iPhoneアプリを自分で開発してみたいと考えても、「何が必要なのか」「どこから始めればいいのか」がわからず、一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。この記事では、初心者がiOSアプリを開発・公開するまでに知っておくべき注意点や必要な準備、開発言語、環境構築の方法をわかりやすく解説します。
目次
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1.iPhoneのアプリを開発したい場合の注意事項
iPhoneのアプリ(iOSアプリ)を開発する際には、開発環境・運用コストなどの注意点があります。
まず、iOSアプリの開発にはMacが原則的に必要です。Appleが提供する公式の統合開発環境「Xcode」はmacOS専用であり、Windows環境では直接利用できません。WindowsユーザーがiOSアプリを開発するには、Macをレンタルするクラウド環境や仮想マシンの利用を検討する必要があります。
また、開発したアプリをApp Storeに公開するためにはApple Developer Programへの登録が必要で、個人アカウントでは年間99ドル(約14,400円)の費用が発生します。この費用を支払って初めて、App StoreやTestFlightなどでリリースできるようになります。
このように、iOSアプリの開発には特有のハードルがありますが、それを理解して対策することで初心者でも問題なく開発・公開を進められます。
2.iOSアプリ開発に必要な準備
iOSアプリを開発するには、整えておくべき準備があります。必要な開発環境やアカウント、ツールを準備しておくことで、開発の初期段階でのトラブルを回避できます。
まず最初に必要なのは、Mac環境の用意です。Apple公式の統合開発環境のXcodeはmacOS上でのみ動作するため、Windowsパソコンではそのまま利用できません。Mac本体を用意するのが理想ですが、近年ではクラウドでmacOSを構築できるソリューション(MacStadium)も登場しています。
次にApple IDとApple Developer Programへの登録が必要です。開発そのものは無料でできますが、iPhoneの実機でテストしたりApp Storeにアプリを公開したりするには、有料のApple Developer Programへの加入が求められます。
加えて、開発に必要なツールを整えることも重要です。
macOSパソコン
Apple ID(無料)およびDeveloperアカウント(有料)
シミュレーターまたはiPhone実機(テスト用途)
以上のようにiOSアプリ開発には特有の準備が求められますが、一つひとつ確実に整えていくことで、開発をスムーズに開始できる環境が整います。
3.iOSアプリ開発におすすめの言語
iOSアプリを開発する際、目的やスキルレベルに応じて適切なプログラミング言語を選びましょう。ここでは、iOSアプリ開発における主要な言語として「Swift」「Java」「Python」の3つを取り上げ、それぞれの特徴と向いているケースについて解説します。
Swift
iOSアプリ開発の第一選択肢は、Appleが公式に推奨しているSwiftです。Swiftは安全性とパフォーマンスを両立したモダンな言語であり、iPhone・iPad・Apple Watch・Mac向けアプリの開発に広く使われています。
特徴は、Xcodeとの相性の良さと、Appleの最新機能への対応速度です。例えば、SwiftUIを使えばUI設計も直感的にできるため、初心者でもアプリ開発の全体像をつかみやすくなります。
さらにSwiftはiOSアプリ開発向けのドキュメントや学習教材が豊富で、Apple公式のチュートリアルも整備されているため、これからiOS開発を始める人には適した言語です。
Java
Javaは、Androidアプリ開発やシステム開発で主に使われる言語ですが、Swiftの次にiOSアプリ開発で使用される言語です。ただし、Swiftに比べてiOSの最新機能への対応は遅く、開発環境の構築にも工夫が必要です。
Javaの強みは、長年の実績と大規模開発での信頼性です。すでにJavaで開発経験のある人や、AndroidアプリとiOSアプリを同時に開発したい人にとっておすすめの言語です。
Python
Pythonは人工知能(AI)やデータ解析の分野で人気の高い言語ですが、KivyというGUIフレームワークを使えば、iOSアプリの開発が可能です。
Pythonの魅力は、シンプルな文法と高速なプロトタイピングにあります。例えば、アプリの試作品を素早く作って動作確認したい場合には適しています。
ただし、iOSへの対応にはビルドの工夫や制約も多く、App Storeへの公開までを考慮するとSwiftに比べて難易度が高い傾向にあります。Pythonに慣れている開発者が補助的に使うには有効ですが、初心者が主言語として選ぶのはあまりおすすめできません。
