解説します。
ワンルームの一部を業務用に使う場合は、割合を計算して経費にできる
ワンルームで生活しながら仕事をしている個人事業主は、家賃の一部を経費として計上することが可能です。
もし部屋の中に専用の仕事スペースを設けている場合、その面積に応じて家賃を按分します。例えば10畳のワンルームで2畳を仕事スペースとして使用している場合、家賃の20%が経費として計上されます。
仕事スペースを物理的に区切ることが難しい場合は、時間で按分する方法も考えられます。1日のうちどれくらいの時間を仕事に充てているかを基準にし、その割合を家賃に適用します。例えば1日のうち3分の1を仕事に使っているなら、家賃の3分の1を経費として計上できます。
ワンルームで家事按分を行う場合には面積按分または時間按分のどちらを使うにしても、その根拠を明確にしておくことが重要です。税務署に説明を求められた場合に、納得できる説明ができるようにしておきましょう。
自宅とは別に借りたオフィスなら、家賃は全額経費として計上できる
自宅とは別に事業用として店舗やオフィスなどを賃貸している場合、その家賃は原則として全額を経費として認められます。
ただし誰と賃貸契約を交わしているかによっては、経費にできないケースがあるため注意が必要です。
たとえば親や配偶者などの親族から土地や建物を借りて事業に使っているような場合、「その親族と生計を共にしているかどうか」が経費として処理できるかどうかの判断基準となります。この点は後ほど詳しく解説します。
社宅の場合
社宅を借り上げた場合の経費計上方法について、賃貸物件を社宅として従業員に提供する場合には地代家賃ではなく福利厚生費として経費として計上できます。社宅を福利厚生費として扱う際のポイントを紹介します。
従業員から家賃の一部を徴収する:社宅として借りた物件の賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収する必要があります。もし50%未満の金額しか徴収しない場合、徴収額を差し引いた残りの金額は課税対象となるため注意が必要です。
家族従業員は対象外:親族が家族従業員として働いている場合、その家族の住まいを社宅として扱うことはできません。社宅の賃料を経費として計上できるのは、第三者の従業員に限られます。
バーチャルオフィスの利用について
バーチャルオフィスを利用している場合、その利用は事業に必要な経費として認められます。バーチャルオフィスは、個人事業主や法人に関係なく全て経費として計上可能です。
なお自宅を仕事場として使用している場合でも、バーチャルオフィスの費用は経費に計上できます。この場合自宅の家賃は家事按分して申告し、バーチャルオフィスの費用は「支払手数料」として経費計上できるため両方を経費にすることが可能です。
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4.個人事業主が家賃を経費にする際の家事按分の考え方
個人事業主の中には、自宅を仕事場として利用している方もいらっしゃるでしょう。その場合自宅の家賃は家事関連費として扱われます。経費として計上できるのは、業務遂行に直接必要であることが取引記録などから明確に区分できる金額のみです。
では、どのように区分すれば良いのでしょうか。具体的な方法を確認してみましょう。自宅を仕事場として使用している場合、家賃は合理的な基準に基づいて按分して計算します。
使用面積をもとに按分割合を算出する方法
次にご紹介するのは、面積を基準にした按分率の算出方法です。この方法は仕事に使うスペースが自宅内で明確に決まっている場合、たとえば自宅の一部屋だけを業務用として使用していたり1階部分を事務所として利用していたりするケースに適しています。
按分率の求め方は以下の通りです。
按分率 = 事業に使用している面積 ÷ 自宅全体の床面積 |
この方法は、使用時間に基づく計算に比べてシンプルで分かりやすいのが特徴です。もし自宅の正確な面積が不明な場合は、不動産の契約書や管理会社・大家さんなどから正確な面積が記載された書類を取得すると安心です。
面積での按分は根拠が明確になるため、税務上の説明もしやすくなります。ご自身の状況に応じて、適した方法を選びましょう。
使用時間に応じて割合を決めるやり方
使用時間を基準にして家賃などの費用を按分する方法があります。この方法は明確に仕事専用のスペースがない場合や、ワンルームのように部屋を区切れない住居で作業している方に適しています。
按分率を算出する際の手順は以下の通りです。
事業で使用する時間の算出
まず1日に自宅で作業している時間と、1ヵ月あたりの稼働日数を掛け合わせて自宅で事業に使っている合計時間を出します。
例:1日5時間 × 月20日 = 100時間
全体に占める事業時間の割合を計算
1ヵ月を30日(=720時間)と仮定し、全体のうち事業に使っている時間の割合を出します。
例:100時間 ÷ 720時間 ≒13.9%(按分率)
経費として計上できる金額を算出
家賃全体に按分率を掛けて、経費にできる金額を求めます。例:家賃10万円 × 13.9% = 13,900円
このように、自身の作業状況に応じて具体的な数値を使って計算することが重要です。ご自身の生活スタイルに当てはめて、按分率を適切に算出しましょう。
青色申告と白色申告で異なる按分の取り扱い
青色申告と白色申告では、家事按分による経費計上の扱いに違いがあります。
青色申告の場合には明確な根拠があれば事業に使用した割合に応じて自由に経費計上できますが、白色申告では原則として事業利用の割合が50%を超えていなければ経費として認められにくい点に注意が必要です。ただし明確に業務に関わる支出と区別できる場合には、50%未満であっても一部計上できるケースもあります。
一般的に自宅の一部を事務所として使っている場合の按分率はそんなに高くないとされており、白色申告者では家賃の経費計上が難しいケースも見受けられます。
家賃を確実に経費にしたいと考えるなら、青色申告を選択することが望ましいと言えるでしょう。
家賃の内容によって、仕訳する際の勘定科目が異なる
自宅とは別に借りている事務所や店舗 : 全額「地代家賃」
自宅兼事務所(自宅兼店舗): 家事按分後、事業利用分を「地代家賃」
バーチャルオフィス : 「支払手数料」
自宅とは別に借りた事務所や店舗、事業用倉庫の家賃は「地代家賃」として全額経費に計上できます。自宅兼事務所の場合も、家事按分を行った上で「地代家賃」として経費計上が可能です。
ただしバーチャルオフィスの利用の場合は物件を借りていないため、「地代家賃」の勘定科目は使わず「支払手数料」で経費計上するのが通常です。
5.家賃の勘定科目と帳簿への記帳方法について
家賃を家事按分する際の記帳方法には、月ごとに按分する方法と1年分をまとめて按分する方法の2つがあります。自分の業務の状況や記帳の手間を考慮して、最も適した方法を選択しましょう。
また会計ソフトを活用することで、家事按分の処理が簡単に行えるほか日常的な帳簿管理や確定申告の作業も効率化できます。
月ごとに按分して記帳する方法
毎月家賃を支払うたびに、その都度家事按分を行い記帳する方法です。稼働日数や使用時間が月ごとに大きく変動する場合、この方法を採用すればより正確な按分ができます。
1年分をまとめて按分処理する場合の対応
1年分の家賃を一括で家事按分し、事業に使用した分だけを経費として計上することが可能です。ただし自宅をどれだけ事業に使っているかをきちんと把握したうえで、その使用割合をもとに計算する必要があります。計算方法は以下の通りです.
(年間家賃 ÷ 12) × 事業利用割合 |
たとえば年間の家賃が1200,000円で、事業での使用割合が20%の場合
(1,200,000円 ÷ 12)× 0.2 = 20,000円 |
このように、毎月20,000円が事業経費として認められます。
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6.個人事業主が家賃を経費計上する際の注意点とコツ
個人事業主が地代や家賃を経費として計上する際、注意すべき点があります。
控除が適用されなくなることや経費にしようと思っていた支出が実際には経費として認められないといった後悔を避けるためにも、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
敷金や礼金は処理の仕方が異なるので注意
個人事業主が家賃を経費として計上する際、まず押さえておきたいポイントの一つは「敷金は経費として計上できない」ということです。
賃貸契約を結ぶ際に支払う「敷金」や「礼金」についてですが、敷金は貸主に対する担保として支払うもので家賃が未払いの場合の保証や退去時の原状回復費用に充てられます。
万が一、退去時に敷金の残金があれば返金されることが一般的です。敷金や保証金は返金される可能性が高いため、経費として計上することはできません。
一方で礼金は返金されない費用であるため、経費として計上することが可能です。
更新料や共益費なども経費対象に含まれる
賃貸物件に関連する更新料・管理費・共益費なども、家賃と同じように経費として計上できます。
物件全体が事業用であれば、これらの費用は全額経費として認められます。もしプライベートと共用する部分がある場合は、家賃と同じ割合で家事按分して経費に計上することが必要です。
契約書や明細書などの証明書類が必要
家賃の按分を行う際には、正確な数値を用いて計算する必要があります。不正確な計算で経費を計上してしまうと、税務署から指摘を受ける可能性があります。必ず、明確な根拠に基づいた数値で計算しましょう。
万が一税務署から按分計算の根拠を問われた際に適切に説明できるように、賃貸契約書や支払いを証明する通帳記録・領収書など計算に使用した根拠となる資料はしっかりと保管しておくことが重要です。
税務署に業務関連性を説明できるようにしておくことが重要