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4.iOSアプリ開発の開発環境
iOSアプリ開発には、使用するプログラミング言語だけでなく、それに対応した開発環境の選定も重要です。
ここでは代表的な開発環境である「Xcode」「Flutter」「Xamarin(サポート終了)」の3つについて解説します。
Xcode
Xcodeは、Appleが公式に提供している唯一の純正IDEであり、iOSアプリを開発するなら基本的にこの環境が前提になります。
理由としては、Swiftを使った開発ができるのはもちろんのこと、シミュレーター・デバッグツール・UI設計機能・App Storeへの申請機能が統合されているためです。また、SwiftUIによる画面設計やStoryboardベースの開発もサポートされており、初心者でも視覚的にアプリ構築が可能です。
開発の具体的流れはXcode内でプロジェクトを作成し、ViewController.swiftにロジックを記述、Storyboardで画面を設計しiPhone実機またはシミュレーターで動作を確認するという流れになります。
したがって、iOSアプリを本格的に開発・公開したい場合は、Xcodeの導入が不可欠です。
Flutter
Flutterは、Googleが開発したクロスプラットフォームのUIフレームワークです。Dart言語を用いて、1つのコードベースからiOSとAndroidの両方に対応したアプリを開発できます。
Flutterを使う理由は、ネイティブに近い高性能な描画エンジンを持ち、美しいUIを効率的に構築できる点にあります。また、Windowsでも開発可能であり、Macがなくても一部の開発工程(コーディングやエミュレーター動作確認など)を進められる点も魅力です。
ただしiOS向けにビルドしてApp Storeに申請するには、最終的にMac環境とXcodeが必要であるため、Flutterだけでは完結できない点は注意が必要です。
Xamarinは2024年にサポート終了
かつて、C#でiOSアプリを開発できる環境として人気だったXamarinですが、Microsoftは2024年5月にXamarinのサポートを終了しました。
背景として、Microsoftがクロスプラットフォーム対応の新たな標準フレームワークである.NET MAUI(Multi-platform App UI)をリリースしたことが挙げられます。.NET MAUIはXamarinの後継として設計されており、C#とXAMLを使ってiOS・Android・Windows・macOSのアプリを一括開発できる環境です。
よって、新規開発でXamarinを採用するのは非推奨で、今後は.NET MAUIへの移行が求められます。Xamarinで構築された既存アプリは継続的な保守が難しくなるため、計画的な移行が必要です。
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5.iOSアプリ開発の基本ステップ
iOSアプリを開発してApp Storeで公開するまでには、一定の手順を踏む必要があります。個人開発者や初心者にとっては、全体の流れをまず理解しておきましょう。
ここでは、iOSアプリ開発の基本的な5ステップを順に解説します。
開発したいアプリの企画
iOSアプリ開発の最初のステップは、「どんなアプリを作るか」を明確に企画することです。企画段階があいまいなまま進めると、開発途中で迷いが生じたり、使いづらいアプリになってしまうことがあります。
企画では、まず「ターゲットユーザー」「アプリの目的」「必要な機能」を具体的に書き出しましょう。例えば「1人暮らしの学生が使う買い物メモアプリ」「ToDoと合体した読書記録アプリ」といった具合に、利用シーンまで想定すると方向性が定まりやすくなります。
実際にApp Store上に似たアプリが存在する場合は、それらを調査し、自分のアプリにしかない機能や使いやすさを検討することで差別化につながります。
設計図の作成
アプリ開発において、設計図の作成は重要なステップです。設計が甘いまま実装に進むと、仕様の見直しや大幅な修正が必要になり、時間と労力が無駄になる可能性があります。
設計では、まずアプリの画面構成や画面遷移を図にまとめ、ユーザーがどのように操作するかの流れを可視化します。また、UIレイアウトの下書きを作っておくと、開発中のイメージ共有が容易になります。
例えば開発するアプリがToDoアプリであれば「入力画面→一覧画面→詳細画面→編集画面」という遷移図を描いたうえで、各画面に必要なボタンや入力項目を整理しておくと、実装フェーズがスムーズです。
実装
設計図が完成したら、実装に入ります。実装の工程では画面の構築やボタンの動作、データの保存処理など、アプリとして機能する仕組みを一つひとつ組み立てていきます。
実装の際には、Xcodeを使ってSwiftでコーディングするのが一般的です。初心者の場合は、まず簡単な機能から実装を始めてみましょう。例えば、「ボタンを押すとテキストが表示される」といった基本動作からスタートし、徐々に複雑な処理へと進めると理解度を向上させながら開発を進められます。