個人事業主が家賃などの家事按分を行う際には、税務署から指摘を受けた場合に説明できる客観的な証拠を準備しておくことが非常に重要です。契約書や領収書に加えて、実際にどのように計算したかを記録に残しておくことが求められます。
確定申告の内容により、税務調査が実施される可能性もあります。もし申告に不備があれば、追加納税や追徴課税が発生することも考えられます。このような予期しない費用を避けるために、経費計上を曖昧にしないことが大切です。
税務署から指摘を受けた際には事業に関連する費用であることを正当に証明できるよう、必要な書類や計算根拠を整えておくことが重要です。
住宅ローンの返済元金は必要経費として扱えない
持ち家にかかる住宅ローンの返済を経費に含める際は、利息部分のみが必要経費として認められます。元金の返済は資産の取得にあたるため、事業の経費としては扱えません。
経費処理を適切に行うには、ローンの返済内訳が分かる明細書を記録として残しておくことが大切です。
自宅を事務所と兼ねている場合、住宅ローン控除の対象外になる可能性がある
住宅ローン控除は居住用として利用している部分にのみ適用されるため、事業に使用しているスペースには適用されないことがあります。
そのため住宅ローン控除を重視する場合には、経費として計上する家賃の割合について慎重に見極める必要があります。
生計を共にする家族や親族への家賃支払いは経費として認められない
支払先が家族や親族である場合には、「生計を共にしているかどうか」が経費として認められるかどうかの判断の基準となります。
たとえ実際に家賃の支払いが発生していたとしても同一の生活費でやりくりしている親族に対して支払われたものは、税務上経費として扱うことはできません。これは形式的な支払いであっても実質的に節税が可能になってしまうため、税法上の制限が設けられているからです。
しかしながら支払い相手が親族であっても生活が別々で家計を共有していない場合には、その支出は経費として認められます。この場合勘定科目や家事按分の方法については、通常の物件に支払う家賃・賃料と同じ基準で処理することが可能です。
社宅の契約は事業主名義にする
社宅を借りる際には、賃貸契約を事業主本人の名義で行うことが重要です。家事按分は基本的に個人事業主やフリーランスを対象とした制度であるため、契約が法人名義になっていると経費として認められにくくなる可能性があります。
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7.家賃以外にも個人事業主が経費にできる生活関連費用
家事按分では家賃だけでなく、さまざまな費用も経費として計上できます。例えば電気・ガス・水道といった光熱費や、家具の一部などが対象となります。これらの費用を経費に加えることで、節税効果を得ることができるでしょう。
倉庫のレンタル費用
個人事業主が借りている倉庫の賃料は、事業で使用している部分について経費として計上することができます。
プライベートの荷物と事業用の仕入れや材料を同じ倉庫に保管している場合など、個人的な使用と事業用の使用が混在している場合は家事按分を行って費用を按分します。
もし倉庫が完全に事業専用で使用されている場合は、賃料を全額経費として計上することができます。
水道・電気・ガスなどの光熱費
自宅を事業用途としても使用している場合、水道代や電気代などの光熱費を経費として計上することができます。光熱費を経費として認めてもらうためには、業務で使用した電気やガスの割合を次の方法で計算します。
使用時間で計算する方法:1日の中で業務に費やした時間とプライベートで使用した時間の比率を計算し、その割合で光熱費を按分します。
使用スペースで計算する方法:自宅内で業務に使っているスペースの面積割合を元に、光熱費を按分して計算します。
インターネットや電話などの通信費
携帯電話やインターネットなどの通信費も、業務で使用している分についてのみ経費として計上できます。具体的な計算方法は以下の通りです。
使用時間での計算方法:例えば1日のうち8時間を業務に使用している場合、30日間の通信費の中から240時間分を経費として計上できます。
利用量での計算方法:通話時間やインターネットのデータ使用量を記録し、その中から事業で使った分を算出します。例えば月間で100GBのデータを使用し、そのうち60GBを業務で使用した場合には通信費の60%を経費として計上できます。
車両に関する経費(ガソリン代・駐車場代など)
個人事業主は事業に必要な支出として、家賃以外にも業務用の車にかかる「駐車場の使用料」や「水道代・電気代」「インターネットや電話料金」といった各種費用も経費に含めることができます。
これらの費用は、事業の内容や実態に応じて「車両費」「賃借料」「通信費」などの勘定科目で処理されます。
さらに業務に必要な用途で使用しているレンタルスペースやシェアオフィスに関する費用も、必要経費として認められます。これらは継続的な契約が前提となることが多いため、会計処理の際には契約内容がわかる資料や家事按分の基準などを記帳時点で整理・保存しておくことが大切です。
後から根拠を探す手間を省くためにも、最初の段階で書類の準備をしておくと安心です。
なお家事按分を適用する費用については、月ごとに経費にしても年末にまとめて処理してもどちらでも問題ありません。
たとえば事業用の口座から使用料が引き落とされた場合には、まず全額を事業経費として計上したあとでプライベート利用分を差し引いて按分処理します。この調整によって事業に無関係な分は経費から除外され、該当額は「事業主貸」として仕訳することになります。
マイホーム購入費用の取り扱い
個人事業主が所有する自宅の購入費用についても、事業用部分を減価償却を通じて経費として計上することができます。これは元本の支払いではなく、減価償却後の資産価値や金利の部分を経費にする仕組みです。
家賃と同じように事業用と生活用に分けて家事按分を行い、事業用部分のみを経費として計上します。
持ち家の費用を経費として計上する際には、住宅ローン控除の条件に注意する必要があります。例えば、「床面積の半分以上が居住用であること」や「事業用割合が10%以下であること」などの要件があります。
8.税務調査で家事按分が問題視されやすいケース
家事按分を経費として申告する際、税務署は申告された計算方法や内容が正当かどうかを審査します。
もし税務調査で家事按分に関する申告に誤りが見つかって修正申告を求められた場合、不足分の所得税の納付に加え追徴課税を支払う必要が生じます。税務調査で家事按分の内容が指摘されやすい状況として、以下のような点が挙げられます。
家事按分の計算方法を明確に説明できない場合
按分率が過剰に設定されている場合
生計を共にしている家族や親族に支払う家賃を経費として計上している場合
事業用と私用を区別できる証拠書類が不足している場合
これらの点について、さらに詳細に解説していきます。
按分の根拠や計算内容を明確に説明できない場合
合理的な根拠が示せない場合には、家賃を経費として計上することはできません。按分の割合は個人事業主自身が設定することは可能ですが、感覚的に決めるのではなく実際の使用状況に基づいた根拠が必要です。
家賃を経費として按分する際には、事業での使用実態・使用時間・使用面積などを示す資料の用意が求められます。
税務署から問い合わせを受けた際にきちんと対応できるよう、按分の根拠はあらかじめ明確にしておくことが大切です。
按分の割合が不自然に高く設定されている場合
家賃や光熱費などの家事按分を行う際、合理的な割合で計算しないで過剰な金額を経費として計上することは認められません。按分率を不当に高く設定して経費を過大に計上することは、不適切な経費計上として判断される恐れがあります。
納税額を減らそうと過度に経費を計上するのではなく、事業に使用した割合を明確に示せる範囲で計算することが大切です。
事業と私生活の使用区分を示す証拠書類が用意されていない場合
家事按分の根拠となる資料が不十分だと、経費計上の正当性が疑問視される可能性があります。
按分率の正当性を示すためには、事業用スペースの間取り図やその使用状況を示す写真・光熱費・通信費の使用状況の記録・自動車の走行距離などの記録をきちんと保管しておくことが重要です。
税務調査の際に指摘を避けるために、事業用と私用を明確に区別できる証拠がない場合はその費用を経費として計上しないよう注意しましょう。
9.家賃に関する経費計上のよくある質問
自宅を事業用としても利用している個人事業主やフリーランスにとって、家賃を経費として計上することは非常に重要です。実際に家事按分を行う際に、疑問点がある方もいらっしゃることでしょう。
この章では、そのようなよくある質問について解説します。
領収書がなくても家賃を経費として認められる?
家賃を経費として計上する際には領収書だけでなく、他の証拠書類が認められることもあります。例えば、賃貸契約書や家賃の振込履歴などが有効です。銀行振込の明細書を保管しておくことをお勧めします。
夫など配偶者名義の家賃でも経費として申請できる?
夫名義で支払っている家賃についても、事業に使用している部分は経費として計上できます。後で夫婦間でのトラブルや誤解を避けるために、事前に家事按分に関する合意書を作成しておくことをおすすめします。
10.まとめ
個人事業主が支払う家賃は、原則として事業に関係する部分を経費として計上できます。ただし物件の所有者が生活を共にする親族などの場合、その家賃は経費として認められない点に注意が必要です。
また自宅と事務所を兼ねた住宅を借りている場合には、事業に使用している割合をきちんと算出し家事按分の根拠を明確にしておく必要があります。
もし按分割合に変更があった場合には、その理由とともに、新しい割合の算出根拠を記録に残しておきましょう。
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