またUIの作成には「Storyboard」や「SwiftUI」を使うことで、画面を視覚的に構築できるため、コードだけで実装するよりも学習効果が高まります。
動作テストの実施
アプリの実装が一通り完了したら、動作テストを必ず実施しましょう。テストを怠ると、公開後にバグやクラッシュが発覚し、ユーザーからの信頼を失う原因になります。
iOSアプリのテストでは、まずXcodeに搭載されているシミュレーターを使って、仮想のiPhone上でアプリの動作を確認できます。ここで基本的な操作や画面遷移、入力処理などが正しく行えるかを細かく検証します。また、iPhone実機を用いたテストも重要です。カメラ利用やタッチ反応など、実機でしか確認できない動作が存在するためです。
このようにシミュレーターと実機の両方でテストを重ねることで、ユーザーにとって安心・快適なアプリを提供できるようになります。
アプリのリリース
動作テストにて、開発したiOSアプリに問題がないことが確認できたらApp Storeでのリリースという最終ステップに進みます。
まず必要なのは、Apple Developer Programへの登録です。登録したアカウントを通じて「App Store Connect」へログインし、アプリ情報・スクリーンショット・カテゴリ・年齢レーティングなどを登録していきます。
その後、XcodeからアプリをビルドしてApp Store Connectへアップロードし、審査をリクエストします。Appleによる審査は通常1~3営業日で完了しますが、アプリの内容やガイドライン違反の有無によっては申請が却下される場合もあります。プライバシー方針の未記載、不安定な挙動、広告の設定ミスなどには注意が必要です。
このように、アプリのリリースは手続きが多いものの、正しく準備すれば個人開発でも問題なくApp Storeでの公開が可能です。
6.初心者におすすめのiOSアプリ開発学習法
2025年時点で、Appleの公式教材をはじめ、プログラミング未経験者でも取り組みやすい学習教材が多数用意されています。
この章では、初心者におすすめしたい3つの学習法を紹介します。
Apple公式が提供する学習教材「Swift Playgrounds」
iOSアプリ開発の初心者はまず、Apple公式の「Swift Playgrounds」を使って学習を始めましょう。Appleが提供するこの教材はプログラミング未経験者にもわかりやすい構成となっており、Swiftの基本文法を学びながら、自分で簡単なアプリが作成できます。
教材は、ゲーム感覚でプログラミングを体験できるような構成になっています。学習の途中でエラーが出ても、即座にヒントが表示されるため、つまずきにくいのも利点です。
また、iPadでも利用できるため、Macを持っていない段階でもSwiftに触れることが可能です。
オンライン学習サイト
短期間で効率よくiOSアプリ開発を学びたいなら、オンライン学習サイトの活用がおすすめです。動画講座やブラウザ上での演習を通して、開発手順を理解できるため、独学にありがちな挫折を防ぎやすくなります。
代表的なサイトとしては、「Progate」「ドットインストール」などがあります。例えば、Progateは初心者向けのスライド型教材が充実しており、Swiftの基礎文法をブラウザ上で学習可能です。
このようにオンライン学習サイトを活用すれば、好きな時間に自分のペースで学べる環境が整うため、社会人や学生におすすめの学習手段です。
書籍による体系的な学習
体系的にiOSアプリ開発を学びたい人には、書籍を使った学習がおすすめです。本であれば構文や概念の解説を丁寧に読み進められ、断片的な知識ではなく、全体構造を理解しやすくなります。
例えば、以下のような書籍があります。
これらの書籍は図解やコード例が豊富で、開発環境の導入方法からUI設計・データ保存・リリースまでを一冊でカバーしています。初心者向けに構成された書籍は、つまずきやすいポイントを丁寧に説明しているのが特徴です。
このように書籍による学習は、段階的に知識を積み上げたい人にとって信頼性の高い学習手段であり、繰り返し見直す教材としても役立ちます。
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7.まとめ
iOSアプリの開発は、適切な準備とステップを踏めば、初心者でも十分に実現可能です。
MacとXcodeを中心とした開発環境を整え、Swiftを使って設計・実装・テストを順に進めていくことで、制作したいアプリを形にできます。また学習教材も豊富に用意されており、公式ツールやオンライン講座、書籍などから自分に合った方法で学ぶことが可能です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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